会計ソフトは消え、コマースソフトへと進化する!?会計士や税理士の未来とは:弥生がMisoca買収で描く世界(後編)

  • 2016/4/27

会計業界やスタートアップ業界を驚かせた会計ソフトシェアNo.1「弥生」によるクラウド請求書サービス「Misoca(ミソカ)」の買収。

前編では、弥生がMisocaを買収するに至った経緯と彼らのビジョンである「中小企業向けEDI構想」の一端について触れた。

前編はこちら→会計ソフト最大手がスタートアップ買収を決断した理由:弥生がMisoca買収で描く世界(前編)

後編では、その「中小企業向けEDI構想」の詳細やその先に広がる会計業界の未来について、前回に続き弥生の岡本氏、Misocaの豊吉氏に話を聞いた。

 

岡本 浩一郎(おかもと こういちろう)

弥生株式会社 代表取締役社長

1969年、神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、野村総合研究所に入社。約7年に渡りエンジニアとして大企業向けシステムの開発・構築に携わった。その間、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のアンダーソンスクールに留学、MBAを取得。1998年、ボストン コンサルティング グループへ転職し、多様な企業のコンサルティングに携わった後、2000年に起業。設立したリアルソリューションズを通じてコンサルティング事業を展開。2008年4月より現職。弥生ブランドの強化と実績の再成長とを実現している。

 

豊吉 隆一郎(とよし りゅういちろう)

株式会社Misoca 代表取締役

岐阜県出身。岐阜工業高等専門学校 電気工学科を卒業。卒業後Webのシステム開発で独立。
個人事業としてWebサービスの開発や売却の実績を積み、2011年6月に株式会社 Misoca (旧:スタンドファーム株式会社)を設立。
Misocaのプロダクトオーナーとして世の中のしくみをシンプルにする。

テクノロジーの進化により会計業務は3.0の時代に

クラウド会計ソフトに代表されるテクノロジーの進化に伴い、それを利用する事業者の会計業務や、税理士や会計士などの会計専門家の業務はどのようになっていくのだろうか?

弥生の岡本氏は、いわゆるクラウド会計ソフトはもちろん、従来型のデスクトップ会計ソフトにもクラウドの技術を組み合わせることによって「会計業務3.0の世界が来ている」と語る。

弥生が提唱する「会計業務3.0」とは、会計における“作業”のすべてが自動化される世界だ。

そろばん・電卓や紙の帳簿を利用してすべての業務が手作業で行われていた「会計業務1.0」から、これまでの会計ソフトのように転記や集計など作業の一部が自動化された「会計業務2.0」、そして、銀行やクレジットカードの自動取り込み、仕訳の自動化などクラウドを始めとしたテクノロジーによって作業のすべてが自動化されるのが「会計業務3.0」の世界である。

会計業務3.0とは?

会計業務1.0 すべての業務が手作業で行われる会計業務。
会計業務2.0

これまでの会計ソフトを利用した会計業務。転記や集計など作業の一部が自動化される。

会計業務3.0

クラウドなどこれからの会計ソフトを利用した会計業務。銀行明細の自動取り込みや帳票の電子化など、作業のすべてが自動化される。

会計「作業」は限りなくゼロに近づいていく
-これからの会計ソフトと会計業務

昨年、「人工知能(AI)といったテクノロジーの発達によって会計の仕事は将来なくなってしまうかもしれない」「エストニアでは税理士や会計士がいなくなった」という話が世間を賑わせたが、会計業務3.0の世界では会計業務はなくなってしまうのだろうか?

「会計業務がなくなるのではなく、本質的に価値を生む業務により時間を割けるようになるのが会計業務3.0の世界だ」と岡本氏は語る。

“何のために会計をやるのか?”と会計を行う目的を聞かれると、“税務申告をするため”“銀行に提出するため”となりがちだが、会計とは本質的には自分の事業の居場所を理解し今後を判断するために行うものです。

つまり、会計には本質的に価値を提供するための業務と、そこに至るためのデータ入力などの作業がありますが、これからの会計業務においては価値を生まない作業は減っていきます。それをもって“会計の仕事がなくなる”という人はいるが、決してそうではなく、作業が減ることによって会計データをもとに自社のこれからを考えることに時間を割けるようになるわけです。

