「会計事務所」と聞くと、税理士や公認会計士、もしくは、それらの資格取得を目指す人が働いているイメージを持つ人が多いだろう。ところが、ストラクチャード・ファイナンス分野では、それらの資格取得者以外も活躍し、事務所の成長に貢献している事例も少なくない。
証券化・SPC管理やストラクチャード・ファイナンス分野の税務・会計アドバイザリーのパイオニアである東京共同会計事務所にて活躍する若手ふたりに話を聞いた。
目次
東京共同会計事務所とは?
東京共同会計事務所は、SPC(特別目的会社)を活用した証券化ビジネスのパイオニアとして、延べ9,000件を超える豊富な実績、多様な資産クラスおよびスキームの取り扱い実績を有する会計事務所です。
こうした経験に裏打ちされた案件組成フェーズでの的確なアドバイザリーや総合的なサービスを提供しています。
設立:1993年8月
所在地:東京都千代田区丸の内1-4-1 丸の内永楽ビルディング 24 階
構成人員:311名(2025年1月6日現在)
公認会計士28名/会計士補・公認会計士試験合格者2名/税理士44名/税理士科目5科目合格者4名/税理士科目合格者24名/司法書士6名/行政書士3名/弁理士3名
※資格を重複保有しているスタッフを含む
フィナンシャル・ソリューション部マネジメントチームとは?
フィナンシャル・ソリューション部は、常時数千社に及ぶSPCおよび各種組合等に対し総合的な事務管理サービスをワンストップで提供しており、多様なSPC・各種組合等に関する豊富な管理実績を有しています。
その中でもマネジメントチームはミドルオフィスとして、フロントオフィスとバックオフィスを繋ぐポジションとして、以下の業務を遂行しています。
【主要な業務】
① SPC管理に係る主要な契約について会計税務、法務、資金管理等に関わる観点でのレビューを実施することにより契約の適正化をサポートする業務
② 案件クロージング後に、締結された契約書の内容を確認しタスク管理をすることで、フロントオフィスやバックオフィスが受託業務を、適時に漏れなく実施していけるよう支援する業務
【所属メンバー】13名(正社員6名、契約社員7名/2025年1月6日現在)
金融機関のバックオフィス業務、アセットマネジメント業務など当事務所の業務と親和性が高い金融、ファンド業界の経験者はもちろん、それ以外の様々な業界の経験者が在籍しています。また、当部のフロントオフィスやバックオフィスでの業務経験を経てマネジメントチームに異動し、業務を担っているメンバーもいます。
なぜ、金融業界から会計事務所に?
── 本日は金融業界から東京共同会計事務所(以下、TKAO)に転職してきたおふたりにお話を伺います。最初に自己紹介をお願いできますでしょうか。
多田:前職は総合金融会社で、エネルギー関連部署での再生可能エネルギーのSPCのアセットマネジメント業務や、広報部門等を経験しました。TKAOでは入社から約2年間、マネジメントチームに所属しています。
マネジメントチームは、当社が受託している数千社のSPC管理に係る主要な契約の適正化や、締結された契約書の内容を確認しタスク管理を行うことで、フロントオフィスやバックオフィスが受託業務を、適時に漏れなく実施していけるよう支援しているチームです。
東京共同会計事務所
フィナンシャル・ソリューション部 マネジメントチーム
多田りな
総合金融会社で、エネルギー関連部署での再生可能エネルギーのSPCのアセットマネジメント業務や、広報部門等を経験。2022年、東京共同会計事務所へ入所し、フィナンシャル・ソリューション部 マネジメントチームに所属。慶應義塾大学経済学部卒業。
佐藤:私は新卒で投資信託等の運用会社に入社し、リスク管理部門やバランスファンド運用部門を経験し、その後2019年にTKAOに入社しました。約4年間クライアントへのアドバイザリー業務を担うフロント部門に所属していましたが、異動希望を出し、2023年11月からマネジメントチームに所属しています。
東京共同会計事務所
フィナンシャル・ソリューション部 マネジメントチーム
佐藤雄輝
投資信託等の運用会社に入社し、リスク管理部門やバランスファンド運用部門を経験。2019年に東京共同会計事務所へ入所し、約4年間クライアントへのアドバイザリー業務を担うフロント部門に所属。2023年11月からマネジメントチームに所属。東京工業大学(現・東京科学大学)理学部卒業。
大企業ならではのジョブローテーションへの悩み、熱量を高めて取り組める仕事を求めて
── おふたりはどのような経緯で転職活動をされたのでしょうか?
