このコーナーでは、“くわえもん”こと高桑昌也氏が、厳しく、優しく、ユーモラスに公認会計士のみなさんのお悩みに答えます!
さあ、みんなくわえもんに相談してみよう!
くわえもんとは?
高桑昌也 通称“くわえもん”
公認会計士・税理士
株式会社エスネットワークス
プリンシパル
麻布高等学校・慶應義塾大学卒。大学在学中の2000年に公認会計士2次試験に合格。中央青山監査法人、金融庁への出向、都市銀行でのデリバティブ業務を経て現職。さそり座O型。秋田県男鹿半島出身。
趣味:写真、旅行、夜の麻布・六本木
【参考サイト】
今回のお悩み:理系出身会計士ってメリットある?文理どちらから会計士を目指すのがいい?
今回の相談者
ふぃっしゅさん
※写真はイメージです。
相談内容
こんにちは!高校1年生です。
公認会計士に興味があります。文理選択で理系に行きたいと思っているのですがいくつか気になる点があります。
質問は3つあります。
(1)理系学部出身の公認会計士には何かメリットがあるか。
例えばエンジニアなどの資格を持っていて役立つことはあるのか。メリットがあるとすれば、どの理系学部がオススメか。
また、文系学部で公認会計士を目指すならオススメな学部はあるか。(メジャーなものも)
(2)大学在学中の2年間で公認会計士試験に合格可能か。理系学部だと厳しいか。
(3)公認会計士の将来性はどうなのか。IT化によってなくなったりする可能性はあるか。
本当に悩んでいます。宜しくお願いします!
くわえもんからの回答
ふぃっしゅさん、こんにちは!
最近若い方からの質問が増えていて、嬉しいくわえもんです。
そして今回は具体的な質問をいただいて、さらにうれしく感じています。
さて、早速お答えします。
(1)理系学部出身の公認会計士には何かメリットがあるか。
例えばエンジニアなどの資格を持っていて役立つことはあるのか。メリットがあるとすれば、どの理系学部がオススメか。
また、文系学部で公認会計士を目指すならオススメな学部はあるか。(メジャーなものも)
理系学部出身のメリットはあります。
私が公認会計士になった20年前はまだ「紙」ベースでしたが、現代においては会計も監査もデジタル化が進んでいます。仕事をパソコンで行うことが普通です。エクセルで難解なマクロを組んだりします。例えば株などの金融商品を「時価評価」といって、現在の価値で評価しなおしたりします。その場合、数学の知識やエクセルの知識が必要となります。
また、監査では顧客の使っているシステム(経理システムとか販売システムとか)について、IT監査を行ったりします。その場合、システムの中身がどうなっているのか、を理解する必要があるのですが、当然ITの知識が求められます。
その意味ではエンジニアと公認会計士の親和性は高いものと考えられます。
なお文系学部で強いていうなら、シンプルに商学部や経営学部が良いでしょう。簿記や原価計算など、会計士試験の科目と被る授業が多いためです。
(2)大学在学中の2年間で公認会計士試験に合格可能か。理系学部だと厳しいか。
大学の授業だけで公認会計士試験を突破するのは正直難しいです。現実的にはダブルスクールに通うことになります。
以下は、私の事例となりますが、参考までにどうぞ。
なおサラリーマンになるつもりは毛頭無かったので、就職活動らしきものは一切していません。3年次・4年次は会計士試験のための学習に集中しました。
- 大学1年次 サークル活動を満喫しつつ、簿記2級を取得。1日の勉強時間1~2時間。
- 2年次 秋でサークルは引退。後半から予備校に通い始める。1日の勉強時間3~4時間。
- 3年次 日商簿記1級に合格。1日の勉強時間7~8時間。
- 4年次 公認会計士試験合格。
(3)公認会計士の将来性はどうなのか。IT化によってなくなったりする可能性はあるか。
よくインターネットのニュースなどで「ITやAIによって会計士がなくなる」的な記事を見ます。
個人的な見解ですが、単純な記帳(仕訳の入力)や、簡単な税務申告あたりは、すでに自動化が進んでいる印象です。会計監査も単純な作業(エビデンスとの突合せとか計算突合)は、近い将来ITやAIに取って替わられてしまうでしょう。
将来的にもしばらく残るだろうと考えられるのは、「専門的かつ総合的な判断」が入るものです。
具体的には、プロジェクトのメリット、デメリットを定性的・定量的、多面的に整理し、企業の意思決定に関する助言を行う、という領域です。
例えば、製造業のクライアントが工場を1つ新設するかどうかのケースでは、
投資額がどれくらいになり、どれくらいのリターン(投資回収期間や利益率)があるのか
- 会計面で、企業に与えるインパクトは
- 税務面でのメリットは
- 法務面で留意すべき事項は
- 資金調達をエクイティ(手元資金)、デット(借入)のいずれで行うか
- 資金繰りにどう影響するか
- 従業員の雇用に与えるインパクトは
- IR(株価)に与えるインパクトは ・・・
など多面的に考慮し、新設するかどうかを決定します。
このような経営課題に対処するには、会計・税務・法務・経営の各側面での知識を総動員することが求められます。公認会計士試験ではこれらの科目が網羅されており、試験合格後実務経験を経たのち、このような経営課題に助言することを期待されています。
50年や100年先は分かりませんが、今のところAIやITを駆使しても、このような複合的かつ専門的な助言は難しそうです。
⇒くわえもんの“会計士の悩みはオレに聞け!” 過去記事一覧はこちら
くわえもんへのお悩み相談を募集しています!
『くわえもんの“会計士の悩みはオレに聞け!”』では、皆様からのお悩み相談を募集しています!
あなたのお悩みをお聞かせ下さい!くわえもんが回答します!
⇒お悩み相談への応募はこちら