監査法人とは?

監査法人とはどのようなものなのでしょうか?

公認会計士が働いているところとして知られていますが、どのような経緯で監査法人制度が始まり、どのようなサービスを展開しているかはあまり知らせていません。ここではそんな監査法人について解説します。

監査法人は何をやっているところ?

元来、上場企業の監査は個人の公認会計士が行っていました。しかし、昭和39年・40年の不況により会社倒産が相次ぐ中で、粉飾決算が多数明らかとなり、公認会計士の虚偽の監査証明が問題とされました。

この状況を打開するため、公認会計士制度の強化が求められることとなり、昭和41年に公認会計士法が改正され、組織的監査の担い手として監査法人制度が創設されました。組織的に監査することによって、監査の水準を一定以上に保ち、監査の公正性と信頼性を高めようとしたのです。

監査法人のサービスって?

監査法人の主なサービスは監査業務です。監査業務とは、企業・団体の作成した財務諸表が適正に作成されているかどうかをチェックする仕事です。

監査業務・非監査業務

大規模な監査法人、いわゆる4大監査法人(BIG4監査法人)*、は、公認会計士以外にコンサルタントやシステム監査人、年金数理人等の専門家を抱えており、監査業務に加え、IPO支援やM&Aアドバイザリーなどの非監査業務も行っています。

小規模な監査法人のサービスは、監査業務が中心であり、非監査業務はあまり多くはありません。

*4大監査法人(BIG4監査法人):新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、PwCあらた有限責任監査法人

監査業務

3月決算の企業の場合、4月の中旬から5月にかけてクライアントに往査し、期末監査を行います。監査の手続きが完了したら、会社法の監査報告書を5月に、金商法の監査報告書を6月に提出し、監査意見を表明(不表明の場合もあり)します。期末監査以前には、年度中の適切なタイミングで往査し、期中取引、内部統制の検証等を行います。

この他、金商法では、四半期レビュー*制度があるため、一般的には、7月・10月・1月に往査し、四半期レビュー手続きを実施し、四半期レビュー報告書を提出します。

3月決算の会社が一番多く、業務負担が4〜5月に集中するため、公認会計士の繁忙期はこの4〜5月といえるでしょう。

*四半期レビュー:金商法にて、四半期報告書の提出が義務づけられました。四半期レビューとは、この四半期報告書に含まれる四半期財務諸表について、適正性をチェックし結論を表明するものです。

非監査業務

株式公開支援業務、M&Aアドバイザリー業務、金融機関に対するビジネスプロセス改革やリスク管理態勢の構築、IFRS導入支援、コンフォートレター作成業務、地方自治体に対する包括外部監査等の幅広い業務を行っています。

公認会計士が監査業務と平行して上記サービスに携わることもあれば、コンサルタント等の専門家と連携して業務を実施することもあります。 

監査法人ってどうやって設立するの?

監査法人の設立には5人以上の公認会計士が必要

監査法人を設立するには、5人以上の公認会計士が社員とならなければなりません。監査法人は合名会社*をモデルとしているため、ここでいう「社員」とは、一般的な従業員や会社員のことではなく、出資者であり業務執行権を持つ人のことを指します。株式会社でいう株主と取締役・代表取締役を兼ねた人といったイメージでしょうか。

そして、この社員は、合名会社と同じく、監査法人がその財産をもって債務を完済できない場合には、無限に責任を負うことになります(無限連帯責任)。法人の借金を全て返し終わるまで、自分の財産から返さなければならないのです。また、社員の中で、会社を代表する社員のことを代表社員といいます。

*合名会社:個人事業主が複数集まり、共同事業化した状態を想定した会社形態のこと。社員は、出資もして経営も行う。企業の所有(出資)と経営(業務の執行)が一致している。

有限責任監査法人とは?

無限/有限責任監査法人

従来の監査法人は、上記の無限責任形態をとっていましたが、社員数が数百人を超える大規模監査法人が出てきたため、全ての社員が他の社員の監査証明を監視するのは不可能であり、責任を負いきるのは現実的でないこと、諸外国において有限責任形態の監査法人が一般化していることから、平成19年に有限責任監査法人制度が創設されました。無限責任監査法人に加え、有限責任監査法人の形態をとることも認められたのです。

個々の監査証明業務について、その業務を担当する社員を指定し(指定有限責任社員)、指定有限責任社員のみが無限連帯責任を負い、それ以外の社員は、監査法人に対する出資金の額を限度としてその弁済責任を負うこととなりました。ある証明業務について法人が借金を返せなくなった場合でも、その証明業務に関与していない社員は、自分が出資した額までしか責任を取らなくて良いということです。

ちなみに、監査法人の第1号(日本で初めて設立された監査法人)は、昭和42年1月に設立された監査法人太田哲三事務所です。社員8名と有資格者の使用人12名からのスタートでした。この監査法人太田哲三事務所は、後の太田昭和監査法人であり、現在の新日本有限責任監査法人へとつながっています。

また、有限責任監査法人の第1号は、平成20年に無限責任監査法人から移行した、新日本有限責任監査法人です。

【参考サイト】





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