監査法人とはどのようなものなのでしょうか?
公認会計士が働いているところとして知られていますが、どのような経緯で監査法人制度が始まり、どのようなサービスを展開しているかはあまり知られていません。
ここではそんな監査法人について解説します。
監査法人とは、企業などの財務書類の監査や証明を組織的に行うことを目的として、公認会計士法に基づいて設立される法人を指します。
設立には、社員となる公認会計士が5人以上必要です。
日本には令和8年3月末時点で300の監査法人があり、その規模によって大手監査法人・準大手監査法人・中小監査法人に分けられます。
本記事では、監査法人の仕事内容、規模区分の違いと主な法人、社員の責任のしくみ(無限責任・有限責任)を順に解説します。
目次
- 監査法人とは?公認会計士5人以上で設立する会計監査の専門法人
- 監査法人の仕事内容|法定監査・任意監査とアドバイザリー業務
- 監査法人の規模区分|大手・準大手・中小監査法人の違いと法人数
- 主な監査法人一覧(大手・準大手・中小監査法人)
- 監査法人の社員と責任|5人以上の公認会計士、無限責任と有限責任の違い
- 監査法人に関するよくある質問
監査法人とは?公認会計士5人以上で設立する会計監査の専門法人
元来、上場企業の監査は個人の公認会計士が行っていました。
しかし、昭和39年・40年の不況により会社倒産が相次ぐ中で、粉飾決算が多数明らかとなり、公認会計士の虚偽の監査証明が問題とされました。
この状況を打開するため、公認会計士制度の強化が求められることとなり、昭和41年に公認会計士法が改正され、組織的監査の担い手として監査法人制度が創設されました。
組織的に監査することによって、監査の水準を一定以上に保ち、監査の公正性と信頼性を高めようとしたのです。
監査法人の仕事内容|法定監査・任意監査とアドバイザリー業務
監査法人の主なサービスは監査業務です。監査業務とは、企業・団体の作成した財務諸表が適正に作成されているかどうかをチェックする仕事です。
監査業務には、法律によって公認会計士監査が義務づけられている法定監査と、企業や団体が自主的に受ける任意監査があります。
法定監査の代表例は、上場企業などが対象となる金融商品取引法(以下、金商法)に基づく監査と会社法に基づく監査で、このほか学校法人、労働組合、信用金庫、社会福祉法人、医療法人などの監査も法律で定められています。

大規模な監査法人、いわゆる4大監査法人(BIG4監査法人)*、は、公認会計士以外にコンサルタントやシステム監査人、年金数理人等の専門家を抱えており、監査業務に加え、IPO支援やM&Aアドバイザリーなどの非監査業務も行っています。
小規模な監査法人のサービスは、監査業務が中心であり、非監査業務はあまり多くはありません。
*4大監査法人(BIG4監査法人):EY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、PwC Japan有限責任監査法人
監査業務|法定監査の対象と1年間のスケジュール
3月決算の企業の場合、4月の中旬から5月にかけてクライアントに往査し、期末監査を行います。
監査の手続きが完了したら、会社法の監査報告書を5月に、金商法の監査報告書を6月に提出し、監査意見を表明(不表明の場合もあり)します。期末監査以前には、年度中の適切なタイミングで往査し、期中取引、内部統制の検証等を行います。
この他、金商法では、上場会社等が上半期終了後に提出する半期報告書について、期中レビュー*が求められるため、一般的には上半期の決算後に往査してレビュー手続きを実施し、期中レビュー報告書を提出します。
第1・第3四半期については、令和6年4月に四半期報告書制度が廃止されたことにより、決算短信に含まれる四半期財務諸表のレビューは、一定の場合を除いて任意となりました。
3月決算の会社が一番多く、業務負担が4〜5月に集中するため、公認会計士の繁忙期はこの4〜5月といえるでしょう。
*期中レビュー:令和5年の金商法改正により四半期報告書制度が廃止され(令和6年4月1日施行)、上場会社等は上半期終了後に半期報告書を提出することになりました。期中レビューとは、この半期報告書に含まれる中間財務諸表について、適正に作成されているかどうかをチェックし結論を表明するものです。従来の「四半期レビュー基準」は、令和6年3月に「期中レビュー基準」へ名称が変更されています。
非監査業務|IPO支援・M&A・IFRS導入などのアドバイザリー
株式公開支援業務、M&Aアドバイザリー業務、金融機関に対するビジネスプロセス改革やリスク管理態勢の構築、IFRS導入支援、コンフォートレター作成業務、地方自治体に対する包括外部監査等の幅広い業務を行っています。
公認会計士が監査業務と平行して上記サービスに携わることもあれば、コンサルタント等の専門家と連携して業務を実施することもあります。
