『コンサルティング』という仕事は公認会計士の間でも人気の高い職業です。しかし、ひと言にコンサルティングと言っても、会計、財務、税務、経営、戦略、、、とジャンルは様々であり、それぞれの分野にどのような違いがあるのか、実際の仕事はどのような内容なのかということを理解する機会はあまりありません。
今回、大手経営コンサルティングファームである山田ビジネスコンサルティング様にご協力を頂いて、大手監査法人から山田ビジネスコンサルティングに転職をされたおふたりの公認会計士に経営コンサルティングの仕事についてインタビューさせて頂きました。
今回のインタビューにご協力を頂いたのは、以下のおふたりです。
牧村さん(30代・男性・公認会計士)
2002年、公認会計士試験合格。
大手監査法人の国内監査部門のマネージャー職を経て、2011年、山田ビジネスコンサルティングに入社。
石田さん(20代・女性・公認会計士)
2006年、公認会計士試験合格。
大手監査法人の国際金融部、国内監査部門のシニアスタッフ職を経て、2012年、山田ビジネスコンサルティングに入社。
-本日はおふたりへのインタビューを通じて、経営コンサルティングの仕事内容や監査法人との違いについてお伺いしたいと思いますが、まずは現在のおふたりの仕事内容を教えて頂けますでしょうか?
牧村:私は、今は、オーナー企業の組織再編や成長戦略の立案を支援するプロジェクトを行いながら、それに付随してデューデリジェンスや財務や税務の相談、海外工場の改善支援などを行っています。
石田:私は、成長企業の事業承継や管理体制構築支援、業績が伸び悩んでいる企業の経営改善や業務改善等に従事しながら、提携の会計事務所での税務申告などの業務にも関わっています。
-おふたりとも幅広い仕事に携わっておられますね。
牧村:そうですね。山田ビジネスコンサルティング(以下、YBC)は企業再生案件が多いイメージで入社したのですが、実際はかなり幅広い仕事に携わっていて楽しく仕事をさせてもらっています。
-おふたりは、監査法人ではどんな仕事をされていたのですか?また、転職を考えたきっかけは何だったのですか?
牧村:私は監査法人では国内監査部門に所属して、国内の上場企業の金商法監査や内部統制監査を行っていました。デューデリジェンスなどアドバイザリーの仕事も少ししましたが、ほとんどは監査の仕事でした。最終職位はマネージャーでしたので、金商法監査のインチャージも経験したのですが、実は監査で担当した会社が2社も倒産して、1社は上場会社で、もう1社は上場を目指している会社だったのですが、そうゆう経験もあって企業の役に立てるコンサルティングにチャレンジしたいという気持ちがありました。あとは、これは会計士には多いかもしれませんが、会計士試験に合格して監査法人に入った時から漠然とですが「ずっと監査を続けるわけではないんだろうな…」とは思っていたのもあって、徐々に気持ちが転職へと向いて行きました。
石田:私は最初は国際金融部に所属していたので、メガバンクの監査をUS基準で行っていました。その後、国内監査部に異動する機会があったので、金融以外の業種にもチャレンジしてみたくて手を挙げて、メーカーや商社の監査を担当しました。シニアスタッフだったので、会計監査や内部統制監査を中心に現場主任も経験させてもらいました。
転職を考えたのは前職の監査法人が希望退職を行ったのがきっかけだったのですが、実はその時には応募せず、そこから数ヶ月経ってから転職することに決めました。当時はシニアスタッフになって数年が経った頃で、このままマネージャーに昇格して上に行くのか、監査法人の外に出て別のキャリアを選ぶのかを考えないといけないタイミングでもあったのですが、監査法人での自分の経験を振り返った時、小規模なクライアントを担当していた時が会社の全体像を見ることができて面白かったので、中小企業を見られる仕事に就きたいと思って転職を考え始めました。
-公認会計士だと転職する際にコンサルティングだけでなく一般事業会社での経理や財務、アドバイザリーファームでのFAS、会計事務所での税務などいろんな選択肢があると思いますが、おふたりが経営コンサルティングの仕事を選ばれたのはどんな理由だったのですか?
