【追記】
最新版の監査法人比較記事は下記になります。下記ページをご参考ください。
→BIG4監査法人を比較!2023年12月版_四大監査法人の決算・業績(売上・利益)、クライアント数、人員数ランキング!
BIG4監査法人(四大監査法人)の業績を2017年10月版としてまとめました。
今回、2017年10月版として四大監査法人(あずさ・新日本・トーマツ・PwCあらた)を「規模(人員数)」「クライアント数」「業績」の3点から比較してあります。
東芝事件などを契機に大型クライアントの異動も目につく近年の監査法人業界ですが、BIG4監査法人の業績や規模はどうなっているのでしょうか?各社の決算書から比較してみました。
今回の比較のポイント・注意点
- 今回比較に使った数字は、四大法人とも、公認会計士法第34条の16の3第1項に規定する「業務及び財産の状況に関する説明書類」を参考にしています。
- PwCあらた監査法人は今年から「業務及び財産の状況に関する説明書類」を開示しているので、今年は四大監査法人の決算書が出揃った初めての年になります。
- 監査法人トーマツは決算期変更に伴い8ヶ月の変則決算となっています。(決算月を9月から5月に変更)
今回参考にした資料はこちら。
- 有限責任あずさ監査法人 第33期 平成28年7月1日~平成29年6月30日
- 新日本有限責任監査法人 第18期 平成28年7月1日~平成29年6月30日
- 有限責任監査法人トーマツ 第50期 平成28年10月1日~平成29年5月31日
- PwCあらた有限責任監査法人 第12期会計年度 平成28年7月1日~平成29年6月30日
本記事の目次
- 1:四大監査法人を『人員』で比較する-人員数ではトーマツが依然トップのまま!
- 2:四大監査法人を『クライアント数』で比較する-監査クライアント数は新日本が依然トップ!
- 3:四大監査法人を『業務収入・利益』で比較する-業績は二極化
1:四大監査法人を『人員』で比較する-人員数ではトーマツが依然トップのまま!
四大監査法人の人員数-前回と順位は変わらぬものの、あずさが新日本を猛追
それでは、まずは四大監査法人の『人員』を比較してみましょう。
人員総数、社員数、公認会計士数などを比較した表をご覧ください。
※あずさ監査法人のみ「業務及び財産の状況に関する説明書類」に正確な人員総数の記載がなく、約6,000名との記載になっていますので6,000名として記載してあります。
※監査法人トーマツの「業務及び財産の状況に関する説明書類」の人員数は、海外駐在員及び海外派遣の監査スタッフは含んでいません。上記に掲載している表も同様になっています。
人員総数
- トーマツが2位の新日本を大きく引き離し、トップ独走。
- 新日本を除く3法人は増加。あずさは前年比で約300名増。
総人員数に関しては、監査法人トーマツが6,649名に増加し、2位の新日本と差を広げています。また、3位のあずさ監査法人は2期連続で約300名ずつ増加しています。あずさ監査法人の人員数がこのまま増加すると、来期は新日本を抜いて業界2位になるかもしれません。
社員数(公認会計士である社員及び特定社員の合計)・比率
- 新日本・トーマツを抜いて、あずさが1位。
- PwCあらたは人数も少ないが、社員比率も低め。
前回1位の新日本監査法人は、71名減の大幅ダウンになりました。かわって、前回2位のあずさ監査法人がトップになりました。
社員数は、あずさ・新日本・トーマツの3法人はいずれも600名前後ですが、人員の総数に社員が占める比率は、あずさの10.2%とトーマツの8.5%で2%近い差があります。
一方でPwCあらた監査法人の社員数は130名と他法人の約5分の1となっており、人員総数に占める社員比率も4.7%と他法人の半分程度となっています。
あずさ監査法人は社員数・総人員数ともに増加しており、今後の業績拡大が期待できそうです。
公認会計士、会計士試験合格者等の人数・比率
- 公認会計士・会計士試験合格者の数は1位トーマツと2位あずさが僅差。
- 公認会計士・会計士試験合格者の比率ではあずさが最多。
公認会計士と試験合格者の総数も、前回から順位が変動しています。
昨年トップだった新日本監査法人は159名減少し、トーマツとあずさに逆転されて3位になりました。新日本監査法人以外の3法人は、80名から100名ほど公認会計士等が増加しています。
会計士比率に関しては、あずさ監査法人が最も高い73.7%となっており、PwCあらたは52.1%と他3法人と比較すると会計士比率が低くなっています。
監査法人で業務費用の大半を占める人件費は、利益に大きな影響を及ぼします。あずさ監査法人の比率が高いのは、業績が好調であるためと考えられます。
他方で、四大法人の中でPwCあらた監査法人の会計士比率が最も低い理由としては、業務収入に占める監査収入比率が他法人とくらべて極端に低いことから、非監査証明業務(アドバイザリー業務など)に従事する会計士資格者ではない人材が多いことが考えられます。
2:四大監査法人を『クライアント数』で比較する-監査クライアント数は新日本が依然トップ!
