2018年2月2日、株式会社ビーロットが東証マザーズから東証一部への市場変更を果たした。公認会計士ナビの熱心な読者の方であればこの「ビーロット」の社名に聞き覚えがあるかもしれない。
遡ること3年前の2015年、
の記事にて、設立わずか6年でのマザーズ上場とそれを支援した公認会計士たちの活躍を特集したあのビーロットだ。
その後、マザーズ上場から約3年で東証一部への市場変更を実現したビーロット。
少数精鋭のベンチャー企業が限られたリソースで一部上場に耐えうる管理体制を構築したその背景には、今回もやはり公認会計士たちとのチームワークがあった。
今回、大きく成長するベンチャー企業と、それを外部から支える公認会計士たちとの強い信頼関係に裏打ちされたプロジェクトストーリーをお届けする。
プロジェクト再始動。次なる目標は東証一部
不動産金融ベンチャー・ビーロットとは?
ビーロットは、投資用不動産を投資対象とする法人や個人富裕層の投資家を主たるターゲットに、不動産の投資開発事業やマネジメント事業を手掛ける不動産会社だ。
投資用不動産は1~数十億円規模の取扱がメインとなり、富裕層や投資家に対する投資用不動産の売買から管理まで総合的な資産運用サポートを得意とする。
投資用不動産は、一棟もののオフィスビル・マンション・店舗・ホテル・老人ホームなど幅広く取り扱っており、北海道から沖縄まで全国各地でビジネス展開を行っている。
東証マザーズへのIPOとさらなる成長
2014年12月、ビーロットは設立6年目で東証マザーズに上場し、その後の勢いも衰えることなく、成長を続けてきた。
【創業から現在までのビーロットグループの業績推移】
マザーズ上場から3年半で東証一部に市場変更と、順調に事業を拡大してきたかに見えるビーロット。だが同社の宮内代表は「上場はあくまで成長過程のためのステップ」という。
ビーロットはなぜ東証一部を目指したのか?
ベンチャーには、上場を目標とする企業もあれば、成長しているうちに上場が選択肢の一つとなっていたというパターンもあるだろう。
ビーロットの場合は後者であり、気が付けば上場を目指せる要素が揃っていたという。
「マザーズ上場に関しても、“成長し続けていればいつか上場のタイミングが来るだろう”という考えはありましたが、何が何でも上場したいわけではありませんでした。無理なく安定して成長していこうと考えていたら、成長の先に上場が待っていました。」
そう語る宮内代表が、マザーズに続き東証一部を目指しても良いのではと感じるタイミングが訪れた。
「上場は、会社の力だけではできない要素も多分にあります。もちろん会社自身にも業績を上げられる力が必要ですし、市場の影響を受ける可能性もあります。会社の力や外部要因など、いくつか要素がある中でひとつでもダメなら上場はダメになる。
そのため、社内でもいつ東証一部を目指すべきかに関しては様々な意見がありましたが、これだけ要素を満たしている状態ならやれると確信できました。」
宮内代表は、東証一部への上場を目指したタイミングをこう語った。
宮内 誠
株式会社ビーロット
代表取締役社長
慶應義塾大学 法学部卒業・米国University of Washington経営学修士(MBA)。
(株)三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)にてのプロジェクトファイナンスおよび不動産ノンリコースローン等を8年間担当。三和証券(株)(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)にて不動産証券化アレンジメント業務に従事。都心Sクラスビル証券化、商業ビルファンド組成、特化型賃貸マンションファンド等のアレンジメント実績多数。2006年から東証一部上場の不動産会社にて、取締役投資企画部長として新規業務の企画及び実践を担当。
2008年、新たな不動産金融ビジネスに取組むべく(株)ビーロットを設立し、代表取締役社長に就任。
上場準備には膨大な時間と手間がかかる。だがそれを上回るメリットがあるからこそ、上場を目指す意味がある。
「不動産会社というのは、ボラティリティが高い一方で、上場のメリットを十二分に活かすことができる業種です。資金調達手法の多様化、信用力の強化、コンプライアンス体制の向上、良い人材の確保など、ファイナンスの教科書に上場のメリットと書かれてあるようなメリットは、すべて享受することができます。
