イケてるスタートアップに必要とされる会計士になるには?若手会計士が語ったスタートアップ業界で得た知見【第9回・公認会計士ナビonLive!!(4)】



第9回公認会計士ナビon Live_舟波氏サムネイル

来る2019年3月16日(土)に東京・茅場町にて「会計士とプロフェッショナルキャリアの選び方」「会計士とスタートアップとHARD THINGS」をテーマに第10回・公認会計士ナビonLive!!が開催されます。

本記事では第10回の開催に向けて、今年9月に開催された第9回・公認会計士ナビonLive!!の内容を振り返ります。

第9回 公認会計士ナビonLive!!の第1部トークセッションでは、「会計士とスタートアップの関わり方」をテーマに、スタートアップ企業やその支援者として活躍する3名の公認会計士と、会計業界に精通した転職エージェントでもある公認会計士ナビ編集長が、公認会計士のキャリアについて語りました。

※本記事はセッションでの発言を一部補足・編集した記事となっております。

第9回 公認会計士ナビonLive!!
~会計士とスタートアップの関わり方/“フリーランス会計士”というキャリア~

【日時】 2018年9月1日(土)13:15~16:15
【場所】 FinGATE KAYABA
【トークセッション テーマ】会計士とスタートアップの関わり方
【登壇者】
・菅沼 匠(リンクパートナーズ法律事務所 パートナー/弁護士・公認会計士)
・舟波 大地(株式会社PrivateBANK コーポレートアドバイザリー部 部長/公認会計士)
・上森 久之(Wovn Technologies株式会社 取締役COO/公認会計士)
【モデレーター】
・手塚 佳彦(公認会計士ナビ編集長/株式会社ワイズアライアンス 代表取締役 CEO)

※登壇者の役職、肩書等はイベント開催時のものです。

本記事では、第1部トークセッション「会計士とスタートアップの関わり方」より、株式会社PrivateBANK舟波 大地 氏(公認会計士)のコメントをご紹介します。

PrivateBANK コーポレートアドバイザリー部部長・公認会計士・舟波 大地氏

舟波 大地
株式会社PrivateBANK
コーポレートアドバイザリー部 部長/公認会計士

2010年、大学在学中に公認会計士試験合格。太陽有限責任監査法人 金沢事務所に入所し、会計監査、内部統制監査、財務諸表作成支援などのコンサルティングに従事。2015年9月より東京にてフリーランスで複数のスタートアップを支援。テック系スタートアップを中心に、経理マネージャー代行として決算や予実管理、会計システム導入・運用、IPO準備の支援を行う。
2016年9月、株式会社PrivateBANK入社。コーポレートアドバイザリー部の部長として、日本を代表するエンジェル投資家やその投資先スタートアップの支援に従事。投資時の財務DDやバリュエーション、投資先スタートアップの資金調達、事業計画策定、管理体制構築などに携わる。また、エンジェル投資家が設立したベンチャーキャピタルの管理担当役員としてベンチャーキャピタルの運営も行う。石川県出身、立命館大学経営学部経営学科卒業。

※所属企業・役職等はイベント登壇時のものです。

イケてるスタートアップに行くのはイケてる人!?支援者側を選んだ理由は?

太陽監査法人での勤務を経て、フリーランスで複数のスタートアップを支援、その後、富裕層向け資産運用アドバイザリーファームであるPrivateBANK(プライベートバンク)に転職した舟波氏。現在は、コーポレートアドバイザリー部の部長として、日本を代表するエンジェル投資家たちの投資先であるスタートアップの支援やベンチャーキャピタルの役員としての業務にも従事している。

PrivateBANK コーポレートアドバイザリー部部長・公認会計士・舟波 大地氏

シードステージのスタートアップの支援者として豊富な経験を有する舟波氏だが、監査法人を退職してフリーランスで数社のスタートアップを手伝った後、支援者側のキャリアを選んだのは、なぜだろうか?その理由を語った。

私は、スタートアップの支援者なのか、スタートアップの当事者なのかを意識したことはなくて、色々なスタートアップが見られ、また、富裕層などの投資家側の視点も学べるという理由で現在の会社に転職しました。

もちろん、スタートアップ企業の中に入って働いてみたいという気持ちも当時はありましたが、私が転職を検討しているタイミングではここだという会社を選びきれなかったので、自分がここだという会社に出会った時に選んでもらえるような力をつけられる会社を選ぼうと思いました。

当時、フリーランスで少しスタートアップに関わってみて、業界の人の流れを見ていると、すごく伸びそうなイケてるスタートアップにはイケてる人が入社していて、じゃあ、監査と何社かスタートアップを手伝った程度の経験しかない今の自分がどこまでイケてる人材なのか?と考えると、もっと実力が必要だなとの結論に至りました。

おかげさまで現在は、エンジェル投資家の方等からも一緒に仕事をしないかと声をかけていただくことも増えてきました。今やらせていただいている仕事も自分のやりたかった仕事のひとつだったりしてとても楽しくやらせてもらっているので、とても充実しています。

会計士のやりきる力はスタートアップに向いている!?

