2021年3月の会計士業界ニュースをお届けします。
「EY新日本で地方移住支援」「あずさ監査法人次期理事長に森氏」「10年で監査時間16%増」の3本です。
EY新日本で地方移住支援
リモートワークが一般的になり、首都圏の企業に在籍したまま、地方移住するケースも少しずつ出てきているようです。そのような状況の中、大手監査法人ではじめてEY新日本監査法人が、従業員の地方移住を認める制度を導入したということです。
今回、EY新日本監査法人の地方移住支援制度に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
EY新日本監査法人などのEYジャパングループはこのほど、従業員の地方移住を支援する制度を導入した。都心の部署に所属したままテレワークによる遠隔勤務を認める。
引用元:EYジャパン、従業員の地方移住で新制度(日本経済新聞 2021年2月19日付)
記事によると、テレワークでは月1~4日程度の出社を求めることとし、すでに希望者約30人を募ったということです。最終的に、希望者全員に制度を適用する方針だと伝えられています。
監査法人にとっては住所地を問わず優秀な人材の確保につながるとともに、地方在住者にとっても、地方に住み続けたまま好きな仕事ができるため、双方にとってメリットのある制度と言えます。今後、他の法人でも導入されていくのでしょうか。
詳細は以下の記事をご参照ください。
あずさ監査法人次期理事長に森俊哉氏
2年の理事長任期満了を今年6月に控えて、あずさ監査法人の新理事長が決まったようです。
今回、あずさ監査法人の森氏理事長就任に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
あずさ監査法人は7月1日付で次期理事長に森俊哉・副理事長(59)を充てる人事を固めた。グローバル企業の監査や米KPMGに赴任した経験などを生かし、グローバルでの存在感を高める。
引用元:あずさ監査法人、理事長に森氏(日本経済新聞 2021年3月1日付)
記事によると、森氏は、1986年に港監査法人(現あずさ監査法人)に入所し、専務理事、KPMGジャパンチェアマン、副理事長を歴任してきた方と伝えられています。
森氏は、日本企業の海外展開を支援する組織「グローバル・ジャパニーズ・プラクティス」の統括責任者も兼任しており、グローバルな活動をされてきた方です。新理事長として更なる活躍に期待が集まります。
詳細は以下の記事をご参照ください。
10年で監査時間16%増
東芝をはじめ不適切会計事件を皮切りに、監査時間が増加し続けています。
今回、日本公認会計士協会が行っている監査実施状況調査に基づく記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
日本公認会計士協会がまとめた調査で、企業の監査にかかった時間は過去10年で平均2割近く増えたことが分かった。会計不正事件を受けて監査の厳格化が求められるようになったことや、開示までの作業が多い国際会計基準(IFRS)の導入企業が増えていることなどが背景にある。
引用元:監査時間、10年で2割増 開示拡充や監査厳格化で(日本経済新聞 2021年3月2日付)
記事によると、金融商品取引法監査の平均時間は10年間で16%増えて4,391時間になっており、東京証券取引所が監査の厳格化を求めて以降、右肩上がりに監査時間が増加していると分析しています。また、チャージレートを乗じた金額や固定額と合わせた料金体系などで監査報酬が増額していると伝えられていますが、監査時間の増加には見合っていないようです。
日本公認会計士が発表している最新の監査実施状況調査と10年前の監査実施状況調査は、それぞれ以下の通りです。
ちなみに、日本経済新聞当該記事の数字は、上記調査の中の監査区分が「金商法(連結あり)」となっているものを取り上げているようです。
また、今回取り上げた記事の見出しや本文では、10年間で1社あたりの平均の「監査時間は2割増」「監査報酬は1割増」とのことでしたが、上記の監査実施状況調査によると、監査時間(1社平均)は2009年の3,760.8時間から2019年は 4,391.3時間へと、16.77%の増加となっています。また、監査報酬(1社平均)も2009年の48,927千円から2019年は52,385千円へと、7.07%の増加となっていました。
他の監査区分については、日本公認会計士協会のWebサイトでご確認ください。
今期は、収益認識に関する会計基準の本格適用など新しい会計基準への対応で監査時間の増加が予想される上に、デジタル監査のための開発費用も見込まれます。監査報酬を値上げしなければならない監査法人側の事情はありますが、企業の同意を得るのは難航しそうです。
詳細は以下の記事をご参照ください。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)