ここまでは監査法人という組織の業務を見てきましたが、公認会計士が一般にどのような仕事をしているのか(監査業務・非監査業務の中身や独占業務)は、公認会計士の仕事内容で解説しています。
監査法人で働くキャリアや転職について詳しく知りたい方は、監査法人への転職完全ガイドをご覧ください。
監査法人の後のキャリアについては「公認会計士の転職先14選と転職市場の動向」で網羅的に紹介しています。
監査法人の規模区分|大手・準大手・中小監査法人の違いと法人数
監査法人と一口にいっても、その規模はさまざまです。公認会計士・監査審査会(CPAAOB)は、監査法人をその規模に基づいて「大手監査法人」「準大手監査法人」「中小監査法人」の三つに分類しています。
大手監査法人とは、上場国内会社を概ね100社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査実施者が1,000名以上いる監査法人です。
準大手監査法人は大手監査法人に準ずる規模の監査法人で、中小監査法人は大手監査法人と準大手監査法人以外のすべての監査法人を指します。
令和8年版のモニタリングレポートによると、令和7年3月末時点で、監査法人に公認会計士の共同事務所・個人事務所を合わせた「監査事務所」は2,411あり、その内訳は大手監査法人4、準大手監査法人4、中小規模監査事務所2,403(うち中小監査法人288、共同事務所48、個人事務所2,067)です。
監査法人の数は近年増加しており、令和8年3月末では300法人となっています。所属する常勤の公認会計士が25人未満の法人が全体の90%超を占めており、日本の監査法人のほとんどは中小監査法人なのです。
規模による違いは、人員や業務の構成にも表れます。令和7年度の社員(パートナー)数は、大手監査法人が約250〜550人、準大手監査法人が約40〜100人であるのに対し、中小監査法人は多くても50人程度です。
また、業務収入に占める監査証明業務の割合は、大手監査法人が約70%、準大手監査法人が約95%、中小監査法人が約90%と、大手監査法人に比べて準大手・中小監査法人では監査業務の比重が大きくなっています。
各区分の監査法人が新規上場(IPO)企業の監査をどれくらい担っているかは、規模別の監査法人IPO実績で毎年まとめています。
規模による制度上の違いだけでなく、大手と中小で仕事の進め方や任される範囲がどう変わるのかは、現役会計士が語る動画『大手監査法人か中小監査法人か、会計士の「やりたい」で選ぶ理由』でも紹介しています。
主な監査法人一覧(大手・準大手・中小監査法人)
公認会計士・監査審査会の令和8年版モニタリングレポートで、大手監査法人・準大手監査法人とされている法人は次のとおりです(同レポートの記載順)。
大手監査法人(4法人):有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、EY新日本有限責任監査法人、PwC Japan有限責任監査法人
この4法人はいわゆるBIG4監査法人で、それぞれの売上・人員数・クライアント数の比較はBIG4監査法人の規模・業績比較で毎年まとめています。
準大手監査法人(4法人):仰星監査法人、三優監査法人、太陽有限責任監査法人、東陽監査法人
中小監査法人:上記の8法人以外の監査法人です。
令和7年3月末時点で288法人あり、地域や業種に特化した法人、IPO支援に強みを持つ法人など、その特徴はさまざまです。
監査法人の社員と責任|5人以上の公認会計士、無限責任と有限責任の違い
監査法人の社員とは?5人以上の公認会計士が出資し無限連帯責任を負う
監査法人を設立するには、5人以上の公認会計士が社員とならなければなりません。監査法人は合名会社*をモデルとしているため、ここでいう「社員」とは、一般的な従業員や会社員のことではなく、出資者であり業務執行権を持つ人のことを指します。
株式会社でいう株主と取締役・代表取締役を兼ねた人といったイメージでしょうか。

そして、この社員は、合名会社と同じく、監査法人がその財産をもって債務を完済できない場合には、無限に責任を負うことになります(無限連帯責任)。法人の借金を全て返し終わるまで、自分の財産から返さなければならないのです。
また、社員の中で、会社を代表する社員のことを代表社員といいます。
なお、平成19年の公認会計士法改正により、公認会計士でない専門家も監査法人の社員になれる「特定社員」の制度が設けられましたが、その場合でも、公認会計士である社員が社員全体の75%以上を占めなければなりません。
監査法人に入所した公認会計士が、経験を積んでこの社員(パートナー)に登用されるまでに何が必要かは、社員(パートナー)への昇格条件で現役会計士が答えています。
