会計事務所向けクラウドシステム A-SaaS(エー・サース)が会計事務所経営を変える【シリーズ:会計×イノベーション/第4回】



税理士や公認会計士の増加、日本経済の停滞などの影響から会計業界の停滞や閉塞感が叫ばれる中、それを切り拓くヒントはどこにあるのか。公認会計士ナビでは「シリーズ:会計×イノベーション」と題し、複数回に渡り、会計業界に見られるイノベーションを特集していきます。第4回は会計事務所向けクラウドシステム A-SaaS(エー・サース)です。

第4回:会計事務所向けクラウドシステム A-SaaS(エー・サース)が会計事務所経営を変える 

クラウドやSaaSという言葉がメジャー化し、クラウドコンピューティングが注目を浴び始めた今日において、『会計事務所向けの本格クラウドシステム』として着実にシェアを伸ばしつつ会計システムがある。

会計事務所向けクラウドシステム A-SaaS(エー・サース)

である。

会計事務所向けクラウドシステム A-SaaS

会計事務所向けの“初の本格クラウドシステム”と言って過言ではないこのA-SaaSだが、2012年4月より有料でのシステム提供をスタートしたばかりにも関わらず、既に約700件の会計事務所が利用会員(総会員数は約1,500事務所)となっており、その会員数はさらに増加中である。TKC、JDL、MJSと言った大手会計事務所専用ベンダーがクラウド会計マーケットへの移行を本格化しきれないでいる中、なぜ独立系ベンチャー企業であるA-SaaSはシェアを伸ばしているのだろうか?そこには会計システム業界のベテラン達がイノベーションに賭ける熱い想いと、40年に渡って培われた会計事務所業界に対する深い知見があった。

A-SaaSの特徴や強みやA-SaaSに込められた想いについてアカウンティング・サース・ジャパン株式会社の代表取締役社長・森崎利直氏に話を聞いた。

会計事務所向け本格クラウドシステム A-SaaS、その機能とは?

A-SaaSには会計事務所が利用するクラウド会計システムとして様々な機能が織り込まれている。まずはその機能を見てみよう。

会計から税務申告まで、会計事務所に必要な業務を網羅した会計システム

A-SaaSは会計事務所向けのクラウド型会計システムである。既存の会計事務所専用ベンダーのシステムと同様に「会計」「税務」「減価償却」「給与」といった機能で構成され、会計事務所向け汎用システムとしてA-SaaSのみで全ての業務を完結できるように設計されている。

  • 会計システム

仕訳~試算表、決算報告書など作成、予算管理や部門別管理などの「管理会計」、資金繰管理表などの「資金・財務管理」といった機能に対応したシステム。 

【仕訳入力画面】

仕訳入力画面

【試算表】

試算表

  • 税務システム

所得税、法人税、消費税の申告書や勘定科目内訳書、事業概況説明書といった税務申告関連に対応したシステム。電子申告にも対応しており、現在、資産税(相続税、贈与税)の申告書にも対応すべく機能拡充を進めている。

【法人税申告書(別表一)】

法人税申告書(別表一)

【消費税申告書】

消費税申告書

【青色申告(損益計算書)】

青色申告書(損益計算書)

  • 減価償却システム

固定資産台帳や償却資産申告書に対応したシステム。

  • 給与システム

給与計算、年末調整、法定調書、社会保険・労働保険算定など給与や労務関連に対応したシステム。

【給与計算】

給与計算

【年末調整】

年末調整

料金は月額定額。新規開業の会計事務所は月額1万円から利用可能。

A-SaaSの料金プランはシンプル、かつ、低価格である。

A-SaaSの会員制度には『賛同会員』『新規開業会員』の2種類があり、賛同会員は、入会金10万円、開発分担金40万円に、月額利用料3万円(5IDを付与)でシステムが利用可能となっている。また、開業5年未満の会計事務所は新規開業会員として、入会金10万円、開発分担金20万円に、月額利用料1万円(1IDを付与)で利用することができる。

※2013年9月末現在の料金です。

※賛同会員は1件につき5,000円/月でIDの追加が可能。新規開業会員も5,000円/月で追加可能だが、追加可能件数は1件のみ。 

顧問先企業向け会計・給与システムを件数制限なく無償提供

A-SaaSの大きな特徴のひとつとして、顧問先向けの会計・給与システムを顧問先であれば件数制限なく無償提供している点が挙げられる。このシステムはA-SaaSと連動した会計・給与システムであり、会計事務所と顧問先企業それぞれが入力したデータがクラウド上で共有され、会計事務所側がリアルタイムで顧問先の会計データをチェックし、アドバイスを行うことができる。また、顧問先企業も会計や給与ソフトの購入やバージョンアップに伴う買い替えが不要となり、システムやソフトウェアに関するコストを大きく削減することができる。 

