来る2017年3月25日(土)に東京・日本橋にて「理想のキャリアの見つけ方、会計士にブルーオーシャンはあるのか?」「独立・開業を選んだ会計士たちが語る、独立の苦楽や戦略」をテーマに第7回・公認会計士ナビonLive!!が開催されます。
本記事では第7回の開催に向けて昨年8月に開催された第6回・公認会計士ナビonLive!!の内容を振り返ります。
第6回 公認会計士ナビonLive!!の第1部トークセッションでは、「公認会計士とFAS・コンサルティング」をテーマに、FASやコンサルティング業界で活躍する4名の公認会計士が、それぞれのキャリアやFAS・コンサルティング業界での会計士の活躍フィールドについて語りました。
※本記事はセッションでの発言を一部補足・編集した記事となっております。
第6回 公認会計士ナビ on Live!!
~公認会計士×「FAS・コンサルティング」「ベンチャー・スタートアップ」~【日時】 2016年8月20日(土)13:30~16:30
【場所】 野村コンファレンスプラザ日本橋6階
【第1部 トークセッション テーマ】FAS・コンサルティング×公認会計士
【登壇者】
・豊田 康一郎(株式会社経営共創基盤 マネジャー/公認会計士)
・進士 敦史(株式会社クリフィックスFAS アシスタント・マネージャー/公認会計士)
・佐藤 淳(YCP Holdings Limited/旧ヤマトキャピタルパートナーズ 公認会計士)
・城田圭央利(税理士法人平成会計社/公認会計士・税理士)※登壇者の役職、肩書等はイベント開催時のものです。
会計士が経営領域で成功するのに必要なことは“過去志向からの脱却”
佐藤 淳
(YCP Holdings Limited/旧ヤマトキャピタルパートナーズ 公認会計士)
2007年 東京大学 経済学部 経営学科 卒業後、有限責任監査法人トーマツに入所。
日本およびアメリカにおいて、IPO支援業務/財務DD/監査業務/会計コンサルティング/海外展開の市場調査を担当。有限責任監査法トーマツでは、主にIT企業及びそのグループ会社(Web決済/動画ビジネス)向けの業務責任者として従事し、Deloitte&Touche LLPでは航空/自動車等の製造業やIT企業まで幅広く担当。
2015年にYCP Holdings参画後は、幅広い業界において、事業戦略の策定、新規事業立上げ/アライアンス支援、Webマーケティングの支援、自社投資案件等に従事。
有限責任監査法人トーマツ トータルサービス部/グローバルサービス部
Deloitte&Touche LLP Seattle office 出身
※役職等はイベント開催時のものです。
アジアを中心に投資・コンサルティング事業を展開するYCPホールディングスで活躍する佐藤氏。
本セッションでは、公認会計士として会計領域から経営領域へとキャリアチェンジをしたきっかけや、経営領域に適応していく過程で学んだ知見を語った。
キャリアチェンジのきっかけは?会計士は戦略コンサルや一流外資の出身者たちと戦えるのか?
大手監査法人にて海外駐在まで経験した佐藤氏だが、そのキャリアを捨てて現職へ飛び込んだ理由としては“チャレンジ”と“経営領域への興味関心”を挙げた。
私のこれまでのキャリアには大きく3つのステージがあって、最初はトーマツのトータルサービス部門で、監査、IPOコンサル、FASなど幅広い経験を積ませてもらえたことです。
次に、海外駐在の制度を使って、Deloitteのシアトルオフィスで、日系企業のグループ企業の監査や、現地企業の監査を経験しました。そして、3つめが、YCPホールディングスでの、経営コンサルティングや投資、投資先業の経営という現在の仕事です。
私自身は、経営者になりたいという軸と、海外で働きたいという軸を持っていたんですけれども、日本で6年間、監査を経験して基礎的なことをできるようになって、その後に2年間ほど海外に行って、さわりだけかもしれませんが、グローバルなところに触れることができたと。
そんな中で日本に帰ってきて、あまり新たなチャレンジがないなと感じたのと、ここまでを振り返ってみると経営者としてのナレッジが鍛えられていないし、このまま監査法人にいても鍛えられないと感じたのもあって、YCPに移りました。
そんな佐藤氏が勤めるYCPホールディングスは、2011年にゴールドマン・サックスとP&G出身のふたりの創業者によって起ち上げられ、外資系金融機関や戦略系コンサルティングファーム、トップティアの外資系企業などの出身者で構成されている。
そういった一流のメンバーに囲まれた厳しい環境での業務を佐藤氏はこう語ってくれた。
