来る2018年1月27日(土)に東京・日本橋にて「公認会計士が活躍できるのは事業会社かコンサルか!?」をテーマに第8回・公認会計士ナビonLive!!が開催されます。
本記事では第8回の開催に向けて昨年3月に開催された第7回・公認会計士ナビonLive!!の内容を振り返ります。
第7回 公認会計士ナビonLive!!の第2部トークセッションでは、「独立・開業を選んだ会計士たちが語る、独立の苦楽や戦略」をテーマに、独立・開業という選択肢を選んだ3名の公認会計士たちが、それぞれのキャリアや独立戦略について語りました。
※本記事はセッションでの発言を一部補足・編集した記事となっております。
第7回 公認会計士ナビ on Live!!
~理想のキャリアの見つけ方、会計士にブルーオーシャンはあるのか?/ 独立・開業を選んだ会計士たちが語る、独立の苦楽や戦略~
【日時】 2017年3月25日(土)13:30~16:30
【場所】 野村コンファレンスプラザ日本橋6階
【第2部 トークセッション テーマ】独立・開業を選んだ会計士たちが語る、独立の苦楽や戦略
【登壇者】
・江黒 崇史(江黒公認会計士事務所 代表 公認会計士)
・大庭 崇彦(株式会社BridgeConsulting 取締役COO 公認会計士・税理士)
・神先 孝裕(Kepple会計事務所 代表 公認会計士・税理士・行政書士)
※登壇者の役職、肩書等はイベント開催時のものです。
会計士はどんな戦略で独立しているのか?若手会計士たちが振り返った独立の苦楽
「会計士の独立」をテーマに開催された本セッション。
セッションでは、3人の若手会計士から、独立後の戦略や魅力、苦労、営業のコツなど、様々なトピックスが語られましたが、今回から3回に渡って、その内容を特集します。
第1回の本記事では、「独立時の戦略やサービス」をテーマに、江黒氏、大庭氏、神先氏のそれぞれの独立後のサービスやなぜそれを選んだのかなど、独立時の戦略についての発言をご紹介します。
江黒公認会計士事務所・江黒崇史の独立と戦略は?
江黒 崇史
江黒公認会計士事務所 代表
公認会計士
1999年3月早稲田大学商学部卒業。2001年公認会計士二次試験合格。2001年10月から2004年まで大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。法定監査のみならず、株式公開業務や財務調査業務、アニュアルレポート業務も担当する。2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。同社の財務体質改善に貢献。2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。M&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。 2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。
M&AとIPO支援に特化してサービスを提供
独立3年目(登壇時)の江黒氏、M&AとIPO支援をメインにサービスを提供している。
また、多くの公認会計士が行いがちな税務に関してはやらないと決め、独立時よりM&AとIPOに特化したサービスを提供しているという。
私は、会計士として、個人会計事務所(ひとり)でサービスを提供しているのですが、やっていることは2つで、IPO支援とM&A支援、この2つしかやっていません。
監査もやりませんし、税務もまったくやりません。2つだけ、IPOとM&Aの専門家としてやっています。
IPO支援というのは、顧問契約をさせていただき、毎月訪問して、社長や取締役、経営企画や経理の方々との相談にのって、IPOに向けて会社の課題解決をしていくということを行っています。
スタートアップですと資本政策や事業計画を作成したり、ベンチャーキャピタルや事業会社からの資金調達を支援することも多いです。クライアントの中には金沢や群馬の会社もあります。そのようなお客さんは訪問するのは数カ月に1回で、あとはメールや電話で質問を受けたり、会社の求める資料を作成したりしています。
M&Aの方は、FA(ファイナンシャルアドバイザー)として、案件探しから買収のクロージングまで支援するFA業務と、財務デューデリジェンスや株価算定を単発でご依頼頂くパターンがあります。
なぜ税務をやらないことにしたのか?
税務顧問は顧客から継続的に報酬を貰えることから、安定した収益源として、税務サービスを提供する公認会計士も少なくない。
江黒氏はその点についてはどう考えているのだろうか?
