2017年1月1日~12月31日までの監査法人IPOランキングをまとめました。
2017年のIPO、90件を担当した監査法人を『IPO件数』『時価総額』『騰落率』の3つの指標でまとめてあります。
⇒2016年以前のランキング・その他監査法人関連ランキングはこちら
IPO件数ランキング
監査法人トーマツが本領発揮。新日本を抜いて首位
まずはIPO件数でのランキングです。
IPO件数ランキング
※クリックすると拡大します。
※鞍替え、指定替え、TOKYO PRO MARKETを含まないランキングです。
IPO件数ランキングでは、2014年以来2年ぶりに監査法人トーマツが首位を奪取しています。新日本監査法人は2年連続1位でしたが2位に後退しました。
2016年から2017年にかけて、IPOの総数が83件から90件に7件増えていますが、四大監査法人に関しては、
- 監査法人トーマツ:+5件
- 新日本監査法人:-3件
- あずさ監査法人:+4件
- PwCあらた監査法人:-2件
となっており、合計で4件のプラスとなっています。
また、準大手監査法人を見てみると、
- 太陽監査法人:-2件
- 三優監査法人:±0件
- 東陽監査法人:+1件
- 仰星監査法人:-1件
- 優成監査法人:-1件
となっており、太陽監査法人の実績は6件とあずさに続き第4位となっています。
また、過去3年で、1件(2014年)、3件(2015年)、1件(2016年)と実績を出していた優成監査法人は2017年は0件となっています。
その他に関しては、三優監査法人の提携ネットワークであるBDO USAが1件、その他5つの監査法人が1件の実績となっています。
- BDO USA,LLP:+1件
- 監査法人シドー:+1件
- 監査法人A&Aパートナーズ:+1件
- 有限責任大有監査法人:+1件
- 千葉第一監査法人:+1件
- 監査法人銀河:+1件
直近3年のIPO件数勢力図。シェア拡大はトーマツのみ。あずさは5%のダウン
次にIPOの件数とシェアを過去3年分のデータで比較してみましょう。
四大監査法人のIPO件数とシェアを2015年から2017年で比較すると以下のとおりです。
まずは件数の変動から。
四大監査法人クライアントのIPO件数比較(3ヶ年比較)
2015年と2017年で比較するとIPOの総数は92件から90件へと、2件のマイナスとなっています。
一方の四大監査法人の担当件数は、2015年の74件から2017年の71件へと、3件のマイナスとなっています。
監査法人ごとの3年での増減数を見ると、監査法人トーマツはプラス5件、他の3監査法人は合計でマイナス8件です。大手監査法人の合計が3年でマイナスとなっているのは、大手監査法人が近年はどこも人不足でIPO監査を積極的に受ける余力がそれほどない点も影響しているのかもしれません。
また、5年間の推移を見てみると、以下のようになっています。
四大監査法人クライアントのIPO件数の推移(過去5年間)
四大監査法人のシェア比較(3ヶ年比較)
次に四大監査法人のシェアを見てみましょう。
四大監査法人を合計したシェアに関しては、過去3年で-1.5%と微減ではありますが、約80%で安定しています。
各法人のシェアに関しては、監査法人トーマツがシェアを伸ばした結果、IPO全体の31.1%と約3分の1のシェアを占めるに至っています。
このIPO監査に関しては、監査契約を結んでから数年後にクライアントのIPOが実現されるため、現在の結果というのは数年前の顧客獲得活動が影響しているとも考えられます。
新日本監査法人は2017年の監査契約が減少しています(下記の公認会計士ナビの過去記事より)。IPOは成果が出るまで数年かかると考えると、2017年の新日本監査法人は、監査契約の減少により今後、IPO件数の減少が続く可能性もあると考えられます。
時価総額(初値)ランキング
佐川急便のSGホールディングスの大型IPOにより監査法人トーマツがダントツの首位!
次に初値時価総額での比較です。
初値時価総額の合計額でのランキング
初値時価総額の合計では、 SGホールディングス㈱(初値時価総額:608,375百万円)のIPOを担当した監査法人トーマツがダントツで1位となっています。
監査法人トーマツが1位になった要因の1つ目は、初値時価総額1位のSGホールディングス(株)を担当していたこと。2つ目は、(株)LIXILビバ(初値時価総額:87,070百万円、4位)、(株)マクロミル(初値時価総額:72,107百万円、5位)をはじめとして初値時価総額上位10件のうち6件を担当しており、大型案件がトーマツに集中していることも要因にあげられます。
では、次に時価総額の平均(1件あたりの初値時価総額)ランキングを見てみましょう。
初値時価総額の平均額でのランキング
こちらのトップは、大有監査法人です。
大有監査法人の2017年のIPOは、株式会社オプトランの1件のみでしたが、オプトランは上場会社別2017年初値時価総額の2位にランクインしている大型IPOであったため、平均額のランキングでは大有監査法人が1位となりました。
また、IPO件数トップの監査法人トーマツは、平均時価総額では2位となっています。IPO件数が2位の新日本監査法人は平均時価総額では9位になっています。
トーマツ、新日本はほぼ同じ件数を上場させていますが、平均時価総額はかなりの開きがあります。
参考までに、監査法人トーマツのIPOクライアントの中で時価総額が飛び抜けているSGホールディングス㈱(初値時価総額:608,375百万円)を除いて、トーマツの初値時価総額の平均を算出してみますと、27,026百万円となります。
その数字とあずさ(20,823百万円)、新日本(15,404百万円)の平均時価総額を比較してみても、新日本のIPOクライアントはやや小さい企業が多かったとの構図が浮かび上がります。
初値騰落率ランキング
監査法人シドーが1位!
では、最後に監査法人ごとの初値騰落率の平均を見てみましょう。
騰落率の平均(1件あたり騰落率)でのランキング
※クリックすると拡大します。
※騰落率の平均=騰落率の合計/IPO件数で算出しています。
初値騰落率の平均では、監査法人シドーが518.18%で1位となり、2位のA&Aパートナーズの170.00%を大きく引き離しています。
シドーの2017年IPOは、(株)トレードワークス1件となっていますが、トレードワークスは2017年のIPOでの初値騰落率が1位であったことから、同ランキングで1位となっています。
ちなみに2016年のIPOにおける初値騰落率の1位は(株)グローバルウェイの372.97%でした。昨年の数字から見ても、(株)トレードワークスの騰落率のすごさが分かります。
2018年のIPOマーケット、監査法人の勢力図はどうなる?
IPO監査と言えば、監査法人トーマツの代名詞。2015年と2016年は2年連続で新日本監査法人が1位となりましたが、2017年はトーマツが見事に返り咲きました。
また、担当件数はわずかではあるものの、中小監査法人が時価総額や騰落率の高い企業を担当している点も目を引きました。
昨今の監査法人業界全体で見ると、大手監査法人においては、人員不足の影響から、報酬の大きくない案件や手間のかかるベンチャー案件の監査は積極的には受けにくいという声も一部では漏れ聞こえてきます。現在の状況が続くと、法人の人的余力なども監査法人のIPO実績にさらに大きく影響を及ぼしてくることになるかもしれません。
さらには、このような状況で2017年の夏以降、大手監査法人が新規のIPO監査の契約を断っているといったこともあり、今後も大手監査法人で引き受けられなかった案件を、準大手・中小監査法人が引き受ける傾向が続きそうです。
2018年のIPOマーケットや監査法人ランキングはどのような結果になるでしょうか?公認会計士ナビでは継続してウォッチしていきます。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)
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