2018年 監査法人IPOランキング!EY新日本が首位!あずさ躍進、トーマツは大型シフト!?【件数・時価総額・騰落率】



2018年監査法人IPOランキングサムネイル2018年1月1日~12月31日までの監査法人IPOランキングをまとめました。

2018年のIPO、90件を担当した監査法人を『IPO件数』『時価総額』『騰落率』の3つの指標でまとめてあります。

⇒2017年以前のランキング・その他監査法人関連ランキングはこちら

2018年のIPOランキングに関する注記

本年のIPOにおいて、2018年6月27日に優成監査法人が監査人を務める「株式会社アイ・ピー・エス」が東証マザーズに上場しておりますが、優成監査法人は2018年7月2日に太陽有限責任監査法人(以下、太陽監査法人)と合併を行っております。

本記事では、

  • 期中での合併であり、2018年末時点では太陽監査法人が存続監査法人となっている点
  • 株式会社アイ・ピー・エスの監査人も太陽監査法人へと引き継がれている点
  • 優成監査法人の実績がこの1件のみでランキングへの影響は限定的である点

を考慮し、本記事では、2018年の優成監査法人のIPO実績は太陽監査法人に含めて集計しております。

IPO件数ランキング

EY新日本が首位に返り咲き。昨年1位のトーマツは3位に後退

まずはIPO件数でのランキングです。

IPO件数ランキング

監査法人IPOランキング_2018_監査法人別ipo件数ランキング表
※クリックすると拡大します。
※鞍替え、指定替え、TOKYO PRO MARKETを含まないランキングです。

IPOの総数は90件と2017年から2018年にかけて横ばいとなっています。

そのような中、IPO件数では、2016年以来2年ぶりにEY新日本監査法人が首位を奪取しています。また、昨年3位のあずさ監査法人が2位に浮上し、1位であった監査法人トーマツは3位に後退しました。

四大監査法人がシェアを伸ばす

IPO件数を監査法人の規模別で比較すると、四大監査法人がシェアを伸ばし、準大手監査法人、中小監査法人がシェアを減らした構図が見えてきます。

四大監査法人に関しては、前年と比較して、

  • EY新日本監査法人:+4件
  • あずさ監査法人:+8件
  • 監査法人トーマツ:-7件
  • PwCあらた監査法人:+2件

と合計で7件のプラスとなっています。

また、準大手監査法人の実績を前年比で見てみると、

  • 太陽監査法人:+1件
  • BDO三優監査法人:-2件
  • 東陽監査法人:-2件
  • PwC京都監査法人:+1件

と2件のマイナスとなっており、大手監査法人が増加した一方で準大手監査法人のシェアは低下しています。なお太陽監査法人の実績は7件とあずさに続き第4位となっています。

中小監査法人に関しては、以下2つの監査法人が各1件ずつの実績となり、前年比でプラス1件となっています。

  • 監査法人A&Aパートナーズ:±0件
  • ひびき監査法人:+1件

2017年の夏頃には大手監査法人がIPO準備企業を中心に新規の監査契約を控える動きがあり、IPO監査のクライアントが大手から中小・準大手に流れましたが、監査契約からIPOまでは数年の時間を要するため、2018年時点ではまだIPO件数のシェアには影響は出ていなさそうです。

IPO件数の勢力図、あずさは3年でシェア倍増

次にIPOの件数とシェアを過去3年分のデータで比較してみましょう。

四大監査法人のIPO件数とシェアを2016年から2018年で比較すると以下のとおりです。

まずは件数の変動から。

四大監査法人クライアントのIPO件数比較(3ヶ年比較)

監査法人IPOランキング_2018_四大監査法人クライアントのipo件数比較表
※クリックすると拡大します。

2016年と2018年で比較するとIPOの総数は83件から90件へと、7件のプラスとなっています。

また、四大監査法人のIPO件数は、2016年の67件から2018年の78件へと、11件のプラスとなっています。

監査法人ごとの3年間の増減を見ると、あずさ監査法人は13件からプラス12件で25件へと倍増していますが、他の3監査法人は大きな変動はありません。近年は人手不足を理由にIPO監査受託に消極的なイメージがある中、あずさ監査法人のIPO数の増加がひと際目立ちます。

また、6年間の推移は以下の通りです。

四大監査法人クライアントのIPO件数の推移(過去6年間)

監査法人IPOランキング_2018_四大監査法人クライアントのIPO件数の推移グラフ
※クリックすると拡大します。

四大監査法人のIPO総数は、2013年の46件から2018年の78件へと1.7倍に増加しています。

そのような中、特にEY新日本監査法人の件数が2013年の6件から、2018年には約5倍の29件となっており、大きく実績を伸ばしている点が特筆されます。

四大監査法人のシェア比較(3ヶ年比較)

次に四大監査法人のシェアを見てみましょう。

監査法人IPOランキング_2018_四大監査法人シェア
※クリックすると拡大します。

四大監査法人がIPO全体に占めるシェアは過去3年で増加傾向にあり、2018年には86.7%まで高まっています。

各法人のシェアに関しては、EY新日本監査法人がIPO全体の3分の1を占めており、昨年首位だったトーマツを抜き1位となっています。

今後の注目は太陽か!?IPO監査での「四大監査法人」の座はどうなる?

