【追記】
最新版の監査法人比較記事は下記になります。下記ページをご参考ください。
→BIG4監査法人を比較!2023年12月版_四大監査法人の決算・業績(売上・利益)、クライアント数、人員数ランキング!
BIG4監査法人(四大監査法人)の業績をまとめました。
今回、2019年10月版として四大監査法人(あずさ・EY新日本・トーマツ・PwCあらた)を「規模(人員数)」「クライアント数」「業績」の3点から比較してあります。
AI時代を迎え、IT改革が急速に進んでいる監査法人業界ですが、BIG4監査法人の業績や規模はどうなっているのでしょうか?各社の決算書から比較してみました。
本記事の目次
- 1:四大監査法人を『人員』で比較する
- 人員総数
- 社員数(公認会計士である社員及び特定社員の合計)・比率
- 公認会計士、会計士試験合格者等の人数・比率
- 監査補助職員数・比率
- 2:四大監査法人を『クライアント数』で比較する
- 四大監査法人のクライアント数
- 監査証明クライアント総数
- 非監査証明クライアント総数
- 3:四大監査法人を『業務収入・利益』で比較する
- 業務収入(売上高)
- クライアント1件あたり業務収入(売上高)
- 構成員・社員ひとりあたり業務収入(売上高)
- 営業利益
- 構成員・社員ひとりあたり営業利益
- 当期純利益
- 今回比較に使った数字は、4法人とも、公認会計士法第34条の16の3第1項に規定する「業務及び財産の状況に関する説明書類」を参考にしています。
- 比率(%)に関してはすべて、小数点以下第三位を四捨五入して表示しています。
今回参考にした資料
- 有限責任あずさ監査法人 第35期 2018年7月1日~2019年6月30日
- EY新日本有限責任監査法人 第20期 2018年7月1日~2019年6月30日
- 有限責任監査法人トーマツ 第52期 2018年6月1日~2019年5月31日
- PwCあらた有限責任監査法人 第14期 2018年7月1日~2019年6月30日
業績を比較!の前に…
それでは、早速業績の比較に入りたいところですが、その前にちょっとした余談です。
今回、会計期間の途中で元号が平成から令和へ変更となりました。各監査法人の「業務及び財産の状況に関する説明書類」では、これまで4法人ともに会計年度はすべて元号での表記となっていましたが、改元を機にそれぞれ以下のように表記されています。
- あずさ監査法人:今期の説明書類からすべての会計年度の表記を西暦に統一
- 監査法人トーマツ:前期までの会計年度の表記は元号のまま、当期以降を西暦にて表記
- EY新日本監査法人:前期までの会計年度の表記は元号のまま、当期以降を西暦にて表記
- PwCあらた監査法人:前期までの説明書類の表記と同じくすべての会計年度は元号表記
改元の際には、元号表記と西暦表記のいずれを利用するか、ビジネスではこれを機に西暦表記に統一した方が良いのではないか、などの話題もありましたが、この点に関しても各法人の個性が出ている?のか、対応が分かれたようです。
監査法人ランキング、今期のポイントは!?
それでは、本題に進みましょう。まずは全体の傾向です。
前期と当期を比較して、人員総数やクライアント数の順位には変動はありませんでした。
一方で、業務収入(売上)に関しては、EY新日本が3位へと後退しています。また、営業利益に関しては、増益のPwCあらた、あずさ、減益のEY新日本、トーマツとなっており、前期と逆転する結果となっています。
人員総数
- 人員総数ではトーマツが4期連続の1位。順位には変動なし。
- トーマツとPwCあらたで監査補助職員数の増加が顕著。
クライアント数
- 監査証明クライアント数は順位には変動なし。EY新日本1位、あずさ2位。
- EY新日本とトーマツの監査証明クライアント数が引き続きの減少。
業務収入・営業利益
- 監査証明収入は前年に続きトーマツが1位、昨年2位のEY新日本は3位に後退し、あずさが2位へ。
- 監査証明収入は4法人すべて増収。
- 4法人すべてで人件費増加、EY新日本を除く3法人でIT関連費の増加が顕著。
1:四大監査法人を『人員』で比較する
人員数はトーマツが依然トップ、増加数トップはPwCあらた
まずは四大監査法人の『人員』を比較してみましょう。
人員総数、社員数、公認会計士数などを比較した表をご覧ください。
四大監査法人の人員数詳細
※クリックすると拡大します
<注記>監査法人トーマツの「業務及び財産の状況に関する説明書類」の人員数は、海外駐在員及び海外派遣の監査スタッフは含んでいません。上記に掲載している表も同様になっています。
人員総数
- トーマツは依然としてトップ独走。
- EY新日本を除く3法人は増加。
- PwCあらたが200名近く増加。
