今年の公認会計士試験合格者は数年後のキャリアをどう考えればよいのか?3つのポイントから考えてみた。

本日、平成25年の公認会計士試験合格発表が行われました。

合格者のみなさま、まずは合格おめでとうございます!そして、試験勉強お疲れ様でした!

ところで、公認会計士試験合格者に関しては、例年、「大手監査法人に就職しやすい環境かどうか」が話題となります。もちろん、大手監査法人への就職を希望する人は多いので、その点も重要なポイントのひとつではあるのですが、公認会計士としてのこれからのキャリアを考えると、本年のような売り手市場においては「監査法人に入れたかどうか」よりも「監査法人に入ってからどう過ごしたか」が特に重要となります。

そこで、本記事では、あまり焦点の当てられることのない「会計士試験合格者の数年後のキャリア」に関する予測やキャリアを考えるポイントなどについて3つの視点から述べたいと思います。

合格者のみなさんは合格した喜びと就職活動で頭がいっぱいでこの記事の内容は頭に入ってこないかもしれませんが(笑)、ブックマークで保存するなどして、落ち着いた頃にまた読み返してみてください。

ポイント1:監査法人での仕事量はどうなのか?

-仕事はある!どんどん働こう!

公認会計士に限らず多くの社会人の先輩方が「新人の頃はどんどん仕事したほうがいい!」や「最初の3年間が社会人としてのその後を決める!」と言ったありがたいアドバイスをくれると思います。

まさにその通りです。

公認会計士も例外ではありませんので、そういったアドバイスはしっかりと聞き、そして、実行しましょう。

ただし、監査法人の仕事は景気や採用の動向によってその環境が大きく変わることがあります。例えば、2007年~2008年には3,000名を超える大量の合格者が出て監査法人に採用されましたが、リーマンショックの影響から監査法人には仕事がなく、入社1~2年目にあまり仕事がないと言う状況が起こりました。

では、今年はどうでしょうか?

今年の状況としては、景気の回復、リストラによる経験者の退職などから各監査法人では人不足が生じています。そのため、今年の会計士試験合格者のみなさんには、監査法人入所後には、若手層にも比較的たくさんの仕事が待っている可能性が高いです。最初は大変かもしれませんが、経験を積めるチャンス!と考えて積極的に仕事を引き受け、どんどん仕事に取り組みましょう。数年後に大きな差がつくと思います。

ポイント2:監査法人での昇格や出世はどうなりそうか?

-最初の競争は緩め。マネージャー昇格が勝負!?

出世や昇格がキャリアの全てではありませんが、せっかくの社会人生活ですので監査法人での昇格や出世を意識して仕事を頑張るに越したことはないと思います。けれども、監査法人での昇格や出世も「どういった時期に入所したのか」で影響を受けるという事実もあります。

例えば、昔の監査法人はほぼ全員が横並びでシニアスタッフやマネージャーに昇格できていましたが、リーマンショック以降は、シニアスタッフへの昇格ですら厳選されてしまったように、同期や先輩が多い世代景気の状況が良くない時期に入所した世代は昇格にも影響が出てしまいます。

それを踏まえると、今年の合格者世代はどうでしょうか?

恐らく、今年の合格者のみなさんの昇格環境は当面は悪くはない状況だと思われます。

と言うのが、監査法人に限らず一定以上の規模の会社においては、昇格は前後3~4年程度の先輩・後輩がライバルとなる傾向がありますが、この数年はそれほど合格者も多くなく、監査法人も採用を絞っていたため、今年の合格者のライバルになる先輩はやや少なめです。そのため、しっかりと経験を積めばシニアスタッフへの昇格はしやすい可能性があります。

ただし、入所後7~8年後以降、マネージャーを狙う時期には注意が必要です。現在でも大手監査法人では、マネージャーやシニアマネージャーがやや多くなっていますが、この先数年で、合格者の多い2006年~2008年合格の世代がそのマネージャー昇格競争に加わり、その後、今年の合格者のみなさんに順番がまわってきます。

そのため、今年の合格者のみなさんがマネージャーを意識し始める頃には、現在以上にマネージャーが増え、昇格が厳しい状況となっている可能性もあります。特に監査法人に長くいたいと考えている人は、若いうちからマネージャー職への昇格も意識して、積極的に仕事に取り組んでおくのがよいでしょう。

ポイント3:身に付けるべきスキルは何なのか?

-英語、得意分野、人脈、そして、修了考査も忘れずに

監査法人に入る合格者には大きく3つのタイプの人達がいます。

  1. ずっと監査法人にいたいと思っている人
  2. 経験を積んだら転職したいと思っている人
  3. ずっといるのか転職するのかまだ決めていない人

の3つです。

このいずれを選ぶにしても共通して身に付けておいて損はないスキルがあります。

  • 英語力
  • 得意分野
  • 人脈
  • 修了考査

の4つです。

  • 英語力

これは監査法人に限らずいろいろな会社で言われています。これからのグローバルビジネスに適応していくためには英語が必要です。英語を勉強しましょう!

・・・と、教科書的な話をしてもほとんどの人が勉強しないと思います(笑)また、「英語は苦手だから勉強しても厳しいと思う…」と感じる人も少なくないでしょう。

でも、やっぱり勉強しておいたほうがいいです。英語力は昇格や転職の時に影響しますから、英語で本当に差が付くのは数年後です。すぐにできなくても大丈夫です。苦手な人も数年計画でいいのでちょっとずつ英語力をアップさせましょう。そして、監査法人に入ってみればわかると思いますが、みんな意外と英語ができません。グローバルビジネスがどうとか言う以前に、英語がちょっとできるだけで周囲とけっこう差が付くのです。英語を勉強しておいて決して損はないです。

 
  • 得意分野

みなさんはこれから「公認会計士」(厳密には公認会計士試験合格者)になります。公認会計士には公認会計士の間での競争があり、周囲と差をつけていかなければなりません。そのためにも、得意分野を作りましょう。今はまだ「どこを得意分野にしたらいいのか?」もわからないと思いますが、最初の2~3年でじっくり見つけて行ってください。

 
  • 人脈

「人脈」というとちょっと堅苦しいですし、打算的な印象も受けるかもしれませんが、そんなに堅く考える必要はありません。「監査法人の外」にもなるべくたくさん友達を作りましょう。公認会計士の友達でもいいですし、そうでない友達でもOKです。監査法人で昇格するにしても、最終的には営業(顧客獲得)が重要ですし、転職するにしても人脈がありいろいろな情報が得られる方がプラスです。一般的に、ビジネスパーソンは30歳くらいから実力がついて活躍し始める人が増えます。今、仲良くなっておいた友人とは30歳を過ぎたくらいから仕事でも絡めるチャンスが増えてきます。友達作りは重要です。

  • 修了考査

スキルとはちょっと違いますが、修了考査も意識しておきましょう。試験が終わった直後に「また試験の話か…」と思われるかもしれませんが、監査法人内で昇格するにしても、監査法人から飛び出して転職するにしても修了考査に合格して公認会計士になっておいたほうがいろいろな点から有利ですし、もし、落ちてしまうとライフプランやキャリアプランが1年遅れてしまう可能性もあります。みなさんにはちょっと先の話ですが、ストレートで合格できるように頑張りましょう。(そんなこと言わなくてもみんな2回も受けたくないから1回で合格するように頑張ると思いますが 笑)

 

以上です。少し長くなってしまいましたが、これからの公認会計士としてのキャリアを実りあるものにするために、頭の片隅にでもとどめておいて頂ければなと思います。

この度は合格おめでとうございます!公認会計士ライフをエンジョイしてください!

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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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