英BIG4に監査部門の独立運営を求める指針、BIG4デジタル監査の動き加速、難航するコロナ下の株主総会など3件:今月の会計士業界ニュース(2020年7月その2)



2020年7月の、株主総会、監査法人、監査関連のニュースをまとめました。

2020年6月28日、7月7日、16日にリリースされた「難航するコロナ下の株主総会」「英BIG4に監査部門の独立運営を求める指針」「BIG4デジタル監査の動き加速」の3件のニュースをご紹介します。

難航するコロナ下の株主総会

感染拡大防止でイベントが自粛される中、今年の株主総会はどのように開催されたのでしょうか。

今回、『コロナ下の株主総会』と題して、株主総会に関する記事が4回に渡るシリーズで日本経済新聞よりリリースされています。この中のシリーズ1回目では、オンライン株主総会と日本の現状について取り上げています。

「なぜ日本はできないんだ」。さかのぼること2カ月前、ウェバーは社内会議で嘆息した。会社法では総会にリアル会場の設置を求めており、オンラインだけの開催は「解釈上難しい」との認識だったからだ。

引用元:「なぜ日本はできないんだ」 オンラインだけの株主総会 コロナ下の株主総会(1)(日本経済新聞 2020年6月28日付)

記事によると、米国では2月から6月の総会の半数以上がオンラインで行われたのに対して、日本では、オンライン総会は法律を変え正面から認めないと難しく、ネット中継した企業はごくわずかだったと伝えています。

株主総会は、株主が会社に対して意思表示ができる唯一の機会と言っても過言ではありません。オンライン総会の開催が難しい現行制度は、外出自粛で株主総会に参加できない株主から、実質的に株主の権利を奪ったと見ることもできます。株主総会に立ち合われた会計士の方もおられると思いますが、新型コロナウィルスの感染拡大を通して、現行の株主総会制度の課題と、株主と会社の意思疎通の大切さが、改めて明らかになったのではないでしょうか。

全4シリーズを通して、コロナの対応に翻弄される企業と、コロナ下でも経営を改善しようと新たな提案をする株主との、株主総会に対する姿勢の違いが浮き彫りになっています。ご興味のある方は以下をご参照ください。

英BIG4に監査部門の独立運営を求める指針

ワイヤーカードの事件が連日報道されていましたが、監査法人が不正会計を見落とし、資本市場への信頼が揺らぐ事件に発展するケースが相次いでいます。2020年2月には、英財務報告評議会(FRC)がBIG4の解体を示唆した経緯もあり、監査法人の体制見直しが急務となっています。

今回、FRCから公表された監査部門の独立運営を求める指針に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。

英国の企業統治の監督当局である財務報告評議会(FRC)は6日、世界規模で事業展開する4大監査法人に対し、グループ内での監査部門の独立運営を求める指針を公表した。

引用元:四大法人の監査部門運営独立を 英当局方針、24年までに(日本経済新聞 2020年7月7日付)

記事によると、対象となるのはデロイト・トウシュ・トーマツ、アーンスト・アンド・ヤング(EY)、KPMG、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のBIG4で、遅くとも2024年6月までに、監査部門の独立運営の完全実施を目指すということです。

監査法人が不正を見落とし、投資家の信頼を失ってしまうケースは、決して英国に限ったことではありません。監査とコンサルティングの分離という難問に、英BIG4がどのように対処するのか、注視していかなくてはなりません。ご興味のある方は以下をご参照ください。

BIG4デジタル監査の動き加速

2020年3月期決算は、企業の決算作業が遅れたり、在宅での監査を余儀なくされた結果、決算発表の延期が相次ぎました。新型コロナウィルスの終息が見通せない状況の中、BIG4では、監査手法に積極的にITを取り込む動きが進んでいます。

今回、BIG4のデジタル監査への取り組みに関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。

大手監査法人がデジタル技術を使う監査システムの利用拡大を急いでいる。人を介さずに企業の経営情報を常時確認したり、財務諸表の異常値を検知したりする。

引用元:会計士、デジタルで「常時監査」 コロナ拡大に備え(日本経済新聞 2020年7月16日付)

記事では、PwCあらた監査法人の久保田副代表が、2020年3月期は感染拡大前に期末監査以外はできていたので有価証券報告書の提出の遅れが最小限で済んだとコメントされています。今期については、期末監査以外の監査についても新型コロナウィルスの影響が及ぶため、遠隔での情報収集の重要性が高まっているということです。

また同じく、リモート監査のあり方とデジタル化について、PwCあらた監査法人の井野代表執行役への取材記事が、日本経済新聞よりリリースされています。

――コロナ禍の対応でわかったことは。

「監査先の企業に行けず、証明書類をPDFでもらうといった対応をとった。ただ結局、改ざんがないか現物と突き合わせる確認作業を後日、集中して行った。これでは紙を置き換えただけの緊急避難策にすぎない」

記事の中で、井野代表執行役は、リモート監査で必要なのはデジタル化であり、企業側がデジタルデータの改ざんを抑止する内部統制を整えたうえで、監査法人が企業の生のデータに直接アクセスして行う、効率的な監査を目指すべきだとコメントしています。

コロナ禍の対応で加速するデジタル監査。監査品質は落とさずに効率性を高めるためには、さらなるIT監査システムの開発と、積極的なIT活用が必要です。ご興味のある方は以下をご参照ください。

(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧



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【大津留ぐみ:公認会計士・税理士/会計士・税理士専門ライター】 大学在学時にシェイクスピアを学んだことをきっかけに劇作家を目指すも挫折。編集プロダクションで編集やライティング業務に従事した後、公認会計士試験にチャレンジし合格。大手監査法人の東京事務所にて監査業務、財務デューデリジェンスなどに従事。 その後、フリーランスの公認会計士として非常勤監査、税理士法人の社員税理士として税務業務に従事しつつ、大津留ぐみのペンネームでライターとしての執筆活動にも従事。ライターとして、お金、社会保障、会計、税務などに関する記事を執筆。また、2児の母となったことをきっかけに、子どもの貧困や教育格差、子どものイジメに関する記事なども執筆。現在は、株式会社ワイズアライアンスの専属ライターとして会計・税務の記事を執筆しつつ、会計事務所にて内部統制業務にも従事するパラレルワーカー。公認会計士・税理士。

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