2022年7月1日より、PwCあらた有限責任監査法人はアドバイザリー部門を再編しました。本記事で特集しましたFRA(財務報告アドバイザリー)部門に関する最新の記事は下記をご参考ください。
→PwCあらたが業界最大級の新生アドバイザリー部門を発足へ! 新 FRAが掲げる「CFOの課題を解決する組織」と「会計士の新たなキャリア」とは!?
「公認会計士として専門性を身に付けたい」「金融業界であれば専門性が高そうだ」。そう考える一方、監査法人の金融アドバイザリー部門について、「金融機関ばかりがクライアントだと経験が偏ってしまうのでは?」「大手監査法人のアドバイザリー部門は忙しいのでは?」などと捉えてしまっている会計士もいるだろう。
同じ大手監査法人のアドバイザリー部門と言っても、組織が異なれば当然、顧客の顔ぶれも労働環境もさまざまだ。PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)の会計アドバイザリー部門の実態はどうだろうか。
同法人にて金融業界専門のアドバイザリーサービスを担う、金融 財務報告アドバイザリー部のパートナーである米国公認会計士の長沼宏明氏。そして、シニアアソシエイトとして現場をよく知る米国公認会計士の吉田祐人氏と公認会計士の武田勇人氏を迎えたインタビューは、組織風土をそのまま表すかのような、笑いの絶えない和やかでオープンな場となった。
『デジタル』と『グローバル』で事業成長を遂げると共に、会計アドバイザリー部門としては、業界最大級の組織へ
会計アドバイザリーは、監査法人が古くから提供してきたサービスのひとつだ。しかし、監査法人の中で、いち早く部門化し、伝統ある会計アドバイザリー部門を有するのは、実はPwCあらただということをご存知だろうか。
2006年、同法人が設立されると同時に金融 財務報告アドバイザリー部(FS FRA/Financial Services Financial Reporting Advisory)は立ち上げられ、2020年までの14年の間に、メンバーは220名を数えるほどに。組織規模としても、業界最大級となった。さらには、業績も好調。GDPがマイナス成長と言われる厳しい環境下において、前年比を20%以上上回る成長を実現しているというから驚きだ。
今最も力を入れているのは、『デジタル』と『グローバル』。なぜなら、クライアントの大きな課題がそこにあるから
そう語る、金融 財務報告アドバイザリー部、通称FS FRA(エフエス エフアールエー、エフエス フラ)を率いるパートナーの長沼氏に、事業と組織の両面で、なぜこれほどまでに成長を遂げられているのかを聞いた。
長沼 宏明
PwCあらた有限責任監査法人
金融 財務報告アドバイザリー部/パートナー
米国公認会計士
1998年中央監査法人国際部に入社、その後、あらた監査法人(現、PwCあらた有限責任監査法人)に移籍。2007年~2009年のPwC米国法人 ニューヨーク事務所への赴任中に、激動のリーマンショックを現地で体験する。日本への帰任後は、それまでの会計監査からアドバイザリー業務にキャリアチェンジ。現在はメガバンクに対し、IFRS対応や金融規制対応など、国際的な大規模アドバイザリープロジェクトを提供している。
FS FRAの特徴をパートナーである長沼氏はこのように語る。
FS FRAのクライアントは、メガバンクをはじめとした国内の金融機関を中心に、近年ではグローバルに展開する情報通信業など、顔ぶれは幅広く多様になっています。ただし共通してフォーカスしているのは、単に会計処理に関してアドバイザリーを行うだけではなく、BPR(Business Process Re-engineering)、つまりクライアントの業務をリデザインするということです。
「Excelおばけ」と表現されることもあるように、Excelを駆使するスタッフによる人海戦術で、決算業務を乗り切っているケースは、意外かもしれないが、大企業でも多く見られる。しかし、チェック業務に人的リソースを割けなくなってきた今だからこそ、『デジタル』と『会計士の知見』の掛け合わせが、強く求められている。FS FRAのメンバーたちは、クライアントの決算プロセスを、BPRといった近代テクノロジーを活用した効率的な体制へとリデザインしていくのだ。
さらに、と長沼氏が付け加えたのは、『グローバル対応』についてだ。
海外の金融機関の買収プロジェクトでは、FS FRAが、日本の会計への知見のない現地金融機関との会計PMI(Post Merger Integration)をリードする。PMI完了後の決算業務や内部統制まで請け負うのも特徴だ。
海外に子会社があるクライアントも多いため、金融機関は、リデザインした日本の仕組みを海外へもロールアウトしていかなければいけない。本社の業務フローを熟知し、さらにはグローバル組織にも難なく対応できるのは、私たちならではだと自負しています。
多様なバックグラウンドを持つメンバー、育休も職場復帰も当たり前のカルチャー
