2023年1月1日〜12月31日までの監査法人IPOランキングをまとめました。
2023年のIPO総数96件を担当した監査法人を『IPO件数』『時価総額』の2つの指標でまとめています。
⇒2022年以前のランキング・その他監査法人関連ランキングはこちら
注記
※監査法人の規模別の集計においては、大手(EY新日本、トーマツ、あずさ、PwCあらた)、準大手(仰星、BDO三優、太陽、東陽、PwC京都)、その他を中小として分類しています。分類の定義は「監査事務所検査結果事例集(令和5事務年度版)」(公認会計士・監査審査会 令和5年7月付)に基づいています。なお、記事中は「大手」または「四大」と記載しています。また、外国監査法人に関しては、国内の提携監査法人の規模に準じて分類し集計しています。(例:KPMG LLP、EY LLP→大手監査法人、BDO USA, LLP→準大手監査法人)
※個々の監査法人の実績に関しては、外国監査法人は個別の法人として取り扱い、提携監査法人の実績には含めずに集計しています。
※優成監査法人は2018年7月2日に太陽有限責任監査法人(以下、太陽監査法人)と合併を行っております。2017年以前の優成監査法人のIPO実績は優成監査法人として集計し、2018年分以降は太陽監査法人に含めて集計しています。
※PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた監査法人)は2023年12月1月にPwC京都監査法人と合併し、名称をPwC Japan有限責任監査法人(英語名:PricewaterhouseCoopers Japan LLC、以下PwC Japan監査法人)に変更しています(PwCあらた監査法人が存続監査法人)。合併後にPwC Japan監査法人としてIPOの監査証明を出した実績はなく、本記事では承認時の法人名(それぞれPwCあらた、PwC京都)で集計しています。
IPO件数ランキング
数年ぶりにトーマツが1位へと躍進、EY新日本は2位へ
まずはIPO件数のランキングです。
IPO件数ランキング
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※鞍替え、指定替え、TOKYO PRO MARKETを含まないランキングです。
IPO総数は前年から5件増加して96件となりました。一昨年は市場再編前の駆け込み需要があり、その反動で2022年はIPO件数が減少。今年はどこまで盛り返すか注目が集まっていましたが、まずまずの活況となりました。
そのような中、2023年のIPO件数は、3年連続で首位をキープしていたEY新日本監査法人に代わり、トーマツが首位となりました。監査法人トーマツは例年並みの実績ですが、EY新日本が2021年から右肩下がりで減少していることが交代の原因となっています。
また、あずさと太陽は同数で3位でした。
なお、5位のPwC京都と6位のPwCあらたは2023年12月1日に経営統合を行い、PwC Japan有限責任監査法人となっています(存続法人はPwCあらた)。
両監査法人のIPO件数を合計すると13件となり、あずさと太陽を抜き3位に浮上しますので、2024年以降はPwC Japan監査法人が上位に食い込む可能性もあるでしょう。
大手監査法人のシェアが50%を割る
次に監査法人の規模別IPO件数割合の11年間の推移を見てみましょう。
監査法人の規模別IPO件数割合
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※外国監査法人に関しては、国内の提携監査法人の規模に準じて分類し集計しています。(例:KPMG LLP、EY LLP→大手監査法人、BDO USA, LLP→準大手監査法人)
四大監査法人のシェアは2018年を境に右肩下がりとなっており、2023年はついに50%を割りました。過去11年間で最も低くなっています。本記事では2013年以降のデータのみ集計していますが、おそらく過去最低のシェアとなっているかと思われます。
数年前から大手監査法人がIPO監査の受託を控えているにも関わらず、IPO件数自体は増加。IPOを目指すにも監査法人が見つからない監査難民問題が発生しました。その受け皿として2018年以降は、準大手監査法人の割合が拡大。その後、今度は準大手監査法人のシェア拡大のペースが鈍化し、2021年以降は中小監査法人のシェアが拡大しました。来年以降も中小監査法人のシェア拡大は続くのでしょうか。
四大監査法人のIPO勢力図
次に、四大監査法人それぞれのIPO件数全体に占めるシェアを、過去11年分のデータで比較してみましょう。
「監査法人の規模別IPO件数割合」で、四大監査法人合計のシェアが2013年の85.2%から2023年は47.9%まで落ちたことを確認しました。
