2021年9月の会計士業界ニュースをお届けします。
「監査報酬増加で中小への交代急増」「中小監査法人の品質向上に有識者会議」「航空・鉄道繰延税金資産75%増でリスクも」の3本です。
監査報酬増加で中小への交代急増
企業と監査法人の馴れ合い防止策の一つして、監査法人の交代は有用ですが、これとは別の理由で監査法人の変更が急増しているというのです。
今回、上場企業を担当する監査法人のシェア変化に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
上場企業の財務諸表にお墨付きを与える監査で、中小監査法人のシェアが上昇している。足元でシェアは2割を超えたもようで、EY新日本監査法人など大手4法人の寡占が崩れつつある。
引用元:中小監査人シェア、2割超に上昇 大手寡占が転機(日本経済新聞 2021年9月10日付)
記事によると、監査法人の交代は2021年6月までの1年間で前年同期から5割増えており、大手から中小への変更が目立つと伝えられています。また、「報酬」と「監査対応と監査費用の相当性」が、交代の理由としてあげられているということです。
昨今の不正会計への対応で監査時間が増加する中、大手が報酬額を適正額まで増加させることは必要不可欠なことです。今後、監査報酬の値下げで監査品質の低下を招くことがないよう、監視の目が厳しくなりそうです。
詳細は以下の記事をご参照ください。
中小監査法人の品質向上に有識者会議
続いても、中小監査法人に関するニュースです。
今回、中小監査法人の品質向上に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
金融庁は15日、企業への会計監査の高度化や公認会計士の能力向上を図るための有識者会議の初会合を開く。
引用元:金融庁、中小監査法人の質向上へ有識者会議(日本経済新聞 2021年9月14日付)
記事では、有識者会議では、上場企業の監査契約が増加している、中小監査法人のガバナンス整備が主なテーマになると伝えられています。
また、金融庁から、中小監査法人も対象にした新たな品質管理基準の公開草案が示されたと伝えられています。
上場企業の監査人が、BIG4の寡占状態から、中小監査法人も大きな割合を占める状態へと変化する中、中小監査法人の品質向上のための対策が急ピッチで進められようとしています。
詳細は以下の記事をご参照ください。
航空・鉄道繰延税金資産75%増でリスクも
先日、業界ニュースの中で、KAM開示に関する日本経済新聞の記事を取り上げましたが、その中で、繰延税金資産の評価は、KAMの中で3番目に記載が多い項目でした。
今回、繰延税金資産の評価に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
航空・鉄道業界で実質上の税金の前払いに当たる「繰り延べ税金資産」が急増している。JR東日本やANAホールディングス(HD)など主要5社では6月末に2020年3月末比75%増の約1兆3200億円と最大になった。
引用元:航空鉄道大手、繰り延べ税金資産最大 取り崩しリスクも(日本経済新聞 2021年9月14日付)
記事によると、前期に多額の繰越欠損金が発生した航空・鉄道各社が、将来の収益回復に伴い課税所得が見込めるとして繰延税金資産を積み増ししていますが、今後の新型コロナウイルスの感染状況によっては、取り崩しリスクも増しかねないと指摘しています。
新型コロナウイルスの影響で、事業計画の実現可能性の判断が難しい状況下で、繰延税金資産の回収可能性についてもより判断が厳しくなるのではないでしょうか。利益計画の見通しなど詳細な情報が、KAMで開示されることを期待します。
詳細は以下の記事をご参照ください。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)