2020年8月の、米国市場、監査法人、会計不正関連のニュースをまとめました。
2020年8月7日、9日にリリースされた「米国基準強化で中国企業締め出し」「長期契約解消で監査法人交代が増加」「5年で3倍会計不正急増を食い止める課題」の3件のニュースをご紹介します。
米国基準強化で中国企業締め出し
- 監査基準未達の中国企業、米が上場廃止も 22年までに(日本経済新聞 2020年8月7日付)
米中の関係悪化が進む中、2020年5月20日付けで、米国に上場する外国企業に対して経営の透明性を求める法案を可決しています。この法案は、3年間米規制当局による検査を拒否すると上場廃止になるという厳しいものでしたが、中国締め出しの動きがさらに加速しているというのです。
今回、米国市場の上場廃止ルールの改正に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
米財務省などで構成する作業部会は6日、米国に上場する中国企業の監査状況を厳しく検査するようトランプ大統領に提言した。2022年1月までに基準を満たさなかった場合、上場廃止となるようルールを改正する方針だ。
引用元:監査基準未達の中国企業、米が上場廃止も 22年までに(日本経済新聞 2020年8月7日付)
記事によると、米当局の要請にもかかわらず、PCAOBの監査法人への検査を拒否してきた中国政府に対抗するため、上場ルールをより厳しく改定する作業が行われおり、2022年1月までに基準を満たさなかった場合は上場廃止になると伝えられています。
改正が実現すれば、米国市場から中国企業が撤退し、投資機会を奪うことにもなりかねません。また、米国のルール強化で、米国市場に上場している日本企業にも影響が及び可能性がないのか、注視しなければなりません。ご興味のある方は以下をご参照ください。
- 監査基準未達の中国企業、米が上場廃止も 22年までに(日本経済新聞 2020年8月7日付)
長期契約解消で監査法人交代が増加
- 監査法人交代、過去5年で最高 味の素は69年ぶり(日本経済新聞 2020年8月7日付)
監査法人のローテーション制度は導入が見送られましたが、監査法人と企業の長期的な関係を解消するため、自主的に監査法人を交代するケースが増えています。
今回、監査法人交代に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
監査法人を変更する上場企業が増えている。2019年7月~20年6月に交代を発表した企業は142社と過去5年で最高水準となった。
引用元:監査法人交代、過去5年で最高 味の素は69年ぶり(日本経済新聞 2020年8月7日付)
記事によると、味の素が69年ぶり、大和ハウス工業が51年ぶりに監査法人を交代したと伝えられています。また、青山学院大学の八田進二名誉教授は、「投資家からの視線が厳しくなり、長期契約の解消は加速しそうだ」とコメントしています。
投資家の期待に応える形で監査法人の交代が当たり前のことになれば、監査法人ローテーション制度に近い効果が期待できそうです。ご興味のある方は以下をご参照ください。
- 監査法人交代、過去5年で最高 味の素は69年ぶり(日本経済新聞 2020年8月7日付)
5年で3倍会計不正急増を食い止める課題
- 会計不正5年で3倍、粉飾や資産流用 統治実効性課題(日本経済新聞 2020年8月9日付)
会計不正の問題が後を絶ちません。会計士は、この課題にどのように取り組んでいったら良いのでしょうか。
今回、会計不正と企業統治に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
国内企業の会計不正が急増している。日本公認会計士協会によると、2020年3月期は101件と前の期から7割増え、5年前の3倍だった。
引用元:会計不正5年で3倍、粉飾や資産流用 統治実効性課題(日本経済新聞 2020年8月9日付)
記事によると、会計不正が急増している背景に、2015年に企業統治指針が導入されたものの実効性に課題があることや、内部通報制度が浸透し不祥事が表面化しやすくなった影響もあると伝えられています。
投資家からの期待が高まり、不正を見逃さないことが監査法人の責務と言っても過言ではない状況にあります。不正発見の仕組み作りが重要な課題になっています。ご興味のある方は以下をご参照ください。
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会計不正5年で3倍、粉飾や資産流用 統治実効性課題(日本経済新聞 2020年8月9日付)
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)