【出納帳入力画面】

出納帳入力画面

【振替伝票入力画面】

振替伝票入力画面

会計事務所のシステムイノベーションを通じて日本経済の活性化を目指す

TKC、JDL、MJSの3社が約80%ものシェアを有する会計システム業界に参入し、設立わずか数年にも関わらず着実に実績を積み重ねつつあるA-SaaSを運営するのはどのような企業なのであろうか?

会計システムにイノベーションを起こすため、業界の専門家たちが立ち上がった

A-SaaSを運営するアカウンティング・サース・ジャパン株式会社は、2009年6月に大手会計事務所専用ベンダーJDL出身のメンバー11名と米国・シリコンバレーでシステム開発会社を経営する技術者1名によって起ち上げられた企業である。

アカウンティングサースジャパン エントランス「起業」というと、世の中へのチャレンジ精神溢れる若手が行うイメージを持つ人も少なくないかもしれないが、アカウンティング・サース・ジャパン設立メンバーの平均年齢は52歳、いずれも会計事務所専用ベンダーで永年キャリアを積んだメンバーであった。まさに「会計システムに精通したベテランたち」によって起ち上げられた会社だ。そして、その音頭をとったのが当時60歳であった森崎利直氏(アカウンティング・サース・ジャパン 代表取締役社長)である。

メンバーが集まり事業を起ち上げた当時のことを森崎氏はこう語る。

「メンバーが揃うまでの経緯はそれぞれあるが、創業時からメンバーの想いはひとつだった。メンバー全員が“今までお世話になった会計事務所業界に恩返しがしたい”と考えていた。」と。 

先進的であった会計事務所業界を再び… -森崎氏とクラウド、SaaSの出会い

アカウンティングサースジャパン 森崎利直

アカウンティング・サース・ジャパン(株) 代表取締役社長 森崎利直氏

アカウンティング・サース・ジャパンの代表取締役である森崎氏は2009年、60歳にして同社を設立している。世間一般で60歳と言えば、長年勤めた企業を定年退職し、第2の人生を穏やかに過ごそうと引退モードに入るケースも少なくない。しかし、森崎氏の選択は違った。起業の道を選んだのである。

森崎氏の経歴を遡ると、氏と会計システムとの関わりは、40数年前、新卒で入社したイタリア系のコンピュータ会社・日本オリベッティで、TKCを担当したことから始まる。

当時、森崎氏はオリベッティにて会計事務所向けシステムの営業を担当しており、オリベッティとTKCの業務提携をきっかけに、TKCの創設者である飯塚毅氏と共にコンピュータ会計の普及のために各地を行脚したという。その後、JDL(日本デジタル研究所)に移り、マーケティング本部にて会計事務所向けシステムの企画開発に従事。法人税や資産税関連のシステムや顧問先の自計化システム、会計事務所の業務管理システムなど、会計システムの黎明期からその発展に携わっていくこととなる。

そして、JDLでの取締役マーケティング本部長、子会社のアイベックスエアラインズの代表取締役社長等の要職を経て同社を退職。2008年に縁あってシリコンバレーでSaaSの研究を行う知人からクラウドによるSaaSシステムの可能性を享受される。

初めてSaaSについて学んだ際、森崎氏は、TKCのシステムが登場した時と似たような可能性を感じたという。約40年前、森崎氏自身も普及に尽力したTKCによって端末、回線、データセンターを通じて全国の会計事務所がネットワーク化され、会計事務所業界のコンピュータ化に大きく進んでいった。「クラウドによるSaaSシステムの技術を使えば、会計事務所のシステムにあの時以上のイノベーションを起こせるかもしれない」というインスピレーションが浮かんだという。

それから10ヶ月後、森崎氏は仲間を募り、アカウンティング・サース・ジャパンを起ち上げることとなる。 

800名の会計人による出資が支えるアカウンティング・サース・ジャパン

アカウンティング・サース・ジャパンについて語る際、そのシステムはもちろんだが、設立経緯や資本構成も大きな特徴がある。

2013年8月末現在、同社の資本金は8億01,825千円(資本準備金4億71,325千円)、株主数は817名(うち、機関投資家3社)であり、その内、個人株主の持ち株比率が65.7%を占めている。

