2019年6月の会計士業界の時事ニュースをお届けします。
6月5日、10日、18日にリリースされた「監査報酬増加傾向続く」「監査法人とAIの距離」「米KPMG監査資料改ざん認める」の3件のニュースをご紹介します。
監査報酬増加傾向続く
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報酬、5年連続増加(日本経済新聞 2019年6月5日付)
前回のニュースで、上場企業の監査法人交代の原因のうち2割を監査報酬が占めているという記事をお伝えしました。
一体、現在の監査報酬の相場はいかほどなのでしょうか。監査報酬増加に関する記事が日本経済新聞よりリリースされています。
監査報酬は右肩上がりに上がっている。監査人・監査報酬問題研究会が今年3月にまとめた調査によると、2017年度の監査報酬は平均6604万円と前の年度より4.8%増えた。5年連続の増加だ。
引用元:報酬、5年連続増加(日本経済新聞 2019年6月5日付)
記事によると、2017年度に監査報酬が増えた企業は全体の4割を超えており、大手から中堅・中小法人に交代した場合の監査報酬は平均で5.9%減少しているそうです。
監査の厳格化の流れの下で監査報酬の増額を必要なものと考えるのか、それとも監査法人を変更しようとするのか。交代理由の開示がされたことで企業の判断は可視化されています。
監査法人とAIの距離
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AIの発達は「会計士の仕事」を駆逐するのか(東洋経済オンライン 2019年6月10日付)
少し前に、監査業務がAIにとって代わられるという記事が出て、衝撃を受けた方も多かったと思います。実際にBIG4ではデジタル技術を駆使した監査へと変化し始めており、AIは避けて通れないものとなっています。
今回、AIの発達と監査に関する記事が、東洋経済オンラインよりリリースされています。
今から5年前。AI(人工知能)が既存の職業をどのように変えるかを論じたイギリス・オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授の論文の中で、94%の確率で10年後になくなるとされた専門職の1つが会計監査」の仕事だった。
引用元:AIの発達は「会計士の仕事」を駆逐するのか(東洋経済オンライン 2019年6月10日付)
記事では、複数の大手監査法人の実例に触れています。例えば監査法人トーマツでは、監査の高度化、効率化のために累計約40億円の研究開発費をかけてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)化が進められているそうです。またパイロットレベルでAI監査が始まっていることなども紹介されています。
他方、監査業界にデータサイエンティストなど異分野の専門家が介入するようになれば、会計士にはマネジメント力も求められるようになると言及しています。
デジタル技術の知識やマネジメント力など、ほんの数年前の監査法人では重要視されていなかった能力が会計士に求められる時代は、すぐ目の前です。
米KPMG監査資料改ざん認める
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米SEC、KPMGに制裁金54億円 監査資料改ざんなどで (日本経済新聞 2019年6月18日付)
日本では監査不信払しょくに向けて各監査法人が尽力している最中ですが、国外では残念な事件が起きてしまいました。
今回、国際会計事務所KPMGの不正発覚に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
米証券取引委員会(SEC)は17日、国際会計事務所KPMGが監査資料の改ざんや社内試験における不正行為を認め、5000万ドル(約54億2800万円)の制裁金を支払うことで合意したと発表した。
引用元:米SEC、KPMGに制裁金54億円 監査資料改ざんなどで (日本経済新聞 2019年6月18日付)
記事によると、PCAOBから監査上の不備を指摘されないために不正な手段で監査資料を修正したり、SECから義務付けられている試験を含め社内試験で不正が行われていたことを受けて、制裁金の支払いをSECと合意したとのことです。
粉飾を見つける立場にいながらの信用失墜行為に、与える影響は大きそうです。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)