来る2016年2月20日(土)に第5回・公認会計士ナビonLive!!in大阪が開催されます。
本記事では第5回の開催に向けて第4回・公認会計士ナビonLive!!の内容を振り返ります。
第4回 公認会計士ナビonLive!!のトークセッションでは、「公認会計士×税務」をテーマに、税務分野で活躍する3名の公認会計士が、会計事務所業界や公認会計士と税務業務について語りました。
※本記事はセッションでの発言を一部補足・編集した記事となっております。
第4回 公認会計士ナビonLive!! トークセッション「公認会計士×税務」
【開催日時】 2015年8月29日(土)
【テーマ】 公認会計士×「税務」「会計系スタートアップ」
【第1部トークセッション】 公認会計士×税務
【登壇者(敬称略)】
- 下村 文男(デロイト トーマツ税理士法人 公認会計士)
- 富山 直哉(税理士法人平成会計社 第四事業本部 プレイングマネージャー 公認会計士・税理士)
- 久馬 一朗(久馬会計事務所 所長 公認会計士・税理士)
会計士が税務分野へキャリアチェンジするためには「自分の強みや」「税務を行う目的」を認識することが重要
■下村 文男(デロイト トーマツ税理士法人 公認会計士)
2006年公認会計士試験合格後、大手監査法人で法定監査業務に従事。2010年より独立系大手税理士法人にて、上場会社・中堅企業の法人税申告業務の他、所得税・相続税の税務申告業務、事業承継、公益法人のコンサルティング業務等に従事。
2013年に税理士法人トーマツ(現・デロイト トーマツ税理士法人)に入所。現在、M&A/組織再編サービス部門にて、M&Aの税務デューデリジェンス、税務ストラクチャリング、グループ内再編に関する税務相談サービスの他、国内外の個人富裕層に対する資産税コンサルティング業務、オーナー企業に対する事業承継コンサルティング業務等に従事。大阪市立大学卒。
大手監査法人での監査、独立系大手税理士法人での税務・コンサルティグ経験を経て、現在はデロイト トーマツ税理士法人にてM&A、資産税、事業承継などの税務コンサルティング業務に従事している下村氏は、自身の転職活動経験を交えながら、公認会計士が税務分野へとキャリアチェンジする際のポイントや苦労を語ってくれた。
税務を経験できたのは運にも恵まれた
下村氏は会計士試験合格後に大手監査法人で4年弱勤務した後、転職活動を行ったが、ちょうどリーマンショック後の不況の時期であったため、求人も少なく、さらに税務経験が積める転職先に絞って探していたため、転職活動は簡単ではなかったという。
そんな中、下村氏は独立系の大手税理士法人に採用されたが、最初から税務業務に担当できたわけではなく、公益法人向けのコンサルティング業務からのスタートであったという。しかし、その後、事業承継部門へ異動することとなり、資産税をはじめ、上場企業の税務顧問や組織再編などの税務業務を経験することができたという。
当時は市況の影響もあったと思いますが、税務経験のない会計士が税務業界に転職するというのは私が想像しているほど簡単ではないと感じました。私が税務業務を経験できたのは運に恵まれた部分もあったと思います。
と下村氏は語る。
また、公認会計士は税理士登録ができるとは言え、採用側からするとあくまで税務未経験者であるため、未経験だが税務職として何ができるのか?を意識すること、例えば、英語力やコミュニケーション能力など自分の強みは何かを意識して転職活動に望むのが良いと思う、と参加者にアドバイスした。
高度な税務業務をとことん極められるBIG4税理士法人
その後、独立系の大手税理士法人から現在勤務するデロイト トーマツ税理士法人に転職した下村氏だが、同法人を選んだ理由は「より高度な税務業務を経験したかったため」だと語った。
会計士の場合は、独立するために税務を希望する人が多いと思いますが、私の場合、なぜ税務経験をもっと積みたいのか?と考えた時、M&A・組織再編というより専門性の高い税務業務に関与したいと思い、BIG4税理士法人にチャレンジすることにしました。
実際、現職のデロイト トーマツ税理士法人では、大型案件や国際案件、まだ事例の少ない最先端の案件なども含め、M&Aや組織再編に係る税務ストチャリングや税務デューデリジェンスなど専門性の高い業務を経験できており、また、各分野で多くの専門家が参考にする書籍を執筆しているような専門性の高いメンバーに囲まれて仕事ができているという。
