公認会計士の独立開業|キャリア形成と差別化・準備の進め方

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公認会計士の中には独立開業を目指して資格を取得した方も少なくないでしょう。独立する公認会計士の人数は、不況時には少なく、好況時には多くなるなど景気の善し悪しによって左右されますが、独立開業は公認会計士の間でコンスタントに人気の高いキャリアパスでもあります。

本稿では、公認会計士が独立を目指すに当たり、気を付けるべきキャリアステップを解説します。

目次

公認会計士の独立に関する傾向

独立時のサービスは?

公認会計士が独立する場合、どのようなパターンが多いのでしょうか。

一般的には下記のような会計やその周辺分野でのサービスをメインに独立する公認会計士が多く見られます。

公認会計士の主な独立パターン

  1. 監査
  2. FAS・コンサルティング(M&A、企業再生 等)
  3. 会計アドバイザリー(IFRS、決算・開示支援、IPO支援 等)
  4. 税務

これ以外にも、IT系スタートアップや連結会計ソフト会社などを設立し起業家となった公認会計士、大学教授や作家になった公認会計士など様々な形態の独立事例があり、そういった点からも公認会計士の多様さやビジネスパーソンとしてのポテンシャルの高さが感じられるでしょう。

最初はどうやって独立しているのか?

公認会計士が独立しやすい資格と言われる最も大きな要因のひとつに「非常勤監査の仕事」が挙げられます。

公認会計士の最も簡単な独立スタイルは、(主に非常勤の)「監査」での独立であり、非常勤(パート)の公認会計士として、他の監査法人から監査業務を請け負うことから独立をスタートする公認会計士は比較的多くいます。

この非常勤の監査は、職位や経験にもよりますが、日当で5万円前後の報酬を確保できるため、非常に効率の良い収入源となっています。

空間、その非常勤の報酬をベースとして独立生活を組み立てながら、「税務」や「FAS」「会計アドバイザリー」へと業務範囲を広げていくことが一般的です。(もちろん、この逆で、FASや税務業務で独立し、空き時間に監査のパートを入れるスタイルを取る公認会計士も比較的多くいます。)

独立のスタイルは?

また、独立開業と言っても、拡大を目指すのではなく、業務を自らのできる範囲での規模にとどめ、拡大を目指さず個人会計士(≒フリーランス会計士)として開業生活を送る公認会計士も少なくありません。

一方で、クライアントの拡大に積極的に取り組み、事業の拡大を目指すスタイルを取る公認会計士もいます。

それぞれメリット・デメリットがありますが、いずれのスタイルでも、もしくはその中間の小規模組織スタイルでもやっていけるのが公認会計士の独立の魅力と言えるでしょう。

実際に拡大を目指さない「ひとり独立」を選んだ公認会計士がどのように開業生活を楽しんでいるのかは、独立会計士の江黒崇史氏が自身の体験を語る動画公認会計士の「ひとり独立」成功の秘訣を聞いてみた!でも紹介されています。

独立の成功と失敗、景気との関係

公認会計士の独立の成否は景気によっても影響を受け、好景気時には監査業務やデューデリジェンス業務を始めとする非常勤の仕事を受注するのは容易ですが、不景気時には難しくなる傾向にあり、独立難度も高まります。

独立する公認会計士の数は好景気時に増加し、不景気時には減少しますが、これは好景気時には非常勤の仕事(監査や財務DDやVAL、会計アドバイザリー等)を獲得しやすいことにも起因します。

公認会計士が独立に失敗するケースはそれほど多くはありませんが、好景気時やブームの時期に独立し、特定業務に依存した事業を行なっていると景気の悪化や市場環境の変化によって事業が厳しくなり失敗するケースもあります。(IPOやJ-SOXブームの時など、特定の顧客やサービスに依存して独立した公認会計士がリーマンショックで大打撃を受けたケースなどがそれに当たります。)

リーマンショックの際に影響を受けた会計ファームには、大規模会計事務所だけでなく、個人の公認会計士も含まれます。

事業拡大を目指さず個人で食べられる範囲の業務で独立していた公認会計士の中には、リーマンショックに伴い、知り合いからの非常勤の監査業務やFAS業務を受注できなくなったケースもあります。

