2025年3月29日（土）に東京・茅場町にて第15回・公認会計士ナビonLive!!が開催されます。
本記事では、2024年8月31日（土）に「変わりゆく公認会計士のリアル」をテーマに開催された第14回公認会計士ナビonLive!!より、スペシャルプレゼンテーション「～CPAナビコミ presents～ BIG4監査法人から独立開業・今に至るまでの話」の様子をお届けします。
本セッションに登壇いただいた公認会計士の津田覚さん（津田公認会計士・税理士事務所 所長 兼 ゲームチェンジャーコンサルティング株式会社 代表取締役）は、監査法人時代に上海駐在を経験。しかし、その間にコロナ禍に。家族と離れ離れになり、思うことがあったようです。その後帰国した津田さんは、マネージャーに昇格するも独立を選択します。
津田さんはどうして独立したのか。独立してから感じるメリット・デメリットは。キャリアに悩む若手へのアドバイスは。公認会計士限定のコミュニティ「CPAナビコミ」のコミュニティマネージャーである中島星が切り込みます。
※本記事の登壇者の肩書・経歴等はイベント登壇時のものになります。
※本記事の内容は公認会計士ナビにてセッションでの発言内容に編集を加えたものとなります。
何かに「熱中」するために公認会計士を目指す
中島（CPAナビコミ）：最初に、津田さんの自己紹介をお願いします。
津田：津田覚です。大学3年次の2009年に公認会計士試験に合格しました。合格後は1年半ほどTACの公認会計士講座合格アドバイザーとして関与したのち、2011年にあずさ監査法人に入所しました。
津田公認会計士・税理士事務所 所長
ゲームチェンジャーコンサルティング株式会社 代表取締役
公認会計士・税理士
津田 覚
慶應義塾大学3年次の2009年に公認会計士試験の短答式及び論文式に合格。株式会社TACの公認会計士講座合格アドバイザーを経て、2011年に有限責任 あずさ監査法人に入所。国際事業部にて主に会計監査のサービスを提供し、中国の北京へのMBA留学、上海への海外駐在を経験。帰国後、マネージャー職を経て、2022年９月より独立し、会計監査に加えて上場企業向けに決算、内部統制、海外子会社管理支援等を行う。また税務顧問・申告書作成サービスや財務及び経営コンサルティング等も手掛ける。
2023年７月より公認会計士協会東京会の独立開業支援プロジェクトチームのメンバー。
津田：3年ほど働いた頃、当時就職難の時代にCSR活動の一環として、中国に留学生を派遣するプログラムを法人が始めました。非常に好評だったため社内でも展開されることになったのですが、またとないチャンスだと思い、手を挙げました。
2年も留学していると、法人内で自然と「中国の案件なら津田に聞こう」という流れになりまして、その後に監査の現場責任者の経験も経てKPMG上海に2年間駐在することになったんです。帰国後は1年間ほど監査法人に恩返しをするつもりで全力で働きました。そしてマネージャーになり、2022年独立開業し、今に至ります。
中島（CPAナビコミ）：ありがとうございます。順番に詳しく聞いていきましょう。
株式会社ワイズアライアンス
CPAナビコミ コミュニティマネージャー
中島 星
上智大学卒。大学卒業後、プライム市場上場企業に入社。その後出版関連会社を経て、freee株式会社に入社。法人向けカスタマーサクセスチーム立ち上げの後に、IPO準備企業を中心に約200社のオンボーディングに携わる。その後、freee会計法人ユーザコミュニティ「つばめの巣」を立ち上げ。
現在は監査法人系コンサルティングファームでIPO準備企業支援に従事するかたわら、カスタマーサクセスコンサルタントとして複数社を支援している。
中島（CPAナビコミ）：まず、津田さんはなぜ公認会計士になろうと思われたのですか？
