来る2016年2月20日(土)に第5回・公認会計士ナビonLive!!in大阪が開催されます。
本記事では第5回の開催に向けて第4回・公認会計士ナビonLive!!の内容を振り返ります。
第4回 公認会計士ナビonLive!!のトークセッションでは、「公認会計士×会計系スタートアップ」をテーマに、会計・バックオフィス系スタートアップを起業した4名の起業家が、会計業務とテクノロジーの関係や会計業界の未来について語りました。
※本記事はセッションでの発言を一部補足・編集した記事となっております。
第4回 公認会計士ナビonLive!! トークセッション:公認会計士×会計系スタートアップ
【開催日時】 2015年8月29日(土)
【テーマ】 公認会計士×「税務」「会計系スタートアップ」
【第2部トークセッション】 公認会計士×会計系スタートアップ
【登壇者(敬称略)】
- 印具 毅雄(ツバイソ株式会社 代表取締役 CEO 技術系会計士)
- 高谷 元悠(株式会社BEC CEO/公認会計士試験合格)
- 工藤 博樹(メリービズ株式会社 代表取締役)
- 畠山 友一(株式会社ビズグラウンド 代表取締役)
ITの進化で会計士のチャンスは広がる!技術系会計士が語った“会計士とIT”
■印具 毅雄(ツバイソ株式会社 代表取締役 CEO 技術系会計士)
1975年生まれ。広島と福岡で育つ。中学生の頃からパソコン、プログラミングが好きで、N88-BASICやマシン語に触れる。大学、大学院では、遺伝的アルゴリズム(C言語)の改善研究を行う。1999年、修士(芸術工学)。日本知能情報ファジィ学会論文賞受賞。
ITベンチャーで何か面白いことをやりたいと思い、公認会計士二次試験合格(2000年)後、監査法人トーマツで修業し、2004年より、ブルドッグウォータ株式会社を創業、経営。2015年、同社より、ツバイソ事業を会社分割により設立。日本公認会計士協会東京会常任幹事。
印具氏が開発したEAP“ツバイソ”とは?
子供の頃からプログラミングに親しみ、学生時代は理系大学院に進学し遺伝的アルゴリズムという計算アルゴリズムの研究を行っていたという印具(いんぐ)氏。
公認会計士として監査法人トーマツにて会計監査を経験の後、独立し、現在は独立しツバイソという、従業員100~1,000名程度の規模の企業をターゲットとしたEAP(エンタープライズ・アプリケーション・プラットフォーム)の開発・運営を行っている。
「エンタープライズ・アプリケーション・プラットフォーム」とは、プラットフォーム上で複数のアプリケーションが動くサービスであり、現在のツバイソは会計、販売・購買、人事労務などの情報を一元管理できるERPとしての機能をメインに提供しており、他にもグループウェアやナレッジベースなども稼働している。また、将来的にはCRMなどマーケティングオートメーション分野のサービスも提供していくなど、クラウド上で企業活動に必要なあらゆるアプリケーションがシームレスに利用できるサービスを目指しているという。
そんな印具氏がツバイソの構想に至ったのは、監査法人での経験を通じてだという。
ツバイソを開発しようと考えたきっかけになったのは、監査法人で上場企業やその子会社の往査に行っていた時の経験でした。
そこで、いろいろな企業のシステムを目にしたのですが、ずっとITに携わっていた自分の感覚からすると、上場企業といえども決して最新の技術で作られたシステムを利用しているわけではなく、むしろ少し古いのではと感じるシステムを使っている企業が多いということに気が付きました。そこで、これは会計士としての会計や業務プロセスの知識とITの専門性を使えば何かできるのではないか…と考えたのがきっかけです。
また、「中規模企業にとってちょうど良いERPがないことにも気付き、それを何とかしたいと思った。」とも印具氏は語った。
ツバイソは100~1,000名規模の企業を主なターゲットとしていますが、従来のアプリケーション市場には零細向けや従業員数人の小規模企業向けのものはあるものの、少し組織が大きくなり権限やワークフローを設定し会計まで繋げていこうとなると、急に重たいERPとなり、導入や利用に安くても数千万円や億単位の金額のものとなってしまいます。
