2018年12月11日、12日、27日に、残高確認、監査法人に関するニュースがリリースされています。
トーマツが銀行残高確認のためのオンラインシステム開発、4大監査法人が債権債務の確認システムを共同開発、英国BIG4の寡占排除に向けて新たな制度模索などの記事をご紹介します。
トーマツが銀行残高確認のためのオンラインシステム開発
- トーマツ、監査先の銀行残高 オンラインで確認 (日本経済新聞 2018年12月11日付)
監査法人に入所して初めての監査で、残高確認を担当した方も多いのではないでしょうか。そんな新人会計士の姿は、過去のものになろうとしています。
今回、監査法人トーマツが銀行残高確認にオンラインシステムを導入した件に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
監査法人トーマツは、顧客である監査先企業が金融機関に保有する預金などの残高をオンラインで確認できるシステムを導入した。これまでは金融機関から送られてくる書類を会計士が自分で確認していたが、会計士以外が確認しシステムに入力する。会計士の負担を軽減し会計不正のチェックなど他の業務に時間をかけられるようになる。
引用元:トーマツ、監査先の銀行残高 オンラインで確認(日本経済新聞 2018年12月11日付)
記事によると、監査法人トーマツが運用するシステムは『バランスゲートウェイ』と呼ばれ、従来の債権・債務に加えて、金融機関の残高確認も行えるようになったそうです。
残高確認オンラインサービス、『バランスゲートウェイ(Balance Gateway)』の詳しい内容については、デロイトトーマツよりニュースリリースが配信されているので、そちらをご覧ください。
- 国内初の監査手続における残高確認オンラインサービス「Balance Gateway」の提供を開始(デロイトトーマツ 2017年3月22日)
残高確認状の発送・回収、差異調整までオンライン上で進められるとことになり、監査時間の短縮や、監査内容の充実にもつながりそうです。
4大監査法人が債権債務の確認システムを共同開発
- 4大監査法人が新会社 取引実態の確認業務を共通化(日本経済新聞 2018年12月12日付)
さきほど、監査法人トーマツの残高確認システム『Balance Gateway』に関する記事を取り上げたばかりですが、4大監査法人が共同出資で債権債務の残高確認システムを開発するというニュースも配信されています。
4大監査法人が共同出資で合同会社を設立し、債権債務の確認ができるシステムを開発するとの記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
大監査法人のEY新日本、トーマツ、あずさ、PwCあらたは12日、共同出資の「会計監査確認センター合同会社」(東京・新宿)を11月30日に立ち上げたと発表した。監査を担当する顧客企業の債権や債務の確認が容易にできるシステムを開発する。差別化の必要がない業務を集約し、各監査法人が不正会計のチェックなどの業務に集中できるようにする。
引用元:4大監査法人が新会社 取引実態の確認業務を共通化(日本経済新聞 2018年12月12日付)
記事によると、売掛金などの債権と買掛金などの債務の残高をデータ化し、2019年のサービス開始を目指しているそうです。
設立趣旨や会社の詳細については、4大監査法人が設立した『会計監査確認センター合同会社』より、ニュースリリースが配信されています。
- 会計監査確認センター合同会社を設立(会計監査確認センター 2018年12月12日付)
オンラインシステムは中小監査法人や個人会計事務所にも浸透するのでしょうか。監査手法の変化の波が監査業界の隅々まで行きわたるのは、来年のサービス開始の様子を見てからになりそうです。
英国BIG4の寡占排除に向けて新たな制度模索
- 巨大監査法人、寡占に風穴 英当局が提言(日本経済新聞 2018年12月27日付)
11月のニュースで、国際会計事務所のKPMGが、英財務報告評議会の指摘を受けて、英国で会計監査を手掛けている大企業に対し、コンサルティングなどの非監査業務の提供を中止する見通しになったとお伝えしましたが、英国で風圧が高まっているのはKPMGに対してだけではないようです。
英国では4大監査法人の寡占を問題視し、新たな提言がまとめられたという記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
巨大監査法人への風圧が英国で強まっている。日本の公正取引委員会にあたる英競争・市場庁(CMA)は大手4法人による寡占を問題視し、2社以上から監査を受けることを大企業に義務付ける提言をまとめた。会計監査とその他業務の分離案も盛り込んだ。東芝の会計不祥事で監査のあり方が問われた日本の論議にも影響を与えそうだ。
引用元:巨大監査法人、寡占に風穴 英当局が提言(日本経済新聞 2018年12月27日付)
記事によると、現在、英株価指数「FTSE350」採用企業の97%をビッグ4が担当していることを受けて、同指数が採用している大企業は少なくとも2社の監査を受け、うち1社はビッグ4以外と義務付ける案を掲げたということです。また、利益相反の問題を避けるためにも、経営コンサルティングや税務支援など監査以外の様々なサービスは、経営や財務、報酬などの面で組織上分離することが必要だと指摘しています。
この記事を見て、日本のBIG4にも影響が波及するのかが気になるところです。
記事の中では、早稲田大学の柳良平客員教授(エーザイ最高財務責任者=CFO)の複数監査法人関与案に対する肯定的なコメントが掲載されています。
繁忙期のタイトな時期に2つの監査法人が同時に監査を行うのは非現実的なように思えますが、肯定する声が高まれば、英国だけの議論では終わらない可能性がありそうです。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)