数多くのスタートアップ支援を手掛けてきた舟波氏は、スタートアップ支援に向いている会計士についてこう語った。

よくある話にはなりますが、会計士だったり弁護士だったり、士業の人は専門家的な振る舞いをしがちです。なので、そういったマインドで仕事をしないだけでスタートアップの人たちとは馴染めると思います。

また、スタートアップでは、やりきる力が求められますが、私は、会計士はそういった点ではスタートアップに向いていると思っています。会計士はそこそこ難しい試験に受かる頭の良さを持っていて、それに加えて、真面目で帳票合わせなど地味で細かい仕事も完遂できる力を持っている人が多く、そこはとても貴重だなと思っています。そういった点でスタートアップには向いていると思います。

ですので、マインド面さえクリアしている人であれば、スタートアップ業界でうまくやれる可能性は高いのではないでしょうか。

上場会社に慣れている公認会計士にとって、未成熟なスタートアップの支援を行う際に戸惑うことも多いかもしれない。舟波氏はシード期のスタートアップ支援についても語った。

PrivateBANK コーポレートアドバイザリー部部長・公認会計士・舟波 大地氏

起業家の方と一緒に資本政策表を作成したりするのですが、シード期のスタートアップの支援では、エンジニアであったり学生で起業した人など、ファイナンスの基礎知識がない起業家と接することも多々あります。

そういった場合、ミーティングの前には「起業のファイナンス」を読んできてもらったり、専門用語をなるべく使わず噛み砕いて説明することも心がけています。

「このタイミングで30%のシェアを放出すると、この後のラウンドどうなっていきますか?」など、起業家が判断するのに必要な知識を提供しながら、自分で考えていけるようサポートするといった決して派手ではない部分もあります。

また、スタートアップのファイナンスについて言うと、私も最初はスタートアップ特有の投資契約がまったく分かりませんでした。投資契約書は外部に出ないので実務の中で理解する必要があるのですが、弊社の場合は非常に多くの投資契約に関わる機会があるので、契約書の条項であったり、どれくらいのバリエーションが妥当という相場観や参考値を知ることができました。

スタートアップに関する知見を高めるには、やはり生の情報に触れることが大事ですので、スタートアップ業界の知り合いを増やして、実務について情報交換をしながら勉強をするのも有益だと思います。

また、舟波氏は、スタートアップの支援と言っても必ずしも成長企業ばかりではないとも自身の経験を語った。

PrivateBANK コーポレートアドバイザリー部部長・公認会計士・舟波 大地氏

支援していたお客様から、「あと2か月ぐらいでキャッシュが底をつきそうです」と、拍子抜けするぐらい普段の様子で言われて、こちらの方が焦ったこともあります。

調達先も見つからず、何とかエンジェル投資家を見つけてきたものの、投資家の方にはリスクがあるのでその方のインセンティブを保つ条件を意識しつつ、一方で次のラウンドやM&AでのEXITも意識した調整もしなければならなくて大変でした。

最終的にその案件はM&Aがまとまり倒産は回避できたのでですが、そういった大変な経験もしています。

監査業務で得られる重要な知見とは?

スタートアップ業界に転職を考えているとき、監査法人でどのような知識を身につけておくべきなのだろうか。舟波氏が役立ったと感じたことや、会計士が活躍しやすいスタートアップの規模について、語った。

シードステージのスタートアップでは、経理まわりはすべて顧問税理士に任せていることが多いので、会計士が入るとしたら、もう少し後ろのステージのほうが役に立てると思います。

そういったステージの企業になってくると、実は監査法人での経験も活きてくるんですね。

私は、監査法人時代は地方事務所での勤務だったので、東京にたくさんあるような超大企業や超有名企業の監査には行っていませんでしたが、今日来ていただいている方はそういうところに行かれている方も多いと思いますし、そこでは内部統制や資料の管理ひとつとっても、おそらく教科書的なしっかりされたものを見ていると思います。

スタートアップを支援したり、スタートアップのバックオフィスで働いたりするとき、どう考えるかと言うと、教科書的な、最も理想的なところから、その会社の規模やステージにあわせて引き算をして、その会社に必要なものは何かと判断していくので、監査でちゃんとした大企業を見てきた経験というのはとても役立つと思います。

意外と重要!?SNSでスタートアップ転職の成功確率を上げる

スタートアップへ転職するに当たって「スタートアップの見極めで失敗したくない」ということを考える人は多いだろう。舟波氏はスタートアップへ転職する際のポイントについても語った。

PrivateBANK コーポレートアドバイザリー部部長・公認会計士・舟波 大地氏

スタートアップは経営者次第なので、社長の語るビジョンと合うかどうか、社長と一緒にやっていけると思えるかどうかはポイントになってきます。

また、どんな企業や経営者であるのかリファレンスをとる(知り合い経由で確認する)ことは大切です。

私も転職の相談を受けることがありますが、スタートアップに転職する人の中には「よく分からないけど、キラキラしているからこの会社にしよう」という人が多く、リファレンスを取っていない人も多く見かけます。その企業や経営者を知っているなど業界の人に意見を聞くことを繰り返して、情報の確度をあげていくことが、転職で失敗しないために大切だと思います。

あと、些細な話ですが、FacebookやTwitterなどSNSの利用をきちんと行うことも意外と重要です。

例えば、Facebookのプロフィール写真。私も昔はそうだったのですが、これが自分の写真ではなく誰だかわからない写真になっている人もいると思います。

スタートアップはSNSを活用している人が多いので、これが自分の写真になっていたら、会う前に経歴や共通の知人をチェックしたり、会った後もFacebookでつながって、そこから話が広がり親しくなれたりもしますし、コミュニケーションを効率的に行えます。

自分だとわからないような写真だったり変な写真だったりすると、そういった機会もロスしますし、採用する企業からもセンスがなさそうに見られる場合もあるので、そういったところから意識しておくほうが良いと思います。

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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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