ESGの観点からの移転価格対応状況の適切な開示について:東京共同会計事務所【PR】

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ESGの観点からの移転価格対応状況の適切な開示について

移転価格戦略コンサルティンググループ統括
パートナー 丸山裕司

(1)はじめに

 ESGとは、環境(Environment)、社会 (Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉であり、環境汚染や社会的規範、コーポレートガバナンスの遵守を重視した経営スタイルのことを指す。新型コロナ禍による世界経済の落ち込み、ウクライナ情勢の悪化等、企業を取り巻く環境が厳しさを増すなか、投資家は、困難な環境下であっても長期的な成長が見込める企業を見極める上で、企業のESGに対する取り組みに今まで以上に注目している。これは、 ESGに対する取り組みこそが企業の長期的な成長を支える経営基盤の強化に繋がると一般的に考えられていることによるものであり、2020 年時点の投資額でみれば、 ESG投資額(ESGに配慮した企業に対して行われた投資額)は世界全体では35 兆 3,010 億米ドル(約 3,900 兆円。全運用資産に占める割合は 35.9%)、日本だけでみても 2兆 874 億米ドル(約 310 兆円。全運用資産に占める割合は 24%)に及んでいる。

 したがって、投資家を意識した経営の重要性が高まっている昨今において、投資家からの投資を呼び込むためには、 ESGに対する取り組みを行い、具体的な取り組み状況を適切に開示することは喫緊の課題と言える。

(2)移転価格対応状況の開示

 世界では様々なESG情報開示の基準が整備されているが、日本企業を含む多くのグローバル企業は、
Global Sustainability Standard Board (GSSB)が作成した GRIサステナビリティ・レポーティング・スタンダード(以下、GRIスタンダード)を参照して開示を行っている。すなわち、 GRIスタンダードにおいて求められている報告項目について、どのように開示がなされているのかを、 GRIスタンダードとの対照表で示すのが一般的となっている。

 GRIスタンダードの経済に関する項目の一つとしてGRI207(税金)が規定されているが、その概要は
以下のとおりである。

GRI207(税金)

207-1 税務へのアプローチ

a. 税務へのアプローチについての説明。次の事項を含む
 i. 組織に税務戦略があるかないか。ある場合、公開していれば、その戦略へのリンク
 ii.組織内で税務戦略を正式にレビューおよび承認するガバナンス機関または役員レベルの地位に
  ある者、およびレビューの頻度
 iii.法令遵守へのアプローチ
 iv.税務へのアプローチが組織のビジネス戦略および持続可能な発展戦略にどのように結び付いているか

207-2 税務ガバナンス、管理、およびリスクマネジメント

a. 税務ガバナンスおよび管理フレームワークの説明。次の事項を含む
 i.組織内で税務戦略の遵守に責任を負うガバナンス機関、または役員レベルの地位にある者
 ii.税務へのアプローチがどのように組織に組み込まれているか
 iii.リスクを特定、管理、監視する方法を含む、税務リスクへのアプローチ
 iv.税務ガバナンスおよび管理フレームワークの遵守状況をどのように評価しているか
b. 税務に関連する非倫理的または違法な行動や、組織の誠実性に関する懸念を通報するためのメカニズム
 の説明
c. 税務に関する情報開示を保証するプロセスの説明、および該当する場合、この保証に関する報告、
 陳述、または見解への参照

207-3 税務に関連するステークホルダー・エンゲージメントおよび懸念への対処

a. 税務に関連するステークホルダー・エンゲージメントおよびステークホルダーの懸念に対処するための
 アプローチの説明。次の事項を含む
 i.税務当局とのエンゲージメントに対するアプローチ
 ii.税務政策(税制)に関する提言活動へのアプローチ
 iii.ステークホルダー(外部のステークホルダーを含む)の意見や懸念事項を収集・検討するための
  プロセス

207-4 国別の報告

a. 組織の監査済み連結財務諸表に含まれる、または公式に提出される財務情報に記載されている事業体
 が、税務上所在するすべての税務管轄区域
b. 開示事項207-4-aで報告した税務管轄区域のそれぞれについて
 i.所在する事業体の名称
 ii.組織の主たる活動
 iii.従業員数、およびこの数字の算定基準
 iv.外部売上による収益
 v.他の税務管轄区域とのグループ内取引による収益
 vi.税引前損益
 vii.現金または現金同等物を除く有形資産
 viii.実際に支払った法人所得税
 ix.損益に基づいて発生する法人所得税
 x.税引前損益に法定税率が適用される場合に、損益に基づき発生する法人所得税と実際の納税額に
  差がある理由 
c. 開示事項207-4で報告する情報の対象期間

 GRI207(税金)は2021年1月1日から発効しており、税に関する取り組み、税務ガバナンスやリスク管理、税務当局との関係などに加えて、国別報告の開示も要求されている。いずれの項目も企業グループ全体としての税務への取り組みの開示を要求しているため、海外展開している日本企業に関しては、国内税務のみならず国際税務に対する取り組みも含む形で記載する必要がある。