税務に関しては、自分は向いてないからやりません(笑)。
前職の監査法人時代に系列の税理士法人で税務業務を経験したことがあるのですが、その際に自分に合うサービスとは思わなかったのですね。
税務業務の中でのごくごく一部の話ではありますが、例えば個人の確定申告業務でお客さんによっては、1年分の領収書や請求書、契約書などを受け取って、それを徹夜で仕訳を入力して、質問をエクセルでまとめて、お客さんにメールして回答得たら、また仕訳を…と細かい作業をたくさん行わないといけないわけです。
今ですと、freeeさんとかMFクラウドさんとか使ってもっと記帳業務などは自動化できるかもしれませんが、当時はそうでもなかったですし、自分のまわりには、税務が得意な税理士さんや会計士さん、税務の中でもすごくマニアックな分野に強い税理士さんなどがいて、そうゆう人をみていたので、税務業務は自分がどこまでやるべきかな、自分がやりたい業務なのかなと感じました。
ですので、せっかく独立するのであれば、自分が向いていない税務で独立するのではなく“自分が得意なことや好きなことをやって生きていこう”と考えたのが理由です。
顧問や社外役員として収入を安定させる
税務という安定収入がない点に関しては、顧問や社外役員によっても補えていると江黒氏は語ってくれた。
収入に関していうと、M&Aのデューデリジェンスや株価算定は完全にスポットの臨時収入です。
またFA(ファイナンシャルアドバイザリー)業務に関しては、お客さんが買収や提携を希望する企業にアプローチして、アポイントがとれたらミーティングをして、成約へと持って行きますが、完全に成功報酬で行っていますので、案件が成約しなければタダ働きになるリスクというのはあります。
IPO支援に関しては、お客さんによって金額は異なりますが、月額の顧問料を頂いていますので、継続的な収入になります。ただ、IPOに向けての体制構築を行っていくので、会社の体制が整って自分の役割が終わったり、例えば資金調達が完了したりしたら契約が終了することもあります。
(中略)
また、社外役員を数社やらせていただいているので、この役員報酬は独立後の安定収入につながっています。
ただ、独立した時は、お客さんはゼロでした。私は独立直前のメイン業務は監査業務でしたが、ひとりで独立したので独立後の業務に監査業務を選ぶわけにもいかず、本当に仕事はゼロからスタートしています。
独立するとなると、どういったサービスをするにしても、最初は売上ゼロからスタートですから、売上ゼロの不安には向き合っていく必要があると思います。
BridgeConsulting・大庭崇彦氏の独立と戦略は?
大庭 崇彦
株式会社BridgeConsulting 取締役COO
公認会計士・税理士
同志社大学法学部卒業。2006年、公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツ・トータルサービス1部に入所。上場企業の会計監査を中心に、ベンチャー企業を対象としたIPO支援業務、内部統制支援業務、IFRS導入支援業務をはじめ、中国国内上場企業の監査及びコンサルティング等さまざまな業務を経験。2011年4月同法人を退所し、大庭崇彦公認会計士事務所を設立。同年10月に「世界のリーディングカンパニーを創出する」との理念を掲げ、グループ会社である「株式会社Bridge」の設立に参画し、代表取締役COOに就任。特にアジア各地に展開する人脈、ネットワークを利用したスタートアップ企業、中小企業の海外進出支援に定評あり。
IPOや決算・開示業務をクライアントに常駐して支援
監査法人トーマツの同期である宮崎氏とふたりで独立したBridgeConsultingの大庭氏。
クライアントに常駐してのIPOや決算・開示といった会計業務の支援をメインとし、また、全国の独立会計士とのネットワークも構築してサービスを展開する独自性の高い戦略を実現している。