「四大監査法人のIPOシェア推移」を見ると、その最大の要因は監査法人トーマツのシェア減少であることが分かります。また、あずさ監査法人も2020年を境にシェアを落とすとともに、2023年はEY新日本も大きくシェアを減少させました。
来年は旧PwCあらたに旧PwC京都のIPO件数が合算され、PwC Japan分としてカウントされる初年度です。四大監査法人のIPOシェア推移に少なからず影響があるものと予測されます。
四大監査法人のIPO件数の推移(過去11年間)
また、四大監査法人のIPO件数を11年間の推移で見てみると以下のようになります。
四大監査法人クライアントのIPO件数の推移をみてみると、2013年にトップだった監査法人トーマツは11年間で4割ほどIPOクライアントの件数が減少しています。また、EY新日本監査法人は、年によってばらつきはあるものの、ここ3年間は減少傾向です。
なおEY新日本監査法人は2023年4月18日付でニュースをリリース。2020年7月より開始したIPO認定者制度のIPO認定者が、累計で1,000名を超えたと伝えました。今後もIPO支援を強化していくとの姿勢を見せています。
また、上記ニュースリリースでは、ユニコーン企業や急成長企業の発展に貢献するとも伝えています。ここ数年EY新日本監査法人のIPO件数は減少していますが、これは契約を大型案件に絞っているからかもしれません。
4強の顔ぶれ変わらず
四大監査法人に、ここ数年、安定して実績を伸ばしている太陽監査法人を加えた5法人の11年間の推移は以下のようになります。
四大+太陽監査法人のIPO件数推移(過去10年間)
※クリックすると拡大します。
※2017年以前の太陽監査法人の実績には優成監査法人の実績は含まれておりません。
太陽監査法人は、2016年以降安定して4強入りしています。来年はPwCあらた監査法人がPwC Japanとなりますが、ランキングにどのような影響を与えるのでしょうか。
クライアント時価総額(初値)ランキング
EY新日本が前年から引き続き首位次に監査法人別に、IPOクライアントの初値時価総額を比較します。
初値時価総額の合計額でのランキング
監査法人別の初値時価総額の合計額でのランキングは、1位EY新日本(前年1位・395,094百万円)、2位あずさ(前年6位・81,346百万円)、3位太陽(前年2位・338,071百万円)の順となっています。
EY新日本については、IPO件数が前年より36.4%減少する一方で初値時価総額は160.8%増加しており、案件の規模が拡大している様子が窺えます。
初値時価総額の平均額でのランキング
では、次に初値時価総額の「平均額」(1件あたりの初値時価総額)ランキングを見てみましょう。
前年3位だったEY新日本監査法人がトップになりました。また、昨年トップ10入りしなかったPwCあらた監査法人が2位に浮上しています。
上位3法人の主なIPO担当企業は以下のとおりです。
- 1位:EY新日本監査法人の担当企業
- 銘柄別初値時価総額1位の(株)KOKUSAI ELECTRIC(487,535百万円)
- 同2位の楽天銀行(株)(315,556百万円)
- 2位:PwCあらた監査法人の担当企業
- 銘柄別初値時価総額4位の(株)シーユーシー(128,605百万円)
- 同9位のAnyMind Group(株)(56,986百万円)
- 3位:あずさ監査法人の担当企業
- 銘柄別初値時価総額3位の住信SBIネット銀行(株)(184,270百万円)
- 同8位の(株)ispace(80,421百万円)
2024年のIPOマーケット。株価高騰が続く中、IPOは増加するか?
2023年のIPO件数は、監査法人トーマツがEY新日本を抜き1位となりました。2024年は、PwC Japan監査法人が合併後初めてIPOランキングに加わることから、ランキングの上位層が変動することが予想されます。
2024年は前年から引き続き、低金利や円安が続く一方で株価が高騰しています。また、新NISAがスタートし、個人投資家の売買が活発になりそうです。これらの状況は、IPOマーケットや監査法人ランキングにどのような影響を与えるでしょうか?公認会計士ナビでは継続してウォッチしていきます。
なお、公認会計士ナビチャンネルでは、IPOとM&A支援を生業とし、「アドレナリン会計士」の異名を取る江黒崇史さんをゲストにお迎えして、2023年度のIPO市場と2024年の予想についての動画を配信しています。再編後の証券市場の動向についても考察していますので、ご参考ください。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)
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