PwCドイツのグローバル エンタテイメント&メディア・インダストリーのリード・パートナーであるヴェルナー・バルハウス(Werner Ballhaus)は次のように述べています。
「業界メディアはE&M業界の有力企業に焦点を当てる傾向があります。しかし、何十億人もの消費者が自分たちの時間、関心、お金をどこに投じるかという選択によって、業界の変容に拍車がかかり、新たなトレンドが作り出されているのです。今後数年間で、より若くデジタルに精通し、ストリーミングやゲームに一段と関心のある消費者層が世界のE&M業界に登場すると考えられます。こうした状況が業界の将来を形作っていくのです。」
地域別に見た一人当たりのE&M業界支出は北米が圧倒的に多いもののそれ以外の地域でより加速的に支出が伸びている
地域別にみると、一人当たりのE&M支出は北米が2,229米ドルと圧倒的に多く、西欧の1,158米ドルの約2倍に上っています。これに対し、2021年には地域別の収益がE&M市場の中で最も大きい8,447億米ドルに上ったアジア太平洋地域ですが、一人当たりの支出では224米ドルにとどまる結果となりました。また中東およびアフリカにおける一人当たりの支出は世界最低水準の82米ドルでした。
一方、年平均成長率でみると、成長市場の上位10地域は、中南米、中東、アフリカ、アジアに集中しています。特に、OTTビデオとゲームがこれら地域の収益拡大の大部分を占めており、同様にeスポーツと映画も急速に成長しています。今後5年間における、E&M業界に対する消費者支出の成長見通しで上位にランクインしているのは、トルコ(推定年平均成長率14.2%)、アルゼンチン(同10.4%)、インド(同9.1%)、ナイジェリア(同8.8%) です。
メタバースが待ち受ける
そう遠くない未来、メタバースは驚くほど現実的な世界となり、その中で消費者はVRヘッドセットやその他の接続デバイスを介して没入型の仮想体験にアクセスできるようになります。メタバースは企業や消費者が製品やサービス、そしてお互いのコミュニケーションの方法を大きく変えかねない進化であるため、メタバースの持つ潜在的な金銭的・経済的価値はVRをはるかに超えています。やがて、ビデオゲーム、音楽公演、広告、さらにはeコマースでさえ関連する収益の多くが、メタバースに移行する可能性があります。
メタバースにおけるE&M業界のチャンスの大きさを考える出発点となるのが、急成長しているVRの市場です。現在、この市場は小規模なセグメントの1つに過ぎませんが、過去1年間で世界の支出が36%増加したことは長期的な可能性を示唆していると言えます。スタンドアローン型およびテザー型のVRヘッドセットの全世界設置台数は、2021年の2,160万台に対し、2026年には6,590万台まで増加すると予測されています。
ヴェルナー・バルハウスはさらに次のように締めくくっています。
「E&M業界の目覚ましい成長と可能性に伴い、驚異的な変動が起きるとともに、企業間、セクター内、地域間、世代間での分断や破壊的変化と呼ばれるものが生じます。企業にとっては、熾烈な争いや絶え間ない混乱が今後も続くでしょう。このアウトルックのデータは、収益と支出の構成が急速に変化していることを示しています。この分断が急増・拡大するに従い、E&M業界における全てのビジネスは破壊的変化を迎える可能性があります。今後E&M業界で立てられる課題や目標は、消費者を理解することでこうした破壊的変化を正しい着地点に導くものでなければなりません。」
グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック 2022-2026について
PwCの年次調査「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック」とそれに付随する「Fault Lines and Fractures: Innovation and Growth in a New Competitive Landscape」は、世界のエンタテイメント&メディアの消費者および広告の支出に関し詳細な分析を行ったものです。このアウトルックには、52の国・地域における16のE&M業界のセグメントに関する過去5年間のデータと今後5年間の予測が盛り込まれています。これらのセグメントには、広告(テレビ、インターネット、屋外広告)、書籍、B2B、映画、データ消費、インターネットアクセス、音楽・ラジオ・ポッドキャスト、新聞と一般雑誌、OTTビデオ、テレビやホームビデオに加えて、今年初めてメタバースと非代替性トークン(NFT)が含まれました。