税理士の顧問料はどこまで下がるのか? -月額2,980円のクラウド士業Bizer(バイザー)から考えるこれからの税理士-



 

独立を目指す公認会計士や既に開業している公認会計士にとっては、税務の報酬相場は気になるところでしょう。今回は、当社で運営する会計事務所求人名鑑で人気の高かった月額2,980円のクラウド士業Bizer(バイザー)に関する記事を転載してお届けします。

Bizer(バイザー) - 士業の月額顧問料が『2,980円』!

税理士にとってチャンスの大きい3つの分野 ―相続、海外、そして、IT―

近年、「税理士になっても儲からない」ということがよく聞かれるようになった。少子高齢化の進展、景気の長期低迷など日本経済全体のゆるやかな衰退は、税理士を始めとする士業の現状や将来にも暗い影を落としている。

税理士の登録数が増加する一方で、高額な顧問料の顧客は限られており、記帳代行や小規模事業者向けの顧問料は薄利多売化してきている。

一方で、相続税法の改正や海外進出を行う中小企業の増加、再び活気づく起業・ベンチャーブームなど、士業にとってチャンスの多い領域も確実に存在しており、悲観するのは早計とも言える。

とは言え、この「相続」「海外」「起業・ベンチャー」といったチャンスの多い分野に目を向けてみると、相続においては一定の専門性や集客チャネル、海外であれば海外とのネットワークや語学力が必要ということもあり、一般の税理士が一朝一夕で参入し簡単に成果を挙げられる分野ではない。

となると、一般的な税理士や会計事務所が狙うべきは「起業・ベンチャー」の領域だろう。

しかし、ここにも大きな問題がある。近年の起業はIT分野が多くなっており、税理士にも理解し難い内容が多くなっているのだ。

平均年齢が高く文系出身者も多い税理士にとって、IT業界は特殊な専門用語やエンジニア中心の独特の文化、日進月歩で移り変わる業界トレンドなど、理解しにくい業界である。また一方で、IT系起業家もIT分野へのリテラシーが高い税理士を見つけられず苦労しているなど、税理士と成長産業であるITの間でミスマッチが起きている。これは非常に残念なことだと言えるだろう。

このシビアな状況にあってひとつの解になるかもしれないサービスが今回取り上げる 

月額2,980円のクラウド士業Bizer(バイザー)

である。 

税理士の敵か味方か!?月額2,980円のインターネット士業とは?

【サービス開始から2ヶ月半で150社が登録】

月額2,980円のクラウド士業Bizer(バイザー)とはどのようなサービスなのだろうか?

Bizer(バイザー)とは、月額2,980円を支払えば、税理士、社会保険労務士、行政書士、司法書士、弁理士に会社運営に関する相談をWEB上で何度でもできるというサービスである。また、オンラインでの無制限の相談に加え、会社設立時などに役所に提出する必要書類(例えば定款や委任状、登記申請書など30種類)の自動生成できるシステムを無料で利用することもできる。その他、決算や税務申告を定額で行ってくれる税理士の紹介や、この7月からは弁理士による商標登録サービスの紹介をスタートするなど、士業に対して仕事を提供するサービスも提供している。 

サービスを立ち上げた株式会社ビズグラウンド代表取締役社長の畠山友一氏は、メインユーザーについて

「今年5月12日にサービスを開始したのですが、やはりIT系起業家からの反響が大きかったですね。7月28日時点で150社ほどに登録頂いていますが、基本的には10名未満のスモールビジネスが中心です。多くはありませんが、個人事業主、フリーランスにも利用されています」

と、語る。

同サービスはリリースするやいなや、画期的なサービスとして多くのメディアに取り上げられるなど注目を集めたが市場の反応はさまざまだったそうだ。

「ユーザーから『安かろう悪かろうなんじゃないの?』と、回答のクオリティを不安視する声が出ることはある程度想定内でしたが、士業の方からは特にネガティブな反応が多かったですね(笑)でも、実際に使用した方からはスピード感も含め概ね好評です。また、ありがたいことに士業スタッフに加わりたいと賛同してくれている人も10人以上待機してもらっている状態です」

