2023年8月5日、公認会計士ナビを運営する株式会社ワイズアライアンスは「第12回・公認会計士ナビonLive!!」を開催しました。テーマは「変化する世界、進化する公認会計士たち」。公認会計士とスタートアップ・独立・FASの観点から、4つのセッションをお届けしました。
本稿では、その第12回 公認会計士ナビonLive!! の様子をダイジェストでお届けします。
※本記事での所属・肩書き・その他の情報は、すべてイベント当時のものとなります
なお、公認会計士ナビは2024年3月9日に「第13回・公認会計士ナビonLive!! 〜広がりゆく公認会計士の活躍フィールド〜」を開催します。気になる方は、以下から情報をのぞいてみてください。
会計士にとって外資系スタートアップのキャリアが「リスクが低い」理由
プレセッションとして開催されたのは「公認会計士の新パラダイム、外資スタートアップで実現する理想のキャリア」。
登壇したのは、監査法人や外資系金融機関、会計事務所、外資系事業会社を経て、米国スタートアップUiPathの日本法人の取締役CFOを務め、現在は豪州スタートアップAirTrunkのフィナンシャルコントローラーを務める草地崇浩さんです。
AirTrunk Japan Operating合同会社
フィナンシャルコントローラー
公認会計士、米国公認会計士
草地 崇浩
2003年、公認会計士試験第2次試験合格後、中央青山監査法人入所。あらた監査法人を経て、ゴールドマン・サックス証券にてコントローラー業務に従事し、その後東京共同会計事務所にて会計税務アドバイザリー、新規事業開発等に従事。2012年より事業会社に転じ、GE(GEキャピタル・ジャパン及びGEヘルスケア・アジアパシフィック)とフィリップスにて財務会計と管理会計の両面及びプロセス変革をリード。
2018年よりUiPath日本法人の取締役CFOとしてコーポレート機能を統括し立ち上げとニューヨーク証券取引所へのIPO準備を担う。現職はデータセンター開発運営の豪州発スタートアップAirTrunkのフィナンシャルコントローラー。日本および米国の公認会計士資格を有する。神戸大学経営学部卒、MBA(McGill University)。CMA(Certified Management Accountant)も保有。
草地さんは、大手監査法人を退職後、ゴールドマン・サックス証券、GEやフィリップスといった大手外資系金融機関や事業会社で、財務会計や管理会計、経営企画などの仕事に従事。会計士×外資×バックオフィスでの幅広い業務経験という、稀有なキャリアを築いてこられました。
当初は苦労もしたという草地さんですが、外資系企業のバックオフィスにおいて有名企業を渡り歩き、徐々に経験と自信を積み上げていきます。
多様な経験を積み、様々な企業を見て、外資系企業の転職市場で自身のキャリアがどのように評価されるかがわかった草地さんですが、その転職経験を通じて良くも悪くもその先のキャリアが想像できてしまったそうです。
そこで草地さんは一念発起し、次は外資系スタートアップへの転職を決意します。
そうして辿り着いたのが、米国スタートアップであるUiPathでした。今でこそニューヨーク証券取引所に上場している同社ですが、当時はまだ上場前。「面白そうだし、期待をかけてもらっているし、エキサイティングな仕事ができそう」と感じた草地さんは、同社日本法人に参画。後に取締役CFOに就任しています。
さて、スタートアップに参画する際に気になることのひとつが、ストック・オプション(以下「SO」)です。外資系企業の日本法人ではどうなのでしょうか?
多くのスタートアップの幹部と同じく草地さんも株式報酬を得たそうですが、SOではなくRSUを取得しています。また、日本法人からではなく、アメリカ本社から直接付与されています。
*譲渡制限付株式ユニット
そのため、その付与や権利行使の内容も欧米流。勤務期間に応じて数年かけてべスティングされ(行使可能になっていき)、退職後も保有したままいられる、ただし、国内のSOのような税制適格要件は満たさない株式報酬です。
RSUは税制適格要件を満たさない株式報酬ことで、行使時の手取りは減りますが、その分、グローバルスタートアップのため時価総額が大きく、また、外資スタートアップは本国である程度成功した状態で日本に展開するため、スタートアップではあるがIPOの実現可能性も高い点が魅力と草地さんは語ります。
「日本のスタートアップに立ち上げ期から関わる場合、リスクが高いケースも多いでしょう。しかし外資系スタートアップの日本法人の場合、既にある程度のビジネスが本国で確立していて、それを日本に展開する形のため、ビジネスリスクは比較的低く、バックオフィスもある程度の予算がある中で、最初からベストプラクティスを導入し、ダイナミックに動けるのは非常に魅力的です」と、公認会計士×外資系スタートアップのキャリアを参加者にオススメしてくれました。
「監査役×スタートアップ 」「コンサル経由スタートアップ」が会計士にオススメな理由
続いて開催されたセッションは「スタートアップのリアル、経営管理・ガバナンスで活かす公認会計士のスキル」です。
(左)株式会社ユーザベース Assuarance and Consulting(内部監査)Manager/公認会計士 荒堀 敬子
(右) 株式会社ROXX 経営管理部長/公認会計士試験合格 野澤 真太郎
スタートアップの内部監査マネージャーや非常勤監査役など、複数のポジションに就く荒堀敬子さん。仕事を探すコツは「中長期で転職エージェントと関係性を築くこと」だと語ります。転職エージェント関連のサービスを運営しているROXXの野澤さんはそれに呼応し、「良いエージェントの見分け方」も教えてくれました。