 国際税務に関する情報の中でも特に重要性が高いと考えられるのが移転価格対応に関する情報である。一部の多国籍企業が、各国の税制の相違点や不整合を利用して行き過ぎた租税回避行為を行ったことが問題視され、 OECDがBEPS (Base Erosion and Profit Shifting: 税源浸食と利益移転)プロジェクトを立ち上げて国際課税ルールの見直しを行い、現在では日本を含めた世界各国で必要な法整備等が進められているが、投資家から高く評価された上でESG投資の対象となるためには、新たな国際課税ルールに則った移転価格対応を行い、それを適切に開示していることが最低限求められる。
 なお、どこまで情報を開示するかは各企業の判断に委ねられているところではあるが、結局のところ投資家に向けて積極的に情報提供を行うことによりESG投資の対象となることによってもたらされる株価上昇による利益と、情報収集及び開示に要する労力、センシティブな情報の開示により被る可能性のある不利益等を比較衡量した上で開示する情報を決定すべきものと考えられる。

(3)日本企業の開示状況

 ESG投資は、2006年に国連主導で発足した世界的なプラットフォームである「責任投資原則(PRI )」の条文の中で初めて用いられ、2008年のリーマンショックによる影響を受けて機関投資家が企業の長期的な存続を評価するための指標として注目し始めたが、現在では、責任投資原則に署名している企業数は、2022年2月17日段階で世界で 4,787社、日本で106社(年金積立金管理運用独立行政法人、等)に及んでいる。年金積立金管理運用独立行政法人がPRIに署名して以降、 ESGに対する取り組みを開始の上で具体的な取り組み状況を開示する日本企業が徐々に増えてきているが、欧米企業と比較するといまだに遅れているのが現状である。

 ESGに対する取り組みを行うことでESG投資の対象となるためには、GRIスタンダードに則って投資家から見て有益な情報を積極的に開示することが重要となるが、税務に関する情報の中で特に投資家が重要視しているのは、先述のとおり、国際税務、なかでも移転価格に対する企業の取り組みに関する情報である。すなわち、企業グループ全体に適用される移転価格ポリシーが取引種別毎に適切に策定され、当該ポリシーが対象期間にわたってグループ全体で有効に運用されており、それを事後的に移転価格文書によって証明できることがESG投資の対象となるためには重要と考えられる。

 海外展開している日本企業の移転価格対応に関する情報の開示状況を見てみると、投資家の目線から見た時に十分な開示を行っている企業はほとんど存在しない印象を受ける。理由としては、センシティブな情報であるため開示したくない、移転価格を操作してグループとして租税回避を図るという意図が全く存在しないのでわざわざ開示するまでもない、そもそも開示できるほどの移転価格ポリシーを策定していない等、様々であるが、現状の開示内容としては、「各国における移転価格税制改正等への対応を適宜行っている」、「継続的に移転価格リスクの最小化に努めている」、「適切な税処理を行うように努めている」等の具体性に欠ける記載に留まっている日本企業がほとんどである。

 一方で、欧米企業は一歩踏み込んで移転価格ポリシーの内容、運用状況、事前確認申請( APA )の取得状況等にも言及していることが多いため、その様な欧米企業と比較した時に、日本企業の開示内容は投資家から見て情報の質の面で劣るのは否めない。

 もちろん、開示する内容は限定的なものに留め、投資家から求められた場合には個別に情報提供を行うという方針を採用している日本企業も存在しており、その様な方針を採用すること自体は否定されるものではないが、ESG情報を重視する投資家から、積極的な開示を行っている欧米企業と常に比較されていることを意識しておくことは重要である。

(4)日本企業に求められる対応

 ESGに対する取り組みを行い、具体的な取り組み状況を開示している日本企業は、欧米企業と比較するといまだに少数なのが現状である。ESG投資額は年々増加しており、ESGの観点から企業を評価する投資家の目も厳しくなってきている現状を踏まえると、特段対応を行っていない日本企業もESG対応をおざなりにはできない状況になっている。

 ESG対応を行っていない日本企業に関しては、まずは社内教育を実施してESG情報を開示することの重要性を企業全体として理解することが重要であり、その後、社内でプロジェクトチームを立ち上げ、ESG情報に関する現状及び改善点の把握、社内体制(ポリシー)の整備、開示対応を行うことが重要である。
 また、すでにESG情報を開示している日本企業に関しても、ESG対応が進んでいる欧米企業の開示内容と比較した時に、投資家が投資判断を行うにあたって重要視している情報を量と質の両方の観点から十分に提供できているか、ただ単にGRIスタンダードの要求項目を埋めただけで終わっていないか改めて検証することが重要と考えられる。

参考資料

本稿のお問合せ先

電話:03-5223-9599
Email:hiroshi-maruyama@tkao.com

本稿の内容は執筆者の個人的見解であり、当事務所の公式見解ではありません。

記載内容の妥当性は法令等の改正により変化することがあります。本稿は具体的なアドバイスの提供を目的とするものではありません。個別事案の検討・推進に際しては、適切な専門家にご相談下さいますようお願い申し上げます。

PDFデータ:ESGの観点からの移転価格対応状況の適切な開示について

引用元:ESGの観点からの移転価格対応状況の適切な開示について | ニュース/セミナー一覧 | 東京共同会計事務所【会計・税務のプロフェッショナルが集う会計事務所】

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