会計事務所の業務効率を維持しながらクラウド対応を実現!「弥生会計 17 AE」のリリースが発表!-弥生ラウンドテーブル報告



去る2016年9月28日(木)、秋葉原の弥生株式会社本社にてプレスを対象とした弥生ラウンドテーブルが開催され、10月21日(金)に発売が予定されている弥生17シリーズの製品発表が行われた。

 

同イベントでは、弥生株式会社 代表取締役社長である岡本浩一郎氏から、今回の製品コンセプト、現状の会計ソフト業界の分析やそれを踏まえた弥生の戦略、会計事務所のクラウド会計ソフトへの対応の現状などが発表されたが、その中でも今回のメインテーマとなったのが、同社の提供する「弥生会計オンラインと弥生会計AEのデータ共有の開始」についてであった。

弥生株式会社 代表取締役社長 岡本浩一郎氏

弥生株式会社 代表取締役社長 岡本浩一郎 氏

本記事ではこのラウンドテーブルの模様、ならびに、弥生の考える会計事務所のクラウド対応に関するレポートをお伝えする。

「弥生会計AE」とは?-会計事務所のための会計ソフト

まずは今回のラウンドテーブルの内容に触れるに当たって「弥生会計AE」について簡単に解説しよう。

現在、弥生が法人向けに提供する会計ソフトは大きく3つに分類される。

  • 弥生会計 (デスクトップ型会計ソフト)

法人向けのデスクトップ型会計ソフト。なお、法人向けには「弥生会計」、確定申告を行う個人事業主向けには「やよいの青色申告」が提供されている。今回、最新バージョンである「弥生会計17」が発表され、マイナンバー対応を中心とした新機能が追加された。

  • 弥生会計オンライン (クラウド型会計ソフト)

法人向けのクラウド型会計ソフト。近年普及が進むクラウド会計ソフトでNo.1のシェア*を有する。なお、確定申告を行う個人事業主向けには「やよいの青色申告オンライン」「やよいの白色申告オンライン」が提供されている。

*クラウドアプリ利用シェアNo.1:クラウド会計ソフトの利用状況調査より(MM総研 2016年3月)

  • 弥生会計AE

会計事務所向けのデスクトップ型会計ソフト。高速仕訳入力、消費税申告書・各種消費税届出書作成など、弥生会計の使いやすさそのままに会計事務所業務に必要な機能を搭載している。弥生のパートナープログラムである「弥生PAP」**の会員会計事務所向けに提供されている。

**弥生PAP:弥生の提供する会計事務所向けパートナー制度。2016年9月末時点で7,302会員が所属。入会や会費に関しての詳細はこちら

今回のラウンドテーブルでは、デスクトップ型の最新バージョンである「弥生会計17」の発売、そして、「弥生会計AEと弥生会計オンラインのデータ共有」の発表が行われたが、その中でも、独立・開業し税務・会計業務を営む税理士や公認会計士と関連性が高いのが後者である。

最新版の「弥生会計AE」では何ができるのか?-会計事務所の業務効率とクラウド会計ソフトの課題

弥生会計AEと弥生会計オンラインのデータ共有とは?

今回のアップデートによって実現するのは、会計事務所の顧問先(事業者)が利用するクラウド会計ソフト弥生会計オンラインと、会計事務所が利用するデスクトップ型会計ソフトである弥生会計AEの間で相互にデータが同期されるという点である。

これにより、

  • 顧問先がクラウド会計ソフトを選択しやすくなる
  • 会計事務所は、クラウド会計ソフトを利用している顧問先に対しても従来通りの弥生会計AEの操作性でサポートすることができる

という効果が期待できるという。

会計事務所はクラウド会計ソフトに何を求めているのか?

それでは、なぜ、弥生は「会計事務所にはデスクトップ型、事業者にはクラウド型」という選択肢を用意したのであろうか?