さらに、当然のことながら、新興市場よりも東証一部の方がその効果も大きくなります。そう考えると、東証一部への市場変更もタイミングがあえば選択肢の一つだと考えていました。」
上場企業として、1から10まですべてのメリットが活かせる東証一部への市場変更は、宮内代表を始めとしたビーロットのメンバーたちの背中を押すには十分であった。
斯くして、ビーロットの東証一部への市場変更プロジェクトはスタートすることとなる。
ビーロットとブリッジコンサルティンググループ。再び始まる、公認会計士たちとの物語
東証一部への市場変更プロジェクトスタート、クリアすべき4つの課題
ビーロットの一部上場への市場変更プロジェクトは、執行役員管理部長の望月文恵氏をプロジェクトリーダーに、同社の管理部門のメンバー、そして、IPO支援を強みとするブリッジコンサルティンググループ(以下、BCG)の公認会計士たちがサポートする体制にてスタートすることとなった。
望月 文恵
株式会社ビーロット
取締役 管理部長兼コンプライアンス室長
東京農業大学 国際食料情報学部卒業。
2002年、事業用不動産を取り扱う不動産ベンチャー企業に入社。同社にて、富裕層及び投資家に向けた不動産売買・資産コンサルティング業務にて実績を重ねる。 2005年より、支店の責任者としてオフィスリーシング営業のほか、予実管理や人材開発等の経営に関する業務に従事し、同社の創業8年弱での東証一部上場に貢献。2008年、株式会社ビーロット設立に参画、社長室長に就任。
2013年、執行役員 経営企画室長兼コンプライアンス室長就任。
2018年、取締役 管理部長兼コンプライアンス室長に就任。
市場変更に向けて、ビーロットは4つの課題に直面した。
- 人材リソースの確保
- 適切な労務管理
- M&Aの影響と子会社管理
- 予算管理
の4つだ。
人材リソースの確保をどう解決するか?マザーズ上場後のBCGとの関係
ビーロットが市場変更に当たってクリアすべきひとつめの課題はプロジェクト推進のためのマンパワーの不足だ。
IPOや市場変更においては、そこに至るための膨大な作業が発生する。
上の市場を目指す企業の多くは、業績も上向き、従業員数も拡大するなど、企業全体が勢いに乗っている。
だが、証券会社や監査法人、証券取引所との調整、申請に必要な数々の書類の作成、ワンランク上のステージの企業としてのあるべき管理体制の整備のための作業量を対応するための人員に余裕があるケースはまれである。
そこで、ビーロットでは、一部上場を目指すと決めると同時に、再びBCGに支援を依頼することを決めた。
マザーズ上場時の立役者のひとりでもあるBCGだが、実は、上場後も内部統制のアドバイザリー、税務顧問、そして、2件のM&Aにおけるアドバイザーとしてビーロットを支援しており、その信頼関係はさらに強固なものとなっていたという。
望月氏はBCGへの評価をこう語った。
「BCGさんとはマザーズ上場前からのお付き合いですが、上場後の内部統制やM&Aにおいても非常に頼りになる存在でした。
市場変更プロジェクトは、社内でも限定的なメンバーで進めるプロジェクトでした。そのため、既に当社の事業観や企業文化を理解して頂いており、当社グループにとっての市場変更の意義を共有できるBCGさんに依頼をするというのは、期限性が高いプロジェクトにおいて、時間やコミュニケーションの面でとても合理的でした。
会計的なスキルや知識はもちろんですが、なによりも決め手となったのは、アドバイスのみならず、実際に実務レベルのことも一緒に対応して頂けた実績が多数あることで、今回も迷わずご依頼させて頂きました。」
【株式会社ビーロットの成長とBCGとの関係】
2008年10月 |
株式会社ビーロット設立 |
2012年12月 |
東証マザーズへのIPOに向けてのショートレビュー |
2013年12月 |
BCGとのコンサルティング契約スタート(東証マザーズIPOに向けてのJ-SOX支援、会計税務支援) |
2014年12月11日 |
東証マザーズへ上場 |
2016年4月 |
株式会社ライフステージのM&A(BCGによるM&A支援) |
2017年1月 |
株式会社ヴィエント・クリエーションのM&A(BCGによるM&A支援) |
2017年2月 |
東証一部への市場変更プロジェクトスタート |
2017年3月 |
BCGによる市場変更支援スタート(証券会社対応、Ⅱの部作成支援など) |
2018年2月2日 |
東証一部へ上場 |
市場変更ならではの苦労とは?