人員総数に関しては、2015年の会計年度にEY新日本監査法人を抜いて首位になったトーマツが4期連続のトップです。また前期、EY新日本監査法人を抜き2位に浮上したあずさが、当期も引き続き2位でした。前期と比べてそれぞれの差が広がり、順位が定着したようです。
なお、4位のPwCあらた監査法人は196名と増加数でトップで、その内118名が監査補助職員でした。
社員数(公認会計士である社員及び特定社員の合計)・比率
- 社員数は、3期連続であずさが1位。
- トーマツ、PwCあらたの社員数は増加。
- あずさ、EY新日本の社員数は、前回に続き減少傾向。
- PwCあらたの社員数、社員比率ともに他法人よりも低め。
前期から順位に変動はありません。人員の総数に社員が占める比率は、あずさ監査法人が9.62%、EY新日本が9.69%、トーマツが8.32%となっており、トーマツの比率が若干低めになっていますが、ほぼ横並びです。
一方、PwCあらた監査法人の社員数は149名と他の3法人の約4分の1となっており、人員総数に占める社員比率も4.58%と他法人の半分程度となっています。
公認会計士、会計士試験合格者等の人数・比率
- 人数では、1位トーマツと2位あずさが僅差。
- 比率では、EY新日本が1位。
- PwCあらたのみ増加。
公認会計士と会計士試験合格者の総数の順位は前期と同じです。
EY新日本監査法人は、前々期が159名減、前期が140名減と2期連続で大幅に減少していましたが、当期は47名減となり減少幅が緩やかになったようです。
PwCあらた監査法人は前期100名増、当期も46名増と順調に人員を増やしているものの、公認会計士等の比率は49.03%と他の3法人と比較するとかなり低くなっています。この理由としては、業務収入に占める監査収入比率が他法人とくらべて極端に低いことから、非監査証明業務(アドバイザリー業務など)に従事する会計士資格者ではない人材が多いことが考えられます。
監査補助職員数・比率
ここで公認会計士や試験合格者ではない、監査補助職員数について見てみましょう。
参考:監査補助職員数の推移
※クリックすると拡大します
<注記>
※2018年6月期まで、あずさ監査法人は「業務及び財産の状況に関する説明書類」に正確な人員総数とその内訳の記載がなかったため、監査補助職員数は不明となっています。
※PwCあらた監査法人は、2017年6月期から「業務及び財産の状況に関する説明書類」を開示したため、それ以前の監査補助職員数は不明となっています。
6期間の人数が把握できるトーマツとEY新日本の監査補助員数の推移を見ると、EY新日本は2017年をピークに減少、トーマツに関してはこの6年で2倍超となっていることが分かります。
また、法人の人員総数に対する監査補助職員の割合は4法人とも上昇しています。
- あずさは増加(前回15.95%→今回16.55%)
- EY新日本も増加(前回11.60%→今回11.87%)
- トーマツも増加(前回28.43%→今回31.80%)
- PwCあらたも増加(前回28.87%→今回30.76%)
中でも、トーマツとPwCあらたの増加率が目立ちます。トーマツとPwCあらたで増加した理由と、残る2法人の今後の動向について、詳しく見ていきたいと思います。
監査補助職員数の増減と今後の動向
監査法人トーマツですが、2017年12月の千葉の「トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター」開設や、ITエンジニアなど専門人材の採用拡大など、デジタル技術を活用して有資格者以外の人材が監査業務を補助する体制を構築していることが起因していると考えられます。
- トーマツ、営業益75%減 19年5月期 システム投資拡大 (日本経済新聞 2019年8月5日付)
PwCあらた監査法人は、2019年4月18日に「次世代監査」の説明会を開き、職員など約3,000人を対象にデジタル人材の育成を進めていくと今後の方針を示しています。このことから、デジタル人材の積極登用が進んでいるものと推察されます。
- AI監査目指すPwCあらた、3000人をデジタル人材に(日本経済新聞 2019年4月19日付)
当期微増だったEY新日本監査法人ですが、2019年7月より新理事長に就任した片倉氏は、日本経済新聞のインタビューに対して、「STEM(科学・技術・工学・数学)に通じる人材の育成や採用を強化している」と回答しており、来期以降の監査補助職員数の増加が予想されます。
同様に、2019年7月からあずさ監査法人の新理事長に就任した高波氏も、「2020年7月までにデジタル人材を現在の2倍の400人体制に拡大する」と抱負を語っており、来期の監査補助職員数の増加が見込まれます。
- 大手監査法人、AI時代どう生き残る(日本経済新聞 2019年8月14日付)
2:四大監査法人を『クライアント数』で比較する
監査クライアント数はEY新日本が依然トップ!