未上場のベンチャー企業でここまで多くの個人が株主となっている資本構成は非常に珍しいが、ここにも会計業界の想いが強く反映されているという。実は、アカウンティング・サース・ジャパンの個人株主の大部分は税理士や公認会計士などの会計人なのである。

A-SaaS開発チーム森崎氏がA-SaaSの構想を描いた当初、本格的なシステム開発には莫大なコストがかかることが明らかとなった。単純にSaaSを利用しただけの会計システムではなく、SaaSの強みを活かし、既存の大手会計事務所専用ベンダーのシステムと同等以上のものを開発しようと志していたためである。そこで、森崎氏が考えたのが、エンジェル税制を利用し、理念や計画に賛同してくれる会計事務所から出資を募るという手法だった。出資者たちにとっては自らが利用することになる会計システムの起ち上げに参画でき、また、エンジェル税制による税務メリットも享受できるのである。森崎氏は、このスキームを携えそれまでに培った人脈を活かして全国の会計事務所を行脚。800名に及ぶ税理士、公認会計士、会計事務所のスタッフなどから出資を得ることに成功する。

こうして、A-SaaSの開発がスタートしたのである。

なぜ、A-SaaSは既存の大手会計システムに対抗できるのか?

ここでひとつの疑問が浮かんでくる。

会計事務所向けシステムの市場はTKC、JDL、MJSの大手3社による寡占市場である。クラウドコンピューティングやSaaSという技術がこれだけ話題となる中、なぜ大手会計事務所専用ベンターはクラウドシステムを本格展開できていないのだろうか?

そこには『イノベーションのジレンマ』があると森崎氏は語る。

森崎氏曰く、大手会計事務所専用ベンダーがクラウド会計システムに本格参入できないのには3つの問題がある。「技術者の問題」「二重投資の問題」そして、「ビジネスモデルの問題」である。

1:技術者の問題

一つ目は技術者の問題が挙げられる。既存の大手会計事務所専用ベンターはこれまでWindows PC上で動く会計システムを開発してきた。そのため技術者の大部分がWindowsアプリケーションの開発を専門としており、クラウドシステムの開発スキルを有する人材が不足している。そのため、クラウドシステムを開発するには新規で人材を採用するか、時間をかけて育成しなければならずこの点が大きな障壁となっている。

22重投資の問題

二つ目は二重投資の問題である。既存の大手会計事務所専用ベンターがクラウドシステムを開発する場合、既存事業と並行してクラウドシステムの開発に新たな投資しなければならない。これにはサーバや開発環境などのIT資産やその維持費、技術者の人件費など、設備・資産と人材の両面で二重に投資しなければならない。特に、会計システムの場合は「会計」「税務」「給与」など膨大な数のソフトを開発する必要があることから、投資にかかるコストも大きくなり、また、大手会計事務所専用ベンターにとっては目前に迫る消費税改正に伴う投資も看過することもできないため、クラウドに対して十分な投資を行うのが簡単ではない状況となっている。

3:ビジネスモデルの問題

三つ目はビジネスモデルの問題である。既存の会計システムとクラウド会計システムではビジネスモデルも大きく異なる。従来の大手会計事務所専用ベンダーのビジネスは、会計事務所が数百万円で専用サーバシステムやソフトを購入し、その後は毎月5〜10万円の保守料を支払うモデルである。また、時間が経過すればハードのアップデートのために、再度、数百万円でシステムを購入することとなる。こういった高額の費用が大手会計事務所専用ベンダーの利益を支えているのだが、一方で、クラウド会計システムの場合は、市販のPCがあれば利用できるため、A-SaaSに関して会計事務所が支払うのは合計で40万円の入会金、開発分担金と5ID毎月3万円の月額利用料のみ(賛同会員の場合)である。そのため、既存の会計ソフト会社のコスト構造では、利益を大きく損ねかねないクラウド型のビジネスモデルに簡単に移行することができないのである。

こういった3つの大きなジレンマがある中で、森崎氏たちはクラウドによるSaaSシステムを前提として会計システムやビジネスモデルを設計し、資金を調達。大手会計事務所専用ベンダーを上回るスピードでA-SaaSの開発を進めてきたのである。

会計事務所業界と会計システム -税理士や公認会計士への想い

A-SaaSは税理士や公認会計士をメインユーザーとし、運営会社のアカウンティング・サース・ジャパンの株主にも、多数の税理士や公認会計士が名を連ねている。森崎氏は税理士や公認会計士に対してどのような想いを抱いているのだろうか。