ここでBCG側に視点を移してみよう。
ビーロットの市場変更プロジェクトは、BCG取締役COOである大庭氏の統括のもと、執行役員・田中氏とIPO支援事業部長・伊東氏の計3名の公認会計士によって主導された。
大庭 崇彦
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
取締役COO/公認会計士
同志社大学法学部卒業。2006年、公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツ・トータルサービス1部に入所。上場企業の会計監査を中心に、ベンチャー企業を対象としたIPO支援業務、内部統制支援業務、IFRS導入支援業務をはじめ、中国、日本国内上場企業の監査及びコンサルティング等さまざまな業務を経験。2011年10月に「世界のリーディングカンパニーを創出する」との理念を掲げ、グループ会社である「株式会社Bridge」の設立に参画し、代表取締役COOに就任。特にアジア各地に展開する人脈、ネットワークを利用した企業成長支援業務に定評あり。
通常のIPO準備と市場変更の違いと言えば、市場変更の準備を進めると同時に、上場企業としての日々の決算開示やJ-SOX対応など粛々とやっていかなければならない点だろう。通常業務にプラスして、膨大なプロジェクトの業務量が発生すると言える。
そこで、このリソース不足を引き受けたのが、BCGの執行役員、公認会計士・田中智行氏だ。
田中氏はプロジェクト期間中、月に2日ビーロットのオフィスに足を運び、内部統制(J-SOX)やコーポレート・ガバナンス関連の実務を支援した。
田中 智行
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員 内部監査事業部長/公認会計士
2004年、公認会計士試験合格。上智大学文学部卒業。
中央青山監査法人 監査2部、有限責任監査法人トーマツ 監査Aグループを経てBCGに参画。内部監査支援事業部長として、上場準備会社22社、上場会社7社の内部監査業務支援に従事。
「上場準備の過程で、瞬間最大風速的にやらなければいけないこともありますが、その一方で上場企業として通常業務を粛々と進めていかなければなりません。会社が今まで同様に業務を進めていけるようにサポートさせていただくのが、私にとっての課題でした。」
投資家からの信頼に応える立場にある上場企業にとっては、どちらも疎かにできない。
そして、同じく公認会計士のIPO支援事業部長・伊東心氏が市場変更作業において、証券会社との対応、Ⅱの部作成など実務面をサポートした。
伊東 心
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
IPO支援事業部長/公認会計士
2006年、公認会計士試験合格。慶応義塾大学経済学部卒業。
会計士試験合格後、TAC公認会計士講座の講師を経て、新日本有限責任監査法人MNC部での日系グローバル企業等の会計監査を経験。その後、IPO準備企業に入社し、東証マザーズへの上場準備、上場後のIR活動等を経験。
BCG参画後は、上場準備会社72社(うち12社がIPO達成済み)に上るIPO支援事業部の部長として、各社を支援。
他社との差別化でもある「働きやすさ」をどのように証明するか
ビーロットが東証一部への市場変更を目指すにあたっての2つめの課題であり、かつ、最も意識したのが労働環境の証明だ。
そもそもビーロットは従業員の労働環境に自信があった。
経営陣の創業理念でもある「仕事を楽しむためにも、メリハリの利いた労働環境を従業員に提供する」との考えから、設立当初から従業員の働きやすい環境づくりには力を入れており、差別化を図っているためだ。
一方で、昨今の風潮から、東京証券取引所も労務コンプライアンスは今まで以上に重視しているとの話も伝わってきており、審査基準の変化についてはよりセンシティブに捉える必要もあった。
「今回、どこまで厳格に証明を求められるのか。IPO時には、24名であった人員体制がグループ全体で140名を超えておりましたので、労務管理上も審査基準をクリアできるような体制を整えていく必要がありました。」