牧村:私の場合、監査を行っている時から経営に関するアドバイスをしたいなと思っていたのですが、特に往査で支店や工場などに行くと現場の方々と監査や会計以外の話をする機会があって、それに対して自分なりに考えて意見をすると、それがすごく参考になると言ってもらえたりして、そうゆうのが面白くてもっと経営に踏み込んで話ができたらという思いがありました。監査法人で5~6年目、シニアスタッフの頃ですかね。それで転職するなら経営コンサルティングだと思っていました。
-コンサルティングファームは他にもいろいろありますが、その中でもYBCがいいと思った決め手はあったのですか?
牧村:面接官の印象が良かったり、最初に内定を頂けたりとYBCに決めた理由はいろいろあるのですが、当時、一番興味を惹かれたのが「他よりもコミュニケーション能力や営業力が鍛えられるファームだ」というところでしょうか。そもそも私が公認会計士を目指した理由のひとつに「公認会計士なら専門知識を武器にできるし、コミュニケーション力をあまり問われなさそうだ」というのがありました。ただ、監査法人に入ってみると最終的には上に上がっていくには、クライアントに対して営業や提案ができる力が重要であることに気づいて、転職するにしてもコミュニケーション能力や営業力を磨ける環境のほうがいいと思ってYBCに決めました。
実際、入社後は自分より年上の経営者と接する仕事がほとんどなので、コミュニケーション能力や提案力は磨かれますし、幅広い仕事で視野も広がっていい経験を積めていると思います。
-石田さんの方はいかがでしょう?経営コンサルティングやYBCでの仕事を選んだのはどのような理由からだったのですか?
石田:実は私は、転職活動を始めた時は中小企業向けに税務をやろうと思っていたんです。「中小企業の相談にのるなら税務だろう」って思って。なので、転職活動のときに受けていたのも全て税理士法人だったのですが、ひとつくらい違うところを受けてみようかなと思って夫に相談したところ「中小企業の経営相談がしたいならこの会社面白そうじゃない?」と言われて受けてみました。最初は経営コンサルティングをやってみたいとは全く思ってなかったんですよね(笑)
ただ、面接に行ってみたら他にいくつか受けていた税理士法人とは雰囲気が全然違っていて、働いている人たちがみんな楽しそうで、バイタリティもあって活き活きしていたし、面接結果もすぐ連絡が来て意思決定のスピードも速いなと。仕事も企業再生や事業承継、成長企業の戦略立案などいろんなことをやっていましたし『面接に行った会社の中でYBCが一番わくわくした会社だった』というのが決め手になりました。
-なるほど。けれども、コンサルティングってハードワークなイメージがありますが、入社前にその辺は気になりませんでしたか?特に女性だと家庭との両立が気になる人も多いと思うのですが。
石田:確かに少しは気になりました。ただ、税理士法人の面接で記帳代行や決算支援などルーチンに近い仕事が多いと聞き、YBCではそうではないもっと変化のある仕事をできることに魅力を感じていたのと、体力や気力には自信がある方だったので頑張れるんじゃないかなって思っていました。あとは、本当の本当に無理だった時は辞めたらいいかなって気持ちで飛び込みました(笑)
-実際、YBCで働いてみて仕事の内容や忙しさはどのような感じですか?
石田:私の場合、忙しさで言うと、監査法人での仕事も忙しかったので、時間的には監査法人と同じくらいでしょうか。ただ、監査法人のように繁忙期と閑散期が明確な仕事ではないので、忙しい時期とそうでない時期は読みにくいかもしれません。あと、監査法人の場合は家に仕事を持って帰っていたのが、YBCでは仕事の持ち帰りは行わないので、そう言った意味では会社にいる間に集中して仕事をやり切れるのは良い点だと思います。
牧村:私のイメージだとYBCでは監査法人の1.5倍くらいの仕事をしている感覚ですかね。あ、労働時間が1.5倍という意味ではありませんよ(笑)仕事の内容やレベル、スピード、時間など全て合わせて監査法人の1.5倍くらいのパワーで仕事をしている感じです。経営には明確なゴールがないので、「ここまで提案したら終わり」というのがなく、お客さんのためと考えるとやれることは尽きないですし、様々な知識が必要とされるため勉強量も多いです。
-なるほど。監査法人よりも業務の濃さが違うわけですね。例えば、具体的にはどういった時に特にそう感じますか?