こういった景気悪化などのリスクを考えると、個人で独立する場合は、複数の顧客やサービスラインを持ち、特定の顧客に依存しない体制を早期に作るのが良いと言えます。

公認会計士が独立するためのキャリア形成

公認会計士が独立するためには、どのようにキャリア形成を行えばよいのか、「キャリア・経験」「人脈・営業力」「WEB・ITツール」の3つの視点から解説します。

そもそも監査法人での経験しかない状態でいきなり独立してもよいのかという疑問については、公認会計士が監査法人からいきなり独立するのはあり? なし?も参考にしてください。

キャリア・経験

独立のタイミング

公認会計士は「知識と経験」を提供する職業であるため、独立前にしっかりと経験を積んでおくことが重要です。

経験を積んでからの独立には、「専門性があり、質の高いサービスが提供できる(≒高単価な仕事を受注できる)」「これまでに付き合いのあった顧客から仕事を貰える」といったメリットがあります。

一方で、若いうちの独立は「経験が少ない」というデメリットはあるものの、「勢いがある」「単価を安く仕事を受注でき価格競争力がある」「家庭面やキャリア面でリスクテイクしやすい」「若い起業家(クライアント)とのリレーションを築きやすい」といったメリットも有り、実際、どのタイミングで独立するかは一考の余地があります。

どの年代で独立するのが良いかについては、独立の適齢期を会計士が語った記事で、実際に独立した公認会計士の体験談を紹介しています。タイミングに迷う方はあわせてご覧ください。

差別化できるスキル

近年では公認会計士の数が増加しているため、独立の際には他の公認会計士と差別化できるような「強み」を身に付けておくことが重要です。

特に「監査」や「財務デューデリジェンス」業務はほとんどの公認会計士が提供できるサービスであるため、それ以外のスキルを身に付けておくことは重要と言えます。

公認会計士が他の公認会計士とスキルを差別化する場合、「会計・ファイナンス分野での差別化」と「会計・ファイナンス以外の分野での差別化\”」の2つに分けられます。

会計・ファイナンス分野での差別化

「会計・ファイナンス分野での差別化」では、下記のように会計やファイナンスに関連する分野での強みを身に付けることが必要です。

  1. M&A
  2. 企業再生
  3. IPO
  4. 会計コンサルティング など

会計・ファイナンス分野においては、近年では、ファイナンスのナレッジも一般化し、コモディティ化が進んでいることから、「財務デューデリジェンスができる」「バリュエーションができる」というだけでは、差別化ができず価格競争に巻き込まれやすい傾向にあります。

そのため、例えば、

  • 財務デューデリジェンスやバリュエーション業務において、顧客によるニーズの違いに対応できる(例:同じ財務DDでも、PEファンドと一般事業会社では求めるレポートの内容が違う)
  • スタートアップ業界など特殊なファイナンスに対応できる(種類株などを利用した資金調達、SO評価に対応できるなど)
  • 得意な業種がある(IT系スタートアップ、製造業、小売業に強いなど)

など、自らの強みとなるフィールドを用意しておくことで成功確率を高めておくことが重要となります。

なお、FAS領域で独立・差別化を目指す場合は、独立系FASで活躍する会計士の専門領域の選び方や働き方も参考になります。

会計・ファイナンス以外の分野での差別化

「会計・ファイナンス以外の分野での差別化」では、下記のように会計やファイナンス分野ではないが同分野に近くシナジーのある分野での強みを身に付けることが求められます。

  1. 経営
  2. マーケティング
  3. IT・システム・WEBツール など

例えば、公認会計士が主とするフィールドは「会計」ですが、企業再生などにおいては「経営全般」の知見があることで、クライアントへの付加価値となります。

もしくは、スキルや専門性は平均的でも、WEBマーケティングに強いことで顧客獲得を強みとすることができたり、IT・システム・WEBツールに強いことで、業務効率化を実現し、効率の良いサービス提供を行えることを強みとすることもできます。

税務分野

独立を検討するにあたって、多くの公認会計士、税務をサービスのひとつとしたいと考えます。

税務業務は毎月の顧問料を安定的に得られるストック収入となるため、会計事務所を経営するに当たっての大きな魅力となるためです。

しかし、この税務分野は、税理士と競合する部分も大きくなります。

また、近年は税理士業界も競争が厳しいため、記帳代行や決算・税務申告書の作成といった、一般的なサービスの収益性は低下しており、また、FASやコンサルティングといった会計士が強みとする業務と比較すると単価も大きく下がるため、必ずしも税務を行えば安定につながるとも限りません。

また、独立後に税務を行うに当たって、「どこで税務経験を積むのか」という問題があります。

独立前に税務経験を積んでおきたいと考える公認会計士は特に多くいますが、それに反して公認会計士の税務分野(会計事務所・税理士法人)への転職は、そこまで簡単ではない傾向にあります。