多田:前職は展開している事業とサービスが多様で、ジョブローテーションによる全く別業種への異動も経験しました。約7年で3部署を経験し、様々な業務に携わることができた反面、異動の度にキャリアがリセットされるような感覚もありました。
新卒の際はどのような仕事がしたいのか、自分に向いているのかが明確ではなかったため、事業領域の幅広さに魅力を感じて前職を選んだのですが、入社から約7年を経て、自分に向いている仕事がわかってきたため、ジョブローテーション等のないところで、腰を据えてじっくりキャリアを積み重ねたいと思い、転職を決意しました。
また、前職では、SPCのアセットマネジメント業務を経験した後に、広報業務も経験したのですが、「この専門知識を学べば業務に生かせる」というよりも、業務経験を重ねることでノウハウが身についていく領域だと感じていました。
しかし、前職では、どのような経験をどれだけ積めるかは、その時点の会社の方針や社会情勢といった外部要因に左右される部分も多かったんですね。そこで、「スキルアップやキャリアアップが明確に実感できる仕事が自分には向いているかも」と思ったことも、次職選びのポイントになりました。
佐藤:私は前職で働いている中で、上場会社の企業分析や株式運用のシミュレーションをする研修を通じて、魅力のある会社を見つけ出すことが面白いなと感じていました。そこで国内株式を投資対象とする部署への配属を強く志望したのですが、結果的にはバランスファンドの運用チームへの配属になりました。
そのチームは、マクロ分析を通じてアロケーションを決定する投資スタイルで、経済情勢や金利、為替、地政学リスク等、グローバルな要因を分析対象にするダイナミックさはあったものの、予測が非常に難しい大きな要因で相場が左右されるため、「勉強したとしても予測できるのか?自信に繋がるスキルを身に着けられるものか?」と感じてしまい、熱量を高められませんでした。
そのような経緯から、自分が熱量を高めて取り組める他の道を探したいと思うようになったんですね。
そこで、企業分析の経験を通じて会計・財務分析の面白さや重要性を感じていたこともあり、金融業界に身を置きつつ、会計の専門性を伸ばそうと思い、勉強や転職活動を始めることになりました。
会計・税務・法務・金融の専門知識が交差するストラクチャード・ファイナンス、そのプロフェッショナルを目指したい
── 転職活動をする中で、なぜSPC管理会社としてのTKAOに興味を抱いたのでしょうか?
佐藤:そもそも、運用業界にいたことから、証券化やストラクチャード・ファイナンスという特殊な分野があることは知っていました。また、その仕組みを使えばリスクを切り離せるため、「金融・会計的にも面白そうな分野だな」と感じてはいました。
そんな中、転職活動をしていたら、転職エージェントからTKAOのフロント部門であるディール・コントロールチームの求人を紹介されたんです。そこでTKAOがストラクチャード・ファイナンス、特に会計・税務・法務等、あらゆる専門性を駆使し、組成から閉鎖までSPC管理に関わるサービスを横断的に提供していることを知りました。
それでTKAOに興味を持ったものの、サービス内容が多様であることから、話を貰った際には浅く広く知識を積み上げていくゼネラリストとして働くのかと思ったんです。
けれども、実際に話を聞いてみると、ミッションごとに専門部署を設け、それらの部署が専門的に案件を検討し連携することで、深い知識と法的根拠に裏付けされた高度なサービスを提供しているということでした。
その話を聞いた時に、「この分野に身を置いて自己研鑽を積めば、会計はもちろん、金融・税務・法務といった幅広い分野の専門人材になれる」と直感し、転職を決意しました。
また、未経験者でも歓迎されていたことや、若手でも仕事の機会が平等に割り当てられ速く成長できる環境があること、金融のプロとしての専門性を高めるための勉強も歓迎してくれる社風だったこともTKAOの大きな魅力でしたね。
努力が着実にスキルアップへと繋がる領域に魅力を感じた
── 多田さんはTKAOのどこに惹かれたのでしょうか?