そうなると、100~1,000名くらいの企業だと儲かっていなければペイしませんし、我慢してExcelで何とかこなしているという会社がたくさんあるので、そこを何とか良くしたいなと思ってツバイソを開発しました。
ITの進化によって中小企業向けコンサルの可能性が広がる
印具氏はITと会計士の関係に関しても語った。
ITというのはもはや特別なものではなく、読み書きソロバンのひとつに入っていて、まず最低限としてはパソコンとかエクセル程度はみなさん普通に使えると思います。ただ、その先にはまだ優位性が出せるところがあると思っていて、最近ではクラウドのサービスが増えてきていますから、クラウドのインテグレーションはひとつチャンスがあると思います。
顧客のニーズを聞いて、インテグレートして自動化して、数字が出てきたらそれを利用したコンサルをする。今までは割と中規模から大規模企業向けのものだったかもしれませんが、主に中小企業では、数字を作ることだけでも精いっぱいでその先のコンサルにはとても行けない…みたいなところが多かったですけど、数字が出てくれば、その先のもっと高度なコンサルができるようになりますので、そこに価値が生じて付加価値を出せていける時代になっていくと思います。
また、クラウドサービスで言えば、国内だけでなく海外のクラウドサービスも多数出てきているので、それを組み合わせるアンテナをちゃんと張ることによってお客さんに“この先生だったら、知らないことをいっぱい知っているよ”といった立場になると付加価値がより出せるとも思います。さらに価値を出すとなると、もっとプリミティブなテクノロジーのこと、例えば、プログラミングだったりデータベースだったり、ネットワークとかセキュリティとかそういった技術のところを分かって新しいサービスを考えていくと、会計士業務にも新しい市場が作れるのではと感じています。
公認会計士資格というのは知識の幅広くて専門性も高くて実はチャンスはいっぱいあると思います。例えば、私が今、システムを導入している中で、会計のところはなかなか外部の人が入り込めません。教科書に書いてあるものと比べて良いか悪いかぐらいならできますが、判断をしたり、これがあるべき、これが正しいと言うためには、そこの分野で相当の専門性がないと言い切れませんのでそのレベルまでできる会計士になるとチャンスも多い分野だと思います。
会計士がITやWEBサービスに詳しくなるためには?とにかくまずは利用してみることが大事
また、印具氏は、ITやWEBサービスに強い会計士になるためにはどうしたら良いのか?の問いに対して「まずは実際に利用してみること、そして、短期ではなく数年単位でリテラシーを上げていくことが重要」だとも語った。
私のまわりの会計士にもITやエンタープライズアプリケーションに詳しい人達がいますが、その方たちのキャリアを見ると、ベンチャーやIPO準備企業、もしくは、新興の上場企業などに入って、自社で使うアプリケーションを自分で探し選んで実際に使うということを繰り返してきています。短期ではなく、数年、5年の単位でそうゆうことを繰り返している人たちはユーザーとしてかなり詳しくなっていて、会計システムだけではなくマーケティングオートメーションなどの分野についても詳しくなっています。
と、まずは現場で経験を積みながら中長期的に詳しくなっていくのが良いと語った。
仕訳情報から融資が判断できる!?会計サービスの未来に見るFintech(フィンテック)の姿
■工藤 博樹(メリービズ株式会社 代表取締役)
カナダ生まれ。カナダ、シンガポール、フランス、日本育ち。2000年 東京工業大学修士課程修了 2000~2008年 日本IBM グローバルプロジェクトのプロジェクトマネージャーを担当。2008年 INSEAD MBA取得。経営戦略事務所にて大手企業向けに経営戦略をコンサルティング。2010年Locondo.jp立ち上げ。2011年スローガン新規事業パートナー、GREEグローバルアライアンス担当。
自身の苦労や周りの起業家の悩みから事務作業を楽にできるサービスを用意したいと考え、2012年2月にリブ株式会社(現在はメリービズ株式会社)で経理サービスのメリービズを開始。
