世界第6位のグローバルネットワークへの躍進、RSM汐留パートナーズがRSM インターナショナルに加盟した狙いと舞台裏



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昨年末の2022111日、汐留パートナーズグループからリリースされた情報は、会計業界関係者の耳目を集めました。

汐留パートナーズがRSM インターナショナルに加盟する。

汐留パートナーズは、グループに税理士法人をはじめ、コンサルティング会社、社会保険労務士法人、行政書士法人、司法書士法人などの法人が属する、いわゆる「ワンストップ」の会計事務所グループです。

2008年の創業当時は、ベンチャー企業やIPO準備企業などの税務・会計顧問からスタートした同社も、創業15年を迎えた現在では、従業員は約180名(内、会計税務事業部には100名弱が所属)、税理士は20*が所属し、クライアントには上場企業や外資系企業も名を連ね顧客規模もかつてより拡大するなど、名実ともに「中堅」の会計ファームとしてのポジションを築いています。
*2023年1月現在

RSM 汐留パートナーズのポジショニング

RSM 汐留パートナーズのポジショニング(資料提供:RSM 汐留パートナーズ)

なぜ、汐留パートナーズ改めRSM汐留パートナーズ」RSM インターナショナルに加盟したのか。代表の前川さんに伺いました。

※以下本稿では、RSM加盟前を「汐留パートナーズ」、加盟後を「RSM汐留パートナーズ」と表記します。

前川 研吾氏_まえかわけんご_RSM汐留パートナーズ_グループCEO_公認会計士(日米)_税理士_行政書士前川 研吾(まえかわ けんご)
RSM汐留パートナーズ グループCEO
公認会計士(日米)・税理士・行政書士

2003年、公認会計士試験合格。新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)監査部門で国内監査業務に従事。また同法人公開業務部門でIPOの支援なども行う。2008年に退所・独立し汐留パートナーズグループを立ち上げる。株式公開準備会社を中心として、IPO支援、内部統制支援、海外展開支援、デューデリジェンスや株価算定業務を行う。またグループ会社として、税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士などの専門家集団を集め、企業に対するワンストップサービスの提供と海外事業のサポートを行う。2018年にグローバルネットワークであるPKFインターナショナルへの加盟を実現し、2022年には世界第6位のRSMインターナショナルへの加盟を実現する。1981年生まれ。北海道出身。

グローバルで拡大するRSM インターナショナルへの加盟でコンサルティング業務も拡大へ

RSM インターナショナル(以下「RSM」)は売上高で世界第6位、アメリカでは第5位のグローバルネットワークです。日本では以前から、監査領域でRSM清和監査法人、税務領域で税理士法人東京クロスボーダーズが加盟しています。

今回RSMに加盟したRSM汐留パートナーズによれば、RSMの特徴は主に2点。
まずは近年における急速な成長です。RSMのメンバーファームの売上高合計と役職員数は、以下のようになっています。5年で売上高は約1.5倍、役職員数は約1.2倍となっており、急成長している様子が窺えます。

 

2016年度

2021年度

売上高合計

$4,866M(7,061億円)

$7,256M(1449億円)

役職員数

41,421名

51,528名

*1ドル144円で換算

汐留パートナーズといえば、RSMに加盟前は、世界約第15位のグローバルネットワークであるPKFに加盟していました。所属するネットワークを変更するというのは、相応の労力もかかり、簡単ではありません。そんな中で、今回なぜRSMに「鞍替え」したのでしょうか。

RSMのサービスラインは、PKFより広範です。例えば、いくつかのコンサルティング領域では、米国ではBIG4に近いレベルとなっています。

一方で汐留パートナーズも、国内で監査・税務の領域だけでなく、コンサルティング領域での成長を模索していました。RSMへの加盟によって、テクノロジーコンサルティングが提供しやすくなり、クライアントのニーズも満たせることは間違いありません。また、世界第6位のRSMに加盟する機会というものは、なかなか恵まれるものではありません。

正直なところ、お話を頂いてから悩みに悩みました。当時加盟していたPKFで出会った仲間への想いもありましたし、そもそもネットワークを変更すること自体どうなのか、一方で、この機会を逃すとこのような上位ネットワークへ加盟するチャンスは二度とまわってこないのではないか…、熟慮に熟慮を重ねて、RSMへの加盟を決断しました。(前川さん)

グローバルネットワークに加盟するにあたっては、メリットだけでなく、その加盟基準をクリアするための苦労もあります。

既に上場企業や外資系企業をクライアントとして有していたRSM汐留パートナーズには、「RSMが海外または日本で監査業務を提供している関係で、独立性を維持するために、関係を整理しなければいけなかった既存クライアントも相当数あった」と前川さんは語りました。

