証券化分野におけるトップファームである東京共同会計事務所。
その所内で証券化に関するアドバイザリーやSPC管理を担当しているのがフィナンシャル・ソリューション部(FS部)だ。
そのFS部はどのようにして、証券化・SPC分野における専門性を発揮しているのか。今回より3回に分けてその裏側を解説する。
FS部は、ミッションごとに分かれた複数のチームにて構成されるが、初回である今回は、様々なバックグラウンドを有する者たちが専門性を活かして活躍するディール・コントロールチーム(DCT)を紹介する。
クライアントから依頼を受け、SPCといった証券化ビークルの管理における課題をワンストップで解決するFS部において、DCTの役割はいわゆる「プロジェクトマネジメント」だ。
クライアントから日々投げかけられる相談の窓口となり、どんな課題があるのか、その課題に対してどの部署がどのように対応するのか、そこから派生する論点はないのか。そういったことを整理・段取りし、FS部全体で課題を解決していく音頭を取る役割を担っている。
今回、外資系金融機関より東京共同会計事務所のDCTに転職した大井氏を迎え、職務内容やその実態、金融機関での経験が活きる理由、キャリアプランに対する考え、そして東京共同会計事務所の魅力について語ってもらった。
東京共同会計事務所
フィナンシャル・ソリューション部
アドバイザリーグループ
ディール・コントロールチーム
大井 友詞
一橋大学経済学部、早稲田大学大学院ファイナンス研究科卒業。東海東京証券株式会社、三菱UFJ信託銀行株式会社、UBS証券株式会社にて、債券やFX(デリバティブ含む)取引(カスタマーディーラー)などの業務に従事。
2021年、東京共同会計事務所入所。外資系クライアントを中心にSPCの新規案件組成/期中管理などの業務に従事。
DCTはSPC管理業務のプロジェクトマネージャー
── 最初に、ディール・コントロールチームの概要を教えてください。DCTは、どんな役割を担っているチームなのでしょうか?
DCTが所属する東京共同会計事務所のFS部は、国内外のアセットマネジメント会社、PEファンド、大手金融機関、事業会社を主なクライアントとして、証券化・SPCに関する会計、税務、法務、キャッシュマネジメントなどの機能をワンストップで提供する組織です。
東京共同会計事務所では、特定のSPCに対して複数のチームでサポートする体制を採用しており、DCTもそのうちのひとつとなっています。
DCTはFS部の中で、クライアントとの窓口を担当する部署であり、クライアントからの相談内容を最初に受け取り、どのチームがどのように対応するかを考え、それをマネジメントする、いわゆるプロジェクトマネージャー的な役割を担います。
── 大井さんはいくつのSPCを担当しているのでしょうか?
私の担当は約150件です。
── 150件!量が多く大変に聞こえますね。
確かに150という数字だけ聞くと大変そうですが、実際は、例えば、ひとつのクライアントが20個のSPCをもっていて、それが7~8件あるとSPCの数としては約150個になるというイメージで、全く異なる案件が150件あるわけではありません。
また、全てのSPCで上司が案件を統括・サポートしているため、ひとりで全てを抱え込む体制にはなっていません。なので、担当数だけで大変そうだと先入観を持たないでもらえると嬉しいです。
定型業務だけじゃない。SPCの管理に期待されるもの
── SPCはアセットを持つためだけの入れ物で、構造面でもシンプルなイメージもあるため、管理も定型的な業務が多そうなイメージがあります。実態はどうなのでしょうか?
もちろんルーティン業務が少ないわけではありませんが、定型外のイベントも発生するので、単にルーティン業務を管理していれば良いというものではないのです。
── 「定型外のイベント」とはどのようなものがあるのでしょう?
大小様々ですが、例えば、東京共同会計事務所全体で数千のSPCを管理していると、クライアントから「支払いや税金の納付漏れを起こしてしまった」「至急での契約締結や要登記事項が発生した」等とご相談いただくことがあります。
もちろん我々が担当している業務の中で問題が起きることもありますし、そんなときにまず状況を整理して、そこからベストな対応をクライアントや東京共同会計事務所のチームメンバーに提示することも、DCTの仕事のひとつです。
── DCTはクライアントで起きた課題を一緒になって解決していくということですね。
おっしゃる通りです。ただクライアントの課題は会計、税務、法務、キャッシュマネジメントなど多岐に渡り、先述したように解決にあたっては、DCTだけで対応するわけではありません。他の部署と協力して課題解決にあたるので、その調整もDCTの仕事の内です。
また、他の会社や会計事務所が担っていたSPCの管理業務を東京共同事務所が引き継ぐケースもあります。そういったことに対応していると、意外とルーティン外の業務に関与している時間も少なくありません。
── SPC管理の委託先が切り替わることもあるのですね。どんな理由で移ってくるのでしょうか?
ひと言で表すと、東京共同会計事務所の「サービス品質」を期待していただくことが多いように感じています。
現在管理を委託している会社に何かしらの不満や品質的な問題があって、その解消のためによりサービス範囲が広く、品質の良い会社を探し、結果として内部統制の堅牢さや業界での評判などから、東京共同会計事務所を選んでいただく、というケースが多い印象をもっています。
── SPC管理のフィールドにはいくつかのプレーヤーがいますが、その中でも品質で差別化を図っているのですね。
そうですね。ただこの場合に「品質」とは、競合にない高度なノウハウをもっていることだけを指すのではなく、クライアントが期待する管理・事務作業を1秒でも早く、正確にこなせるということも意味しています。
ある意味で「できて当たり前のこと」を精緻に、かつ適切にこなせることが私たちの品質の根幹です。
外資金融から会計事務所への転職、その理由は!?