次に、四大監査法人をクライアント数から比較してみましょう。
ここでは監査証明と非監査証明のクライアント数や比率を比較しています。
四大監査法人のクライアント数
※クリックすると拡大します
<注記>
※1:金商法クライアント比率={(金商法・会社法)+金商法}クライアント数/監査証明クライアント総数で計算。
※2:非監査証明クライアント比率=非監査証明クライアント数/(監査証明クライアント総数+非監査証明クライアント数)で計算。
- 監査証明クライアント数は、EY新日本が1位。2位あずさは56社増で追い上げ。
- あずさ、PwCあらたが監査証明クライアント数が増加。
- EY新日本は2016年6月期から4期連続の減少(監査証明クライアント数、累計263社の減少)。
- トーマツは2014年9月期から6期連続の減少(監査証明クライアント数、累計336社の減少)
監査証明クライアント総数
監査証明クライアント数に関しては、前期から順位には変動がなく、EY新日本が1位、それを2位のあずさが追う形となっています。
クライアント総数に関しては、四大監査法人全体では43社増加しています。
EY新日本監査法人に関しては、2016年6月期の113社減に続いて、2017年6月期が76社減、2018年6月期が6社減と推移し、いったん減少が止まったかに見えましたが、当期はまた68社と減少が進んでいます。
一方で、監査法人トーマツは、2016年9月期の147社減に続いて、2017年5月期が28社減、2018年5月期が61社減、2019年5月期が32社減となっており、EY新日本を上回る減少となっています。
2015年5月の東芝事件やその近辺での監査証明クライアントの不正などを受けて、監査法人トーマツの監査契約の新規の締結及び更新のポリシーが厳しくなっていることが関係している可能性があります。
また日本経済新聞の記事によると、監査報酬を増額したことが原因で監査法人の交代につながっている例もあるということです。
- 「報酬で折り合わず」が2割 上場企業、監査法人の交代増加(日本経済新聞 2019年6月4日付)
非監査証明クライアント総数
非監査証明クライアント数に関しては、EY新日本監査法人は336社減と前期に続き大幅に減少していますが、順位に変動はありませんでした。
全体でみると非監査証明クライアント数は57社の減少となっています。EY新日本監査法人を除く残り3法人ともクライアント数は増加、あずさとPwCあらたは監査証明クライアント数と非監査証明クライアント数の両方が増加しています。
また、非監査証明クライアントを比率で見ると、前期と同じくPwCあらた監査法人が52.21%と最も高く、あずさが37.22%と最も低くなっています。
3:四大監査法人を『業務収入・利益』で比較する
業務収入は4法人とも増加、1位はトーマツ
それでは、最後に業務収入や利益を比較してみましょう。
業務収入(売上高)
- 業務収入は、2期連続でトーマツが首位。
- EY新日本を抜き、あずさが2位浮上。
- 監査証明収入は、4法人すべてが増収に。
- 非監査証明収入の順位は前年と変わらず、トーマツが首位。
※クリックすると拡大します
<注記>「ひとりあたり」の金額は小数点以下を切り捨てて表示。
四大監査法人の業務収入を見てみると、すべての法人が増収となりました。
1位は前年に続きトーマツ、前期は僅差だった2位のEY新日本と3位のあずさの順位が当期は逆転し、あずさが2位、EY新日本が3位になりました。
監査と非監査それぞれの業務収入に目を向けてみると、監査はEY新日本監査法人がトップ、非監査ではトーマツがトップとなっており、順位は前期と変わりありませんでした。
監査証明収入は4法人すべてが増収に、非監査証明収入はトーマツ、PwCあらた、あずさの3法人が増収、EY新日本は減収となっています。
また、非監査証明収入比率では、PwCあらた監査法人が2期連続の1位になっています。
クライアント1件あたり業務収入(売上高)
次に、クライアント1件あたりの業務収入について見てみます。
- 監査証明クライアント1件あたり監査証明収入は、トーマツが増加トップで首位キープ。
- 非監査証明クライアント1件あたり非監査証明収入は、PwCあらたが断トツでトップ。
監査証明クライアント1件あたり監査証明収入
まず、監査証明クライアント1件あたり業務収入について見てみましょう。
※クリックすると拡大します
<注記>1万円未満を切り捨てて表示。