また、ここ3年で安定して6~8件の実績を出している太陽監査法人にも要注目です。

前述の四大法人の件数実績に太陽監査法人を加えた上位5法人の実績は以下のようになります。

太陽監査法人を含めた五大監査法人のIPO件数比較(3ヶ年比較)

監査法人IPOランキング_2018_五大監査法人クライアントのipo件数比較表
※クリックすると拡大します。

過去5年の実績においても、PwCあらた監査法人が1~3件で推移する中で、太陽監査法人は6~8件で件数を安定させてきている点が読み取れます。

また、太陽監査法人を含めた5法人のIPO件数の推移を6年間で振り返ると以下になります。

太陽監査法人を含めた5法人のIPO件数の推移(過去6年間)

監査法人IPOランキング_2018_五大監査法人クライアントのIPO件数の推移グラフ
※クリックすると拡大します。

2017年~2018年にかけて大手監査法人が新規のIPO監査クライアントの契約を控えた際、太陽監査法人はIPO準備企業との契約を大きく増やしたとの情報もあります。

また、上記のグラフに関して、2017年以前の太陽監査法人の実績には優成監査法人のIPO実績は含まれておりませんので、今後は合併による底上げもあるかもしれません。

IPO監査では、監査契約を結んでから数年後にクライアントのIPOが実現されるため、ここから数年のIPO市場では太陽監査法人が大きくシェアを伸ばすことも予想されます。

時価総額(初値)ランキング

ソフトバンクの大型IPOにより監査法人トーマツがダントツの首位!

次に初値時価総額での比較です。

初値時価総額の合計額でのランキング 

監査法人IPOランキング_2018_初値時価総額(合計)ランキング表
※クリックすると拡大します。

監査法人別順位は、1位トーマツ、2位EY新日本、3位あずさの順となっており、昨年と変動は見られません。

初値時価総額の合計では、 監査法人トーマツが2位以下を大きく引き離しての1位となっています。

IPOの件数ではトーマツ21件、EY新日本29件と7件もの差がある中でトーマツの時価総額がダントツである点が注目されます。

監査法人トーマツが1位になった要因は、ひとつは、ソフトバンク株式会社の初値時価総額が7,003,593百万円と、上位10件の合計額8,549,047百万円の80%超を占めるメガIPOであった点。

もうひとつは、株式会社MTG(初値時価総額:272,447百万円、3位)、HEROZ株式会社(初値時価総額:163,358百万円、4位)をはじめとして初値時価総額上位10件のうち5件の監査人を務めており、大型案件がトーマツに集中していたことが挙げられます。

 

では、次に時価総額の平均(1件あたりの初値時価総額)ランキングを見てみましょう。

初値時価総額の平均額でのランキング

監査法人IPOランキング_2018_初値時価総額(平均)ランキング表
※クリックすると拡大します。

こちらもトップは、監査法人トーマツです。また、IPO件数2位のEY新日本監査法人が平均時価総額でも2位となっています。

参考までに、監査法人トーマツのIPOクライアントの中で時価総額が飛び抜けているソフトバンク株式会社を除いて、トーマツの初値時価総額の平均を算出してみますと、33,968百万円となります。

この数字と、2~5位の平均時価総額を比較してみると、

2位:EY新日本…42,449百万円

3位:PwCあらた…38,907百万円

トーマツ…33,968百万円(ソフトバンクを除いた平均)

4位:BDO三優…18,877百万円

5位あずさ…14,876百万円

となり、トーマツ、EY新日本、PwCあらたがやや大型のIPOクライアントの監査を手掛けていた構図が浮かび上がります。

初値騰落率ランキング

騰落率では監査法人トーマツが1位!

では、最後に監査法人ごとの初値騰落率の平均を見てみましょう。

騰落率の平均(1件あたり騰落率)でのランキング

監査法人IPOランキング_2018_初値騰落率(平均)ランキング表
※クリックすると拡大します。
※騰落率の平均=騰落率の合計/IPO件数で算出しています。

初値騰落率の平均では、監査法人トーマツが158.36%で1位となり、2位にPwC京都監査法人が137.78%で続いています。

監査法人トーマツに関しては、担当したHEROZ株式会社が988.89%と驚異的な初値騰落率で1位だったことが影響しています。

ちなみに2017年のIPOにおける初値騰落率の1位は株式会社トレードワークスの518.18%でしたので、昨年の数字から見てもHEROZの騰落率のすごさが分かります。

2019年のIPOマーケット、監査法人の勢力図はどうなる?

2018年の件数ランキングでは、EY新日本監査法人が1位となり、2位のあずさ監査法人がこの3年で件数を急激に増やしてきている点が読み取れました。

また、監査法人トーマツは件数は減少しているものの、初値時価総額や初値騰落率が高いクライアントのIPOを担当する傾向が見られ、太陽監査法人が4位の座を固めつつある点も読み取れました。

昨今の監査法人業界では人員不足の影響から、報酬の大きくないクライアントや手間のかかるベンチャー企業の監査は積極的には受けにくいという声も一部では漏れ聞こえてきます。その一方で、2018年は四大監査法人のIPOシェアは増加しており、そこに太陽監査法人も加わり、ランキングの今後の変動も予感させる内容となりました。

2019年のIPOマーケットや監査法人ランキングはどのような結果になるでしょうか?公認会計士ナビでは継続してウォッチしていきます。

(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧

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