管理部長の望月氏はそう語る。
労働環境を証明することについて、ビーロットの経営陣で度々議論があったという。
「当社では、従業員それぞれに一定の裁量を与える経営を行っています。上場企業出身も多い中で、同じ事業観のもと、任された責任と裁量を楽しんでいる従業員が多い状況です。勤怠管理やスケジュール管理を厳格化することが、逆にただただ自由や裁量を失うという閉塞感を感じさせてしまうようなら、今まで作り上げた企業風土にも悪影響を与えかねないと議論がありました。
当社の場合は、このタイミングを機に、各専門家の助言に基づいて、組織の本部体制を整えて部長職を増員し、丁寧に、履歴を残すことの意味を伝達していきました。時代の変化に柔軟に、クリエイティブに対応できることが、当社の強みと考えます。」
市場変更プロジェクトに伴い、将来に向けて、会社がどのような経営体制を作るのがベストなのか、経営陣でより深い議論を繰り返すことが、適切な組織構築へとつながったという。
M&Aの影響と子会社管理
そして、3つめの課題が子会社の管理だ。
ビーロットが市場変更を目指すと決めた当初、マザーズ上場から3年以内での市場変更ということもあり、審査のポイントもマザーズ上場時と大きく変わりないのではとの見通しもあった。
しかし、2016年、2017年と相次いだM&Aによる買収で連結子会社が増えたことから、その見通しを修正することとなる。
【ビーロットによるM&A】
2016年4月 |
株式会社ライフステージをM&Aにより子会社化 |
2017年1月 |
株式会社ヴィエント・クリエーションをM&Aにより子会社化 |
特に、2016年に買収したライフステージに関しての影響が甚大であった。
従業員数40名少々のビーロットと比較し、ライフステージの従業員数は100名以上、社歴も30年以上ある企業だ。過去に上場企業であった時期はあるものの、買収時には未上場であり、東証一部の基準に照らすと管理体制としてより強化する必要があった。
BCGの会計士・伊東氏は、その時の様子を振り返る。
「一部上場へ向けた対応はボリュームが多く、時間との戦いになります。しかも、相次ぐ子会社取得のインパクトについても証券会社と話し合い、審査上の影響度を確認しながら進めていかなければなりませんでした。」
ビーロットの宮内代表は、「BCGとの長い付き合いのおかげで、子会社管理に関する課題共有もスムーズだった」とも語る。
前述の通り、2社のM&Aでは、アドバイザリーをBCGが担当している。
そのため、「グループ会社のガバナンスについて相談したいとBCGさんに話したときも、内情をわかって頂いているので話が早く、今回のプロジェクトの話をできない中でもグループ会社の役員とのコミュニケーションも良好に、早急に対応策を決めることができた。」という。
業績予想は達成できるのか、市場変更に向けた最後の壁
そして、最後に超えなければならなかった大きな壁は東証が一部上場を目指す企業に求める予算管理だ。
マザーズから東証一部への市場変更を達成するには、必要な形式基準に加えて当然、予算管理をタイムリーに実施していかなければならない。
市場変更に向けての体制が整っていく一方で、当初予算が想定通りに進捗するかどうかはビーロットにとって当然のように最後のハードルとなった。
同社の主たる事業は、不動産投資開発事業である。
不動産投資開発事業のビジネスモデルは1件の成約で数十億円の売上が生じる世界だ。
そのため、たった1件のプロジェクトが1日遅れることで、決算期末の売上や利益を大きく左右する。
不動産取引も、他の業務と同じように、相手方の存在するビジネスであり、相手方とのスケジュール調整も業績の大きな要素となる。時に、それは価格交渉の材料にもなるため、業績管理は各プロジェクトを担当するコンサルタントの意識レベルが高いことが必要である。
ビーロットにとって、東証一部の利益基準は、同社の現状を考慮すれば十分達成は可能な目標であった。
