JA(農協)専門の監査法人が発足、会計士の公務員化案など:今月の会計士業界ニュース(2017年7月その1)

  • 2017/7/20

2017年7月の会計士業界ニュース3件をピックアップしました。

今月は、JA(農協)専門の監査法人の設立、会計士の公務員化案などのニュースがありました。

JA(農協)の監査を専門とする「みのり監査法人」が設立

JA(日本農業協同組合)の監査を専門とするみのり監査法人設立のニュースがありました。

農業協同組合法等の一部を改正する等の法律(平成27年法律第63号)が施行されました。この法律の施行日から起算して3年6月を経過した日から、一定の貯金量がある信金事業を行う農協は、会計監査人をおき、計算書類及びその附属明細書について会計監査人の会計監査を受けなければならなくなりました。

この制度改正を受けて発足した専門の監査法人の設立に関する記事が、日本経済新聞より出ています。

全国の農協(JA)の会計監査を担う「みのり監査法人」(東京・千代田)が発足した。JAはグループに所属する農協監査士による監査を受けているが、農協改革を進める政府は2019年までに一定量の貯金を持つJAは公認会計士による監査に移行するよう求めている。

引用元:JA会計監査、専門の法人発足 農協改革に対応(日本経済新聞 2017年7月9日付)

記事によると、JAの監査に携わった経験を持つ会計士ら17人で立ち上げ、あずさ監査法人出身の大森一幸氏が理事長を務めるそうです。

既にWEBサイトもリリースされ、パートナー就任予定者も掲載されています。

農協の信用事業への批判を回避。会計士は信頼回復役となれるのか?

安倍政権の施策・農協改革の一環として、農協の信用事業への信頼を高めるため、「JA全国監査機構」から公認会計士または監査法人が監査を行うことになります。

監査の専門家として、農協の信頼回復に貢献することが期待されています。監査不信に揺らぐ会計士業界にとって、農協の信頼の回復は、ひいては会計士業界への信頼回復のチャンスとなるかもしれません。

会計士の「公務員化」も視野に入れた改革を

監査の品質を高めるための新たな制度の必要性について、元内閣法制局長官の見解が発表されました。

 相次ぐ不祥事に監査法人の意識は変わりつつあるものの、監査の品質を高めるためには、監査法人内の問題だけでなく、監査に関する制度も改正が必要になります。監査制度の改正を考える記事が、日本経済新聞より出ています。

交代制の議論には企業と監査法人の関係に問題がある。原点は監査法人が企業から直接報酬を得る仕組みだ。証券取引所などが監査法人に報酬を支払う制度も一考だ。いわば会計士の公務員化だ。銀行を監督する公務員も銀行から給料をもらうわけではない。

引用元:会計士の公務員化も一考 元内閣法制局長官 阪田雅裕氏(日本経済新聞 2017年7月8日付)

記事では、タイトな監査スケジュール、企業と監査法人の関係など、現在の監査制度で改善すべき事項を指摘しつつ、会計士の公務員化や監査期間の延長など新たに導入すべき制度についても触れられています。

ステークホルダーのための監査ができるか

財務諸表利用者にとって有益となる監査を行うためには、公務員化は選択肢の一つとして有効です。報酬を直接もらう関係になければ、クライアントとの関係に左右されずに、必要な手続きを行い、意見を述べることが期待できます。

一方で独立意識が高い会計士業界においては、公務員化以外の選択肢も今後出てくるものと思われます。

1年半の準備期間を経て、統治指針(ガバナンス・コード)導入

平成27年10月に「会計監査の在り方に関する懇談会」が設置されてから1年半、ようやく会計監査改革実行のニュースがありました。

「会計監査の在り方に関する懇談会」によって、監査法人の組織的な運営に関する原則を規定した「監査法人のガバナンス・コード」の策定が提言されました。それを受け、「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」がセットされ、「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)がとりまとめられました。

この一連の流れの中でようやく始まった会計監査改革に関する記事が、日本経済新聞より出ています。

相次ぐ会計不祥事をきっかけに始まった会計監査改革がいよいよ実行段階を迎える。金融庁は監査法人に対してどのように企業の決算を評価したか、テーマごとに理由を細かく公表するよう制度を改正する方針だ。4月には監査法人の行動規範とも言える統治指針(ガバナンス・コード)を策定した。監査の質を高め、企業とのなれ合いを排除して監査法人の独立性を高められるか。その成否は日本の資本市場の信頼性をも左右する。

引用元:会計監査改革、実行段階に 金融庁、不祥事防止へ動く(日本経済新聞 2017年7月7日付)

記事によると、もう一段の改革として「監査報告の透明化」が行われるそうです。財務諸表の意見表明に加え、監査人が着目した会計監査上のリスクなどが記載されることになっています。

この秋に審議会が開かれる予定ですが、「監査報告の透明化」についての意見の取りまとめが金融庁のHPで公表されています。

会計監査改革が監査法人を守る

監査法人のガバナンス・コードは、「経営執行できる人材を経営層に選任」や、「監督・評価に外部の目を入れる」、「法人の取り組みを外部から評価可能に」など、外部者の登用を求めています。

監査法人に金融庁主導で新しい監視の目が入ることは、監査法人の自浄化だけでなく、監査を不当に妨げようとするクライアントから監査法人を守ることにもつながります。

次回は、岐路に立たされる監査法人に関する記事をまとめてご紹介します。

(ライター 大津留ぐみ

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