例えば、リリース直後からのユーザーには、『Twitter4』の開発者としても知られる株式会社サムライズムの山本裕介氏がいる。山本氏はこれまで税理士とのやり取りの中で『PayPal』などIT用語の語句説明から始めなければならないことを不便に感じていたため、ITに強い税理士の回答を高評価している。 

【士業は無料で回答するビジネスモデル】

Bizer(バイザー)では驚くべきことに、士業は無報酬でユーザーからの質問に回答しているという。一方で、ユーザーが回答した税理士を顧問として指名し契約が成立しても仲介料や紹介料をBizerに支払う必要はない。

また、別途、決算や税務申告の代行をスポットで行う税理士を紹介する決算申告代行サービスを行っており、これに関しては税理士はシステム利用料を支払う必要がある。ただし、そのシステム利用料も案件の成約時にのみかかる形であり、ユーザーから税理士に対する報酬に連動する仕組み(税理士の受け取った報酬の20%相当)であるため、税理士の収益を圧迫しない料金体系となっている。 

Bizer(バイザー)がもたらす税理士へのメリット・デメリット

【Bizer(バイザー)を利用することで税理士の空き時間を活用】

このように、Bizer(バイザー)は士業の顧問料を低額で提供する側面だけでなく、士業のクライアント獲得を支援する側面を有している。とは言え、現役の士業にとっては非常に強力な競合、税理士で言えば月額30,000円と言われる顧問料相場の価格破壊を促すライバル出現という印象は拭えない。

しかし、畠山氏は、Bizerは士業と共存できるサービスであり、それ以上に士業やその主要クライアントとなる中小企業を活性化する大きな狙いがあると語る。 

「Bizer(バイザー)は一見、競合に見えるかもしれません。ただ、Bizerは決して世の税理士の仕事を奪うサービスではないんです。というのも、実はBizerに登録している税理士(以下、Bizer税理士)は、通常業務の空き時間を効率的に活用して、ユーザーからの問い合わせに無報酬で回答しています。その代わり、ユーザーである事業者から直接問合せが入るようになれば、営業の必要なく顧客を無償で獲得できます。

また、BizerはWEBで回答を行うという特性から、基礎的な質問への対応が中心で、例えば、事業計画の作成や資金繰りの支援、会社分割や合併、時間をかけた節税策の実行、株式公開準備など、高度な質問には対応していませんし、これらの質問にオンラインで対応するのは現実的ではないと考えています。Bizerの狙いとしては、事業を始めたばかりでまだうまくいくかわからない小規模事業者にはBizerを利用して士業への顧問料を節約してもらい、そのコストを事業の成長にまわしてもらう。事業が成長して大きくなれば各士業と直接契約してより専門的なサービスを提供してもらう、という流れを作りたいと考えています。

つまり、税理士などの士業が空き時間などを活用して起業家や小規模事業者の支援を行い、事業の成功確率を高める、それによってより有望な事業者が輩出されるようになり、士業はもちろん、日本経済全体が活性化していく、という大きな流れを作りたいと思っているんです」 

【Bizer(バイザー)はどう起ち上がったのか?】

士業だけでなく日本経済全体の活性化まで見据える畠山氏であるが、ここで氏の経歴に話を移そう。

インタビューの場に現れた畠山氏の第一印象は、日によく焼けた肌と、着物を粋に着こなす鍛え抜かれたフィジカル、明るく気さくな人柄が特徴的であった。大学時代には水上スキーでインカレの優勝を果たすなどバリバリの体育会出身だという。

他方、独自の着眼点で士業向けのWEBビジネスを起ち上げるインテリジェンスや、士業向けの記事ということで、士(さむらい)を意識した着物姿(デニム生地で作られた“デニム着物”というらしい)でインタビューに応じるサービス精神も持ち合わせるユニークな人柄も兼ね備える人物でもある。