多田:SPCはスキームの検討・組成→管理とフェーズが分かれますが、前職では、期中の管理のみ対応するチームに所属していました。そのためスキーム組成などには関わっておらず、また基本的には同じスキームでどの案件も組成されていたため、ストラクチャード・ファイナンスに関する基礎的な知識もないまま実務をこなしてしまっていました。
キャリアの軸を持って専門性を高めていきたいと考えていたのですが、TKAOの仕事では、法律、会計・税務、金融関連など、業務に関連する専門領域が明確に示されていました。そのため、実務経験のみならず、主体的に勉強し知識を得た分もスキルアップに繋がるイメージが持て、やりがいになると感じたんです。
また、TKAOがSPC管理会社のパイオニア的な事務所であることも決め手のひとつでした。
優れた金融手法であるストラクチャード・ファイナンスはこれからも続くはずです。そしてSPC管理会社が存在しないと、ストラクチャード・ファイナンスは成り立たちません。つまり、この手法が続く限りTKAOのビジネスの需要はあるということで、そのため安定して長く働き続けられそうだと感じたことも、入社を後押ししました。
多彩な専門家たちのチームワークで高度な業務に挑む
── 多田さんはTKAOで、どのような業務を担っているのでしょうか?
多田:私はマネジメントチームで、主に①契約書レビューと②ポスクロ*を担当しています。
*ポストクロージング:案件組成時の各種契約締結の場面を「クロージング」といい、締結した契約内容等をクロージング後に整理する場面を「ポストクロージング」と称する。
①契約書レビューでは、TKAOが受託するSPCの管理業務を円滑に進められるか、TKAOの責任範囲は適正か等の観点からプロジェクトの主要契約について検証し、案件関係者や弁護士とコメントラリーを展開し、契約内容の適正化を図ります。
ストラクチャード・ファイナンスやSPC管理の仕組みを理解した上で、契約書を緻密に把握する力や、適正な契約内容に導く提案力が求められる仕事です。
一方の②ポスクロは、案件クロージング後、最終的に締結された契約内容を確認し、TKAOが、管理を受託するSPCに対して、会計・税務、資金管理等の業務を漏れなく適時に行えるよう、各種期日等をデータベースに登録し、各実務対応部署がスムーズに、かつ、安定して業務を行えるよう引き継ぐ業務となっています。
これには、契約内容とSPC管理に必要な実務の両方を理解して、実務に対応する部署が、適時に安定したサービスを提供できる環境を組み立てる力が必要です。
── どちらも専門知識が身につきそうですね。一方で、難易度が高そうな仕事にも見えます。
多田:そうですね。どちらも、会計・税務・法律等の幅広い知識が求められる高度なもので、私も最初は、「こんな難易度の高い業務を自分が遂行できるのだろうか…」と不安があったのは正直なところです。
しかし入社後の研修を受け、ポスクロ業務を中心に約半年間、チーム内でダブルチェックを受けたりしながら研鑽を積んだ結果、今では業務の最終承認者になることができていますし、1年目の後半からはOJTを通じて契約書レビュー業務も対応するようになりました。現在も契約類型によってはチームの上司や先輩にダブルチェックをしてもらい、対応できる範囲を広げています。
入社時に抱いていた不安は、このような研修や、OJT、上司や先輩のサポートを通じて解消できました。
また、常に専門知識が必要とされる仕事ではありますが、ひとりで対応していて判断に迷う案件も、チーム内外にいる公認会計士や税理士、司法書士、といった専門家に都度相談できる環境があるのは、専門家が集まるTKAOの良さですね。
業務に慣れるにつれてその範囲も少しずつ広がっていき、最近では業務システムの開発プロジェクトのメンバーにも加わっています。
フロントでの経験を通じたキャリアの深化
── 佐藤さんはフロント部門から、現在のマネジメントチームに異動されて来たと伺いました。
佐藤:はい、異動前にはいわゆるフロント部門である「DCT(ディール・コントロールチーム)」に所属し、お客様であるアセット・マネージャーからの依頼に基づきSPCの組成の相談から期中管理・閉鎖まで、各場面における受託業務を調整し、バックオフィスに業務を依頼する役割を担っていました。
前述の通り、元々私は、会計の専門性を高めるつもりで入社しました。そのため、フロント部門からスタートしたのですが、実務を通じて、会計に限らず、コンプライアンスに関する各種ノウハウの提供、クライアントに大きな価値が提供できることに気付きました。
つまり、SPCは法律や契約で緻密に構成されているため、会計・税務に加え、民法や商法、会社法、金融商品取引法等の知識もストラクチャード・ファイナンスの分野のプロフェッショナルにとって大切ということを認識しました。
フロント部門には、クライアントの窓口として多くの案件をスピーディーにハンドリングする面白さはありましたが、契約や法令をしっかり読み込み、契約や法律に関する能力を高めるなら、SPCについて横断的に契約関連の業務を実施し、会計・税務・法律を横断したノウハウを活用してソリューションを提供するマネジメントチームが自分にとっては最適なのではないか。そう感じて、マネジメントチームへ異動しました。
── 異動されてみて、現在の仕事はどうですか?