IT化から取り残される会計事務所業界への危機感

会計事務所がコンピュータ化に取り組み始めたのはおおよそ45年前である。しかし、当時、先駆的にコンピュータ化に取り組んできた会計事務所業界も、今では税理士の高齢化や日本経済の低迷から、会計事務所経営も厳しくなりつつあり、ITへの投資も遅れている。むしろ、会計システムの維持コストが会計事務所の経営を圧迫しているような状況も見受けられる。森崎氏はこういった会計事務所業界を見ながら「会計事務所業界はこのままではIT化の流れから取り残されてしまうのでは…」と大きな危機感を感じていたという。

森崎氏は従来の会計システムについて以下のように語る。

アカウンティングサースジャパン 森崎利直2「会計システムは45年に渡って継続的に進化してきました。めまぐるしく法令が改正され、会計や税務処理が複雑高度化していくなかで、会計システムには実際に次々と新しい機能が付加され、成熟したシステムとなってきました。それに対応してきた既存の大手会計事務所専用ベンダーやそれを支えてきた人達の努力は素晴らしいと思います。けれども、40年以上の歴史の中で、従来の会計システムに新しい機能やソフトが次々と積み上げられてきたことによって、会計システムは開発に柔軟性を失い、徐々に融通が効かなくなり、これ以上は変えようのないところまで行き着いてしまったと思います。会計システムは何十種類ものソフトの集合体ですから、積み上げられた機能が多すぎて、その基幹となっているシステム構造を大きく変化させることができなくなってしまっているのです。

A-SaaSでは、そういった会計システムの現状を打破するために、会計システム発展の歴史に携わってきたメンバーが、現状の会計システムの機能や役割を検証、分解し、そして、それらをSaaSの特性を最大限に発揮できる形に再構築することによって、新たな会計システムを作り上げています。」 

徐々に広がってきた会計事務所の役割 -顧問先のニーズに対応することの重要性

「社会に出てから40年余り、公私ともに会計事務所と共に歩んできた」と語る森崎氏だが、会計事務所業界の変遷はその目にどのように映ってきたのだろうか。

A-SaaS開発チーム2約40年前、日本オリベッティの営業マンとして会計事務所に対してTKCの端末を販売していた森崎氏は、多くの税理士が「これからはコンピュータ会計の時代が来る」と口を揃えるのを目にしたという。当時は、JDL、ミロク、ICSを始め、多くの会計事務所専用ベンダーがビジネスを開始した時期でもあり、若き日の森崎氏は、TKCの創業者である飯塚氏が各地でセミナーを開き、多くの税理士がそれに聞き入るのを目の当たりにした。その当時は、会計事務所を経営する税理士たちが新しいものを取り入れることに積極的だった時代なのである。森崎氏は「税理士や公認会計士には本来、先進的なものに取り組む力があるはずだ」と自身の経験から語る。

A-SaaS開発チーム3とは言え、高度経済成長期真っ只中の40年前失われた20年と呼ばれる現代では、「時代が違う」とも言える。森崎氏はこの点に関して「確かに昔はいい時代ではあったが、現代との違いは日本経済の景気の問題だけではない」という。現代は、「多様化する顧問先ニーズに会計事務所が対応するのが難しくなっている」というのだ。

森崎氏曰く、「会計事務所は今も昔もよろず請負業であることには変わりはない」という。かつての税理士は、顧問先企業の税金計算を行い、社長からの様々な相談にのり、時に社長の息子の嫁探しも手伝うなど、その付き合いは決してビジネスだけにとどまらなかった。他方、現在では社長のプライベートまで踏み込む税理士は少なくなったかもしれないが、ビジネスや経営に関する情報が溢れ、経営者のリテラシーも上がり、資金調達や経営相談、株式公開やM&A、そして個人としての相続対策などその相談領域は格段に広く、かつ、専門的となった。会計事務所もただ単に“なんでも請け負う”だけではなく、“顧問先ニーズに専門的に応える”ということが必要となっており、そのためには税理士や公認会計士自身が自己研鑚し、顧問先の多様化する経営課題に対応していく力を身に付ける必要があるのである。 

A-SaaSが目指すもの -会計事務所のシステムイノベーションを通じて日本を元気に

2013年6月、アカウンティング・サース・ジャパンはセールスフォース・ドットコム、グリーベンチャーズ、モバイルインターネットキャピタルの3社等から6億2,500万円の資金を調達した。米国の先進的なIT企業であるセールスフォース・ドットコムや、IT分野に強みを持つベンチャーキャピタル2社から出資を受け、さらなる事業拡大を図るという。A-SaaSは、その先には何を見据えているのだろうか? 森崎氏のA-SaaSへの想いを聞いた。