こういった税務の収益性や、税務スキルを身につけられる転職を行う手間や難易度も考慮すると、そもそも独立後の戦略として税務を行うのか(他の税理士と組むことでサービスを提供することもできる)、行うのであれば、ただ決算書や税務申告書の作成ができるだけではなく、どこを強みとするのかを意識しておくことも重要となります。なお、独立後に税務を行う場合は税理士登録の手順も確認しておくとよいでしょう。

人脈・営業力

独立する場合には人脈も重要であるため、独立前にしっかりと「人脈」を作っておくことが大切です。

公認会計士にとっての「人脈」とは2種類あり、「公認会計士業界の人脈」「顧客となる可能性のある人脈」の2つがあります。

「公認会計士業界の人脈」は、その名の通り、会計士同士の人脈・つながりを指します。

この人脈を豊富に有していることによって、公認会計士同士で仕事(監査やFAS案件等)をシェアすることができます。また、同じ環境にいる公認会計士同士で現在のトレンドを共有したり、メンタル面で支え合ったりする同志としても貴重です。

「顧客となる可能性のある人脈」は、経営者や企業の役員・管理職など直接的に顧客となる人とのつながり、および、金融マン(銀行、証券、保険)他士業などの顧客を紹介してくれる可能性のある人とのつながりを指します。

こういった豊富な人脈を有していることによって、独立後の受注につながり、また、独立して失敗しても公認会計士の人脈を活かして監査法人に戻る、または、経営者などの人脈から事業会社にサラリーマンとして再就職する選択肢も得られ、独立失敗の際のセーフティーネットにもなりえます。

WEB・ITツール

近年ではWEBサービスやITツールの進歩によって、ローコストでの独立やクラウド上でのデータ共有やコミュニケーションが可能となっています。

最新のWEBサービスを使いこなすことはクライアントへの効率的、かつ、スピーディーなサービス提供を行うために必要ですが、それ以外にも、それらサービスを使いこなす若手起業家との接点としたり、彼らのニーズに応えていくという点においても重要です。

会計ソフトに関しては、独立時におすすめの会計系ツールとしては、クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワード クラウド、弥生会計 Next等オンライン)の利用は必須と言えます。、クラウド請求書サービスMisoca(みそか)などが挙げられます。

独立時におすすめの業務系ツールとしては、Google Workspace、Slack、Chatwork、Notionなど、また、昨今では生成AI(ChatGPT、Gemini、Claude等)の有料プランも必須と言えるでしょう。

また、情報発信やPR、WEBマーケティングを効率的に行うために、Facebook、X(旧Twitter)、noteなどの活用も重要です。

公認会計士の独立に役立つ記事やツール

公認会計士ナビでは、独立会計士の方々に役立つサービスの情報を日々収集しています。ここでは、当サイトが集めたサービスの中からおすすめのサービスや記事をご紹介します。

独立した公認会計士の年収や1年目のリアルについては、独立開業のリアル!30人に聞いた1年目の年収・悩みで詳しく紹介しています。

これが会計士の独立のリアル!30人に聞いた独立1年目の年収や魅力・悩みとは!?

また、独立に必要な準備物は公認会計士の独立・開業に必要なもの・お勧めツールまとめ、公認会計士のキャリア全体像は公認会計士のキャリア記事まとめをあわせてご覧ください。

【保存版】公認会計士の独立・開業に必要なものは?必須の準備物やお勧めツールまとめ_サムネイル気になるキャリアはどれ?業界・キャリア別会計士の記事まとめ

税理士登録するなら「エッサムファミリー会」にも登録を!

株式会社エッサムー会計事務所のデパートー


税理士登録を行うと税理士会が認定する研修(税理士認定研修)を受講し単位を取得する義務が生じますが、これはCPEと比較すると意外と手間がかかります。その際、以下の記事でも特集した
「エッサムファミリー会」の研修がお勧めです。年間12,000円(月額1,000円!)で会員となり、様々な税理士認定研修を受講することができます。

営業力の強化、会計・税務を超えた経営コンサルティング力を身につける「経営心理士」講座

藤田耕司・経営心理士・公認会計士・税理士

公認会計士が独立する際、「経営者の悩みに応えられるか」「会計・税務より踏み込んだコンサルティングを行うことができるか」は重要なポイントとなります。「経営心理士」は公認会計士・藤田耕司氏が提唱する、心理学と経営支援のノウハウを融合した新しいコンサルティング手法です。詳しくは経営心理士の公認会計士インタビュー記事をご覧ください。