*合名会社:個人事業主が複数集まり、共同事業化した状態を想定した会社形態のこと。社員は、出資もして経営も行う。企業の所有(出資)と経営(業務の執行)が一致している。
有限責任監査法人とは?指定有限責任社員だけが無限責任を負う制度

従来の監査法人は、上記の無限責任形態をとっていましたが、社員数が数百人を超える大規模監査法人が出てきたため、全ての社員が他の社員の監査証明を監視するのは不可能であり、責任を負いきるのは現実的でないこと、諸外国において有限責任形態の監査法人が一般化していることから、平成19年に有限責任監査法人制度が創設されました。
無限責任監査法人に加え、有限責任監査法人の形態をとることも認められたのです。
個々の監査証明業務について、その業務を担当する社員を指定し(指定有限責任社員)、指定有限責任社員のみが無限連帯責任を負い、それ以外の社員は、監査法人に対する出資金の額を限度としてその弁済責任を負うこととなりました。
ある証明業務について法人が借金を返せなくなった場合でも、その証明業務に関与していない社員は、自分が出資した額までしか責任を取らなくて良いということです。
有限責任監査法人となるには内閣総理大臣の登録が必要で、社員の責任が限定される代わりに、財産的基盤や情報開示の充実が求められます。
令和8年3月末時点で、有限責任監査法人は38法人です。
ちなみに、監査法人の第1号(日本で初めて設立された監査法人)は、昭和42年1月に設立された監査法人太田哲三事務所です。
社員8名と有資格者の使用人12名からのスタートでした。この監査法人太田哲三事務所は、後の太田昭和監査法人であり、現在のEY新日本有限責任監査法人へとつながっています。
また、有限責任監査法人の第1号は、平成20年に無限責任監査法人から移行した、新日本有限責任監査法人(現在のEY新日本有限責任監査法人)です。
有限責任監査法人を設立するにはどのような手続きが必要なのかは、有限責任監査法人の設立手順で、実際に設立した会計士へのインタビューをもとに紹介しています。
【参考サイト】
監査法人に関するよくある質問
Q1. そもそも監査法人とはどのような組織で、なぜ設立されたのですか?
監査法人は、組織的に会計監査を行う専門法人です。
元来は個人の公認会計士が上場企業の監査を行っていましたが、昭和39年・40年の不況による倒産多発や粉飾決算、虚偽の監査証明が問題視されました。
この状況を打開して公認会計士制度を強化するため、昭和41年の公認会計士法改正により監査法人制度が創設されました。
組織的監査によって監査水準を一定以上に保ち、公正性と信頼性を高める目的があります。
Q2. 監査法人の主な仕事内容と、年間の繁忙期はいつですか?
監査法人の主な業務は、企業や団体の作成した財務諸表が適正かをチェックする監査業務です。
法律で義務付けられた法定監査や自主的な任意監査のほか、コンサルタント等の専門家と連携した非監査業務も行います。
3月決算の企業が最も多く、4月中旬から5月にかけて期末監査を行い、5月に会社法、6月に金商法の監査報告書を提出するため、業務負担が集中する4〜5月が公認会計士の繁忙期となります。
Q3. 監査法人の規模区分にはどのような種類があり、それぞれどのような特徴がありますか?
監査法人は、規模に基づいて「大手監査法人」「準大手監査法人」「中小監査法人」の三つに分類されます。
大手は上場国内会社を概ね100社以上有し常勤監査実施者が1,000名以上いる4法人、準大手はそれに準ずる4法人、中小はそれ以外を指します。
業務収入に占める監査証明業務の割合は大手約70%、準大手約95%、中小約90%で、所属する常勤公認会計士が25人未満の法人が全体の90%超を占めます。
Q4. 監査法人を設立するにはどのような要件があり、「社員」はどのような責任を負いますか?
監査法人を設立するには、5人以上の公認会計士が社員となる必要があります。
監査法人における社員とは従業員ではなく、出資者であり業務執行権を持つ人を指します。
監査法人が財産をもって債務を完済できない場合、社員は個人の財産から全額返済する無限連帯責任を負います。
なお、公認会計士以外の専門家が就任できる特定社員制度もありますが、公認会計士である社員が全体の75%以上を占めなければなりません。
Q5. 有限責任監査法人とはどのような仕組みで、従来の監査法人と何が違うのですか?
有限責任監査法人は、担当した指定有限責任社員のみが無限連帯責任を負い、その他の社員は出資金の額を限度に弁済責任を負う形態の監査法人です。
社員数が数百人規模に拡大し、全社員が責任を負いきれなくなったこと等から平成19年に創設されました。
有限責任監査法人となるには内閣総理大臣の登録が必要で、財産的基盤や情報開示の充実が求められます。
令和8年3月末時点で38法人が存在します。