税務を通じて将来何をやりたいのかを明確に
下村氏はセッションの最後に「税務を通じて将来何をやりたいのかを明確にすることが大事」と聴衆にメッセージを送った。
税務を通じて将来何をやりたいかを明確にした上で税務業務にチャレンジすることが良いと思います。将来、独立をするために経験を積みたいのか、大規模な企業や海外関連の税務をメインステージとして活躍したいのか、転職の際に求められる能力というのも、どのステージを想定しているかによって違ってくると思います。
会計の専門家として会計・税務の総合的な知識を持ってサービスを提供したい
■富山 直哉(税理士法人平成会計社 第四事業本部 プレイングマネージャー 公認会計士・税理士)
2007年、公認会計士試験合格。監査法人トーマツにて鉄鋼業、派遣業、証券業等の会計監査、内部統制監査等の業務に従事。2011年より税理士法人平成会計社に勤務。上場企業及びその子会社の連結決算・開示サポート・税務申告、SPC・J-REITの会計事務、M&Aなどに従事。同志社大学卒。
監査法人トーマツからキャリアをスタートし、現在は国内最大級の税理士法人である平成会計社にてプレイングマネージャーを務める富山直哉氏は、税務業務の難しさや税務・会計・FASを総合的に提供できることのやりがいを語ってくれた。
税務の難しさは会計と違いキャッシュが実際に出て行くところ
以前、大手監査法人を辞めて税理士法人に転職した公認会計士の4年間の話という記事にて、監査法人トーマツを退職してから平成会計社での現在までのキャリアや仕事を語ってくれた富山氏だが、平成会計社では中小企業の記帳代行、決算、税務申告支援と言ったベーシックな税務業務から、上場企業や大企業のM&Aにおける税務・財務デューデリジェンスといった税務やファイナンスのアドバイザリー、そして、事業会社に常駐してのクライアントの会計実務の支援まで、公認会計士としてフルラインのサービスを経験してきている。
そんな富山氏だが、会計業務と税務業務の大きな違いとして、「実際にキャッシュが出ていく点と税務リスクをうまく抑えなければならない点に税務の難しさを感じた」と語った。
もちろん監査や会計業務も企業業績に影響を与えるという意味では重要な業務ではあるのですが、税務の場合は納税という形で実際に現金が出て行くこととなります。また、どの方法をとるかによって数億円、数十億円のインパクトが顧客に生じることもありますし、一方で、そのインパクトを抑えるとなると税務リスクも生じてきます。キャッシュというのはいわゆる会社でいう血液ですので、そこをどうするのかというのは本当に頭を悩ませるところであり、顧客のキャッシュアウトを抑えつつ、税務リスクも抑える…そういった点に会計業務とは異なる苦労があります。
税務、会計、FASを一体で提供できるのがやりがい
富山氏の所属する平成会計社は、クライアントに対して「税務」「会計」「FAS」のサービスを一体で提供することを基本としている。そのため、同社に所属する公認会計士や税理士は、会計士であれば税務の経験を、税理士であれば企業会計の経験を積んでいくこととなる。
富山氏はこういったクライアントに対して税務・会計・FASを一体で提供できる点に大きなやりがいを感じているとも語った。
私としては会計や税務の業務はどれも切り離せない業務で、それがひとつになってお客様に素晴らしいサービスが提供できる側面もあると思っています。ですので、税務、会計、FASそれぞれに関して、面白さややりがいはあるのですが、どれが好きというよりも、平成会計社で経験している業務のすべてが自分にとって良い経験になっているのかなと思っています。
平成会計社の特徴として、会計士と税理士の割合が半分半分ぐらいで会計士も多いのですが、弊社の考え方としては公認会計士も税務がわかるようになりましょうと、また、税理士も連結など会計をわかるようになりましょうというような考え方に基づいて業務や人材育成を行っています。私自身、会計の専門家である以上は、会計・税務・その他もろもろの知識を含めて持った上でお客様に対して良いサービスを提供したい、という考えをもともと持っていたのですが、そこがすごい一致しているので自分自身のやりがいのひとつとなっています。
独立をしたら会計士ではなくひとりの人間として経営者と付き合えることが大事