 

公認会計士の独立に関連するおすすめ書籍

公認会計士の独立・開業や会計事務所経営の参考になる書籍をご紹介します。

独立できるキャリアを目指す!公認会計士ナビの転職エージェントサービス

公認会計士ナビの転職エージェント

公認会計士ナビの転職エージェントサービスでは、将来の独立を見据えたキャリア形成のサポートをしております。

本ページの内容よりさらに詳しく、また、ご相談頂く方各人の経歴に落とし込んだアドバイスを行い、キャリアプランの策定、独立に向けた経験・スキルの棚卸し、求人のご紹介、応募書類の添削や面接対策などを行っております。ご希望の方は下記よりお申込みください。

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公認会計士の中には独立開業を目指して資格を取得した方も少なくないでしょう。独立する公認会計士の人数は、不況時には少なく、好況時には多くなるなど景気の善し悪しによって左右されますが、独立開業は公認会計士の間でコンスタントに人気の高いキャリアパスでもあります。

本稿では、公認会計士が独立を目指すに当たり、気を付けるべきキャリアステップを解説します。

目次

公認会計士の独立に関する傾向

独立時のサービスは?

公認会計士が独立する場合、どのようなパターンが多いのでしょうか。

一般的には下記のような会計やその周辺分野でのサービスをメインに独立する公認会計士が多く見られます。

公認会計士の主な独立パターン

  1. 監査
  2. FAS・コンサルティング(M&A、企業再生 等)
  3. 会計アドバイザリー(IFRS、決算・開示支援、IPO支援 等)
  4. 税務

これ以外にも、IT系スタートアップや連結会計ソフト会社などを設立し起業家となった公認会計士、大学教授や作家になった公認会計士など様々な形態の独立事例があり、そういった点からも公認会計士の多様さやビジネスパーソンとしてのポテンシャルの高さが感じられるでしょう。

最初はどうやって独立しているのか?

公認会計士が独立しやすい資格と言われる最も大きな要因のひとつに「非常勤監査の仕事」が挙げられます。

公認会計士の最も簡単な独立スタイルは、(主に非常勤の)「監査」での独立であり、非常勤(パート)の公認会計士として、他の監査法人から監査業務を請け負うことから独立をスタートする公認会計士は比較的多くいます。

この非常勤の監査は、職位や経験にもよりますが、日当で5万円前後の報酬を確保できるため、非常に効率の良い収入源となっています。

そして、その非常勤の報酬をベースとして独立生活を組み立てながら、「税務」や「FAS」「会計アドバイザリー」へと業務範囲を広げていくことが一般的です。(もちろん、この逆で、FASや税務業務で独立し、空き時間に監査のパートを入れるスタイルを取る公認会計士も比較的多くいます。)

独立のスタイルは?

また、独立開業と言っても、拡大を目指すのではなく、業務を自らのできる範囲での規模にとどめ、拡大を目指さず個人会計士(≒フリーランス会計士)として開業生活を送る公認会計士も少なくありません。

一方で、クライアントの拡大に積極的に取り組み、事業の拡大を目指すスタイルを取る公認会計士もいます。

それぞれメリット・デメリットがありますが、いずれのスタイルでも、もしくはその中間の小規模組織スタイルでもやっていけるのが公認会計士の独立の魅力と言えるでしょう。

実際に拡大を目指さない「ひとり独立」を選んだ公認会計士がどのように開業生活を楽しんでいるのかは、独立会計士の江黒崇史氏が自身の体験を語る動画公認会計士の「ひとり独立」成功の秘訣を聞いてみた!でも紹介されています。

独立の成功と失敗、景気との関係

公認会計士の独立の成否は景気によっても影響を受け、好景気時には監査業務やデューデリジェンス業務を始めとする非常勤の仕事を受注するのは容易ですが、不景気時には難しくなる傾向にあり、独立難度も高まります。

独立する公認会計士の数は好景気時に増加し、不景気時には減少しますが、これは好景気時には非常勤の仕事(監査や財務DDやVAL、会計アドバイザリー等)を獲得しやすいことにも起因します。

公認会計士が独立に失敗するケースはそれほど多くはありませんが、好景気時やブームの時期に独立し、特定業務に依存した事業を行なっていると景気の悪化や市場環境の変化によって事業が厳しくなり失敗するケースもあります。(IPOやJ-SOXブームの時など、特定の顧客やサービスに依存して独立した公認会計士がリーマンショックで大打撃を受けたケースなどがそれに当たります。)