当社では、会計士だから会計のことや税務のことをやれとか、そういったことはなくて、当社の良いところだと思うのですが、何でもやることができる環境です。
ですので、いわゆる会計士の領域とは違う仕事もやるのですが、社内には、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)の出身者であったり、マーケティングであればP&G、ファイナンスでいうと投資銀行出身者であったりと、それぞれの領域で非常に高いナレッジを持ったメンバーが集まっていて、常にお互いのナレッジを共有しています。
そのため、経営の仕事でわからないことがあっても、自分の専門外の領域に関しても必ず誰か聞ける相手がいて、それに加えて、時に本を10冊でも20冊でも読み込んで、専門性をどんどん高めていく環境で仕事をしています。逆に、私自身にも、会計や税務など詳しい部分もあるので、そういった部分では会社にナレッジを提供したりしています。
会計から経営へのキャリアチェンジ、苦労したのは過去志向から未来志向への転換
また、佐藤氏は、国内外合わせて8年間の監査・会計キャリアから、YCPホールディングスでの経営キャリアにチェンジした際に苦労した点についても語ってくれた。
会計士の強みや弱みの話をすると、会計とか税務、法務に関してしっかり勉強してきているので、投資銀行ですとか、戦略コンサル出身者と比較しても、そこは強みだと思います。
一方で、弱み、私自身も苦労した点を挙げると、YCPホールディングスに入社して、これは私にとって大きなキャリアチェンジだったんですけれども、会計士とはまったく関係ない、いわゆる戦略を考える仕事になったんですね。WEBマーケティングやCRMの施策を考えたり、新規事業のアライアンス戦略を考えたりといった仕事になったわけです。
それまでは、会計士として、監査基準であったり、会計基準であったり、そういった指針などに照らして判断する仕事をしていたところから、一転して、今度はロジックをもとに仮説を立てて、それを検証し、どうなるかわからない将来に対してその仮説を試して育てていく、仕事になったと。こういった過去志向から未来志向に変えていくというのは自分としてもすごく大変でした。
やはり会計士って、デューデリジェンスとか監査とか、バリュエーションももちろんそうですけど、過去を一定の基準で見て評価するようなことが多いので、どうしても将来のことに意識を向けていくという点は、弱みであり、苦労するところではないかなと思っています。
と、経営領域を目指す会計士に対して“過去志向からの脱却”がひとつのポイントであると自身の経験をもとにアドバイスを送った。
会計士資格を“活かす”のではなく“忘れろ”-経営コンサルで活躍する会計士が語ったコンサルティングで大切なこと
豊田 康一郎
(株式会社経営共創基盤 マネジャー/公認会計士)
1980年生まれ、東京都出身。2004年、公認会計士2次試験合格。あずさ監査法人にて製造業、エネルギー業、製薬業を中心に、会計監査、内部統制監査および財務デューデリジェンス業務に従事。 2009年、経営共創基盤(IGPI)入社。IGPI参画後は、製造業、情報サービス業、外食業、小売業、エンタ-テイメント業、ネットベンチャー、技術ベンチャー等を対象とした、プリンシパル投資の検討・実行、経営計画策定支援業務、業務改善ハンズオン支援業務、新規事業開発業務、M&Aアドバイザリー業務、PMI業務に従事。東京大学大学院工学修士。
※役職等はイベント開催時のものです。
以前、東大大学院卒の会計士が経営の修羅場で学んだリアルな経営改善と本当に大切なことの話にて公認会計士ナビに登場頂いた、経営共創基盤 マネジャー・公認会計士 豊田康一郎氏。本セッションでは、経営コンサルティングの現場やその経験で得た知見をもとに、コンサルティング業界を志望する若手会計士たちにアドバイスを送った。
机上の空論を語るのではない、クライアントの側で実務を共にするコンサルティングの現場
豊田氏が所属する経営共創基盤では、どのような案件に携わっているのか?豊田氏は、経営支援のプロジェクトには様々なものがあるが、と断りを入れつつ、比較的多いケースとして以下のような例を挙げた。
私が、どのような案件に携わっているかと言いますと、例えば、直近数年間の経常赤字に苦しむ製造業企業にご依頼頂いて、プロジェクトマネジャーとして5名くらいのメンバーとともに支援に入るといったケースがあります。
上半期の最初に再生計画を作るところから入って、その2~3ヶ月後くらいには改善施策のテーマ別にワーキンググループを作って計画を実行に移していきます。
