2020年9月の会計不正、BIG4業績関連のニュースをまとめました。
2020年9月16日、18日にリリースされた「EYトップがワイヤーカード不正会計で釈明」「BIG4が4年ぶり業績高伸」「英デロイト過去最高制裁金20億円」の3件のニュースをご紹介します。
EYトップがワイヤーカード不正会計で釈明
- ワイヤーカード粉飾「早く暴けず後悔」 EYトップが釈明(日本経済新聞 2020年9月16日付)
ワイヤーカードが破綻し、不正を見抜けなかったEYに対して調査が進められています。預金残高を3年間に渡り十分に確認していなかったことなどが発覚し、投資家らのEYの責任を追及する動きが出ています。
今回、ワイヤーカードの不正会計事件に対する、EYグローバル会長兼最高経営責任者(CEO)のカーマイン・ディ・シビオ氏名義の書簡に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
独決済サービス会社のワイヤーカードで起きた粉飾事件を巡り、会計監査を担ったアーンスト・アンド・ヤング(EY)がトップによる釈明の書簡を顧客に送ったことが15日、明らかになった。「もっと早く暴けなかったことを後悔している」と記し、不正検知能力を向上させると表明した。
引用元:ワイヤーカード粉飾「早く暴けず後悔」 EYトップが釈明(日本経済新聞 2020年9月16日付)
記事によると、書簡では、不正はより早く見つけるべきだったとし、会計不正の発見能力の向上に力点を置いていくと伝えられています。その一方で、非常に複雑な犯罪ネットワークの共謀による不正が行われていたため、監査には限界があったと弁明しているということです。
会計不正は複雑化し監査で見抜くことは難しいとするEYに対して、ドイツの検査当局は不適正と判断するのでしょうか。調査の進展が待たれます。ご興味のある方は以下をご参照ください。
- ワイヤーカード粉飾「早く暴けず後悔」 EYトップが釈明(日本経済新聞 2020年9月16日付)
BIG4が4年ぶり業績高伸
- 4大監査法人の前期、業務収入6%増 4年ぶり高水準(日本経済新聞 2020年9月16日付)
今月、BIG4の2020年6月期(EY新日本、あずさ、PwCあらた)と5月期(トーマツ)の決算発表が出されました。監査報酬の増額や、IT改革への取り組みが進められる中、業績はどうなったのでしょうか。
今回、BIG4監査法人の2020年業績発表に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
監査業界で「ビッグ4」と呼ばれる4大監査法人の2020年度決算(20年5月期または6月期)が出そろった。売上高にあたる業務収入は4法人とも前の期を上回り、合計で6%増えた。
引用元:4大監査法人の前期、業務収入6%増 4年ぶり高水準(日本経済新聞 2020年9月16日付)
記事によると、新型コロナウィルス関連の監査工数の増加や、監査の単価引き上げにより、業務収入は4年ぶりの高い伸びとなったと伝えられいます。
来期はKAMの導入など新会計基準の適用が始まり、監査工程の増加が見込まれます。業務収入が増加する要因はしばらく続きそうです。
ご興味のある方は以下をご参照ください。
- 4大監査法人の前期、業務収入6%増 4年ぶり高水準(日本経済新聞 2020年9月16日付)
なお、公認会計士ナビでも、まもなく今回の決算をもとに、毎年恒例のBIG4の業績比較記事をリリース予定です。ご期待ください!
英デロイト過去最高制裁金20億円
- デロイトに制裁金20億円 英当局、監査で最高額(日本経済新聞 2020年9月18日付)
2012年にデロイトが監査を担当していた英ソフトウェア会社オートノミーの不正会計が発覚し、同社を買収した米ヒューレット・パッカードが88億ドル(約7,200億円)の減損費用するという事件が起きました。
今回、この事件で英当局がデロイトに約20億円の制裁金を課した件に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
英財務報告評議会(FRC)は17日、大手監査法人のデロイトに対し、過去最高の1500万ポンド(約20億円)の制裁金を科すと発表した。
引用元:デロイトに制裁金20億円 英当局、監査で最高額(日本経済新聞 2020年9月18日付)
記事によると、FRCは、デロイトが十分な疑いを持って作業に当たらず、資料の収集や分析も甘かったと指摘しており、監査法人への制裁金では過去最高額となったと伝えられています。
事件から8年を経過しており、制裁金決定までにかなりの時間を要しています。事件発覚から制裁金額決定の経緯は、以下の通りです。
- 2011年8月:HPによるオートノミーの買収発表。
- 2012年11月:HPが88億ドルの損失計上を発表し、オートノミー幹部らによる不正会計を指摘。
- 2012年11月:HPの投資家らがHPを提訴。
- 2013年2月:英財務報告評議会(FRC)による調査開始(調査対象期間は、2009年1月1日から2011年6月30日)。
- 2013年4月:HPのレイ・レーン会長(66)が辞任し、取締役2人も退任。
- 2015年1月:英重大不正捜査局(SFO)が証拠不十分で捜査打切り。捜査管轄を米に移管。
- 2016年9月:ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)(旧HP)が英オートノミーの事業を含むソフト事業を英マイクロフォーカスに売却。
- 2020年9月:FRCがデロイトに対し1500万ポンド(約20億円)の制裁金を科す。
英国で2年間捜査したものの証拠不十分で立件できず、米国で引き続き捜査が行われていました。事件発覚から8年を経過し、ようやくデロイトに制裁金が課されました。ご興味のある方は以下をご参照ください。
- デロイトに制裁金20億円 英当局、監査で最高額(日本経済新聞 2020年9月18日付)
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)