これによって、税務やコンサルティングなどにおいて、契約を継続できないクライアントも生じたことから、一時的に売上高が減少したものと編集部では推察しています。

しかしRSMへの加盟に伴い、新たなクライアントの紹介も既にあり、前述のようにコンサルティング業務を拡大することで、その穴は十分にカバーできる手応えを前川さんも感じているようです。

また昨今、会計業界においてもESG*DEI**の影響が色濃くなってきています。より大きなグローバルネットワークであるRSMに加盟することで、これらをキャッチアップしやすくするという狙いもあるようです。
*ESG=Environment Social Governance(環境・社会・ガバナンス)
**DEI=Diversity, Equity & Inclusion(多様性、公平性、包括性)

RSM汐留パートナーズ_RSMへの加盟に伴って、オフィスもRSM仕様に

RSMへの加盟に伴って、オフィスもRSM仕様に

非連続な成長を求めて汐留パートナーズに加盟を打診したRSM インターナショナル

汐留パートナーズのRSM加盟のきっかけは、その1年半以上前の20211月。
前述のRSM清和監査法人の理事長である戸谷氏と前川さんは、元々新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)時代の同期であり、旧知の仲です。その戸谷氏がRSMに加盟している税理士法人東京クロスボーダーズの代表パートナー村山氏を紹介し、RSMとの接点が深まります。

この頃のRSMは、連続的な売上高の増加だけでなく、非連続な成長機会も模索していました。
汐留パートナーズとの邂逅を果たしたRSMは、前川さんにRSMへの加盟を打診し、今回の加盟へと至ります。

世界にはBDO、RSM、グラントソントンの3つの準大手グローバルネットワークがあります。RSM以外は日本においても各種サービスを幅広に扱っていますが、汐留パートナーズが加盟することで、RSMは税務を中心にサービスを大きく広げられる余地がありました。
またRSMは、「The Power of Being Understood」というスローガンをグローバルで掲げています。これが「クライアント、従業員、そして地域社会における理解を通じて最高の力を発揮できる」という汐留パートナーズの経営理念と合致していたこともあり、加盟の決め手となりました。(前川さん)

BIG4 +1(プラスワン)の中堅ファームを目指して

果たして、RSMへ加盟した汐留パートナーズ改め「RSM汐留パートナーズ」。
今後はRSMと連携して外資系のクライアントや、FASなどの業務を増やしていく意向です。当然、RSMの強みの1つでもあるテクノロジーコンサルティング領域に関しても、ERPやクラウドの導入支援などにも力を入れていくでしょう。

そんなRSM汐留パートナーズを率いる前川さんですが、ある展望を抱いているそうです。

RSM汐留パートナーズの長期的なビジョンは、国内においてBIG 4 +1(BIG 4プラスワン)のワンストップの中堅ファームとなることです。

例えば、公認会計士や税理士が勤務先を選ぶ際、BIG4にはブランド力や充実した福利厚生といった魅力がありますが、社内での競争の厳しさや忙しさと向き合う必要もあります。
一方で、個人事務所や小規模ファームの中には、忙しくないファームを見つけることはできても、高度な業務へのチャレンジといったスキル面での自己実現に限界があるという課題があります。

しかし「大手に近い中堅ファーム」という立ち位置は、両者の中間として、働きやすさとプロフェッショナルとしてのスキルアップを実現する機会の「良いとこどり」ができると思っているんです。

「日本には、BIG4以外にRSM汐留パートナーズがある。」そう言われるように、改めて頑張っていきたいです。(前川さん)

創業から順調に成長してきた汐留パートナーズ。RSMへの加盟により、その成長を加速させようと目論みます。BIG4や既存の中小ファーム、個人事務所以外の新たな選択肢を業界に示せるか、注目です。

RSM汐留パートナーズ_集合写真

執筆:pilot boat 納富隼平



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【納富 隼平/合同会社pilot boat 代表社員CEO・公認会計士試験合格】1987年生まれ。明治大学経営学部卒、早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。あずさ監査法人で会計監査に携わった後、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社に参画し、300超のピッチ・イベントをプロデュース。2017年に独立して合同会社pilot boatを設立。長文でスタートアップを紹介する自社メディア「pilot boat」、CVCやアクセラレーションプログラムのオウンドメディアコンテンツ制作・イベント運営・リサーチ等を手掛ける。公認会計士ナビでは、会計やスタートアップの記事・動画制作、イベント運営を専門に携わる。

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