まさに若き士(さむらい)として士業の世界に斬りこんできた畠山氏であるが、Bizer(バイザー)を起ち上げるまでは士業と大きな接点があったわけではなく、畠山氏自身の起業経験がBizerの構想のベースにつながっているという。

氏は、新卒で富士通アドバンストソリューションズにシステムエンジニアとして入社したのち、3年でリクルートの営業職に転職した。その後、ネクスウェイを経てGREE(グリー)、その子会社であるグリーアドバタイジングとIT業界のさまざまな部署、役職を経験した。その後、12年半のサラリーマン生活を通じ、ぼんやりとB2B、バックオフィス支援をやりたいと考えて独立したが、はじめは具体的なサービスの構想はなかったという。

「会社を設立する経験なんて、きっと一生に何度もあることじゃない。時間に余裕もあり、何より安く済ませたいから自分で登記することにしたんです。そうしたら、やれ法務局だ、税務署だ、都税事務所だ…と、とにかく必要書類をたくさん出さないといけない。しかも何度も何度も同じことを記入しなければならない…。はっきり言って、めんどくさかった(笑)これ、自動生成できるようにしちゃえばいいんじゃない?そしたら、みんなもっと起業しやすくなるはず!そう考えたことから、Bizerは生まれました」

また、畠山氏は、起業にあたり10人以上の税理士と面談し、事業者と士業とのマッチングの難しさも実感したという。

「スモールビジネスの場合、はじめは必ずしもがっちりとした月額の顧問契約は必要ない。もっと気軽に、コストをかけずに相談したいというニーズが一番大きいと思いました。極端な例では、Bizerのユーザーには副業で運営しているWEBサイトからの収入の相談をするために利用してくださっているサラリーマンの方もいますし、世間一般では、本格的に事業を行っている起業家や小規模事業者でも税理士への顧問報酬を負担に感じ、自身で確定申告を行っている方々も少なくありません。Bizerの目的はそのようなスモールビジネスを支援すること、今まで士業のビジネスターゲットにならなかったアーリーステージの事業者に合わせた顧問契約の新しい形を作ったということなんです」

ちょっとした工夫やIT化・効率化で税理士業界はまだまだ良くなる

現在の日本では、Bizer(バイザー)の登場を待たずとも、士業の報酬の低価格化、収益性の悪化は避けられない課題だ。特に都市圏では税理士報酬の低価格化が顕著であり、ただでさえ収益性の高くない小規模事業者の顧問料がさらに低下し、それにも関わらず煩雑な記帳業務や繰り返される初歩的な質問にスタッフの時間の大部分が割かれる…といった悩みを抱える会計事務所も少なくないだろう。

畠山氏はこういった部分もちょっとした工夫やIT化・効率化で改善できるのではないかと考えているという。

例えば、前述の通りBizerは、事業者向けに決算申告代行サービスの提供も行っている。このサービスは、ユーザーがBizer税理士と直接契約して、決算申告の代行を依頼できるというものだが、これにもちょっとした工夫がある。料金が、決算の4ヶ月以上前に依頼すると6万円、3ヶ月以内に依頼すると8万円、決算を過ぎると10万円というふうに早期に依頼すれば料金も安くなるのである。税理士にとって、それまでフォローしていない顧客の決算をいきなり見るのは抵抗があるもの。そのため、Bizerでは駆け込み依頼を避けるために、早期に依頼すると料金が安くなる仕組みを導入している。料金体系を変えるだけで煩雑な作業を避ける仕組みになっているのだ。 

また、Bizerは税理士とユーザーの契約をサポートする機能も提供している。決算申告代行サービスの料金に関しては、Bizer上で決済することができ、税理士にとってはスモールビジネスへの回収リスクを低減し、請求の手間もかからない。Bizer税理士は、事業者と接点を持てるプラットフォームを無料で利用でき、決算代行の契約が成立した際にもシステム利用料をオンラインで支払うなど、ITを活用して税理士が本業である税務相談や顧客獲得に専念できる仕組みとなっている。