この点について弥生の岡本氏は「会計業務のプロである会計事務所は業務効率性を重視している」とのデータを提示した。

クラウド会計ソフトには銀行口座やカード明細の自動取り込みといった利便性の高い機能がありつつも、現状では、その入力スピードや操作性はブラウザやPCのスペックなどによって制限され、事業者などの一般ユーザーにとっては十分なものであっても、会計作業を本業とし、その作業スピードや業務プロセスが洗練された会計事務所にとってはまだ十分なものとは言い切れない状況にあると同社は分析する。

最新版の弥生会計AEでは、クラウド&デスクトップでのデータ共有を実現

こういったニーズを踏まえ、今回、弥生会計AEのバージョンアップでは、弥生会計AEと弥生会計オンラインのデータ共有が実装されることとなった。

これによって、クラウド会計ソフトを希望する顧問先には弥生会計オンラインを利用してもらいながら、会計事務所側はデスクトップ型である弥生会計AEを利用することによって、従来の業務スピードや操作性を維持したまま、顧問先の満足度を高めていくことができる。

また、今回の弥生ラウンドテーブルでは、弥生会計AEのデモも行われ、弥生マイポータルなどを中心とした新機能が披露された。

最新版の「弥生会計 17 AE」ではマイポータルによって、顧問先の会計ソフトがクラウド、デスクトップのいずれであるかを問わずマイポータル上で管理できるなど、操作性が大きく向上している。

弥生会計AE

弥生会計AEでは、クラウド、デスクトップ問わず共有されているデータは「弥生マイポータル」で管理することが可能

会計事務所はチェックを行う会計期間を選択することで、顧問先側の入力制限が可能

弥生会計AEでデータを開けば、これまで通りの使い勝手で入力・編集が可能

クラウド会計ソフトは法人への普及が今後の課題 -鍵を握るのは会計事務所

今回のラウンドテーブルでは、クラウド会計ソフトの普及率に関しても言及され、会計事務所のクラウド対応が今後の普及の鍵を握るとの見解が語られた。

弥生の市場分析によると、現状、個人事業主においては一定の普及率は実現しているクラウド会計ソフトだが、法人における普及は個人事業主と比較すると大きく遅れているという。

クラウド会計ソフトのユーザーは個人事業主に関しては10万規模にまで拡大しているものの法人に関しては1万前後のユーザーに留まっているのではとの見解だ。

個人事業主のクラウド会計ソフトの利用率は9.2~9.9%、利用者数6.1~13.4万人程度と推計

法人のクラウド会計ソフトの利用率は1.0~2.5%、利用者数0.7~1.8万人程度と推計

この差異について、弥生では、

  • 個人事業主と法人では税務申告までのプロセスが異なるということ
  • 法人の約8割は、記帳や決算・申告業務など何らかの作業を会計事務所に委託しており、会計ソフト選びには会計事務所の紹介も影響が大きいということ

が一因であると分析しているという。

個人事業主は申告までを自己完結することが多いが、法人は会計事務所に委託していることが多い

小規模法人の多くは会計事務所からの紹介で導入する会計ソフトを決めている傾向が

そのため、今回の弥生会計AEと弥生会計オンラインの連携によって、会計事務所が顧問先にクラウド会計ソフトを勧めやすくなり、法人への普及が進む後押しになることも期待できるとも語った。

また、弥生の岡本氏は、現状でのクラウド会計ソフトとの普及はまだまだであると述べつつも、中長期的には会計や請求、また、その周辺にある商取引関連業務のクラウド化や効率化は進んでいくと予想しており、同社が掲げる「商取引3.0」***の世界の実現を目指していくとラウンドテーブルを締めくくった。

***参考記事:会計ソフトは消え、コマースソフトへと進化する!?会計士や税理士の未来とは:弥生がMisoca買収で描く世界(後編)-公認会計士ナビ

【編集部より】

編集部ではラウンドテーブル終了後に弥生株式会社 代表取締役社長である岡本浩一郎氏へのインタビューも行わせて頂きました。

今回のバージョンアップの背景にある会計事務所とクラウドの関係への想いなど、より真意に迫ったインタビューを後日お届けさせて頂く予定です。ご期待ください。





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【手塚佳彦/公認会計士ナビ編集長・株式会社ワイズアライアンス代表取締役CEO】 神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当するなど、会計・税務・ファイナンス業界に精通。また、株式会社MisocaのアドバイザーとしてMisoca経営陣を創業期から支え、弥生へのEXITを支援するなどスタートアップ業界にも造詣が深い。 2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO(Chief Executive Officer)就任、公認会計士ナビ編集長。

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