佐藤:異動からまだ日は浅いですが、多田さんと同じく、主に契約書レビューとポスクロを担当しています。
当初は先輩のダブルチェック・承認を得ていましたが、業務での関係性が近いチームで数年間経験を積んでいたこともあって、今ではポスクロ業務では最終承認者の役割を担うに至りました。
フロントオフィスでは特定のクライアントの案件を担当していたため、契約内容も一定の範囲にしか触れませんでしたが、マネジメントチームでは非常に多様な案件に関与しており、改めてストラクチャード・ファイナンスの契約・法律面の面白さを感じています。
また、近年AIを利用した契約書レビューサービスの導入検討にも関わっています。
ストラクチャード・ファイナンスの各案件は、オーダーメイドの契約で成り立っているため、統一的な契約雛形が利用されているわけでもなく、既存のAIレビューサービスでは対応が難しいのですが、AIの今後の進化によっては活用する可能性もありそうだと感じています。
ひとつの部署に腰を据え、長期的な視座でキャリアを磨ける職場
── 実際に働いてみて、マネジメントチームでの現在のキャリアをどのように感じていますか?転職当時の期待やイメージとのギャップ等もあれば教えてください。
多田:前職では太陽光発電所の期中アセットマネジメント業務のみを担当していて、かつ業務の土台部分を理解しないまま実務に対応していました。
しかし現在はマネジメントチームで、再生可能エネルギーや不動産等、様々なアセットの多様なスキームに触れられています。ストラクチャード・ファイナンスの根幹部分の理解が深まっているのも実感していますね。
佐藤さんのお話にもありましたが、ストラクチャード・ファイナンスは様々な法律に基づいて設計・推進されるものです。そのため最近は、各業務を進めるにあたって「法律上の根拠はどこか?」という点を意識するようになったと感じています。
また、予想していたことではありますが、契約書レビュー業務や、関連法令等の知識習得は短期間でマスターできるものではありません。
けれども、ストラクチャード・ファイナンスに関する会計・税務・法律面の社内研修が頻繁に開かれているので、そこまで心配する必要がなかったのは良い意味でのギャップでした。
── 多様な案件に触れ、研修やOJTを通じて必要な知識を得て、着実にキャリアを磨いている実感があるのですね。
多田:そうですね。TKAOでは、佐藤さんのように希望を出して異動するケースはあるものの、基本的にジョブローテーションはないんですね。そのため長期的な視座でじっくり勉強ができるんです。インプットの積み重ねは品質の高いサービス提供に直結しますし、そういう意味でも勉強のしがいがあり、モチベーション維持にもなっています。
── 佐藤さんは入社前後でのギャップはありましたか?
佐藤:TKAOに入社した当時、会計の力を磨くつもりだったので、自分が法律の勉強に力を入れるとは思っていませんでした。そういう意味ではギャップは小さくありませんね(笑)。ただ、多様なサービスで深い知識を追求できるTKAOだからこそ、自分の伸ばしたい強みを発見できたのだと思います。
所内研修、OJT、異動という組織の仕組みで後押ししてくれることや、同じように切磋琢磨する志を持つ仲間が集まっていることも事務所の魅力だと思います。
今はストラクチャード・ファイナンス業界で生き抜くために必要な知識やソフトスキルを身につけている最中ですので、将来的には、ストラクチャード・ファイナンスに関することは何でも聞いてもらえる、頼られる存在になっていたいですね。
── ありがとうございます。最後に、マネジメントチームに興味を持ってくれた方にメッセージをお願いします。
多田:金融領域で専門性を高めたい方や、向上心・探求心が強い方にはマネジメントチームはぴったりの環境だと思います。ストラクチャード・ファイナンスのプロフェッショナルを目指して一緒に働けたら嬉しいです。
佐藤:TKAOには定期的な社内研修があり、ストラクチャード・ファイナンスに精通している弁護士や公認会計士、税理士が講師を務めるため、非常に高いレベルの中でスキルアップができます。
また、周囲にはリーマンショック前から長く経験を積んでいる先輩が沢山いるため、実務のノウハウに加えて、この業界の変遷等も知ることができ、歴史を踏まえた知識を身に着けられます。
応募していただく際はカジュアル面談も可能ですので、ストラクチャード・ファイナンスやマネジメントチームの業務に興味を持っていただけた方は、お気軽にエントリーしていただけると嬉しいです。