四大監査法人のクライアント概要
次に、四大監査法人をクライアント数から比較してみましょう。
ここでは監査証明と非監査証明のクライアント数や比率を比較しています。
※クリックすると拡大します
※1:{(金商法・会社法)+金商法}クライアント数/監査証明クライアント総数で計算。
※2:非監査証明クライアント数/(監査証明クライアント総数+非監査証明クライアント数)で計算。
監査証明・非監査証明クライアント総数
- 監査クライアント数は新日本が1位。あずさが猛追。
- 監査証明クライアント数の増加は、PwCあらたがトップ。
監査証明クライアント数に関しては、新日本監査法人が3,895社と最も多くなっています。
また、新日本監査法人に関しては東芝事件に伴う行政処分の影響で監査クライアントの大幅減少が予想されましたが、減少数は前期が113社、当期は76社の減少となり、1位に留まっています。
一方で、監査法人トーマツも、前期は147社、当期は28社の減少となっており、新日本と同規模の監査クライアント数減になっています。このため、あずさ監査法人がトーマツを抜いて2位に浮上しています。
また、四大監査法人の中で最も監査クライアント数を増やしたのは、PwCあらた監査法人でした。
非監査クライアント数に関しては、監査法人トーマツは713社、新日本は229社の大幅減で順位が入れ替わり、1位が新日本、2位がトーマツとなっています。あずさ、PwCあらたの2法人はクライアント数を増やしたものの、上位2法人に及びませんでした。
また、非監査クライアントを比率で見ると、PwCあらた監査法人が49.8%と最も高く、あずさが39.8%と最も低くなっています。
監査法人トーマツのクライアント数の減少についてですが、トーマツの監査契約の新規の締結及び更新のポリシーが、50期よりさらに厳しくなっていることが関係している可能性があります。以下「業務及び財産の状況に関する説明書類」から、当期より追加された部分を引用しています。
なお、監査契約の更新には審査担当者社員の承認を要することとし、監査業務リスクが高く、業務の継続にさらに高度な判断を要する場合には、リスク管理室長による追加承認手続を実施することとしております。
監査契約を更新するためには、従来より厳しい審査基準をクリアする必要があります。これにより、審査を通らずに監査契約が打ち切られている可能性があります。
3:四大監査法人を『業務収入・利益』で比較する-業績は二極化
四大監査法人の業務報酬・当期純利益
それでは、最後に業務収入や利益を比較してみましょう。(なお、監査法人トーマツの数値は決算日の変更のため8ヶ月間分とイレギュラーになっています。そのため、収入・利益金額の他法人との比較は割愛しています。)
業務収入(売上高)
- 業務収入トップは引き続き新日本。2位のあずさとは僅差。
- 監査証明収入は、あずさとPwCあらたが増収に。
- 非監査証明収入ではPwCあらたが2位に浮上。
四大監査法人の業務収入を見てみると、増収2法人、減収1法人と明暗が分かれました。
増収トップはあずさ監査法人で60億円の増加、ついでPwCあらたは52億円の増加になりました。一方で、新日本監査法人は64億円の減収でした。クライアント数の増減と比例する結果になっています。
また、上位争いをしている新日本とあずさは僅差になっています。このままの傾向でいくと、あずさ監査法人が業界トップになる可能性もありそうです。
監査と非監査それぞれの業務収入に目を向けてみると、監査は新日本監査法人がトップ、非監査ではあずさがトップとなっています。
監査証明収入・非監査証明収入ともに、あずさ監査法人とPwCあらたが増収、新日本は減収となっています。
また、非監査においては、昨年4位のPwCあらた監査法人が新日本とトーマツ(8ヶ月での収入)を抜いて2位になっています。
構成員・社員ひとりあたり業務収入(売上高)・利益
次に、構成員・社員ひとりあたりの業務収入や利益について見てみます。
- 業務収入は各法人とも同水準(8ヶ月決算のトーマツは除く)。
- PwCあらたの社員ひとりあたりの業務収入は3億円台を維持!
- 経常利益は金額、利益率ともにあずさ監査法人がトップ。
【業務収入】
業務収入の部分だけ抜き出してみます。
前期は四大法人間で大きな差がありましたが、当期は決算期間が違う監査法人トーマツを除き、残り3法人はほぼ同水準になっています。構成員の移動も影響しますが、もっぱら報酬が高いクライアントが、新日本監査法人からあずさやPwCあらたに移動したために、このような動きになったものと推測されます。
パートナーひとりあたりの業務収入を計算してみると、四大監査法人は8ヶ月決算の監査法人トーマツを除き、いずれもパートナーひとりあたりの業務収入は増加しています。
PwCあらた監査法人に関しては、パートナーひとりあたりの業務収入額が3億円を超えており、他の法人の2倍程度という結果となっています。
【経常利益】
経常利益を見てみると、金額、利益率ともにあずさ監査法人が最も大きくなっています。
経常利益に関しては、あずさ監査法人が金額、利益率ともにトップである一方で、PwCあらたと新日本の数値が悪化しています。
最後に、構成員、ならびに、社員ひとりあたりの経常利益です。
構成員ひとりあたりの経常利益は、あずさ監査法人が他3法人を大きく引き離し1位となっています。
一方で、社員ひとりあたりの経常利益は、PwCあらた監査法人が1位ですが、前期から70%ダウンしており、他の監査法人と同じ水準になってきています。
以上、2017年(平成29年)10月時点の情報にもとづく四大監査法人の比較をお送りしました。
いかがだったでしょう?監査を取り巻く環境が厳しくなる中、数字に落とし込んでみるとその結果が見えてきたと思います。
次回は監査法人トーマツが12ヶ月での決算となるため、業績面でも四大法人比較が可能になる予定です。次回以降の特集にもご期待ください。
(ライター 大津留ぐみ)
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