リーマンショックの際に影響を受けた会計ファームには、大規模会計事務所だけでなく、個人の公認会計士も含まれます。

事業拡大を目指さず個人で食べられる範囲の業務で独立していた公認会計士の中には、リーマンショックに伴い、知り合いからの非常勤の監査業務やFAS業務を受注できなくなったケースもあります。

こういった景気悪化などのリスクを考えると、個人で独立する場合は、複数の顧客やサービスラインを持ち、特定の顧客に依存しない体制を早期に作るのが良いと言えます。

公認会計士が独立するためのキャリア形成

公認会計士が独立するためには、どのようにキャリア形成を行えばよいのか、「キャリア・経験」「人脈・営業力」「WEB・ITツール」の3つの視点から解説します。

そもそも監査法人での経験しかない状態でいきなり独立してもよいのかという疑問については、公認会計士が監査法人からいきなり独立するのはあり? なし?も参考にしてください。

キャリア・経験

独立のタイミング

公認会計士は「知識と経験」を提供する職業であるため、独立前にしっかりと経験を積んでおくことが重要です。

経験を積んでからの独立には、「専門性があり、質の高いサービスが提供できる(≒高単価な仕事を受注できる)」「これまでに付き合いのあった顧客から仕事を貰える」といったメリットがあります。

一方で、若いうちの独立は「経験が少ない」というデメリットはあるものの、「勢いがある」「単価を安く仕事を受注でき価格競争力がある」「家庭面やキャリア面でリスクテイクしやすい」「若い起業家(クライアント)とのリレーションを築きやすい」といったメリットも有り、実際、どのタイミングで独立するかは一考の余地があります。

どの年代で独立するのが良いかについては、独立の適齢期を会計士が語った記事で、実際に独立した公認会計士の体験談を紹介しています。タイミングに迷う方はあわせてご覧ください。

差別化できるスキル

近年では公認会計士の数が増加しているため、独立の際には他の公認会計士と差別化できるような「強み」を身に付けておくことが重要です。

特に「監査」や「財務デューデリジェンス」業務はほとんどの公認会計士が提供できるサービスであるため、それ以外のスキルを身に付けておくことは重要と言えます。

公認会計士が他の公認会計士とスキルを差別化する場合、「会計・ファイナンス分野での差別化」と「会計・ファイナンス以外の分野での差別化」の2つに分けられます。

会計・ファイナンス分野での差別化

「会計・ファイナンス分野での差別化」では、下記のように会計やファイナンスに関連する分野での強みを身に付けることが必要です。

  1. M&A
  2. 企業再生
  3. IPO
  4. 会計コンサルティング など

会計・ファイナンス分野においては、近年では、ファイナンスのナレッジも一般化し、コモディティ化が進んでいることから、「財務デューデリジェンスができる」「バリュエーションができる」というだけでは、差別化ができず価格競争に巻き込まれやすい傾向にあります。

そのため、例えば、

  • 財務デューデリジェンスやバリュエーション業務において、顧客によるニーズの違いに対応できる(例:同じ財務DDでも、PEファンドと一般事業会社では求めるレポートの内容が違う)
  • スタートアップ業界など特殊なファイナンスに対応できる(種類株などを利用した資金調達、SO評価に対応できるなど)
  • 得意な業種がある(IT系スタートアップ、製造業、小売業に強いなど)

など、自らの強みとなるフィールドを用意しておくことで成功確率を高めておくことが重要となります。

なお、FAS領域で独立・差別化を目指す場合は、独立系FASで活躍する会計士の専門領域の選び方や働き方も参考になります。

会計・ファイナンス以外の分野での差別化

「会計・ファイナンス以外の分野での差別化」では、下記のように会計やファイナンス分野ではないが同分野に近くシナジーのある分野での強みを身に付けることが求められます。

  1. 経営
  2. マーケティング
  3. IT・システム・WEBツール など

例えば、公認会計士が主とするフィールドは「会計」ですが、企業再生などにおいては「経営全般」の知見があることで、クライアントへの付加価値となります。

もしくは、スキルや専門性は平均的でも、WEBマーケティングに強いことで顧客獲得を強みとすることができたり、IT・システム・WEBツールに強いことで、業務効率化を実現し、効率の良いサービス提供を行えることを強みとすることもできます。