私たちも江黒さんのようにIPO支援の仕事も多く行っていますが、当社の場合はクライアントに週2日~3日程度常駐して、IPO準備中ですとか管理部門のリソースが足りないような会社さんに対して、会計士が半常駐のような形で業務を支援するということを行っています。
ユニークな点としては、それらを自社の正社員だけではなくて、独立している会計士の方々とのネットワークを使いながら一緒に行っている点です。
当社では、独立会計士.jobと女性会計士.jobというサイトを運営していまして、現在、そちらに約650名の独立会計士の方々に登録頂いています。
IPOや会計支援などの案件があると、当社のメンバーがプロジェクトマネジメント行い、IPO支援でしたら、IPO支援の経験があったり、それをやってみたいという独立会計士の方にプロジェクトに入って頂き、クライアントを支援していくというパッケージでサービスを提供しています。
目の前の課題を乗り越えながら今の戦略を作り上げてきた
非常に独自性の高い同社の戦略だが、大庭氏は、現在の戦略は決して最初から計画されたものではなく、独立後に改善を加えながら最適な形を追求してきたことにより行き着いた結果だと語った。
今のサービスの原型は、創業当初から思い描いていたのではなく、最初にお仕事を依頼頂きました大手の人材会社さんがありまして、その依頼を受けたプロジェクトを支援していく中でできあがってきたのですね。
その人材会社さんとのお付き合いは、自社がM&Aされることに伴って管理部門の体制をローカルな基準のものからグローバル基準にアップグレードするというものでして、最初は私と宮崎で1年半くらいお客さんに常駐して張り付いて支援をしていました。
そうやってお客さんと一緒に汗をかきながら仕事をしていると、だんだん信頼頂けるようになって、お客さんからあれもやりたいこれもやりたいと、追加の依頼を頂くのですが、当然ふたりでは手に負えないことも多くなってきますから、我々の知り合いのツテを頼って他のメンバーを集めてきて、一緒に仕事をやって頂く形でしばらく対応していました。
するとまた次の課題にぶちあたりまして、、手の空いている会計士の人をその都度みつけていると、やはりパフォーマンスが落ちてしまって、当然ミスが起きたり、時にクライアントからのクレームに発展してしまったりすることもあるんですね。
そこで、どうすれば良いかということになって考えたのが、声をかける母集団を増やそう、データをとってきちんとできる人や得意分野を把握して最適な人に任せられるようにしよう、また、こちらでも手間暇をかけてその方にレクチャーしたりツールを提供できるようにしよう、そうやって仕組み化していこう、と考えて行き着いたのが現在の形になります。
また、大庭氏は、そういったことを行っていく中で自社のミッションにも気づいていったとも語った。
現在の戦略を描くまで、最初はお客様にご迷惑をかけたこともありましたし、それらは自分たちの責任でもありましたし、そう言ったことも全部受け止めながら現在に致ります。
そもそも、私も宮崎も監査法人でしか経験をしていなかったので、やはり外に出てみると、監査法人でやりとりさせて頂くようなある程度の専門知識を持っていたり、管理体制が整っていたりするようなお客さんばかりではないのですね。
監査法人に依頼するもっと前段階の管理がまったくできていなかったり、そもそも管理を担当する前提知識を持った人がいない会社さんもたくさんあったりして、そう言った会社さんとやり取りさせて頂く中で、会計士のような知識や経験を持った人間がもっと会社側に入り込んでいく仕組みが世の中には必要とされているのではないかと。
そういったニーズに気づいた時に、初めて自分たちの使命に気づくというか、使命感が湧いてきて、自分たちが肌で感じた、直接経験したことを、仕組みにして提供しているというのが今の我々の基本的なスタイルだと思っています。
Kepple会計事務所・神先孝裕氏の独立と戦略は?
