FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)への転職 -公認会計士の転職ナレッジ

  • 2017/6/1

FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)業界への転職は、公認会計士にとって人気のキャリアパスのひとつです。各監査法人では、FAS専門の関連会社を有してFAS業務を行っていることも多いため、在籍する監査法人のグループ内で異動してFAS業務に取り組む公認会計士も少なくありません。

FASでのキャリアは大手ファーム(BIG4監査法人系列など)と中小・独立系ファームのいずれに進むかでキャリアが異なってきます。ここでは、2つのキャリアパスに関してそれぞれ解説します。

FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)への転職の傾向

FASへの転職の傾向(大手、中小・独立系共通)

  • 公認会計士の間では、特にBIG4監査法人系列のFAS(大手FAS)の人気は高い。
  • FASの求人動向は監査法人と連動することが多い。
  • 監査法人が公認会計士余りの状況であれば、FASも公認会計士余りであることが多く、その時期はFASへの転職も難しくなる傾向にある。
  • 監査法人が公認会計士不足の状況であれば、FASの公認会計士不足であることが多く、FASへの転職も容易になる傾向にある。
  • FASには、デューデリジェンス(トランザクション)、バリュエーション、FA(M&Aアドバイザリー/コーポレートファイナンス)、リスクアドバイザリー(フォレンジック/エンタープライズリスクサービス)など様々な部門があり、部門によって選考基準や求められるスキルも異なる。
  • 監査のみの経験でFASに転職する場合、転職後に業務について行けるか不安に感じる公認会計士も少なくないが、デューデリジェンス業務であれば監査と手順が似通っているため、転職後も比較的スムーズに業務に取り組むことができる。

大手FASへの転職の傾向

  • 大手FASには『株式会社KPMG FAS』『プライスウォーターハウスクーパース株式会社』『デロイトトーマツFA合同会社』『アーンストアンドヤング・トランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社』などがある。
  • 大手FASの財務デューデリジェンスをメインとする部門では、監査経験のみの公認会計士の候補者に関しては、30歳程度までの人材を採用することが多い。
  • FA(ファイナンシャルアドバイザリー)、バリュエーション、フォレンジック、エンタープライズリスクサービスなど特殊なスキルが必要とされる部門では、経験者であれば30歳以上の人材や金融機関出身者などの公認会計士以外の人材も採用している。逆に、監査経験しかない公認会計士だと、30歳を超えてくると年齢が高くなるに連れて採用の可能性は低くなっていく傾向にある。
  • 不景気時や公認会計士余りの状況下では、FASは併設の監査法人から人材を採用することができるため、外部からの採用に対するハードルは高くなる傾向にある。そのような状況下では、高い語学力を有する人材や30代前半程度までで突出したFAS経験を有する公認会計士のみが採用対象となる傾向にある。

中小・独立系FASへの転職の傾向

  • 独立系FASには、中堅以下の監査法人(および併設のFAS会社)や独立系の会計事務所やファイナンス系コンサルティングファームがある。
  • 独立系FASでは、FAS未経験者の公認会計士(監査経験のみの公認会計士)の場合、大手FASと同様に30代前半くらいまでの人材が採用されやすい傾向にある。
  • 準大手以下の監査法人の場合、監査部門とFAS部門を明確に分けておらず、監査部門のスタッフも監査と並行してFAS業務に携わることもある。
  • 監査経験のみの経験の公認会計士で30代半ば以降の年齢となると、FASへの転職は難しいが、監査と並行してFAS業務も行っている中小・独立系監査法人であれば、監査要員として採用され、並行してFAS業務にチャレンジできるケースもある。

FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)の年収

  • 大手FASでの年収は、平均するとBIG4監査法人の監査職より100万円~200万円程度高い水準にあるが、残業量や賞与にもよるため、スタッフやシニアスタッフレベルであればあまり差がつかないケースもある。(リーマン・ショック前と比較すると、近年では監査法人とFASの給与差はやや小さくなった傾向も見られる。)
  • また、監査業務より年収は高くとも、業務量も多いため、時給ベースであれば監査のほうが良いというケースもある。
  • 中小・独立系FASでの年収は、BIG4監査法人の監査職と同等程度の水準にある。
  • FASの年収は、転職先での案件受注状況によるので、好景気時でマーケットにFAS案件が豊富な時には前述の水準より高くなる傾向にある。

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FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)業界でのキャリアの特徴

大手、中小・独立系ファーム共通

  • BIG4、独立系FASともにFAS分野全体では財務デューデリジェンスが占める割合が高い傾向にある。
  • 監査経験のみの公認会計士が採用されやすいのも財務デューデリジェンス職である。
  • BIG4 FASでは所属部門のサービスのみ(例:トランザクション部門ならデューデリジェンスのみ)を経験することとなり、専門性は高められるが、キャリアの幅は狭まる傾向にある。一方で、独立系FASであればひとつのサービスを極めるのは難しいものの、幅広い業務を経験することができるため、キャリアの幅は広がる傾向にある。FASのキャリアにおいてはこの「大手で専門性か、大手以外で総合力か」というのが大きな論点のひとつである。
  • バリュエーションやFA(ファイナンシャルアドバイザリー)業務に関しては、監査経験だけの公認会計士はやや採用されにくく、選考ハードルは高めである。
  • 公認会計士の場合、FAS業務では、財務デューデリジェンスは基礎となるのでしっかりと経験しておいた方が良い。ただし、近年では、FAS出身の公認会計士も増えてきたため、財務デューデリジェンスの経験だけでは、他の公認会計士との差別化を図りにくくなってきている面もある。
  • FAS業務の中でも、バリュエーション業務やFA業務はデューデリジェンス以上にファイナンス関連のセンスが要求される側面もあるので、スキルを磨けばキャリアに付加価値をつけやすい。
  • FASでの業務は監査とは異なり、プロジェクトをベースとしたものになるので、会計検査などと異なり年間を通しての繁閑は読みにくい。プロジェクトが始まると繁忙となり、プロジェクトがない時期は閑散となる。
  • FASから次職へステップアップするための転職を行う場合も、年齢が若いほうが有利であり、35歳程度まででの転職が望ましい。(30歳前後の年齢で3~4年のFAS経験を積んでいると、他のFASやアドバイザリーファームへの転職も行いやすい。)
  • 事業会社への転職を希望する場合、FASのキャリアが長くなると、会計の実務からは離れることになるため、「経理職」への転職は難しくなる傾向にある。一方で、財務や経営企画などファイナンス関連職種であれば、FASからの転職の可能性も残る。