しかし、今期は市場変更もかかった重要な年であり、より一層のガバナンス体制の強化にリソースを割きつつ業績予測を達成することが当然のように求められ、1件ごとの契約進捗を把握し、全体予算の達成状況を注視することが求められた。
2017年11月、ビーロットは、期初の予算に対して増益の予想を開示するとともに、東証一部への市場変更を申請したことを公表した。
例年と同様に予算を達成すれば良いだけのはず。けれども、期末が近づいてくると経営陣、現場のメンバーともに例年以上に自然と緊張感が高まってくる。
その緊張感をともにしていたのはBCGの会計士たちも同様であった。ビーロットのオフィス内で、経営陣と最も近くで業務を執行していた田中氏と伊東氏は語る。
「私たちの仕事は管理や会計の支援。月次の予実管理において、業績予測を達成できることを合理的に根拠資料もって外部へ共有していくことでした。けれども、東証一部まであとひと息となると、もう他人事ではありません。何かできることはないかと居ても立ってもいられませんでした。」
彼らがBCGのオフィスに帰社すると、プロジェクトマネージャーである大庭氏が「最後のハードル(業績)は、大丈夫か?」と声をかける日々が続く。
「BCGのメンバーかビーロットのメンバーか関係なく、プロジェクトに関わるメンバー全員が同じ気持ちで成否を見守っていた」とメンバーたちは口を揃える。
ついに東証一部へ
そして、2018年2月2日、ビーロットは無事に東証一部への市場変更を達成する。
「決算年度末が近づいてきた時には、社内も期待と不安が入り混じった雰囲気で案件の進捗を見守っていましたが、最後は宮内社長の“この案件は大丈夫”との声に、皆が勇気づけられました。」
管理部長の望月氏は振り返る。
設立9年、マザーズ上場から3年のビーロットにとっては課題も多い目標ではあったが、グループの役職員が一丸となり実現した大きな成果だ。
市場変更の成否がかかった状況での経営者の心境はどのようなものだったのだろうか?宮内代表からはある種、達観したとも感じられる言葉が返ってきた。
「今の当社のメンバー達なら必ずやり遂げられると思っていましたが、経営者にいくら自信があっても上場を達成できない会社も沢山あります。もし、様々な要素で東証一部の基準に届かなかったとしたら、それは当社が今はまだそこまでの会社だったということ。そう受け止めてもう一度、頑張るだけです。」
宮内氏の言葉の中に同居する自信と冷静さ。従業員からの信頼を得る魅力はそういった点にもあるのかもしれない。
ビーロットとBCGに見る企業と会計士の新たな関係
経営者が専門家に求めるふたつのもの
IPOは、会社にとって一度あるかないかの特殊なイベントだ。
そこによりそった公認会計士たちはビーロットにとってどのような存在だったのだろうか。
宮内代表は、「BCGには高い専門性、そして、彼らには強い信頼がある」と語る。
「BCGさんには、マザーズ上場前から今回の一部上場まで継続的にサポートして頂いていますが、実は、最初にお会いしたときから印象は変わっていないのですね。
“少数精鋭のスペシャリストが揃う何でもできる会社”、そう思っています。
会社を経営していく上でBCGさんに『こういった悩みがあります』と伝えると、その分野の専門知識を持った方が出てきてくれて相談にのって頂くことができます。
また、BCGさんの素晴らしいところは、新しい担当の方が来ても安心してお任せできるところでもあります。
世の中には他にもIPOコンサルタントや上場準備の経験者といった方々はおられますが、上場準備や上場企業の管理業務というのはきわめて守秘性が高い仕事を行って頂くので、専門性に加えて経営者にとって信頼できる相手であるということが大切です。
その意味で、経営者にとっては、世の中に専門家が多数いたとしても、本当に仕事を依頼できる専門家というのは実は限られていると思っています。
しかし、当社は、そのふたつを合わせ持った方を3秒で探せてしまう。“BCGさんに聞いてみよう”と。」
孤独な担当者に寄り添うBCGという存在
執行役員管理部長の望月氏は、身近でBCGグループと接してきた。
長期間に渡りBCGとの関係が続いた魅力はどこにあったのだろうか?