畠山氏はこういったBizer(バイザー)の税理士と事業者の間のプラットフォームとしての機能を発展させて行きたいと考えているという。

「世の中にはたくさんの起業家がいるのに、若手起業家やIT系起業家と税理士との出会いの機会が少ないと感じています。Bizerを立ち上げた僕ですら、これまで士業の方とはまったく縁がなかった。エンジニアやプログラマなどIT系の起業家と税理士さんは、ともに特殊な世界に生きていて、環境が違いすぎるんです。BizerのユーザーはIT系の起業家や若手起業家が多いので、税理士さんもここでユニークなビジネスを手がける起業家たちと出会って欲しい。そしてIT業界や若手起業家たちの空気感を感じて欲しい。普段出会えない起業家と出会い、彼らがどんなことを考え、どのような経営課題を抱えているのか、Bizerからどんどん新たな情報やクライアントを得てもらいたいと思っています。

今、日本にはスモールビジネスが約300万事業者あるそうですが、近年、政府も起業やベンチャーの支援を掲げ、銀行などの大手の金融機関もベンチャーや中小企業の支援を始めているし、大企業がベンチャーファンドを組成してベンチャーに投資したり、提携や買収したりする例も増えてきています。起業やスモールビジネスの活性化は国策として推進され始めている。大手企業にいてもいつ業績不振になるか分からない時代。みんながもっともっと起業する時代が来ると思いますし、もっと起業すれば良いと思います。Bizerはその手伝いをしたいし、このサービスがあればそういった土壌を作っていけると思っています」

Bizer(バイザー)が目指す税理士と事業者の未来

近年、『freee(フリー)』や『マネーフォワード』といった自動で仕訳を行うクラウド会計ソフトなども登場し、税理士の業務の中でも単純作業にあたる部分はどんどんIT化されている。そういった流れの中、畠山氏も起業を機に本格的に税理士との顧問契約を検討し、また他の起業家が税理士にどういう業務を依頼しているのかをリサーチした。そして、「税理士に期待する付加価値について」考えるようになったという。

「Bizer(バイザー)では、税理士の価値は記帳代行などの単純作業ではなく、税務のプロフェッショナルとしてスモールビジネスに必要な経営アドバイスができることにあると考えています。そのために、私たちは単純作業の部分をITによって徹底的にスリム化してサポートする。士業とITの共存を進めたいと考えています。

つまり、Bizerの狙いは、士業の顧問料を安くするのではなく、士業の仕事を楽にすることです。IT化で単純作業を減らし、より付加価値のある業務に専念できる環境を提供することが理想なんです。特に、若い税理士さんには、是非Bizerを使って新しい税理士像を見つけてもらえると嬉しいですね」

そう語る畠山氏の言葉は力強い。

現在のBizerは、起業家や個人事業者向けのサービスだが、今後は士業が使える『Bizerプロ』なども検討してみたいという。

例えば、会計事務所を経営する税理士のみなさんにはこんな経験はないだろうか?

公的文書の作成など事務業務にスタッフの時間の多くが割かれている…。

顧問先から過去に似たような質問が何度も来ているが、都度、スタッフがそれぞれ回答して無駄な手間がかかっている…

顧問先からの質問に対する回答がノウハウとして事務所内に蓄積・共有されていない…。

Bizer(バイザー)を使えば、文書作成という手間のかかる作業を効率化したり、顧問先からの質問や回答をデータベースとして蓄積し、各会計事務所の独自ノウハウとして活用していくことも可能になるわけだ。

所長税理士のもとでスタッフが記帳代行や法定書類の作成を労働集約型で行っていく…

そんな士業のビジネスモデルが大きく変わる時代がすぐそこまで来ているかもしれない。

Bizer(バイザー)という新時代の士(さむらい)が今、歩み始めた。 

(終)



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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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