津田：大学に入った時点では、実は簿記の存在すら知りませんでした。無事に大学受験も終わりサークルや大学の友人達と遊んだり、大学受験予備校でのインターンシップをしていたのですが、1年生の秋頃にふと将来何をしたいか考える機会があり、熱中できるものは何かを探していたんです。そうしたら周りの友人や大学内での宣伝等で公認会計士の情報が耳に入ってきまして、これは面白そうだと思い目指すことにしました。
中島（CPAナビコミ）：公認会計士試験合格後、予備校のチューターを経て監査法人に入社します。
津田：当時は今のように事業会社で活躍する公認会計士が少なく、試験に合格したら監査法人に就職するのが一般的だったので、私も同様に深く考えずに監査法人に入社しました。
今振り返ってみると、合格当時は監査法人に特に強い思い入れがあったわけでもないので「修了考査が終わったら」「会社法のインチャージをやったら」「金商法の主査をしたら」と、毎年のように転職するきっかけを探していましたね。
中国語を話せないと生きていけないと気付く
中島（CPAナビコミ）：監査法人に入社してから中国に留学と駐在していますよね。海外に興味をもったのはなぜですか？
津田：入社して国内部に配属されて数ヶ月で再編があり、国際部に配属されたのですが、アサインされたのがかなりハードなチームだったんです。仕事に充実感を覚えつつも、上司が話している内容が難しすぎてよく分からないことも珍しくありませんでした。
同時に、そのチームの上司は、ほとんど海外駐在の経験がある方ばかりだったんです。そんな環境だったので、自然と海外で働くことに興味を抱くようになりました。
とはいえ、当時は海外赴任には最低でも5年程度働いていなければ行くことができませんでした。当時はまだ3年目だったので、何かショートカットする方法はないかな、なんて思っていたんです。
そんなときにちょうど中国の留学制度が出てきた。これはチャンスだと感じましたね。
中島（CPAナビコミ）：元々中国語には馴染みがあったんですか？
津田：大学時代に第二外国語として中国語を選択していましたが、それくらいです。「ニイハオ」「シェイシェイ」位しか知りませんでした。とはいえ触れたことはあるし、当時は25歳というチャレンジしたい年頃だったこともあって、勢いで飛び込みました。ちょうど修了考査が終わった位のタイミングです。
中島（CPAナビコミ）：中国留学ではなく、転職でもよかったんじゃないですか？
津田：海外赴任していた上司や外部の方から情報収集した結果、経営コンサルや事業会社はフィットするのが大変そうだと思いました。また、監査法人の業務に少しずつ慣れてきた時期でもあり、コンフォートゾーンから抜け出すことへの不安もありました。
そういう意味では、監査法人にいながら海外留学できるというのは、当時の自分にはまたとない好機だったんです。
中島（CPAナビコミ）：勢いで決めたとのことでしたが、実際に中国に足を踏み入れて、どうでしたか？
津田：前述したようにほとんど中国語を知らない状況で現地に着きました。とりあえず空港からホテルにタクシーで移動しようとして運転手にたどたどしい英語でホテル名を伝えたら「啊（あ）？」と言われたんです。その瞬間「あ、この国では中国語が話せないと生きていけない」と悟りました。その後に、追い詰められた時に人は力を発揮できるのだと実感しましたね（笑）。
中島（CPAナビコミ）：かなりリスクを取った生き方をしていますね（笑）。
津田：そうですね（笑）。でも、公認会計士は、リスクを取れる良い資格だと感じています。
会計士試験や監査法人、事業会社、税理士法人、ファームなどでの経験が、血肉となっているからでしょう。セーフティーネットとしての能力が身につくのだと思います。
専門性はどうやって身につける？キャリアには悩んでいい
中島（CPAナビコミ）：中国には3年ほどいたんですよね。
津田：そうですね。上海に駐在していたのは2019〜2021年なので、その間にコロナ禍にも見舞われました。
赴任してから最初の数ヶ月は、中国全土に出張して会計監査やアドバイザリー業務を提供したり、日本から来た方のアテンドをしたり、当初想定していた駐在生活をスタートしていました。しかし、コロナで状況が一変。年明けには家族も上海に来て駐在期間は一緒に生活する予定でしたが、来てすぐにコロナの関係で家族が帰国となり、予期せぬ単身赴任となってしまいました。
