このコーナーでは、“くわえもん”こと高桑昌也氏が、厳しく、優しく、ユーモラスに公認会計士のみなさんのお悩みに答えます!
さあ、みんな!くわえもんに相談してみよう!
“くわえもん”とは?
高桑昌也 通称“くわえもん”
公認会計士・税理士
麻布高等学校・慶應義塾大学卒。大学在学中(2000年)に公認会計士2次試験合格、中央青山監査法人、金融庁、エスネットワークス取締役等を経て、現職。さそり座O型。秋田県男鹿半島出身。
趣味:写真、旅行、夜の麻布・六本木
参考記事:会計士はもっとマルチに活躍できる!くわえもんが真面目に語った”幅広いフィールドで活躍できる公認会計士になる方法”:会計士・渡邉孝江が聞いてきた!Vol.5(公認会計士ナビ)
今回のお悩み:監査経験がないのがコンプレックス。監査法人に転職すべき!?
今回の相談者
NNNさん、男性、31歳
※写真はイメージです。
相談内容
くわえもんさん、はじめまして。
私は2012年に会計士試験に合格し、その後事業会社の経理を転々としながら、現在は上場企業の経理担当者として連結決算などの業務に携わっています。修了考査には合格済みで、年齢は31歳男性、独身です。
相談というのは、自身のキャリアに関することです。
現在は事業会社の経理として年収600万円ほどいただいておりますが、果たしてこのまま、ずっと今の会社にいても良いのだろうか?監査法人へ行くべきでは?という悩みを抱えています。
監査法人へ行くべきでは、と思っている理由としては・・・
(1)「監査をしたことがない会計士」ということがコンプレックス。周りをみても、まったく監査経験のない会計士というのは、私以外に見たことがありません。
(2)収入面の不満。現在の仕事は上の席も詰まっており、昇進・昇給の見込みが少なく、あってもゆるやか。課長クラスでも、1,000万円に届いていないように思います。
(3)やはり大手監査法人の世界は、激務ではありますが、社会的評価も高く、「ザ・会計士」という感じがして、漠然と憧れるものがあります。
(4)周りの独立して成功している会計士は、皆監査法人出身で、監査法人時代の人脈をフルに活かしているイメージがあります。
一方で、転職へのネガティブな思いもあります。
(1)(独立の話とは矛盾しますが)折角転職するのであれば、パートナーを目指したい。しかし、31歳からスタッフで入り、学歴も特に秀でていない私が、実力のみでパートナーへ上り詰めることは、現実的に厳しいのではないか。
(2)今の職場の仕事は楽しく、賃金以外では特に不満がない。
やはり、会計士たるもの、監査法人で監査を一度は経験するべきでしょうか?
また、仮に監査法人へ転職した場合、私の年齢でも、社内出世には影響はないのでしょうか?
加えて、くわえもんさんの個人的な見解でかまいませんので、私の転職に関する上記の悩みに対して、何かコメントをいただけないでしょうか?
思いのたけを書きなぐったので、とても支離滅裂な文章になっているかと思いますが、何卒、アドバイスをいただければと思います。
よろしくお願い致します。
くわえもんからの回答
こんにちは。最近一戸建てに引っ越しました。これまで40年間マンション暮らしで、直近はタワーマンションに住んでいたのですが、初めての戸建てです。
タワマンと違って、近隣のお宅との連携が重視される戸建て。はじめて躓いたのは、「ごみ捨て」でした。タワマンでは24時間365日ごみ出しOKだったのですが、一戸建てだと各曜日ごとに出せるごみが決まっていることに、新鮮な印象を受けました。
新居の近くは緑が多く、朝窓を空けると、鳥のさえずりが聞こえてくるのも素敵なところです。
さてNNNさんのご質問ですが、ずいぶん迷われているのだな、と感じました。
率直なところ、
Fact1:そろそろいい年齢
Fact2:経理の経験はあるがそれ以外の分野が未経験に近い
→年収・出世も含めた「これでいいの?」、焦り感をどう解消するか?
という課題だと理解しました。
【監査法人について】
「年収」「出世」という面でいうと、結論、監査法人は今更感があります。年齢の如何に問わず、ジュニアスタッフ(年俸400~500万円)からのスタートになるのではないでしょうか。
また、以前と異なり、監査法人も上の階層(マネージャーレベル)が詰まっており、パートナーになかなか上がれない。マネージャーのまま滞留してしまうリスクがあります。監査法人の外部環境としても統制機関(当局や協会)のチェックがあり、「重箱」的な監査のやり方が増えてきた気がします。現代においてはNNNさんが思っている「監査法人=会計士が通るべきエリートコース」というのも瓦解しているような気がいたします。
監査法人での給与ですが、監査報酬の額が頭打ち(*出所)の中では、ドラスティックに給料はあがらない可能性があります。1名あたり売上も1,500万円程度(*出所)と仮定すると、スタッフ1名あたりの平均給与も500万円から600万円程度と推察されます。
そのような状況の中で、監査法人へ職を求めるのはどうなのでしょうか。監査というものを経験したい、雰囲気を知りたい、ということでよければ、アルバイトでも十分かも知れませんよ。
【コンサルティング/アドバイザリーはどうか】
もし「年収」を追及するのなら、私なら監査法人という選択肢は思い切って捨てて、コンサルティング・アドバイザリー業界へ向かいます。給与は頭打ちだし、組織も上が詰まっていて、ポストを期待できないからです。
コンサルティング・アドバイザリー業界は総じて給与は高めです。1人あたり売上が3,000万円から2,000万円のファームとして、平均給与は1,000万円から700万円ではないかと考えられます。公認会計士資格がある場合、M&Aか資金調達でのコンサルティングでは優遇されます。
M&Aをする場合のプロジェクションを組んだりする際に、経理・会計・税務の経験が役立つためです。戦略コンサルティングは会計士資格なくてもできるので、それほど優遇されることはありません。コンサルティング業界も人が慢性的に不足しており、多少高めの年収(700-800万円以上)でリスタートできるのではないでしょうか。
さて、NNNさんは英語はできますか?コンサルティング業界でも英語ができる人材は重宝されます。さらに外資のファイナンシャルコントローラーやCFOを目指すことも可能です。年収重視の方なら、英語の能力も磨いておくことをお勧めします。私の実父は某外資系企業のCFOでしたが、年収2,500万円でした。それなりに夢のある金額ではないでしょうか。
【所感】
ただ全体として考えると、NNNさんはご自身の年齢、出世や年収を気にされていて、「会計士としてどうありたいのか」が見えないところです。そもそもNNNさんは何故公認会計士を志したのでしょうか。何のために青春を犠牲にし、勉強し、あの難しい試験を突破してきたのでしょうか。
会計士を志した昔に戻って、年収や出世という軸以外で、会計士としての自分がどうありたいのかを、もう一度振り返ってみませんか。
なお私は、「会計を使って、課題を解決し、周りの人を幸せにする」が自分の理念です。
クライアントや社外役員を務める企業には、会計・財務的課題がゴロゴロしています。リーガル的な問題も把握しつつ、当該課題を解決するのが、会計士の本分だと私は捉えています。企業も様々、課題も様々で、中々簡単ではありませんが、公認会計士というものはそう言うものだと考えています。金や名誉は後からついてくるもので、目的ではないと思っているのです。
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