── 大井さんが感じる、DCTのやりがいを教えてください。
SPCの設立の目的には新聞に登場するような大きなビジネス、例えば建設に何百億円もかかるホテルや、商業施設、物流施設など様々なインフラに関わるものもあります。そういった社会に影響の大きなインパクトを与える案件の一翼を担えるという点には、やりがいを感じています。
── 逆に大変なのはどんなところでしょうか?
私には会計バックグラウンドがなかったので、会計・税務的な考え方や法務面の知識が最初からあったわけではありません。それを一から学んでいくのは大変ですし、現在も勉強中です。
── 会計・税務的なバックグラウンドなしに会計事務所に転職するのに躊躇はなかったのでしょうか?
東京共同会計事務所は2023年でちょうど30周年を迎え、会計事務所としては比較的長い歴史をもっています。社歴があるということは、これまで様々な課題を解決してきたということでもあります。
つまり、クライアントの課題に対する答えは、必ずこの事務所のどこかにあり、それを学んでいけるだろうと考えていたので、入所に躊躇はありませんでした。
入所してから改めて感じているのですが、私が何か難しい問題にぶつかってもそれがまったく新しい課題ということは少なくて、過去に誰かが似たような問題にぶつかって、解決したことがあり、その解決方法から実際に多くのことが学べています。
── 大井さんは以前、外資系金融機関に勤めていたと聞きました。なぜ東京共同会計事務所に転職したのでしょうか?
私は元々、証券会社や銀行といった金融機関で株や債券、FXなどを扱う営業職だったのですが、SPCも含めたファンドというものに以前から関心をもっていました。
そんなとき、ファンドのクライアント向けにFXデリバティブを提供する機会がありました。その際に会計事務所の方から税務及び案件のスキームについてアドバイスを受ける機会があり、「SPCとこういう関わり方もあるんだ」と知りました。
金融の営業職の仕事は、「販売手数料をいただいたら、それで取引が終わり」ということも少なくありません。ただ、金融資産は本来、期中の管理も非常に重要なはずです。
そのため、金融資産であるSPCを管理してクライアントと継続的に関わり、その対価として報酬をいただくという会計事務所のビジネスモデルは、自分の考え方と整合していて、しっくりきたのです。そこでファンドに携われる求人を探す中で、東京共同会計事務所と出会い、転職を果たしました。
── 営業経験で培ったクライアントとのコミュニケーションなど、前職の経験が活きているのではないでしょうか?
確かに前職は金融機関の営業だったので、お客様とのコミュニケーションが仕事とっても過言ではありませんでした。そのため、東京共同会計事務所においても、クライアントとのコミュニケーションは期待されていたと思いますし、実際、営業時代のスキルは役立っています。
また、前職は外資系で、海外とのやりとりも多く、今の仕事でも海外投資家がクライアントの案件などではその経験が活きていますね。
── 今後のキャリアはどのように考えていますか?
私は性格的に、自分でなんでもやってみたいタイプです。なので今はDCTの一員ですが、いずれは税理士や会計士などの資格を取得して、1から10までクライアントのご要望に応えられるようになりたいなと考えています。個人としても指名していただける人間になりたいですね。
それぞれのキャリア×会計・税務で多様性のある組織に
── 大井さん以外にはどのような方がDCTにいるのでしょうか?
意外かもしれませんが、金融業界出身者が多いというわけではありません。メーカーや不動産、アセットマネジメント会社など、いろいろな業界の出身者の方がいて、中には前職がシステムエンジニアという人もいます。
出身が違うので、各自得意分野が異なるのもDCTの特徴です。そこに会計・税務、金融の知識を加えてクライアントと向き合っているので、様々な課題に幅広く対応できているのは、DCTに限らない東京共同会計事務所全体の良い面だと感じています。
大井氏とFS部のメンバーたち
── 性格としてはどのような方がDCTに向いていると感じますか?
クライアントからは日々様々な相談があると先述しましたが、とは言っても基本はルーティンの業務です。そのため、まずはそこを効率的に対応できなくてはなりません。また、社内外の様々な方とコミュニケーションをとるので、「人当たりが良くて、コミュニケーション能力がある方」が向いていると思います。
また、入所時点で完璧である必要はありませんが、会計事務所なので会計・税務の知識に興味関心があることは前提になってきますね。
──ありがとうございます。最後に、DCTの仕事に興味がある方にメッセージをお願いします。
会計事務所への転職は、特に会計分野出身の方以外には、イメージがつきにくく、尻込みしてしまう方もいるかもしれません。私も最初に求人情報を見た際は想像がついていませんでした。
ただ、先述したように、東京共同会計事務所には様々なバックグラウンドの方が働いていますし、何か業務で困ったことがあっても、事務所の中にきっと答えはあります。学べる内容もたくさんありますし、研修などのサポート体制もあります。そう聞くと普通の企業と変わらないですよね。
また、これまで培ってきた経験や知識は、会計や税務と組み合わせることでより役立つようになります。
私のような金融機関出身の方はもちろん、公認会計士や税理士といった資格者の方も含め、東京共同会計事務所やフィナンシャル・ソリューション部ディール・コントロールチームの仕事が気になった方は、ぜひ採用ページを覗いてみてください。一緒に良いサービスを作っていければと思います。
東京共同会計事務所FS部の特集記事
今回、シリーズで東京共同会計事務所やFS部について特集しております。以下の記事も合わせてご参考ください。