野澤さんは「監査法人からプロフェッショナルファームを挟んでスタートアップに行くキャリア」を参加者にもオススメ。荒堀さんは監査役や内部監査をする上での心構えや、「指摘で終わらせないこと」の大事さを説きます。
本セッションは以下で詳細に記事化しました。興味のある方はぜひご覧ください。
会計士×常勤監査役はブルーオーシャン?コンサル→スタートアップ転職が会計士にオススメの理由は?公認会計士×スタートアップのキャリア戦略【第12回公認会計士ナビonLive!!(1)】
本質以外の業務を見極めて、会計事務所業務を自動化しよう
続いてはプレゼンテーション、「〜CPAナビコミ presents~ 非エンジニアの独立会計士がプログラミングで会計事務所を自動化した話」。
公益法人や保育所向けに会計業務などの支援を行う株式会社アダムズの堀井さんが、会計事務所業務を自動化するためのTipsを紹介してくれました。ちなみに「CPAナビコミ」とは、公認会計士ナビが運営する、公認会計士のためのコミュニティです。
株式会社アダムズ
代表取締役/公認会計士・税理士・行政書士
堀井 淳史
2003年、公認会計士試験第2次試験合格後、あずさ監査法人入所。あずさ監査法人でIPO支援業務、M&A支援業務、再生支援業務、マネーロンダリング対策支援業務に従事。
2008年に独立し、株式会社アダムズを設立、代表取締役に就任。公益法人、保育所向けに会計業務の支援、行政対応支援、システム構築支援を行っている。
「ChatGPTの登場で、プログラミングを使った会計事務所業務の自動化は一層やりやすくなった。」
堀井さんはそう言ってプレゼンを始めます。
そもそも堀井さんが会計事務所業務の自動化を目指したきっかけは、(優秀な)人材の退社でした。
かつては、税務やIPOなど、いわゆる通常の会計事務所が提供する様々なサービスを行っていましたが、専門分野を絞って効率化するために、公益法人に1本化(後に保育所向けも追加)。それでも「さらに効率化しないと業務が回らない」とのことで、プログラミングによる業務効率化を図ります。
といっても、堀井さんがプログラミングの勉強を始めたのは2020年で、決してその練度が高かったわけではないようです。「エクセルがある程度使えるなら、プログラミングも100時間程度の勉強である程度はできるようになる」と堀井さんは語ります。「一旦身につければ一生物のスキルになるので、ぜひプログラミングには興味をもってほしい」とのことです。
とはいえ、すべての業務を自動化できるわけではありません。そのため、まずは業務を「自動化する業務」「外注する業務」「本質的な業務」に分解。
自社では「本質的な業務」だけに集中する体制を整え、「自動化する業務」はAsanaやMyKomon、ジョブカンといったwebアプリを駆使し、業務の自動化を順々に成し遂げていきます。
「コードを書くこと自体は、クラウドソーシングやChatGPTを使えば対応可能です。会計事務所としてはそこではなく、どうすれば仕組みを導入できるかを考えることに時間をかけることが重要です。」
こうして業務を順々と自動化したアダムズ社。現在では堀井さんがほとんど関わることなく遂行される業務も多くなっているそうです。
独立系FASで活躍する公認会計士の特徴を語り尽くす
第12回 公認会計士ナビonLive!! 最後のセッションは「FAS+αで付加価値を提供する公認会計士たち」。本セッションに登壇したのは株式会社J-TAPアドバイザリーの片寄学さんと、株式会社クリフィックスFASの神原大樹さん、ふたりの公認会計士です。
(左)株式会社J-TAPアドバイザリー 代表取締役/J-TAP税理士法人 代表社員 公認会計士・税理士 片寄 学
(右)株式会社クリフィックスFAS マネージャー/公認会計士 神原 大樹
独立当初はフリーランス的に1人で仕事をしていた片寄さんですが、中小企業の課題をワンストップで解決すべく、後に採用を強化し、組織化してきました。セッションでは公認会計士を採用する際に見ているポイントを共有してくれています。
他方の神原さんは、監査経験のみで大手監査法人からクリフィックスFASに転職。「監査とFASを含めたアドバイザリーは近いようにみえて、実は全然違う領域で、思考の体系が違う」と監査とFASの違いを語ります。
本セッションは以下で詳細に記事化しています。興味のある方はぜひご覧ください。
少数精鋭「独立系FAS」×会計士を大解剖!専門領域はどう選ぶ?活躍するのはどんな人? 【第12回・公認会計士ナビonLive!!(2)】
最後は登壇者も含めた交流会!
最後は、登壇者と参加者を交えた交流会が開催されました。
4年ぶりの開催の公認会計士ナビonLive!!ということもあり、初めて参加した会計士の方もたくさん。終了時間ギリギリまで交流を楽しみ、新たに知り合った人たちと岐路を共にするなどみなさん大いに楽しまれていたようです。
以上、第12回・公認会計士ナビonLive!!の様子を振り返ってきました。
次回、第13回の公認会計士ナビonLive!!は3月9日(土)、東京・日本橋で開催です。公認会計士や公認会計士合格者の方は、ぜひ遊びに来てください!
【参加受付中!】第13回 公認会計士ナビonLive!! 開催!
第13回・公認会計士ナビonLive!!の開催が決定!
「独立」「上場メガベンチャー」「ソーシャルビジネス」「独立系ファーム〜監査・税務・FAS~」といった分野で活躍する公認会計士の方々にお話を伺い、みなさんとの交流の機会をお届けする予定です。みなさまのご参加お待ちしております!