会計士試験の内容はM&AやIPOの仕事にどう役立ちますか?:くわえもんの“会計士の悩みはオレに聞け!”vol.29



このコーナーでは、“くわえもん”こと高桑昌也氏が、厳しく、優しく、ユーモラスに公認会計士のみなさんのお悩みに答えます!

 さあ、みんなくわえもんに相談してみよう!

くわえもんとは?

公認会計士・税理士・高桑昌也氏_くわえもん

高桑昌也 通称“くわえもん”

公認会計士・税理士
TKW M&Aファイナンス会計税務事務所
代表公認会計士

麻布高等学校・慶應義塾大学卒。大学在学中の2000年に公認会計士2次試験に合格。中央青山監査法人、金融庁への出向、都市銀行でのデリバティブ業務、コンサルティング会社(エスネットワークス)を経て現職。さそり座O型。秋田県男鹿半島出身。 
趣味:写真、旅行、夜の麻布・六本木 

【参考サイト】

今回のお悩み:会計士試験の内容はM&AやIPOの仕事にどう役立ちますか?

今回の相談者

totoさん

※写真はイメージです。

相談内容

現在、大学3年の公認会計士受験生です。
(1)M&Aと(2)IPO に興味があり将来独立したいと考えております。

そこで、公認会計士受験科目のうち(1)(2)において、実務に直結する科目や範囲、その学んだ知識がどんな使われ方する等、教えて頂きたいです。

もちろん、机上の空論と実務は異なる、また、全科目全範囲の知識がベースとなっているため満遍なく勉強せよということは十分承知の上ですが、不得意分野を克服するため、勉強のモチベーション上げるためにも是非くわえもんさんに教えて頂きたいです。

宜しくお願い致します。

くわえもんからの回答

totoさん、こんにちは!受験生の時からM&AやIPOに関心があるなんて、視座が高くていいですね!
私が受験生の20数年前は「公認会計士合格=監査法人入所」の一択くらいしかなかった(注)記憶なので、選択肢が広いのはうらやましい限りです。

(注)例えば当時の公認会計士のリクルート冊子の大半は、監査法人(朝日、太田昭和、センチュリー、中央、青山、トーマツ)の紹介が大半で、コンサルティング会社の会社は1、2社くらいでした。また、コンサルティングを行う公認会計士も今よりは少なかった気がします。

さてご質問の件ですが、結論から言うと「M&A支援、IPO支援を行う上で公認会計士以上に適した資格はありません」。

1.M&A
M&Aには合併や、株式交換、会社分割、事業譲渡などいろいろなスキームがあります。基本これらのスキームは会社法の規定がベースになっていますので、会社法の知識がないと、M&Aのストラクチャーを組むあるいは選ぶことができません。

また、M&Aには税務の知識は重要です。何故なら、税法上の要件を満たさないと、適格再編をするつもりが、非適格になってしまって、資産の簿価と時価の差額(含み益)に課税されてしまったり、繰越欠損金が使えなくなったりとクリティカルな問題が発生するためです。例えば再生企業のM&Aではタックスシールドである繰越欠損金をいかに活用するかが論点の1つで、繰越欠損金が(税務上の要件を満たさず)もし消滅してしまったら、かなり痛いです。

さらに、買い手が上場会社の場合、企業会計上「のれん」の年数を論理立てて決定する必要があります。これには企業会計の知識が必要です。

例えばA/B社の間でM&Aを行う場合、上記側面が複合的に、
「M&A後の税金費用を抑える(=キャッシュフローを増やす)ためには、株式譲渡/事業譲渡/吸収分割のいずれがいいか」
「最も短期でクロージング(取引の完了)ができるのは、どのスキームか」
「法務リスクを抑えるスキームはどれか」
「のれんの償却を抑えるためには、どのようなロジックを組むのが適切か」
という問いが顧客から矢継ぎ早になされます。この問いに対し、迅速にアドバイスを行い、顧客が最適な意思決定を行うためには、アドバイザーたる者が企業会計と税務会計と法務、すべて十分に理解していないとなりません。
このあたりの基本的な素地は、財務会計と税務会計、会社法などの受験科目を勉強することで、概ねインプットされます。

2.IPO
次に、IPO支援(上場支援)ですが、ざっくり一言でいうと「非上場の成長企業の経営を、上場企業並みに整備する」コンサルティングです。

たとえば会計ですが、まずは金融商品会計や退職給付会計、税効果会計など、難解で複雑な財務会計の基準を、中小会社に適用して実践・運用していく必要があります。

業種問わずIPOにおいては「管理会計・原価計算の構築」が必要です。メーカーにおいては、標準原価計算や、原価差異の分析と不利差異の改善に向けた作業。工場新設などのプロジェクトにおける、戦略的意思決定。ITなどの非製造業分野においても、プロジェクト別の原価計算、採算管理、間接費の配賦など管理会計の知識は必須です。

また、IPO支援では、監査法人による監査対応を行う必要があります。監査法人の指摘に対し対抗するため、監査ロジックを理解しておく必要があります。従い、受験科目「監査論」は知っておいて損はありません。

さらに、「新規上場申請のための有価証券報告書」や「計算書類」を作成する上では会社法(会社計算規則、会社法施行規則)と企業会計の知識は必須です。

ほか、IPO準備の途上で税務調査が入れば、税法の知識が求められます。

資本政策を組むうえでも、ストックオプションの会計や税務の知識が要ります。資本政策の過程で創業者の資産管理法人を作る場合においても会社法や税務の知識が必要…

このようなマルチな経営課題に、経営陣は同時並行的に対応していく必要があります(∵上場までの時間が短いうえに、中小企業なので基本人がいない)。

このあたり、試験で複数科目を同時並行で相手にし、かつ会計、税務、法務、監査に明るい公認会計士との相性はぴったりと言えます。CFO、経理部長などで経営側としてプレイしても良いですし、アドバイザーとして支援してもどちらでもOKです。

想像するだけで超楽しくないですか?

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