税務分野

独立を検討するにあたって、多くの公認会計士、税務をサービスのひとつとしたいと考えます。

税務業務は毎月の顧問料を安定的に得られるストック収入となるため、会計事務所を経営するに当たっての大きな魅力となるためです。

しかし、この税務分野は、税理士と競合する部分も大きくなります。

また、近年は税理士業界も競争が厳しいため、記帳代行や決算・税務申告書の作成といった、一般的なサービスの収益性は低下しており、また、FASやコンサルティングといった会計士が強みとする業務と比較すると単価も大きく下がるため、必ずしも税務を行えば安定につながるとも限りません。

また、独立後に税務を行うに当たって、「どこで税務経験を積むのか」という問題があります。

独立前に税務経験を積んでおきたいと考える公認会計士は特に多くいますが、それに反して公認会計士の税務分野(会計事務所・税理士法人)への転職は、そこまで簡単ではない傾向にあります。

こういった税務の収益性や、税務スキルを身につけられる転職を行う手間や難易度も考慮すると、そもそも独立後の戦略として税務を行うのか(他の税理士と組むことでサービスを提供することもできる)、行うのであれば、ただ決算書や税務申告書の作成ができるだけではなく、どこを強みとするのかを意識しておくことも重要となります。なお、独立後に税務を行う場合は税理士登録の手順も確認しておくとよいでしょう。

人脈・営業力

独立する場合には人脈も重要であるため、独立前にしっかりと「人脈」を作っておくことが大切です。

公認会計士にとっての「人脈」とは2種類あり、「公認会計士業界の人脈」「顧客となる可能性のある人脈」の2つがあります。

「公認会計士業界の人脈」は、その名の通り、会計士同士の人脈・つながりを指します。

この人脈を豊富に有していることによって、公認会計士同士で仕事(監査やFAS案件等)をシェアすることができます。また、同じ環境にいる公認会計士同士で現在のトレンドを共有したり、メンタル面で支え合ったりする同志としても貴重です。

「顧客となる可能性のある人脈」は、経営者や企業の役員・管理職など直接的に顧客となる人とのつながり、および、金融マン(銀行、証券、保険)他士業などの顧客を紹介してくれる可能性のある人とのつながりを指します。

こういった豊富な人脈を有していることによって、独立後の受注につながり、また、独立して失敗しても公認会計士の人脈を活かして監査法人に戻る、または、経営者などの人脈から事業会社にサラリーマンとして再就職する選択肢も得られ、独立失敗の際のセーフティーネットにもなりえます。

WEB・ITツール

近年ではWEBサービスやITツールの進歩によって、ローコストでの独立やクラウド上でのデータ共有やコミュニケーションが可能となっています。

最新のWEBサービスを使いこなすことはクライアントへの効率的、かつ、スピーディーなサービス提供を行うために必要ですが、それ以外にも、それらサービスを使いこなす若手起業家との接点としたり、彼らのニーズに応えていくという点においても重要です。

会計ソフトに関しては、独立時におすすめの会計系ツールとしては、クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワード クラウド、弥生会計 Next等オンライン)の利用は必須と言えます。、クラウド請求書サービスMisoca(みそか)などが挙げられます。

独立時におすすめの業務系ツールとしては、Google Workspace、Slack、Chatwork、Notionなど、また、昨今では生成AI(ChatGPT、Gemini、Claude等)の有料プランも必須と言えるでしょう。

また、情報発信やPR、WEBマーケティングを効率的に行うために、Facebook、X(旧Twitter)、noteなどの活用も重要です。

公認会計士の独立に役立つ記事やツール

公認会計士ナビでは、独立会計士の方々に役立つサービスの情報を日々収集しています。ここでは、当サイトが集めたサービスの中からおすすめのサービスや記事をご紹介します。

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また、独立に必要な準備物は公認会計士の独立・開業に必要なもの・お勧めツールまとめ、公認会計士のキャリア全体像は公認会計士のキャリア記事まとめをあわせてご覧ください。

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営業力の強化、会計・税務を超えた経営コンサルティング力を身につける「経営心理士」講座

藤田耕司・経営心理士・公認会計士・税理士

公認会計士が独立する際、「経営者の悩みに応えられるか」「会計・税務より踏み込んだコンサルティングを行うことができるか」は重要なポイントとなります。「経営心理士」は公認会計士・藤田耕司氏が提唱する、心理学と経営支援のノウハウを融合した新しいコンサルティング手法です。詳しくは経営心理士の公認会計士インタビュー記事をご覧ください。

 

公認会計士の独立に関連するおすすめ書籍

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この記事の著者

手塚佳彦

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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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