計画を実行に移しながら会社を徐々に改善していくのですが、当然すべての改善施策で実行してすぐに数字が上がっていくわけではありませんので、時にここで胃が痛くなりながらもプロジェクトを続けていきます。
その結果、半年くらいするとそこまでに仕込んできたいくつかの改善施策の効果が出てきて、下半期には黒字転換、場合によっては最高益を出す、といったパターンで経営が改善されてくる案件は多いです。
また、豊田氏は、同社はクライアントと同じサイドで実務を共にするコンサルティングスタイルであるが、経営支援の仕事においては、クライアントサイドで共に汗を流すその姿勢が大切であるとも述べた。
こういったケースでは、下半期に入って私たちの支援の結果が出てくると、年末や忘年会あたりには社内の雰囲気も変わってきますので、お客様にすごく感謝されて、役員の方から「本当に助かりました」とがっちりと握手をしてお礼の言葉を頂く、といったことも実際にあります。
ただ、そうやって感謝して頂けるのは、机上の空論を語るだけではなくて、毎週毎週のミーティングで、本当に細かいところまでクライアントの実務を理解して、クライアントの机の向こう側に立つのではなく、“実際の課題を同じ側に一緒に座って支援してきた”という事実があるからなんですね。
そうやってきたからこそ感謝もされますし、経営改善のための様々な改善施策を実行していく上で、そもそもクライアントのメンバーにも一緒になって動いて頂けることにつながります。コンサルというと理論を振りかざすような印象もあるかもしれませんが、そういったお客様との関わり方やコミュニケーションというのも非常に大事だと思っています。
会計士がコンサルで成功するには、会計士資格を“活かす”のではなく“忘れる”ことが重要
こういった経営支援の現場で、会計士の資格や監査の経験は活きるのか?という話題について、豊田氏は、会計士がコンサルにチャンレンジする際のポイントを、強みと弱みのふたつの側面から語ってくれた。
やはり会計士は、会社の儲けの構造を知っている、ということは大きな強みだと思います。
例えば先ほど挙げたような製造業企業を支援するケースで言いますと、そこは少量多品種生産の製造業だったのですが、経営を改善して利益を出していくにはひとつひとつの製品に実際どれだけの原価がかかっていて、製造を止めたほうが良いのか、値上げをしたほうが良いのか、みたいな判断がすごく重要となるわけです。
そういったことを本当に細かく理解できるのは会計士の強みだと思いますし、その点で言うと、会計士の持っている知識の中でも、財務会計よりも圧倒的に管理会計のほうが重要になります。
一方で豊田氏は、会計士の弱みとして、過去の事象に準拠して判断基準集めに完璧を求めすぎる点を挙げ、そうならないことやゼロからキャリアを積み直すつもりで経営領域の仕事に飛び込むのが良いとアドバイスを送った。
経営の世界というのは、客観的事実から判断して確率60%でほぼこうだろうと思ったら、次の日には実行に移さないと競合に負けてしまいかねないものなのですが、会計士はどうしても過去の事象に準拠して100%の判断根拠を固めに行く傾向があると、それが弱みかなと思います。
実は、私もそれを克服するのに結構時間がかかったのですが、当社でも、100%の判断根拠を固めに行くのは一度忘れろと、unlearnしろ、というのは良く言います。
あとは、会計士はライセンスという国家的に証明されているものを取ったがゆえに、それに寄り添ってしまうというか、それで勝負しに行きがちな部分もあると感じています。
私もよく当社の中途採用の面接をするのですが、「会計士として…、会計士のスキルを活かして…」とよく皆さんおっしゃられるんですけれども、経営の現場ではもっともっと広くて難しい、答えのない領域を相手にしないといけないので、そこを今までの財産だけで勝負するという感覚、ライセンスで勝負するというのは、一度忘れようと。レベル1からやるんだ、ということをできるマインドの人のほうが成功するんじゃないかなと思います。
公認会計士ナビの転職エージェントサービス
公認会計士ナビを運営するワイズアライアンスでは、公認会計士を専門とした転職エージェントサービスを行っております。業界屈指のノウハウをもとに、転職を希望する業界や職種についてわかりやすく解説。転職活動やキャリアプランの作成を親身に、かつ、論理的にサポートします。
本格的に転職やキャリアアップをされたい方はもちろん、まずは転職するか相談されたい方までどなたでもご利用可能です。ご希望の方は下記よりお申込みください。