「当社は、ベンチャー企業として、クリエイティブであることのほか、スピードを重視している会社です。
何事にもすばやく対応頂けるところが、BCGさんの大きな魅力です。
また、当社グループの成長過程を見ていただいている点、コミュニケーションの部分も大きな魅力でした。当社のメンバーとコミュニケーションがしっかり取れているので、安心して業務をお任せできるのが心強かったです。
M&AもIPOも、限られた時間で膨大な作業を行わなければなりませんので、言葉ひとつ齟齬が生じるだけで大きく時間を取られかねません。BCGさんとはそこで足並みが揃うのは非常に有難く、専門性だけでなく時間までも買えているような印象でしたね。」
また、ベンチャー企業にとっての専門家選びは、意見を言うだけではなく、手を一緒に動かして頂けるかという点も重要なポイントになる。
そう言った点においても、BCGのメンバーはビーロットのオフィスにて、ともに手を動かしながら支援を行ってきており、長い支援関係の中でBCGのメンバーが社内でいることがまるであたり前のようになっていたという。
「市場変更というのは守秘性が高く、従業員にも話せないことも多いですので、担当者は孤独でもあります。そこを付き合いの長いBCGのみなさんと一緒に取り組めたのは本当にありがたかったです。」望月氏はそう述べる。
公認会計士は監査法人の外でも求められる存在
公認会計士の中には、今後のキャリアを監査法人で勤め上げたほうが良いのか、それとも転職を選ぶべきなのか悩む会計士も多いだろう。
BCGとビーロットとの関係は、公認会計士がそのスキルをどう活かし、どうキャリアを歩んでいくべきか、企業と会計士はどういった関係を構築できるか、そのヒントを感じさせる。
宮内代表は「会計士のような専門性の高い方に、もっと事業会社でも活躍して欲しい」と期待を寄せる。
「私自身がこうして士業ではない仕事をしていると、士業の方のありがたみがよく分かります。
事業に携わっていると、定期的にスペシャリストの方々の力が必要になることがあるため、案件ベースでも会社に深く入ってサポート頂きますが、それだけでもとても安心感があります。
事業会社の経営の観点で物事を見て、現場の役職員とコミュニケーションがとれる公認会計士の方がいれば、ものすごいことだと思いますし、当社にもそういった人材に入って頂きたいと思っています。コミュニケーション能力が高い公認会計士というのは、監査法人から外に出たら、それぐらい求められる存在なのです。
そして、事業会社に入ったとしても、またそこからアドバイザーなどのポジションに戻ってもいいと思いますし、公認会計士の方が持つアドバイスする側と事業会社側を行き来できる特性というのは、すごい強みだと思います。」
ビーロットが東証一部の先に見据えるもの
ビーロットにとって東証一部への上場は通過点に過ぎないという。一方で、一部上場企業となったことにより、周囲からの見られ方が変わってくる。
「今までは成長しているだけでも一定の評価はされましたが、東証一部に上場する企業となると、これからは成長するだけでは足りません。安定も併せ持つような会社にならないといけません。」
成長、安定、そして、「この会社は面白い」と魅力を感じてもらえる企業にビーロットを育てたいと宮内氏は語る。
「皆様に“面白い”と思ってもらえる会社を作っていきたいと思っています。“面白い”というのは、我々自身が経営していて楽しいし、株主の皆様からもこの会社は面白いなと思って頂ける、また、取引先様にも面白そうな会社だと興味を持って頂けるということ。ビーロットをステークホルダーの皆様から期待されるような面白い会社にしていきたいと思っています。」
2013年から始まった、4年半に渡るビーロットとBCGの関係。
東証一部への上場で一区切りついたかに見えるが、ビーロットが今後も成長を遂げていくうえで、この先も拡大する組織に合わせての権限移譲や業務の効率化など、解決していきたい課題は多いという。
しかし、ビーロットは、これまでも課題をひとつひとつチームワークで乗り切っているため、不安はない。
これからも専門家とパートナーシップを持ち続けられる会社でありたいという。
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