10月27日から11月6日にかけて、新日本監査法人や監査法人トーマツなど監査法人関係のニュースが複数リリースされています。
新日本監査法人が監査にAI導入、デロイト トーマツ グループの旗艦オフィスがグランドオープン、会計士不足に関する記事など幅広くご紹介します。
AIが異常仕訳を識別。新日本監査法人、監査品質向上に向けて実用化。
•AIによる会計仕訳の異常検知アルゴリズムを実用化(新日本有限責任監査法人 2017年11月6日付)
監査では全部の仕訳の検討はしませんし、現実的ではありませんよね。どの仕訳を検討するかは各監査法人ごとに識別の基準が決められていたり、監査人の経験によっていたりします。
今回、新日本監査法人は、AIを使って異常仕訳を自動的に識別できる“異常検知アルゴリズム”を開発・導入しました。新日本は、“異常検知アルゴリズム”の実用化についてニュースリリースを発表しています。
EYのメンバーファームである新日本有限責任監査法人(以下、EY新日本)は、会計仕訳データからAIが取引パターンを学習して異常仕訳を自動的に識別するアルゴリズムを開発しました。先端デジタル技術の監査現場への活用を推進するため新設したDigital Audit推進部により、監査先企業に順次展開します。EY新日本は、当アルゴリズムを含む先端デジタル技術を駆使し、効率的で深度ある監査の実現を目指します。
引用元:AIによる会計仕訳の異常検知アルゴリズムを実用化(新日本監査法人ニュースリリース 2017年11月6日付)
リリースによると、監査人が長年培ってきた知見や経験と先端デジタル技術を融合させることで、収益の過大計上や費用の過少計上などの異常な仕訳を自動的に検知することができるということです。また、新日本は昨年2016年7月に先行して“不正会計予測モデル”を導入しています。
画像引用元:AIによる会計仕訳の異常検知アルゴリズムを実用化(新日本有限責任監査法人 2017年11月6日付)
“不正会計予測モデル”は、AIが監査先企業の将来リスクを予測するというものです。“不正会計予測モデル”と“異常検知アルゴリズム”の2つを使って、今まで会計士が行っていたリスク識別や抽出作業をAIが行うことになり、監査時間が短縮される見込みです。
十分な監査時間を確保することができ、監査品質の向上に一役買いそうです。人手不足に悩む監査業界にとって、大きな改革になるのではないでしょうか。
デロイト トーマツ グループ主要法人が新拠点に集約。2019年春
•デロイト トーマツ グループ旗艦オフィスを2019年春にグランドオープン(デロイト トーマツ 2017年11月6日付)
デロイト トーマツ グループの拠点は、東京都内のどこにあるかご存知でしょうか?
- “東京八重洲・パシフィックセンチュリープレイス丸の内”(有限責任監査法人トーマツ東京事務所八重洲オフィスなど)
- “東京品川・品川インターシティ”(有限責任監査法人トーマツ本部・品川オフィス、デロイトトーマツ税理士法人品川事務所など)
- “東京丸の内・新東京ビル”(有限責任監査法人トーマツ東京事務所丸の内オフィスほか)
- “東京丸の内・丸の内ビルディング”(デロイトトーマツコンサルティング合同会社)
- “東京有楽町・有楽町電気ビルヂング北館”(トーマツイノベーション株式会社ほか)
- “東京丸の内・新国際ビル”(デロイトトーマツ税理士法人東京事務所ほか)
拠点は都内だけで6か所にのぼります。また、監査法人も八重洲、品川、丸の内の3つに分散していました。
今回デロイト トーマツのニュースリリースによると、これらデロイト トーマツ グループの旗艦オフィスが一か所に集約されるとのことです。
デロイト トーマツ グループ(東京都港区 CEO 小川陽一郎 以下 デロイト トーマツ)は、2019年春にグループのクライアントサービスの中心となる旗艦オフィスを東京・丸の内3丁目にグランドオープンします。日本のビジネスの中心的役割を担う丸の内にグループ主要法人の拠点を集約し、高度・複雑化する日本企業および社会の課題解決に貢献していきます。
引用元:デロイト トーマツ グループ旗艦オフィスを2019年春にグランドオープン(デロイト トーマツ 2017年11月6日
リリースによると、丸の内3丁目にグランドオープンする“丸の内二重橋ビルディング”の8階~19階の12フロアと、そこに隣接している、“新東京ビル”“新国際ビル”を含めた丸の内の一区画に集約されるそうです。
グループ企業の連携を高め、様々な角度からデロイト トーマツ グループのサービスを提供することが可能になりそうです。
監査の質を高めたいけど会計士が足りない…。対応迫られる監査法人。
•会計士が足りない 監査法人、質向上にもがく(日本経済新聞電子版 2017年10月27日付)
監査の品質向上のために監査時間を増やしたいけど、会計士がいない…。
繁忙期ともなれば、事務所に泊まり込みをして、朝の掃除機の音で我に返った経験がある方もいるのではないでしょうか。睡眠時間も休日も返上して働く現状で、さらに業務を増やすためには会計士を増やすしかありません。
日本経済新聞が、会計士不足に悩むあずさ監査法人と監査業界の現状に関する記事をリリースしています。
8月末、四大監査法人の一角を占めるあずさ監査法人が方針転換した。酒井弘行理事長が社員向けに「新規案件の受注を1年間停止する」と宣言したのだ。三菱重工業、電通、富士フイルムホールディングス……。ライバルから大手企業の監査契約を次々と取ってきた業界の「暴れん坊」は突然おとなしくなった。
引用元:会計士が足りない 監査法人、質向上にもがく(日本経済新聞電子版 2017年10月27日付)
記事によると、新規受注停止に踏み切ったのは、いわゆる“人手不足”が原因になっているようです。監査現場の過重労働は限界をむかえており、作業量を減らさないことには新たな監査に対応できなくなっています。
会計士の人数を増やすにも、会計士になりたいと思う受験者の増加が必要であり、受け入れる監査法人も監査報酬を原資とした報酬を用意しなければなりません。
監査法人で監査人になりたいと思ってもらうためには、どうしたら良いのでしょうか。監査法人に待ったなしの対応が迫られています。
(ライター 大津留ぐみ)