PwCあらた監査法人を除いて監査証明クライアント1件あたり監査証明収入は増加しています。前期も4法人とも増加しており、引き続き監査報酬増額の傾向が見られます。
日本経済新聞が上場企業で監査法人を交代した社数を集計した結果、2019年1月から5月の社数は前年同期より約3割増加しており、監査法人別では監査法人トーマツがトップでした。
また交代理由は、「監査継続期間の長期化」が4割、「監査報酬増額」が2割となっています。監査報酬増額が理由で交代した件数を監査法人別に見ると、EY新日本監査法人がトップでした。
- 「報酬で折り合わず」が2割 上場企業、監査法人の交代増加(日本経済新聞 2019年6月4日付)
監査の厳格化による監査報酬増額が、監査証明クライアントの減少につながっているようです。
非監査証明クライアント1件あたり非監査証明収入
次に、非監査証明クライアント1件あたり非監査証明収入を見てみましょう。
※クリックすると拡大します
<注記>1万円未満を切り捨てて表示。
当期もPwCあらた監査法人が他の監査法人に倍近く差を付けて、断トツで首位です。前期2位のトーマツと3位のあずさは、当期は順位が逆転しています。なお、EY新日本監査法人はPwCあらたの約3分の1と低めになっています。
構成員・社員ひとりあたり業務収入(売上高)
次に、構成員・社員ひとりあたりの業務収入や利益について見てみます。
- 構成員ひとりあたり業務収入は、4法人すべてが前期より増加。
- PwCあらたの社員ひとりあたりの業務収入は3億円台を維持。
- 構成員ひとりあたりの営業利益は金額、利益率ともにPwCあらたがトップ。前期トップのEY新日本は3位。
- 営業利益は、あずさとPwCあらたが増加し、EY新日本とトーマツが減少。
- 業務費用は、4法人すべてで人件費が増加。EY新日本を除いた3法人でIT関連費が増加。
構成員ひとりあたり業務収入
構成員ひとりあたり業務収入を見てみましょう。
※クリックすると拡大します
<注記>「ひとりあたり」の金額は小数点以下を切り捨て、および、1万円未満を切り捨てて表示。
当期の構成員ひとりあたり業務収入は、前期に続きEY新日本監査法人がトップです。EY新日本監査法人は業務収入が3,372百万円増加するとともに構成員数が86名減少したことで、指標が上がりました。また前期2位の監査法人トーマツを抜いて、あずさが2位になりました。
社員ひとりあたり業務収入
次に社員ひとりあたりの業務収入を見てみましょう。
※クリックすると拡大します
<注記>1万円未満を切り捨てて表示。
社員ひとりあたりの業務収入は、4法人すべて増加しています。社員数が増えている法人もありますが、それを上回る業務収入の増加があったようです。
PwCあらた監査法人に関しては、前期に引き続き社員ひとりあたりの業務収入額は3億円を超えており、他の法人の2倍近い結果となっています。
営業利益
営業利益を見ると、金額、利益率ともにPwCあらた監査法人が最も大きくなっています。
※クリックすると拡大します
<注記>「ひとりあたり」の金額は小数点以下を切り捨てて表示。
営業利益に関しては、PwCあらたとあずさが大きく改善した一方で、トーマツとEY新日本が減少しています。
まず改善したPwCあらたとあずさについて分析すると、PwCあらたは業務収入が31億円増加したものの、業務費用の増加はわずか3億円でした(人件費3億円増加、IT及び通信費5億円増加、その他業務費用5億円減少)。
また、あずさ監査法人も業務収入が33億円増加したのに対して、業務費用は20億円の増加にとどまっています(人件費が8億円増加、情報システム関連及び通信費5億円増加、その他業務費用4億円増加など)。
次に指標が下がったトーマツとEY新日本ですが、トーマツは業務収入が40億円増加したのに対して、業務費用は47億円増加しています(人件費が10億円の増加、情報システム及び通信費が12億円の増加、その他業務費用のうちグループ分担金が25億円の増加など)。
EY新日本監査法人は業務収入が3億円増加したのに対して業務費用は18億円の増加で、営業利益が減少しました(人件費が19億円の増加)。
4法人すべてで人件費が増加しており、EY新日本監査法人を除いた3法人についてはIT関連費の増加が顕著です。営業利益に影響を与える業務費用について共通した傾向があることが分かりました。
また、営業利益に対する影響が大きい「IT関連費」と「人件費」について見てみたいと思います。