そうなると、士業の価値もそういった部分に求められるようになっていくわけです。例えば、税務申告の電子化が進んだエストニアでは、記帳代行などの作業を専門とする税理士や会計士はいなくなりましたが、アドバイスやコンサルティングを行う税理士や会計士は引き続き存在しています。
日本でもこれからの税理士や公認会計士には、顧問先に対して作業ではなく、彼らの居場所や今後向かう先をアドバイスできるようになることが求められていくはずです。

会計ソフトはコマース(商取引)ソフトへと進化する!?
-弥生が提唱する“コマース3.0”

また、岡本氏は、Misocaの買収の先によって、会計業務3.0の次のフェイズを実現する、会計だけでなくその前段階である商取引のプロセスも進化させていくことを目指しているという。

これが前回の記事でも述べた弥生とMisocaが構想する中小企業向けEDIである。

この中小企業向けEDI構想は、企業間の取引プロセスをWEB上で完結できる仕組みなのだが、具体的にはどういったものなのであろうか?

まず、事業者が取引を行う過程には、

見積り→発注・受注→納品・検収→請求→支払・入金

というプロセスがあり、これは売り手と買い手というふたつの事業者をまたいだ作業である。

しかし、中小企業においては、本来は一連の流れを一連のものとして処理することはできておらず、多くの場合は、電話やメールでのやりとりで見積りを決め、捺印された紙の受・発注書をFAXやPDF化したファイルで送信するなど、そのプロセスにおいて多大な手作業が発生することとなっている。

弥生とMisocaはこの流れを一気通貫で電子的に処理できるようにし、それによって中小企業の業務プロセスの圧倒的な効率化を実現したいと考えているという。

弥生はこれをコマース3.0と名付け、売り手と買い手がシステム上で取引を完結できる世界の実現を目指している。

コマース3.0とは?

コマース1.0 売り手、買い手がともに手作業で取引を行う世界。紙やFAXなどによるアナログな取引、これまでの取引。
コマース2.0 売り手、買い手が単体ではある程度システム化されて取引を行う世界。現在の取引。
コマース3.0 売り手と買い手がシステム上でつながり、すべてが効率化される世界。これからの取引。

技術的には実現可能
-コマース3.0実現への挑戦

これまで「会計」や「給与」と言ったバックオフィス関連のソフトを主戦場としていた弥生がこういった取引プロセスに関する分野をカバーしようとの考えに至った背景はどのようなものだったのだろうか?

また、前回の記事で触れたように、奇しくも同社が買収したクラウド請求書サービスMisocaも、弥生とは別に同様の構想を練っていた。

この偶然の一致について、岡本氏と豊吉氏によると「この発想は実は決して新しいものではなく、現在の技術で何ができるかと合理的に考えるとここに行き着くものだ」という。

前編でも述べた通り、EDI(Electronic Data Interchange)によって、大企業を中心に受発注や契約など事業者間の取引に必要なやりとりが電子プラットフォーム上で行う仕組みが既に実現されている。

一方で、中小事業者が安価に利用できるEDIは技術的には可能にも関わらず未だ実現されていない。

Misocaの豊吉氏はこう語る。

EDIはずっと以前に実現されているにも関わらず、中小事業者向けEDIは実現されてきませんでした。一方で、テクノロジーは常に進化していて、近年では企業向けのクラウドサービスが一般化し、また、WEBサービスの発達で個人間の直接取引も実現されています。こういった点を考慮すると、事業者間の直接取引プラットフォームが実現されるのは自然な流れだと思っています。

会計ソフト、そして、公認会計士や税理士の未来

弥生とMisocaでは、両社が力を合わせることによって中小事業者向けEDIを実現し、日本の中小企業や個人事業主の業務の効率化を実現したいのだという。

いつ実現されるかはまだ定かではないが、そう遠くない将来、彼らが語るようなあらゆる作業が自動化され、会計業務や公認会計士や税理士といった会計の専門家の価値が大きく変わる時代はやってくるだろう。

弥生の岡本氏は最後に公認会計士や税理士へのメッセージをこう語ってくれた。

私たちはこれからも税理士や公認会計士の業務を効率化するツールを提供していきます。

ただ、あくまでもそれらは“ツール”であり、それらを顧問先でどう活用して効率化していくのかは税理士や会計士の方々次第だと思っています。

ツールの使い方を提案し、顧問先が向かうべき方向へと背中を押す、これからの税理士や会計士の価値はそこにあると思いますし、そのために新しいツールを活用していって欲しいと思います。

(終)
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