2022年5月の会計士業界ニュースをお届けします。
「18歳公認会計士登録が現実的ではない理由」「仁智監査法人が新規契約1年停止」の2本です。
18歳公認会計士登録が現実的ではない理由
民法改正で成人年齢が18歳に引き下げられましたが、これに伴い、18歳で公認会計士登録ができるようになったことはご存知でしょうか。
今回、公認会計士登録の年齢引き下げに関する記事が、日本経済新聞からリリースされています。
4月1日に改正民法の施行で成人年齢が下がり、18歳と19歳が「大人」となった。公認会計士や医師などの資格も18歳で取得できるようになり、若者が早い段階から社会参加することが期待される。ただし難関試験を突破して実務補習もする必要があり、18歳で公認会計士になることは現実的には難しい。
【引用元:18歳の会計士が可能に 商機でも資格学校が沸かぬ理由(日本経済新聞 2022年5月19日付)】
記事では、「諸外国では国家資格に基づく職業を若者が担っているケースが多い」という法務省の民事局参事官室の担当者のコメントの一方で、中高生には試験の難易度が高いという声や、飛び級制度がない日本では実質的に不可能という冷ややかな声も伝えられています。
仮に今の制度で18歳で公認会計士登録となると、中学生のうちから専門学校に通って高校1年生で合格し、実務要件を満たし、修了考査を終えるという流れになりそうですが、高校受験や大学受験のための勉強時間や部活動のことも考えると、18歳公認会計士登録は非常に厳しいと言えます。
中小監査法人処分で新規契約1年停止
2度目の勧告で、監査法人に重い処分が下されました。
今回、仁智監査法人の業務改善命令に関する記事が、日本経済新聞からリリースされています。
金融庁は31日、監査担当者の不正リスクの評価や対応手続きに関する理解が不足していたなどとして、公認会計士法に基づき仁智監査法人(東京・中央)に業務改善命令や新規の契約締結業務を6月から1年間停止する処分を出した。
【引用元:金融庁、仁智監査法人に業務改善命令 コナカなど担当(日本経済新聞 2022年5月31日付)】
記事によると、業務改善命令を受けるのは2015年12月以来の2度目で、新規の契約締結業務が1年間停止すると伝えられています。
金融庁のWebサイトでは、仁智監査法人の処分の概要、理由、業務改善命令の内容が公開されています。
このうち処分理由は、業務管理態勢、品質管理態勢、個別監査業務など複数の項目で不備が指摘されています。また処分理由の中の業務管理態勢の項目では、法人代表者を含む各社員の個人事務所等における非監査業務への従事割合が高く、監査法人における監査の品質の維持・向上に向けた意識が希薄であり、組織的監査を実施できる態勢になっていないと締め括られているのが印象的でした。
処分の概要や処分理由に関する詳細は、金融庁のWebサイトでご確認ください。
仁智監査法人は、8社(金商法・会社法監査4社、会社法監査1社、学校法人監査1社、その他の任意監査2社)の監査証明業務を行っていますが(令和2年6月30日時点)、被監査証明会社数はそれほど多くなく、各々の個人事務所の非監査業務からも収入を得ている状況です。ですが、中小監査法人の中には、仁智監査法人と同様に、監査法人と個人事務所を兼業して収入を得ている人も少なからずおられるのではないでしょうか。
今回の勧告では、監査品質の維持・向上に向けた意識を持ち、組織的監査ができる体制整備を作ることの重要性が問われていますが、この問題は中小監査法人が等しく抱えるものなのかもしれません。
以上、今月の業界ニュースでした。
なお、今回、取り上げた記事はこちらの2本です。詳細は以下の記事をご参照ください。
今回取り上げたニュース
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)