テクノロジーを活用した記帳代行サービス“MerryBiz(メリービズ)”
東工大大学院を卒業し、日本IBMにて金融機関向けのITや国際関連のプロジェクトを経験後、フランス屈指の経営大学院・INSEAD(インシアード)でのMBAを取得し、ベンチャー企業の起ち上げや海外提携業務などの経験を持つ工藤氏。自身が起業する際に選んだサービスは、自身が起業の際に最も苦労した“記帳代行”であった。
工藤氏の運営するMerryBiz(メリービズ)は記帳代行サービスを提供しているが、一般的に会計事務所で行われている人力だけでの記帳と異なり、独自開発のシステムによって省力化・自動化されているという。
例えば、記帳を行う入力スタッフは、スキャンされた画像データとしてレシートや領収書の情報を受け取るが、そのデータは分割されてどの企業のものかわからないようクライアント情報が保護された形で入力スタッフに伝えられる。また、ひとつのデータを最低でも2名が入力し、そのデータが一致しなければ承認されないようにシステムが組まれており、記帳において起きるミスを防ぐ仕組みとなっている。さらには、スキャンされたレシートや領収書の画像情報をOCR(光学文字認識)によって文字データとして抽出し仕訳を行うという自動仕訳の仕組みも開発中であり、ほぼ完成段階にあるという。
こういったテクノロジーとの融合を目指すMerryBizの記帳代行サービスだが、その原点は、工藤氏が起業時に経理ができない自分を助けるために作ったものであり、それを利用した周囲の起業家の反応が良くそこから事業へと発展したのだという。
また、最近では、個人事業主や中小企業だけでなく税理士や公認会計士といった士業の利用も増えてきており、企業や会計事務所によって異なる様々な仕訳ルールや会計プロセスに対応できるさらにブラッシュアップされたシステムへと改変されてきていると語った。
記帳データから融資可否を判断!?Fintech(フィンテック)の可能性とは?
また、工藤氏は近年、注目を集めているFintech(フィンテック、金融系テクノロジー)についても触れ、「仕訳データが融資につながるような未来も十分に有り得る」と会場を驚かせた。
Fintechの話をしますと、現在そういった開発も徐々に行っているのですが、ゆくゆくは人工知能や機械学習の仕組みを作って会計業務をどんどん自動化していき、そのデータを使って金融サービスにつなげようと金融機関さんとも話しています。
例えば、海外では、AmazonさんなんかはAmazonのプラットホームに参加している店舗さんに対して融資しているんですね。普通の銀行さんが融資できないところになぜAmazonさんができるかというと、Amazon上での商品在庫の情報や販売の状況を把握することによってリアルタイムの棚卸資産や在庫の回転率など銀行さん分かり得ない情報を持っていて、それによってそこに対するリスクが取れるんですね。
我々は精緻な会計情報、例えば取引先やそこからの支払い情報などがすべて分かることによって、そういう情報を活用することによって金融機関さんと一緒に金融や融資サービスをやっていきたいと考えているのですが、海外のFintechの流れもそういうところがあって、実際にそういうサービスが実現できる可能性があるのかなと考えています。
生々しい話ですが、小さい企業さんだと金融機関さんから融資を受けるのが難しく、最悪、サラ金に手を出して…という話もあったりします。そういったところに対して、適切な信用度をもとに貸出ができる金融商品の開発を行っていきたいなと。
小さい企業もいずれはトヨタのような大きな会社になる可能性もあるので、財務面をサポートできるよう我々の会計情報、それもレシート単位でかなり細かい情報を使った金融サービスを提供するFintechも将来的にはやっていきたいなという想いもあって、起業家のみなさんがやりたいことに集中できる環境を作っていきたいという想いでMerryBizというサービスを運営しています。
とMerryBizの理念や将来の構想を語った。
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