■久馬 一朗(久馬会計事務所 所長 公認会計士・税理士)
2008年、公認会計士試験合格。新日本有限責任監査法人国内監査部にて主に法定監査業務に従事。2012年末退職し独立。現在、東京、広島を中心に中堅・中小企業の税務・会計業務、相続税業務などに従事。慶應義塾大学卒、広島県出身。
新日本監査法人を経て2012年に独立し、中小・中堅企業向けの税務・会計支援や相続税業務などに従事する久馬氏は、会計士の独立や中小企業向けサービスの魅力について語ってくれた。
税務スキルも大事だが、お客様に信頼される人間性も大事
監査法人を退職して、個人会計事務所を開業している久馬氏だが、主な業務としては中小・中堅企業の税務申告、税務相談、個人の資産税といった税務が7割程度、残り3割は法定監査などの監査を行っているという。
そう言った経験から、
会計士が税務にチャレンジする場合、法人税や消費税など税務の理論はわかっていますが、実際どういう風に業務が流れていくのか、例えば記帳から申告書をどうやって作っていくのか、そういう実務的な経験がないのが一般的だと思います。ですので、まずは実務が実際どういう風に流れていくのかを知ることは大切だと思います。また、独立するのであればオーナー社長の相続に関する相談なども出てきますので資産税も経験しておくと良いと思います。
と参加者にアドバイスをした。
一方で、もちろん税務スキルは大事だが…と断りを入れつつ、久馬氏がもっとも大切だと考えているのはお客様に興味を持ってもらえる人間性だとも語った。
例えば、社長のところに私が行って、この処理は税務的に~ですねという話をしても、社長からするとあまり面白くないわけです。それよりも経営者の方というのは、趣味の話とか、世間の流れや世の中全般がどうなっているかという話の方が興味があるわけで、いわゆるこう“会計士です”“税理士です”っていうお付き合いをするよりも、人と人とのお付き合いができ、どれだけ私に興味を持っていただいて心を開いて悩みを相談して頂けるかというのが重要だと思っています。
社長から見ると顧問税理士は完全にパートナーであったり、仲間なんですね。信頼してくださっている社長ですと誰かに私を紹介してくださる時に、“うちの顧問の”とは言わず“うちの会社の久馬です”と紹介して頂けることもあります。いつの間に会社に入ったんだろうなと思うわけですけども(笑)、社長からすればその場では完全に仲間だと思って頂いているわけで、自分自身がそういう関係性を築ける会計士であるかどうかを常に意識しながら仕事をしています。
大切なことは税理士の祖父の背中から学んだ
人間性の大切さも大事だと語った久馬氏だが、その価値観は税理士であった祖父の姿から学んだというエピソードも語ってくれた。
私は祖父が税理士だったんですね。祖父がお客様と接しているのをずっと見て育ってきたのですが、祖父がどういうふうに接していたかというと、お客様が事務所というか家によく来てですね、社長そんなんじゃダメだ、ということを飲みながら話しているんです。時に喧嘩もするんですね。そこで税理士である祖父とお客様である社長がお互いに言いたいこと言って、でも、最後はこう民謡でも歌って終わるみたいな(笑)、そんな感じだったんです。社長の言うこともわかる、先生の言うこともわかる、と言った感じでお互いを理解しあって、本当に親戚のような付き合いで仕事をさせて頂いてるのを見て育ってきたんですね。そういった祖父のような立場で仕事がしたいなというのが幼い頃からあって独立するきっかけになったというのもあります。
私の場合、売上数百万円くらいから100億円くらいの会社様とお付き合いしているのですが、小規模な会社さんだと私が全部会計資料を預かっていますので、うちの会社儲かってるの?と私が聞かれることもあります。私には、そういった祖父の姿を見て育ったという経験がバックグラウンドにありますので、そう聞かれた時に、“社長、去年より売上伸びてますよ” “この経費が伸びちゃってるから、交際費が多すぎだからもうちょっと飲みに行くのを控えてもいいんじゃないですか”、とかそういうお客様と同じ目線でのアドバイスができて、一緒に会社を作っていける、会社を大きくしていけるパートナーみたいな関係でお客様とお付き合いさせて頂いています。
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