FS FRAは、メンバーのバックグラウンドも多様だ。監査部門から異動や転職をしてきた公認会計士はもちろん、事業会社の経理部門や金融機関の出身者、必ずしも会計系資格者に限らない金融やデジタルの専門家など、そのバックグラウンドは多岐にわたる。
会計士試験に合格後、新卒としてFS FRAを選び、現在はIFRS関連のプロジェクトに従事する武田氏は、監査ではなくアドバイザリー部門への配属を希望した理由をこう語った。
監査には大きな社会的意義があると思いつつも、早く目の前のお客さんの役に立ちたいと考えたんです。
武田 勇人
PwCあらた有限責任監査法人
金融 財務報告アドバイザリー部/シニアアソシエイト
日本公認会計士協会準会員
2015年、公認会計士論文式試験合格。2015年よりPwCあらた監査法人(現、PwCあらた有限責任監査法人)、FS FRAにて金融機関を中心としたアドバイザリー業務に従事。大手金融機関のIFRS適用支援に従事。主に、デリバティブ領域を担当し、会計方針の策定支援や業務プロセスの構築、決算プロセスの効率化/標準化支援を担当。
監査業務であれば、例えば、現金勘定の担当からはじまり次は固定資産というように、難易度を意識しながら業務をステップアップさせ、スキルアップを実現していく流れがイメージしやすい。では、アドバイザリー業務はどうだろうか。
FS FRAではワンタイムのプロジェクトも少なくないので、監査業務のように、順を追ってひとつひとつの科目を担当していくことは難しい傾向にあります。
しかし、圧倒的に専門性は付いている実感があります。例えば、金融商品についても早いうちから経験できましたし、早くから専門性や強みが作れることは、メリットだと思います。
と、武田氏はキャリアの手応えについて語った。
上場の専門商社で経理経験を積みながら、専門性を高めるためにUSCPAを取得したのですが、その後のキャリアとしてアドバイザリーに活路を見いだしたのは、会計の専門性で企業の経営を支援してみたいと思ったからなんです。
とは、吉田氏の言葉だ。
吉田 祐人
PwCあらた有限責任監査法人
金融 財務報告アドバイザリー部/シニアアソシエイト
米国公認会計士(ワシントン)
2005年、鉄鋼・機械を主に取り扱う中堅商社へ入社。経理部門に新人配属されて以来約13年間一貫して主計・財務業務に従事し、連結・単体決算、法人税等各種税務申告、資金繰りや為替リスクマネジメント、海外子会社決算サポートやIFRS導入検討業務などを幅広く経験した。
2018年2月にUSCPA最終科目合格。同年11月にPwCあらた有限責任監査法人に入社。FS FRAにてメガバンクへの米国基準および日本基準財務報告支援業務に従事。
『金融』というと、特殊な会計処理のイメージも強いですが、多岐にわたる金融商品やそれにまつわる会計処理への深い理解を通じて、例えば他の業界にも通じる金利や為替、取引先の信用等のさまざまなリスクに対する考え方や具体的なリスクヘッジ手段についての知見などを深めることができ、突き詰めていくと経営につながる要素も多いと感じています。そういった専門性を身に付けられることは、やりがいのひとつです。
現在、米国基準でのレポーティングを中心とした業務に携わっている吉田氏だが、現在のプロジェクトにおいては、年に2回の決算期は多忙になるとした上で、繁忙期を抜ければ、18時にはオフィスを出るほどの落ち着きもあると明かした。
FS FRAでの仕事は、アドバイザリーという業務の特性上、時に忙しい日々が続くこともあるが、勤務実態としては、平日に休みを取ることもできるなど、各人がバランスを取っているそうだ。
さらに吉田氏は、第一子が産まれた際のエピソードも披露してくれた。
子供が産まれるということがわかった途端、チームのみんながカバーするから大丈夫だと言ってくれ、無事に出産に立ち会うことができました。さらには、1ヶ月間の育休もいただく予定になっています。
上司からは、「仕事はもちろん大事だが、人生でもっと大事なのは家族だから」と送り出されたというが、吉田氏のケースは、PwC Japanグループにおいては何も珍しいことではない。現在、男性の育休取得率100%を目指し取り組みが進んでおり、有給休暇についても、人事が奨励する前にほぼ全て取得済みという実態がある。集中して良い仕事をすることはもちろん、充実した休日・休暇を過ごすこともまた、当たり前なのだ。
人事制度そのものは、他のBIG4監査法人と多少の差はあれども、大きくは変わらない。しかし成果のひとつとして、こういった各種休暇の活用や、出産や育児の休暇を経て、ほとんどの女性社員が復帰し活躍している実態がある。「そういった意味でも、カルチャーが根付いてくれているのかなと思っています」と、長沼氏は目を細めた。
パートナーやマネージャーがメンバーのキャリアに向き合う、『個人ストーリー』という仕組み
FS FRAには、事業だけではなく組織づくりにおいても特徴的な取り組みがある。
目の前の業務に集中しがちな現場では、上長に対して、メンバーの中長期的なキャリアパスを考えることを求めたとしても、実際はなかなか難しい。大手ファームに勤務し、そういった思いを経験した会計士も少なくないはずだ。