会計事務所が“顧問先に何をできるのか” -会計事務所を核としたネットワークの構築

森崎氏の想いは『会計事務所のシステムイノベーションを通じて日本を元気にする』と云う企業理念にあるという。

そして、A-SaaSがその企業理念実現の一環として実施している施策が、「A-SaaSを導入している会員事務所の顧問先には自計化用の会計・給与ソフトを無償提供する」ということである。

クラウドシステムには、コストの削減やセキュリティの向上、業務効率アップなど様々なメリットが挙げられる。しかし、森崎氏は「そういったメリットは今でこそ特徴的だが、時代の流れで遅かれ早かれいずれそうなる。それよりも、もっと大事なことは会計事務所がその仕組みを使って、顧問先に何をできるか”だ。」と語る。

現在、A-SaaSの利用会員となっている会計事務所は約700件であるが、その顧問先でA-SaaSのシステムを利用している件数は約33,000件。自計化として会計システムを利用している顧問先の数は6,300件、給与システムは11,500件、そして税務システムは17,000件となっている。そして、この中でも自計化システムとしての会計と給与システムの利用は急速に拡大しているという。

通常であればこの顧問先向けのシステムを有料で提供し利益を上げていくこともできるであろう。しかし、A-SaaSでは敢えて無償での提供にこだわっている。

A-SaaSでは、これからの会計事務所は従前の税務関連の業務に加えて、顧問先の経営により深く関与出来る能力が必要であると考えている。そしてA-SaaSでは、そのためには事前の環境整備が不可避であると考えている。。まずはそのために、従来の市販ソフトを購入する形の自計化では、会計と給与システムをと購入すると5年間で最低でも30万円の負担を顧問先に強いることになったが、それを無償提供している。それは、無償提供することにより、会計事務所を核としたネットワークの構築が容易となるからだ。また会計事務所と顧問先との繋がりもより密になる。そして、その結果、クラウドによる会計事務所と顧問先とのデータの共有化が実現し、従前の自計化では最大の課題と云われた、顧問先での発生と会計事務所での監査までに生じる大きなタイムラグが解消され、会計事務所が任意の時点で顧問先の現状を把握できるようになった。そして、顧問先はタイムリーな監査、指導を受けることができ、会計事務所はタイムリーに顧問先の経営に関与できるようになる。

A-SaaSはこのように顧問先向けの自計化システムを無償提供することで、中小企業の自計化の障害を取り除き、会計事務所が経営指導を行いやすい環境を実現したいと考えているのである。

A-SaaSのシステムイノベーションが日本を変える

最後に森崎氏はA-SaaSに込める想いを語ってくれた。

「クラウドコンピューティングの普及によって、会計事務所がシステムに対してコストも手間もかけなくてもよい時代になりつつあります。クラウドのメリットは、一見すると、コストや時間の削減のように見えますが、A-SaaSは、それ自体を目的とするのではなく、それによって余裕のできた資金や時間を従業員の教育に投資し、会計事務所が顧問先の経営により関与出来る環境を整備、実現したいと思っています。

また、会計事務所の顧問先がA-SaaSの自計化システムを利用するによって、会計事務所と顧問先の距離や時間、情報の格差が縮まり、会計事務所が顧問先の経営情報をリアルタイムで把握できるようになります。顧問先の経営に対して会計事務所がより深く関与できるようになるわけですから、企業にとって必ずプラスになります。この顧問先向けの自計化システムを有料にすれば当社としてはさらに大きな利益を追求できるかもしれません。けれども、私たちは目先の利益ではなく、社会に役立つ、世の中を良くする事業を行いたいと考えています。会計事務所のサービスが経営指導中心になれば日本の中小企業は必ず元気になります。A-SaaSが顧問先へのシステムを無償で提供するのは、こういったビジョンがあるからなのです。会計事務所のシステムイノベーションが日本を元気にすると信じています。

会計システム業界の歴史とともに歩んできたベテランたちの想いは業界を動かすのか。

会計システム業界の勢力図が塗り替えられる日はすぐ目の前まで来ているのかもしれない。

(終)

会計事務所向け本格クラウドシステム A-SaaS(エー・サース)

会計事務所向けクラウドシステム A-SaaS

 


 



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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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