牧村:そうですね、例えば、最近の仕事だとグループ20社を有する未上場のオーナー企業の再編に関わっていますが、「組織再編」と聞くと公認会計士の中には「会計や会社法、税務のスキームを検討して…」とイメージされる方が多いと思います。実際、監査法人や会計事務所で組織再編業務に従事する場合はそうかもしれませんが、YBCの場合は経営コンサルティングなので、財務や戦略面まで踏み込んで話をしています。60歳とか70歳のベテランの経営者の方を相手に「再編の際の資金調達をどうするか」「事業戦略を考えるとこのスキームが良いが、税務を考慮するとそうはできない、じゃあ、どうするのか、、、」など経営や財務、税務と多面的な話をしますし、時に複数の親族が株式を持ち合っていたりすると、親族の人間関係まで含めて相談にのりながらスキームを考えていくこともあります。監査法人でも経営者と接する機会はありましたが、今は経営者と話す内容の深さも頻度も全然違っていて、そこが大変でもあり面白い部分でもあります。
-石田さんはいかがでしょう?監査法人の仕事と比較してどうですか?
石田:私の場合、監査法人での経験が活きていると感じている部分もあります。現在、未上場企業の業務改善プロジェクトに従事していて、例えば、受注、出荷、売上計上、債権回収といった販売業務のプロセス見直しや新たな仕組みづくりを行っているのですが、これには監査法人での内部統制の経験がプラスになっていると感じています。内部統制監査を通じて「大企業のあるべき管理体制」をいくつも見てきているので、現在の仕事でも「あ、この企業はここができていないな」とか「こうゆう管理体制を作るほうがいいな」といった点がイメージできるので、監査法人での経験に助けられている部分もあります。
-今の石田さんのお話だと、監査法人での内部統制の経験は活きたということですが、逆に監査法人での知識や経験では足りなかった部分ありますか?
牧村:そう言った部分でいうと、知識面ではほぼ全てイチから勉強する必要がありました。例えば、財務や再生スキーム、再編税務などは監査では使わなかった知識ばかりです。
石田:そうですね。監査では会計の知識を一番使いますが、中小企業の経営コンサルティングだと逆に会計の知識はほとんど使わないと言ってもいいかもしれません。なので、監査法人にいたときより「自分はまだまだ何もできていない」「もっと勉強しないといけない」と感じることは多いです。
牧村:プロジェクトのたびに知らないことが出てくるので当然、勉強することになります。やはり座学で学んだことよりも実務を通じて学ぶ方が身につきやすいかと思います。でも、じゃあ、「いつになったら勉強しなくてよくなりますか?」と言うと、唯一の正解というのはないですし、企業によって似たような課題でも解決策はそれぞれ違いますので、何年この仕事を続けたとしても、自分の知識はまだまだ足りないと思って学び続けるんだろうなと感じています。
-経営者にコンサルティングを行うということは、自分自身も常に向上し続けなければならないわけですね。そういった中でどういったところにやりがいを感じますか?
牧村:自分の仕事がクライアントの事業に影響するところですかね。例えば、資金調達に成功するかどうかでクライアントの命運が変わってくるなど実業に大きく影響があります。しっかりと結果を出せばクライアントからの信頼も実感できるので、そこが一番のやりがいです。
石田:そうですね。監査法人の時は監査人という立ち位置で外部からの関与だったのですが、今の仕事ではクライアントの仲間のひとりとして一緒に経営に取り組める仕事だなと感じています。今、自分がしていることがお客さんのどこに役だっているかがとてもよくわかります。
私の場合、事業承継案件にも従事していて、社長の右腕や後継者といった30代、40代の方と接することが多く、監査法人のときと同じ年代の人達を相手に仕事をしているのですが、立ち位置が違うだけで仕事へのやりがいがこんなにも違うんだなって実感しています。
-おふたりの言葉からはコンサルティングのやりがいや楽しさが伝わってきますが、経営コンサルティングでクライアントの期待に応えていくためにはどういったことが重要でしょうか?