それならば、仕組みで支えようとFS FRAで始まったのが、『チームストーリー』と『個人ストーリー』だ。
『チームストーリー』とは、14ある各チームのビジネスの計画や将来像で、マネージャークラス以上の面々によって立案され、実行に移される。『個人ストーリー』とは、メンバーひとりひとりの希望やキャリアプランのことで、メンバーからマネージャーたちに伝える機会が設けられている。
個人ストーリーの内容は、異動やアサインメントの際に考慮され、メンバーのキャリアの実現へと反映されていく。チームの中でどういった業務を担当し、どういった役割を担うことで成長したいのか、他のチームに異動してチャレンジするという方向性もあっていい。海外赴任の希望や出向希望など様々な選択肢が、ざっくばらんに話されるという。
このふたつのストーリーは、影響し合いながら、同時並行で動いていく。
現場でこの仕組みを活用するメンバーの立場から、武田氏は「率直に、良い仕組みだと思っています」とした上で、こう続けた。
この制度は、業務では直接関わらないマネージャーやパートナーの方々も、キャリアパスの実現に向けて協力してくれる、他の組織にはない仕組みだと感じています。実際、私も希望を色々と伝えた上で、アサインでも考慮してもらえています。何より、仕事に没頭しているとどうしても中長期のキャリアを考えることが少なくなってしまうので、個人ストーリーを通じて実現できるのは、有り難いですね。
また、同じく現場で活躍する吉田氏も、武田氏に追随するように実体験を語った。
目の前の仕事が刺激的なのでついつい没頭してしまいますが、一方でキャリアアップはどうしていくのかなどと、考えることもありました。
しかし、チームストーリーや個人ストーリーについて上長と会話をすることで、これまでメンバーとして関わってきたある仕事について、来期はリーダーに挑戦してみないか?という提案をいただいたことも。チャンスを得ただけではなく、自分の一歩先のキャリアがクリアになった感覚でした。
新しさを求めることを推奨するからこそ生まれる、FS FRAでのキャリアビジョン
中長期のキャリアを明確にした上で、業務を通じて成長の機会を得ている。それだけでなく、プライベートの時間も最大限確保されている。FS FRAの環境は非常に恵まれたものに思えるが、吉田・武田の両氏は、これからについてどう考えているのだろうか。
FS FRAで5年目のキャリアを迎える、武田氏の今後の展望はこうだ。
ひとつは、海外に行きたいという希望があります。そしてもうひとつは、FS FRAとして新しいサービスをリリースすることに携わりたい。
FS FRAのお客様は多岐にわたる分、さまざまな課題を抱えています。そして、その内容は時代の移り変わりによっても変化していきます。そういった、課題の数々を解決していけるサービスやビジネスを起ち上げたいと考えているんです。
事業会社からFS FRAへと転じた吉田氏は、近い未来には「海外に出て異文化の中で活躍できる人材になりたい」との目標、そして、こんな意気込みも披露してくれた。
FS FRAを飛び出して、PwCのインフラの中で起ち上げてみたい新たなサービスがあるんです。
監査法人の若手に将来の目標を問えば、「パートナーを目指したい」「あの部門に行きたい」といった既存の枠組みの中で描く答えは出てくるだろう。しかし、ふたりの口から飛び出したのは、予定調和な将来像ではなく、新しいフィールドに出て行きたい、新しい分野に挑戦したいという想い。
ふたりが忌憚のない発言ができるのはきっと、FS FRAに、既存のルールに縛られず新しさを求めることを推奨する風土が、常日頃からあるからこそなのだろう。
長沼氏は、そう感じてくれているのであればうれしいとした上で、「組織としてはまだまだこれから。ひとりひとりが、成長することを楽しむ。リーダーは、適切に成長の機会を与える。そういったカルチャーを定着させていきたい」と話した。そして、アドバイザリーを志向する会計士への期待を込めてこう結んだ。
監査はその特性から、どちらかというとリアクティブな動きが必要とされる業務。アドバイザリーの仕事はプロアクティブ(積極的・主体的)に提案をしていかなければいけないので、監査からアドバイザリーへとキャリアチェンジする際には、マインドをリセットしなければいけません。それは、ある種のハードルになるでしょう。しかし、そこを乗り越えることで、会計士としての知識も経験も、より広く深く活かせるようになるはず。監査とはまた全然違う仕事の楽しさを知って欲しいですね。
文・編集協力 伊勢真穂
下記の記事では、PwCあらたFS FRAの知られざる特徴をお届けしています。合わせてご覧ください!
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2022年7月より再編!新生・FRAでは公認会計士を積極採用中!
2022年7月1日より、PwCあらた有限責任監査法人はアドバイザリー部門を再編しました。FRA(財務報告アドバイザリー)部門に関する最新の記事は下記をご参考ください。
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