仕事についても監査では当然ながら会計や会社ビジネスの内容を中国語で理解する必要があったり、中国人チームメンバーとのコミュニケーションミス、法定決算が12月であるが故に繁忙期には慢性的なリソース不足等、様々な困難があり非常に大変でした。
中島（CPAナビコミ）：やはり海外で監査をするのは大変なんですね。
津田：日本にいると出来る経験とトレードオフの関係だとは思うのですが、海外で監査をして初めて気付かされることや現地のリアルを垣間見ることが出来ました。どんなに忙しくても、仕事はやるしかありません。
でも、深夜3時まで働いてタクシーで帰宅して4時に電気を消すときに「自分はこれがやりたかったんだっけ？」と思うようになりました。家族と離れて暮らすことはやむを得なかったのですが、これは本当に自分が望んだことなのか、真剣に考えるようになったんです。
そんなこともあり、家族を大切にして働きたいという結論に至って、結果的に独立することにしました。
中島（CPAナビコミ）：転職でもよかったと思いますが、なぜ独立を選んだのでしょうか？
津田：事業会社への転職も選択肢には入っていました。ですが私がロールモデルにしていた会計士の方々が、皆さん独立していたんですよね。勿論、実際のところ全てがバラ色のようなことは決してないとは思いますが、「自分もこうありたい」という気持ちが強くなり、独立を選びました。
中島（CPAナビコミ）：目指す姿が明確になったんですね。後悔はないですか？
津田：独立したことに後悔はありません。
とはいえ、自分には事業会社や他の専門ファームで経験を積むという道もあったわけです。それを選ばなかったのは自分なので、選んだ道を正解にするために、これから頑張っていきたいと思っています。
中島（CPAナビコミ）：独立されて2年ほど経ちますが、津田さんが感じる独立のメリット・デメリットを教えてください。
津田：独立のメリットは、何と言っても「自由」でしょう。そういう契約なら好きな時間に働けるし、好きな仕事を選べます。
収入にしても、もちろん相場はあるものの、タイムチャージか固定か、月額か年額かなど、自分で交渉して自由に決められる。自分で色々やるのが好きな方は、独立に大きなメリットを感じるでしょう。
一方で、自分を律しないと難しい面もあります。決められたことをこなす方が向いている方にとっては苦しいかもしれません。
中島（CPAナビコミ）：最後に、現在監査法人などに所属していて、独立に興味のある方に一言お願いします。
津田：若手の方から「どうやって専門性を身につけたらいいのか」「尖りたいけど、どうすればいいのか」といった相談をよく受けます。
皆さんは既に色々な能力をもっていて、担当しているクライアントの業種も様々という点に鑑みれば、それぞれが既にオンリーワンなのではないでしょうか。
私もスタッフ時代はキャリアに迷っていましたが、今迷われていること自体が素晴らしいことだと思います。そういった色々と将来を考えて悩んでいたことがが5年後や10年後に自分の糧になっていたと思える日が来ると信じています。
選択の良し悪しは、選択後の努力によって決定される。私の座右の銘です。
皆さんも迷いながらも、選択した道を正解とするように行動し、素敵な会計士キャリアを歩んでください。私もこれからも一生懸命に頑張ります。
中島（CPAナビコミ）：津田さん、ありがとうございました。
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第15回・公認会計士ナビonLive!!の開催が決定！
「会計士×付加価値との出会い」をテーマに、「独立」「M&Aアドバイザリー」「次世代のデータ分析スキル」「コミュニケーション力」といった分野にフォーカスをして公認会計士の方々にお話を伺い、みなさんとの交流の機会をお届けする予定です。みなさまのご参加お待ちしております！
