2019年10月の会計士業界の時事ニュースをお届けします。
9月13日、16日、10月9日にリリースされた「三菱ケミカルホールディングスKAM早期開示」「東陽監査法人ギネス記録1万人鬼ごっこに立会い」「環境や社会への影響を計る「ESG会計」とは」の3件のニュースをご紹介します。
三菱ケミカルホールディングスKAM早期開示
- 監査に「KAM」がやってくる(十字路)(日本経済新聞 2019年9月13日付)
2020年3月決算の監査から「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用が始まります。企業ごとに異なる監査プロセスの情報が公表されるため、どこまで踏み込んだ記載がされるのかに注目が集まります。
今回、2019年6月に三菱ケミカルホールディングスがKAMを早期開示したことに関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
企業の決算書類の確かさを保証する監査報告書が大きく変わる。通称「KAM(カム)」。英語のキー・オーディット・マターの頭文字からとってこう呼ばれるが、日本語でいえば「監査上の主要な検討事項」が盛り込まれる。(中略)導入は2021年3月期からだが、今年6月、三菱ケミカルホールディングスが先駆けて、監査で注意を払ったKAMに相当する事項が何かを開示した。監査法人はEY新日本監査法人だ。
引用元:監査に「KAM」がやってくる(十字路)(日本経済新聞 2019年9月13日付)
記事によると、監査報告書では、産業ガス事業の事業結合、のれんの評価、耐用年数を確定できない無形資産の評価、繰り延べ税金資産の評価の4つが開示されており、監査法人がどのような対応をとったかプロセスが書き込まれているということです。
ステークホルダーが監査を信頼し企業への理解を一層深められるような、充実した情報開示が求められます。
三菱ケミカルホールディングスのKAMは以下より確認ができます。
- 監査の透明性を高める観点からの報告書※を受領しました ※「監査上の主要な検討事項に相当する事項の報告」(三菱ケミカルホールディングス 2019年6月25日)
東陽監査法人ギネス記録1万人鬼ごっこに立会い
- YouTuberが1万人超えの鬼ごっこ開催。ギネス世界記録を達成 (BuzzFeed 2019年9月16日付)
監査法人とご縁があるとしたら、数字が関係していること、そして証明するという点かもしれません。
今回、東洋監査法人がYouTuber主催の1万に鬼ごっこのギネス記録認定に立ち会ったという記事が、BuzzFeedよりリリースされています。
制限時間30分の中、鬼役であるフィッシャーズの5人が1万人の参加者である逃げ役を追いかけた。
自ら鬼に捕まりに行く、スマートフォンを長時間操作するなどの行為はルール違反とみなされ、参加者としてカウントされない。そのため、多くの参加者は真剣に鬼から逃げる。
引用元:YouTuberが1万人超えの鬼ごっこ開催。ギネス世界記録を達成 (BuzzFeed 2019年9月16日付)
記事によると、ギネスワールドレコーズから派遣されたスタッフが、入場口で回収した参加チケットの半券の数からルール違反者と確認した数を除いて参加人数が計算する際に、信頼性担保のため東洋監査法人の社員*が立ち会ったのだそうです。
どういうご縁で監査法人に声が掛かったのか気になるところですが、監査法人の知名度アップにもつながる、楽しいイベントだったようです。
*記事内で「社員」と表記されていますが、「パートナー」ではなく一般的に使われる「社員」(≒役員や従業員)の意味だと思われます。
環境や社会への影響を計る「ESG会計」とは
- 環境・社会貢献を比較、世界企業が挑む「ESG会計」(日本経済新聞 2019年10月9日付)
環境への関心が高まる中、環境や社化への影響を企業間で比較できるような、新たな会計基準が導入されようとしています。
今回、世界的企業8社による2022年の新会計基準導入に向けて、VBAのクリスチャン・ヘラーCEOに対するインタビュー記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
欧州化学最大手の独BASF、自動車部品世界最大手の独ボッシュなど欧米韓の世界的企業8社が2022年にも、環境、社会への影響を企業間で比較できるようにした新たな会計基準を導入する。8月にNPO「バリュー・バランシング・アライアンス(VBA)」を設立し、大手監査法人4社も協力して枠組み作りを急ぐ。潮流となっている「ESG投資」に対応したもので、世界に広がる可能性もある。VBAのクリスチャン・ヘラー最高経営責任者(CEO)に聞いた。
引用元:環境・社会貢献を比較、世界企業が挑む「ESG会計」(日本経済新聞 2019年10月9日付)
記事によると、気候変動や難民問題などの国際的な課題に対応し、「インパクト評価」と呼ばれる自然や社会への影響を企業間で比較可能にするため、新たな会計基準が作成されることになりました。内容として、現在の財務諸表以外に環境・社会・人権など総合評価した2つ目の報告書を作るという選択肢と、1つの報告書に統合するという2つの可能性があるそうです。
測定が難しい社会貢献度や価値をどのように評価するのか、監査手法も含めて、未知の領域に新たな一歩を踏み出そうとしています。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)