大手FASでのキャリア

  • 大手FASで扱う案件は、比較的中規模以上の案件が多い。また、新聞紙面やマスコミなどで取り上げられる大型案件に携われる点も魅力である。
  • 大手FASでは、クロスボーダー案件も扱っている。今後のグローバル化社会を考えると、クロスボーダー案件に携わり、英語力を磨いておくことは公認会計士のキャリアにとってプラスになると考えられる。
  • 大手FASでは、当然のことながらFAS内での競争があり、管理職(マネージャー以上)になれる人材は限られている。そのため、30代半ば以降になってくると「管理職になれた人材」と「管理職になれなかった人材」とに分かれ、転職市場での評価も異なってくるケースがある。そのため、大手FASでキャリアを積む場合は、マネージャー職以上に昇格することも意識しておくことも重要である。
  • 大手FASでは、扱う案件規模が大きいことから、独立後に個人で獲得できる規模の案件に携わる機会はあまり多くない。そのため、独立後を考えている公認会計士にとっては独立に直接プラスになる経験は積みにくい。但し、業務の基本は同じであるのと、業務のプロシージャーやクオリティは高く、また、経歴に泊がつくという面から独立に有利とも考えられる。
  • 大手FASから投資銀行などのFA職へ転職するにあたって、財務デューデリジェンスしか経験していない場合は、30代前半程度までなど若いほうが望ましい。(30代になると転職市場にFA経験者などのライバルが多くなり、経験のある即戦力人材が求められやすくなるためである。)
  • バリュエーションやFA、M&Aアドバイザリーなどの業務を経験していると、30代半ば以降でも投資銀行などの金融機関への転職際に評価はされやすい傾向にある。
  • 大手FASでは、フォレンジックやエンタープライズリスクサービスなどの特殊分野や新興分野のサービスラインもある。そういった部門であれば、一般的な公認会計士とのキャリアを差別化できるが、特殊な分野であるため、その後の転職先は限られてしまう可能性もある。(詳細は「リスクアドバイザリーサービスへの転職」を参照。)
  • 大手FASでは、近年では英語力が重視されてきている。応募時はTOEIC(目安として700点代の後半以上)を取得するなどの準備をしておくことが望ましい。

中小・独立系FASでのキャリア

  • 中小規模・独立系FASでは、FAS業務(デューデリジェンス以外にもバリュエーションやFAなど)と平行して、会計アドバイザリー(IPO支援やJ-SOX対応、連結決算支援、IFRS対応など)も含めた幅広い業務を行っていることが多い。(業務範囲はそのファームのサービスラインやパートナーや幹部のスキルに依存することが多い。)
  • 中小規模・独立系FASでは、そのメンバーは少数の公認会計士にて構成されていることが多い。そのため、ある程度、メンバーとの相性がある程度合あえば人間関係にも困らず、また、組織としての縛りも大手FASより緩やかなことが多いため、快適に勤務できることが多い。
  • 中小・独立系FASでは、対象とするクライアント規模は小さくなるが、その分、クライアントに近い距離でクライアントの意向に近いサービスを提供することができる。
  • 中小・独立系FASでは、対象とするクライアント規模は小さくなるが、営業活動や新興上場企業の役員や企業オーナーとの折衝を経験できたりするなど実務以外に有用な経験を積むことができたり、幅広い人脈を形成したりすることができる。
  • 上記のように、幅広い業務経験、営業経験、人脈形成などの観点から、中小・独立系FASでの経験は独立に有利となる傾向にある。

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FAS関連のおすすめ書籍

FAS業界での業務や仕事内容を学ぶには下記の書籍が参考になります。

M&Aファイナンシャル・アドバイザリー・サービス―実務をひもとく14のストーリー

FASとは何か?ショートストーリーをもとにFASのコンセプトを学べる書籍です。FAS業務のイメージをつけるための必読書。

財務デューデリジェンスの実務―M&Aを成功に導く

財務デューデリジェンスに関する専門書。FASでデューデリジェンス業務に従事したい場合、まずはこの書籍でデューデリジェンスのポイントを理解することがお勧め。

企業価値評価 第5版 【上】【下】

マッキンゼー・アンド・カンパニーによる企業価値評価の専門書。業界での評価も高い良書であり、バリュエーションやM&Aアドバイザリーへの転職を希望する公認会計士にとっては必読書。

コーポレートファイナンスの原理

コーポレートファイナンスを学ぶためのバイブル的書籍。FA(M&Aアドバイザリー)などファイナンス関連アドバイザリー職を目指す公認会計士は必読の一冊。

コーポレートファイナンス【上】【下】

『コーポレートファイナンスの原理』と並ぶコーポレートファイナンスの良書。コーポレートファイナンスを体系的に学ぶのに最適。

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