未経験の米国公認会計士が監査法人や経理への転職で評価されるポイントとは?/米国公認会計士(USCPA)の転職とその市場価値:第3回

USCPA・米国公認会計士

過去2回に渡ってお送りしてきましたコラム『米国公認会計士の転職とその市場価値』ですが、今回、第3回が最終回となります。

最終回の今回は『実務未経験の米国公認会計士が転職で評価されるポイント』と題して、会計や財務といった分野の実務が未経験の方が米国公認会計士を取得した場合、監査法人や経理への転職の際に、どのような点からキャリアを評価されるかを解説します。

※米国公認会計士は試験に合格後、一定の要件を満たす実務経験を積まなければ「米国公認会計士」にはなれません。そのため、厳密には「米国公認会計士試験に受かった人」で「実務未経験の人」は米国公認会計士ではないのですが、便宜上、ここでは『実務未経験の米国公認会計士』という表現に統一させて頂きます。

第1回、第2回に関してはこちらをご参照ください。

「会計」「財務」「金融」などの実務未経験者が米国公認会計士を取得するとどう評価されるのか?

会計や財務関連の経験をお持ちでない方には、米国公認会計士資格を取得した場合に自身がどのように評価されるか気になられる方も多いでしょう。

まず、前回(第2回)で解説しました通り、米国公認会計士は「会計」「財務」「金融」と言った分野、また、「英文会計」「英語」と言った分野に関連する資格です。

そのため、米国公認会計士を取得することによって、

「会計・財務・金融分野に関する基礎知識がありますよ」

「基礎的な英語力や英文会計の知識がありますよ」

といった点をアピールポイントとすることができます。

ただし、第1回で解説したとおり、「資格は実務と合わさってはじめて効果を発揮する」ため、米国公認会計士試験に合格しても、会計や財務、金融といった業務の実務が未経験となると転職市場においてそれほど評価されず、転職活動にも苦労してしまう(=キャリアアップにつながらない)ケースもあります。

しかしながら、「実務未経験者」でも転職の結果には差が出るわけで、複数の会社から内定を貰ったり、有名企業から内定を貰ったりする人もいます。

このように同じ「実務未経験の米国公認会計士」でも転職市場での差が出てくるのはなぜでしょうか?

そこにあるいくつかのポイントをお伝えします。

厳密には受験する企業や職種によっても評価のされ方に細かな違いがあるのですが、今回は、未経験者が資格を取得して転職する際に、一般的に重要とされる下記の4つのポイントに絞って解説します。

  1. 希望職種の経験があるかどうか、または、希望職種に近い経験があるか
  2. 年齢はどれくらいか?(未経験者として入社するに十分に若いかどうか)
  3. 採用が積極的に行われている業界や職種かどうか
  4. 経歴・人柄がしっかりしているか

実務未経験の米国公認会計士の評価を決める4つのポイント

 1.希望職種に近い経験があるかどうか

「経理」や「財務」「コンサルティング」など希望職種の経験がなくとも、「希望職種に近い経験」がある人はいるかもしれません。

例えば、

『経理やコンサルティングの経験はないが、財務分析の仕事はしていたことがある』

『コンサルティングの経験はないが、銀行で融資営業をしていたことがある』

『管理会計の経験はないが、前職ではExcelを使って数値分析を行なっていた』

などと言った場合です。

もしくは、会計に近い仕事の経験がなくとも、転職希望先が英語力を必要とする部署であれば、

『前職では、英語ミーティングの経験がある』

『前職では、英語の読み書きの経験がある』

と言う点が評価されるケースもあります。

このように、未経験者の場合は経験がなくとも『希望職種に近い経験』『希望職種と接点となる経験』があれば評価が高まりますので、自分が『希望職種に近い経験をしているかどうか』は大切なポイントのひとつです。

2.未経験者として入社するに十分に若いかどうか

転職の際には、『年齢』がポイントとなる場合もあります。

日本では年齢制限をかけて人材を採用することは特定の理由がない限り禁止されているのですが、転職においては「年齢に応じたキャリア」が必要とされるため、なかなかこの『年齢』を抜きにキャリアアップを語ることはできません。