IT関連費
まずIT関連費ですが、各法人の業務費用明細より「情報システム及び通信費(または、IT及び通信費)」を見ると、多い順にEY新日本監査法人65億円、トーマツ48億円、あずさ39億円、あらた17億円でした。営業利益が減少したEY新日本とトーマツは、他法人よりIT関連費が多く計上されていました。
このことから、積極的にIT投資を行ったために営業利益が減少したということが分かります。
人件費
同じく業務費用明細の「人件費」を人員総数で平均した構成員ひとりあたり人件費は、以下のようになっています。
※クリックすると拡大します
<注記>「ひとりあたり」の金額は1万円未満を切り捨てて表示。
前期首位のトーマツとEY新日本の順位が入れ替わりました。1位のEY新日本監査法人と4位のPwCあらたでは、約2百万円の差があります。日本経済新聞によると、人材獲得のため報酬の引き上げがされていることが理由となっているようです。
- 監査法人大手、3者が経常減益 AI監査で費用増(日本経済新聞 2019年9月13日付)
構成員・社員ひとりあたり営業利益
次に、構成員、ならびに、社員ひとりあたりの営業利益です。
※クリックすると拡大します
<注記>「ひとりあたり」の金額は1万円未満を切り捨てて表示。
社員・構成員ひとりあたりの営業利益は、営業利益を大幅に改善したPwCあらたとあずさが増加し、EY新日本とトーマツが減少しています。
当期純利益
最後に、各法人の特別利益、特別損失項目を見たいと思います。
当期で特別利益、特別損失を計上しているのは以下の3法人です。
- トーマツ:(特別利益)関係会社株式売却益4,627百万円、(特別損失)構造改革関連費用1,567百万円
- EY新日本:(特別利益)貸倒引当金戻入1,100百万円
- PwCあらた:(特別利益)投資損失引当金戻入益27百万円、(特別損失)固定資産除却損38百万円
このうち計上金額が大きいトーマツとEY新日本について、注記や過年度決算書を参考にしながら検討してみたいと思います。
監査法人トーマツの特別利益・損失
注記を見ると、関係会社株式売却益について「トーマツイノベーション株式会社の全株式の売却に係る利益」と説明されています。デロイトトーマツグループから独立して、社名を変更し、新体制で営業を開始しました。
- 「トーマツ イノベーション株式会社」から「株式会社ラーニングエージェンシー」へ社名変更しました(ラーニングエージェンシー 2019年4月1日付)
また構造改革関連費用は「今後のIT投資の増加を見越した人員構造の改革のための社員の早期退職に関連する退職割増年金等に係る費用」ということです。過去に、第44期で「構造改革費用」40億円を計上したことがありますが、その際の注記は「社員及び職員の早期退職に係る退職割増年金及び一時金」となっていました。当期は、社員のみの費用ということのようです。
人件費やシステム投資(業務費用)、構造改革関連費用(特別損失)というように、IT関連の費用を他法人に先駆けて計上している様子が見てとれます。その一方で、関係会社株式売却で46億円の利益を出し、最終的に純損失にならずに決算を終えることができました。
EY新日本監査法人の特別利益
特別利益で貸倒引当金戻入を11億円を計上しています。これは、2016年6月期に「関係会社長期貸付金に対する貸倒引当金繰入(特別損失)」11億円を計上していましたが、当期に長期貸付金11億円が回収されたことに伴い戻入されたものと読みとることができます。監査法人トーマツ同様、特別利益の計上があったことで、純損失を避けられたようです。
以上、2019年10月時点の情報にもとづく四大監査法人の比較をお送りしました。
いかがだったでしょう?監査を取り巻く環境が目まぐるしく変わる中、数字に落とし込んでみるとその結果が見えてきたと思います。毎年、人員数や業務収入での1位に注目が集まりますが、利益や構成員数などにも注目することによって各法人の見え方も違ってくるのではないでしょうか。
IT関連の投資が増え、監査制度改革で人員の変化も予想される中、今後どのように推移していくのでしょうか。次回以降の特集にもご期待ください。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)
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