2018年11月5日、16日、22日に、公認会計士試験合格者の採用、あずさ監査法人の働き方対策、マネロン対策支援などに関するニュースがリリースされています。
あずさ監査法人流働き方改革のカギはトップの本気度、あずさがマネロン対策支援部署を開設、6年ぶり高水準の合格者6%増に対して採用は明暗などの記事を幅広くご紹介します。
6年ぶり高水準の合格者6%増なるも採用は明暗
- 4大監査法人、18年度採用2%増どまり -合格者6年ぶり高水準も、「AI監査」にらむ(日本経済新聞 2018年11月22日付)
公認会計士試験の合格発表が11月16日に行われました。監査法人の人手不足が取り沙汰されるなか、合格者数に注目が集まりました。
今回、平成30年度の公認会計士試験結果と四大監査法人の採用に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
4大監査法人のEY新日本、トーマツ、あずさ、PwCあらたの2018年度の公認会計士の採用計画がまとまった。4社合計で1000人を採用する見通しで、17年度実績に比べ2%増にとどまる。監査の現場ではルールの国際化対応などで人手不足感が強まる一方、中長期では人工知能(AI)の普及で大幅に人材を増やしにくい事情もあり、難しいかじ取りを迫られている。
引用元:4大監査法人、18年度採用2%増どまり -合格者6年ぶり高水準も、「AI監査」にらむ(日本経済新聞 2018年11月22日付)
記事によると、日本公認会計士協会の啓蒙活動が寄与して、合格者は1,305人と前年比6%増になった模様です。
就職を見ると、四大監査法人の採用予定数は昨年の2%増にとどまり、記事内ではAI監査の普及による将来的な余剰人員リスクを避けるためとの理由が挙げられています。ただ、AI監査が普及し人員数にまで影響が出てくるにはまだ少し時間があると考えられるため、現実的なところでは、合格者の総数が昨年とあまり変わらない状況で採用予定数だけ大幅増とするのも現実的な目標ではないという事情もあるのではないでしょうか。
いずれにせよ、せっかく会計士試験に合格したのに監査法人に就職できなくて実務経験を積む場がない、という数年前の状況と比較すると非常に恵まれた環境ですので、今後、同じことが起こらないよう金融庁にも監査法人にもうまく舵取りを行うことが求められています。
あずさがマネロン対策支援部署を開設
- あずさ、マネロン対策支援で専門部署 地域金融向け (日本経済新聞 2018年11月5日付)
2019年に行われる予定の、金融活動作業部会(FATF)による対日審査を控え、2018年2月6日に金融庁が『マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン』を提示しました。
これを受けて、あずさ監査法人の地域金融向けにマネロン対策専門部署の立ち上げに関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
あずさ監査法人は地方銀行や信用金庫といった地域金融機関などを対象にしたマネーロンダリング(資金洗浄)対策の専門部署を立ち上げた。約30人が専任であたり、企業のマネロン対策を診断する。国が求める水準に足りない部分を支援する。地銀を中心に約250社の顧客を見込む。
引用元:あずさ、マネロン対策支援で専門部署 地域金融向け (日本経済新聞 2018年11月5日付)
記事によると、FATFの来日審査を来年に控えた金融庁がマネロン対策の強化を金融機関に求めており、従来は監査法人からマネロン対策の指導を受けていなかった地銀などからもニーズが高まっているそうです。
金融庁が2018年8月に公表した『マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の現状と課題』によると、地域金融機関では「リスク低減措置の実効性が十分でない事例も存在する」と報告されています。
- マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の現状と課題(金融庁 2018年8月)
第4次となる2019年のFATF対日相互審査では、地域金融機関は厳しい対応が迫られそうです。
あずさ監査法人流働き方改革のカギは、トップの本気度
- 意識高い系職員の「ど根性残業」を激減させた、あずさ監査法人流働き方改革(DIAMOND online 2018年11月16日付)
あずさ監査法人では『過重労働撲滅プロジェクト』として、2018年6月まで新規監査業務の受嘱を延期していました。職場環境の改善や、繁忙期の過重労働はどの程度低減できたのでしょうか。
今回、あずさ監査法人流働き方改革に関する記事が、DIAMOND onlineよりリリースされています。
我々には資本市場における責任があります。監査の品質を保つためには一定のリソースが必要です。現状のリソースを考えたときに、これ以上新規を受けると品質が担保できない可能性がある、ということで新規案件の受嘱を一時ストップしました。
引用元:意識高い系職員の「ど根性残業」を激減させた、あずさ監査法人流働き方改革(DIAMOND online 2018年11月16日付)
記事では、あずさ監査法人専務理事の大塚敏弘氏と株式会社ワーク・ライフバランス代表の小室淑恵氏の対談形式で、改革の細部について触れられており、新規案件の受託停止や超繁忙期でもネットワークの接続を制限するなど、トップの本気度が伝わる施策が功を奏して職員の満足度はかなり上昇したということです。
最近話題の多いあずさ監査法人ですが、働きやすさでも受験生や転職希望者から注目が集まりそうです。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)