未経験者の場合、採用側の視点に立つと「上司や先輩が業務を教えなければならない」ため、上司や先輩より若いかどうか(上司や先輩が教えやすいかどうか)が採用可能性に影響することがあります。

例えば、上司が『32歳で7年の経理経験』の場合、米国公認会計士を取得しているとはいえ『35歳で経理未経験』であると、教えにくい…もしくは、若い候補者を優先しようとなるケースがあります。

もちろん、企業側も年齢だけで採用を決めるわけではないのですが、未経験者の場合は『新人』として採用されることが一般的ですので、年齢は若ければ若いほど転職可能性は高まると考えておくのがベターです。

なお、未経験者の採用は、20代後半~30歳くらいまでの方が対象となることが多いですので、未経験の方が米国公認会計士の取得にチャレンジする場合は年齢に関しても一考が必要です。

3.採用が積極的に行われている業界や職種かどうか

中途採用や転職のハードルは、本人のキャリアだけでなく、『転職マーケットの市場環境』によっても影響を受けます。

例えば、景気が良く求人が多い環境であれば、未経験者への採用ハードルも下がります。

また、例えば、企業の経理職の採用枠は、ひとつの企業につき1~2名程度であることが多いですが、大手監査法人であれば数十名以上の採用枠があります。

そのため、転職を考えている時期が「好景気かどうか」そして「採用枠が多いポジションかどうか」を見極めることは大切です。

特に、米国公認会計士が活躍するフィールドの中でも、特に監査法人では景気による採用枠の変動は非常に大きく、未経験者が監査法人への転職を考える際には好景気時に応募することによって転職の可能性が大きく高まります。 

4.経歴や人柄がしっかりしているか

実務未経験の米国公認会計士が転職で評価されるポイント、最後は「経歴や人柄がしっかりしているか」です。

これはあえて言わずともおわかり頂けるかと思いますが、企業が「実務未経験者」を採用する場合、『経験』で評価することができないので、『ポテンシャル』で判断することになります。

その際に、当然のことながら『人柄』や『経歴』が大きく参考となり、しっかりとした経歴や人柄の人ほど採用可能性が高くなります。

「しっかりした経歴」と書くと「高学歴や有名な企業にいた人が有利なのかな?」などと思いがちですが、転職回数が少ない、大学を意味なく浪人・留年せず卒業している、在職しながら仕事と勉強を両立して米国公認会計士を取得しているなど、「この人なら未経験だけど入社後もしっかりと頑張ってくれそうだ」と思える経歴をしているかどうかが重要です。

特に、米国公認会計士は在職しながら試験に合格する人も少なくはないので「仕事を辞めて試験勉強に専念していました」となると評価が下がりがちで、特に勉強に専念した期間が長くなればなるほどさらに評価は下がってしまいますので注意が必要です。 

 

以上が、未経験の米国公認会計士の評価を決める4つのポイントです。

もし、未経験の方が米国公認会計士を目指される場合は、このようなポイントがキャリアアップに影響してきますので、事前に意識しておくと良いと思います。

そして、最後に、少し厳しい話ですが補足しておきますと、これら4つが揃っているからと言って必ずしも評価されていい転職ができるわけではないと言う側面も当然のことながらあります。

転職市場には「実務経験のある米国公認会計士や日本の公認会計士」、もしくは、資格を取得しておらずとも「25~26歳で3年の経理経験がある人やコンサルティング経験がある人」はたくさんいます。

「実務未経験の米国公認会計士」が彼らと勝負した際にいくら4つの要素を満たしていても、最終的には「やはり実務経験がある人の方が育てやすくていいよね」と彼らのほうが高く評価されてしまうこともあります。

とは言え、決して「転職が厳しい=米国公認会計士を取得する意味は無い」ではありません。

未経験から米国公認会計士を取得して活躍されている方は決して少なくありませんし、特に最初は皆、未経験です。

「米国公認会計士を取得したら良い転職ができる」ではなく「米国公認会計士を取得してこうなってみたい!」という前向きな意識でキャリアアップを目指して頂きたいと思います。

もし、「実務は未経験だがこれから米国公認会計士を目指そう」と考えている方がおられましたら、今回のコラムが参考になれば幸いです。

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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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