神先 孝裕
Kepple会計事務所 代表
公認会計士・税理士・行政書士
2009年、公認会計士試験合格後、あずさ監査法人に入所。国際事業部にて主に監査、IFRS導入支援に従事。 修了考査合格後、監査法人を退職し、2013年に26歳で神先公認会計士事務所(現Kepple会計事務所)を設立し独立開業。日本を代表する若手ベンチャーキャピタリストであるSkyland Venturesの木下氏との出会いなどをきっかけに、スタートアップ企業を中心としたバックオフィス支援にて事務所を拡大。設立3年で従業員6名、クライアント数100社まで事務所を成長させ、複数のスタートアップの社外取締役も務めるなどスタートアップ業界を中心に活躍中。
若手起業家などスタートアップの支援に特化
神先氏は、会計士を目指したときから独立を希望していたため、修了考査の合格とともに監査法人を飛び出したという。
独立時の戦略に関しては「ノープランだった」と語る神先氏。独立から3年が経過した現在では、創業したKepple(ケップル)会計事務所を、若手起業家やベンチャーキャピタルの間で高い知名度を誇るスタートアップ専門の会計事務所へと成長させることに成功している。
今、当社では「スタートアップのエコシステムを作ろう」というのをスローガンとしてサービスを提供していまして、スタートアップ企業に必要な経営知識、人材、資金をKeppleをハブとして、循環させて、スタートアップ業界を盛り上げていこうということを意識してやっています。
具体的に何をやっているかという話ですが、私は公認会計士で年齢も今30歳で、独立した時は26~27歳でしたので、周りの会計士の方々のようにあまり高度な知識とか経験を有していないタイミングで独立しています。
そのため、普段、公認会計士がサポートしないフェーズの会社を支援しようと考えて、シード、アーリーステージのスタートアップに特化して、創業からEXITまでを全部支援できる会計事務所ということでサービスを提供しています。
ですので、税務・会計の支援はもちろん、法人の設立もしますし、設立した後の創業者やその株式関連、役所に提出する書類の作成や管理などをサポートしてあげたりですとか、商標登録していなければ弁理士を紹介して商標登録をアドバイスしますし、あとは、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルとつないで、資金調達を支援したりということも行っています。
ノープランの独立から、若手起業家→ベンチャーキャピタルとつながった縁
多数の有望スタートアップをクライアントに抱える神先氏。同分野に特化するきっかけは、ある時参加したフットサルがきっかけであったという。
私はちょうど丸3年くらいで監査法人を辞めました。独立をしたい、独立をするということが最初の目的でもありましたので、正直なところまったくのノープランだったんですね(笑)
なので、独立直後は、そもそも仕事の宛てはなくて、ここにいる大庭さんのBridgeさんがやっておられる独立会計士.jobにお願いして、仕事を頂いたりという感じでした。
それで独立して半年くらい経った頃に、フットサルで若手の起業家の方と知り合って顧問契約をさせて頂いたのですが、そちらに投資していた独立系ベンチャーキャピタルのSkyland Ventures(スカイランドベンチャーズ)の木下さんという方がいるんですけれども、彼と出会いまして、そこからスタートアップの世界に入っていきました。
きっかけは監査法人時代の先輩からの紹介
スタートアップ業界とつながるきっかけとなったフットサルへの参加だが、「最初のきっかけはどこに転がっているかわからないと思う」と参加者に自身の経験を語った。
私の場合、本当に何も人脈がなかったんですね。フットサルも趣味で楽しんでいて。
そのフットサルも監査法人時代の先輩の石倉さん(第8回・公認会計士ナビonLive!!に登壇予定の石倉壱彦氏)から誘って頂いて、「ベンチャーの社長さんなんかも来るからお前も来たら?」って。
それで趣味を楽しもうと、純粋に遊びに行ったのですが、そうしたら、そのフットサルというのが、ベンチャーキャピタルに務めている方が主催していて、スタートアップとかそういった界隈の人も多くて、そこで知り合った起業家の方と顧問契約をすることになって…と。
その後は、スタートアップ関連の仕事のつながりから広がっています。 なので、私の場合も趣味から広がりましたし、一番最初のきっかけというのは、どこにあるかわからなくて、けっこう人それぞれなものなんじゃないかなと思っています。
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