牧村:経験を積むことと知識を身に付けるための勉強の両方をしっかりと行うことでしょうか。経営コンサルティングに携わってみて強く感じているのが、経営というのは利益を出さなければなりませんが、利益を出すということは専門知識もそうですが経験や考え方も重要で、それは場数を踏む中で身に付く部分があるかと思います。かと言って、知識が不要かと言えばそうではないですから、本もたくさん読まなければなりませんし、さらには経験や知識から判断した内容をどうやってお客様に伝えるかも重要で、クライアントに説明する力も必要とされます。
石田:経験を積むことやとことん考えることは私も重要だと感じています。監査をしていたときと大きく違うのが、監査ではわからないときは会計基準や監査基準など指針やマニュアルがあって、そこに答えやヒントが書いてあることもあるのですが、経営には正解がないので、自分で考えて答えを出さなければなりません。私自身もものすごく考えて結論を出したつもりでも上司から「まだまだ考えが足りない」と指摘されることも多いですね。
牧村:そうですね。細かいところまで突っ込んで考えたり分析したりしないといけない状況は多いですね。例えば、海外事業が赤字の製造業があったとします。ざっと数字を見れば赤字であることのだいたいの原因はわかりますが、それであれば私達は必要ありません。そこからさらに細かく数字を分解して、問題点を見つけ、本当の原因はどこかを検証し、その上で改善するための方法を考えていくのが私達の仕事です。一方で、監査と同様に「クライアントの言うことに疑問を持ちながら事実を客観的に検証する」という姿勢も重要です。監査の世界で言われる職業的懐疑心ですね。良い意味でクライアントの言葉を疑うというか、クライアントが認識している事象が客観的にもそうなのかを検証するのは経営コンサルティングでも同じだと感じています。
-なるほど。経営コンサルティングという新しい分野にチャレンジしながらも監査の経験が活きている部分もあるのですね。そう言った努力もある中で、これからおふたりが身に付けたいと考えている知識や経験はありますか?
牧村:今の仕事を通じてやはり税務は奥が深いなと感じているので、より税務に詳しくなりたいと思っています。組織再編や国際税務など面白いですね。あとは病院など医療分野のコンサルティングにも興味があるので、社内でチャンスがあればチャレンジしたいなとは思っています。
石田:私は、今やっている事業承継や企業の成長戦略を支援するような案件にもっとチャレンジしてみたいと思っています。相続税対策などの税務相談対応についてはもちろんですが、「この会社の業績がいいのは創業社長が経営しているからだ」と言われている企業に対して、後継者の方と一緒に力を合わせて、創業者が引退しても引き続き好業績を出せるような仕組みを作るなど、物的承継と人的承継の両方に対応できるようになりたいと思っています。知識と経験をもっと身に付けて、お客さんの役に立つものを引き出せる人になりたいですね。
-では、最後に経営コンサルタントを目指す公認会計士の方にアドバイスやメッセージはありますでしょうか?
牧村:経営コンサルタントを目指すのであれば、経営のフレームワークなどの基礎知識は役に立つので身に付けておくと良いと思います。また、エクセルとパワーポイントのスキルも高めておいて損はないと思います。細かいところではありますが、まず入って非常に出来ない自分を痛感した部分でもあるので。
ただ、経営コンサルティングの仕事は今日お話させていただいたとおり、座学では学びきれません。私自身もはやくコンサルタントとして一人前になりたいと思っていますが、これはゴールがあるわけではなく、ずっと思い続けていくと思います。そう言った仕事だと思ってチャレンジしてもらえればと思っています。
石田:監査法人から外に出てみて感じたのは、監査を通じて学べることでコンサルティングに役立つことは意外と多いということです。監査を通じて、会社の仕組みやシステムに関する知識、経理業務の仕組み、数値管理の手法など、企業のあるべき姿を学べるのは監査のいい点だと思います。そういったことを意識しながら監査に取り組むと将来の役に立つでしょうし、私もそうゆう目線で監査に取組めていればよかったなとも思います。
また、周りを見てみると監査法人で一緒に働いていた同期も、最初はみんな同じ所からスタートしたのに、ほんの6~7年の間にみんな違うところにいて、それぞれがやりたいことを見つけてそれに取り組んでいます。自分自身も今、楽しいと思えることをやっていますし、みなさんにも楽しいと思えることを見つけて貰いたいなと思っています。
(終)
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