公認会計士の転職と景気の関係は?:会計士のキャリア小六法 第3回

  • 2013/12/23

 

第1回と第2回では、公認会計士の転職に影響を与える内的要因について解説しましたが、今回は景気などの外的要因について解説します。

転職時期を検討するにあたっては、一般的には「景気の良い時に転職しよう」というのが通説ですが、公認会計士に関しては専門性の高い業界であることから、もう少し踏み込んで外的要因を分析することができます。

この公認会計士の転職に影響を与える外的要因には下記の3つがあります。

  1. 全体の景気
  2. 会計業界の景気
  3. 志望業界の景気

それぞれについて解説すると以下のようになります。

1.全体の景気

景気の状況に関してはシンプルで、以下のように考えられます。

  • 景気が良い⇒求人が多く転職しやすい
  • 景気が悪い⇒求人が少なく転職しにくい

2.会計業界の景気

会計業界の景気に関しては、会計ファーム(主に大手監査法人)での公認会計士ニーズがどうなっているかによって以下のように考えられます。

  • 会計ファームが人材を必要としている(採用を積極的に行っている)

⇒転職市場に公認会計士が少ない

⇒求職者(売り手)優位、採用側(買い手)不利な環境

⇒転職しやすい

  • 会計ファームが人材を排出している(ほとんど採用していない)

⇒転職市場に公認会計士が多い

⇒採用側(買い手)優位、求職者(売り手)不利な環境

⇒転職しにくい

3.志望業界の景気

志望業界の景気に関しては、ほとんどの場合で1の全体の景気と連動しますが、まれにその業界のみ景気が良い(悪い)場合、もしくは、特定のスキルを有した人材のみ求められているといったケースがあります。

例えば、近年では、日本全体がリーマンショック後の不景気をやや引きずっている中でソーシャルゲームやアプリの業界のみが好景気であったようなケースです。

 

外的要因が公認会計士の転職に影響を与える具体例

それでは、この外的要因が公認会計士の転職にどのように影響を与えるのか具体例を見てみましょう。

今回、2008年から2011年までの転職市場を例に挙げてみます。 

【2008年~2011年の全体の景気】

  • 2008年(前半):好景気
  • 2008年(後半):リーマン・ショックにより不景気
  • 2009年:不景気(どん底)
  • 2010年:不景気(2009年よりかは回復)
  • 2011年:不景気(2010年よりかは回復)

例えば、上記のように全体の景気だけ見ると、2009年から2011年にかけて景気が緩やかに回復しているため、一般的には2009年よりも2010年が、2010年よりも2011年が転職に適していることになります。

ここに会計業界の景気を加えてみましょう。

【2008年~2011年の会計業界の景気】

  • 2008年(前半):好景気
  • 2008年(後半):大量の合格者を大手監査法人が採用(リーマン・ショック直後は影響なし)
  • 2009年:不景気の始まり(大手監査法人の業績が悪化し始める)
  • 2010年:不景気、大手監査法人のリストラ(その1)
  • 2011年:不景気、大手監査法人のリストラ(その2)

会計業界に関しては、リーマン・ショックからやや遅れて影響が出てきており、2010年と2011年の大手監査法人のリストラによって公認会計士が転職マーケットに大量に放出されます。これにより、マーケットに公認会計士が溢れ、2010年~2011年にかけてが最も転職に不向きな環境となりました。

このように全体の景気と会計業界の景気を比較するだけでもずれが見られます。

そして、ここに志望業界の景気を加えてみます。

今回は、FASを例に挙げます。FASとはデューデリジェンス(DD)やバリュエーション(VAL)などM&Aや企業再生などに係るファイナンシャルアドバイザリーサービスのことを指します。FASは会計業界にも含まれますが、若手会計士の転職先として人気が高いので例として取り挙げてみようと思います。

【2008年~2011年のFAS業界の景気】

  • 2008年(前半):好景気
  • 2008年(後半):リーマン・ショック直後の影響は軽微(継続中の案件があるため)
  • 2009年:不景気の始まり(M&AやIPOの追加案件がストップ、FASの業績悪化)
  • 2010年:2009年に続き不景気
  • 2011年:2010年よりやや回復か横ばい。日本企業のクロスボーダー(海外)M&Aが増加し、大手FASでは英語力のある人材のみ採用ニーズが高まる。中小FASでは企業再生関連の人材ニーズがやや増加。

FAS業界に関してもリーマン・ショックの後、景気が大きく悪化しました。

その後、2009年~2010年で底を打ち、2010年から2011年にかけてはやや回復か横ばいのイメージでした。

一方で、2011年あたりからは、内需縮小や円高に伴い、日本企業が海外で積極的なM&Aを展開したことから、クロスボーダー案件を手がける大手FASでは英語力を必要とする案件にアサインできる人材へのニーズが高まりました。また、中小のFASでは、企業再生関連の人材ニーズがわずかながら高まりました。

このように、リーマン・ショック後の転職マーケットに関して、全体、会計、志望(FAS)業界3つの状況を総合してみると、世間一般的には2011年くらいには転職活動をしてもよい景気状況になりつつあるのですが、会計業界においてはあまり好ましくない状況となっていました。また、FAS志望者に関して言えば、英語力がある会計士であれば2011年は転職活動を行うのに悪くはなく、英語力がない会計士の場合はもう少し景気が回復してからのほうが好ましかったと言えるわけです。

 

次回は、転職適齢期のまとめとして、これまでにお伝えした「内的要因」と「外的要因」の両方を合わせた転職適齢期の判断の仕方について解説します。

公認会計士の転職適齢期 まとめ:会計士のキャリア小六法 第4回

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