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2026年9月12日(土)に「第18回 公認会計士ナビonLive!! ~ここが変化の最前線~」が開催されます。
本記事では、2026年2月28日(土)に開催された、「第17回 公認会計士ナビonLive!! ~プロフェッショナルとしての立ち位置~」より、トークセッション「公認会計士×社外役員・監査役等について知っておくべきこと」の様子をお届けします。
本セッションに登壇いただいたのは、公認会計士・弁護士として多数の社外役員経験を有するリンクパートナーズの菅沼匠さんと、スタートアップや上場企業の監査役として活躍しつつ、監査役専門の人材紹介も行う公認会計士・大杉泉さんです。
社外役員として備えておくべき知識、社外役員になるための方策、時に「コスパが良い」と言われる社外役員の報酬やその背後にある責任についてお話いただきました。モデレーターは公認会計士ナビ編集長の手塚佳彦です。
※本記事の登壇者の肩書・経歴等はイベント登壇時のものになります。
※本記事の内容は公認会計士ナビにてセッションでの発言内容に編集を加えたものとなります。
目次
- 「社外役員」とは?まずはその種類と定義を整理
- 社外役員に必要とされる専門知識とは?
- 監査法人での経験は、社外役員としてどう役に立つのか?
- 社外役員は「コスパが良い」のか、稼働と報酬の実態は?
- 社外役員の「責任」の重さ、報酬とリスクは見合うのか?
- 倍率30倍!?社外役員になるための再現性ある方法とは?
「社外役員」とは?まずはその種類と定義を整理
手塚(公認会計士ナビ):「公認会計士×社外役員・監査役等について知っておくべきこと」のセッションを始めさせていただきます。
株式会社ワイズアライアンス
代表取締役CEO/公認会計士ナビ編集長
手塚 佳彦
神戸大学卒業後、会計・税務・ファイナンス分野に特化した転職エージェントにて約10年勤務。東京、大阪、名古屋の3拠点にて人材紹介・転職支援、支社起ち上げ、事業企画等に従事。その後、グローバルネットワークに加盟するアドバイザリーファームにてWEB事業開発、採用・人材戦略を担当。
2013年10月、株式会社ワイズアライアンス設立、代表取締役CEO就任。公認会計士ナビの編集長、また、会計業界専門の転職エージェントとして、会計・税務・ファイナンス業界に精通。
手塚(公認会計士ナビ):最初に、会場の皆さんに伺いたいのですが、今現在、社外役員をされている、あるいは経験があるという方はどれくらいおられますか?
……あまりいないようですね。
では、「将来やってみたい」「興味がある」という方はどうでしょう?
(会場から手が挙がる)
あ、結構たくさんいらっしゃいますね!
一般的に「社外役員」というと、「運が良くて、顔の広い一部のベテラン会計士がやる仕事」というイメージを持たれがちです。確かにそういう側面もありますが、私は、社外役員は十分に再現性を持って目指せるキャリアだと感じています。本日は経験豊富なおふたりに、実務のリアルな話を聞いていきましょう。
それではまずはおふたりから自己紹介をお願いします。
菅沼(リンクパートナーズ):リンクパートナーズの菅沼です。私は2002年に公認会計士試験の二次試験に合格し、監査法人トーマツに就職しました。その後、証券取引所の審査部に出向し、事業会社へ転職。その間、夜間のロースクールに通って司法試験に合格し、今は法律事務所を経営しながら数社の社外役員を務めています。
これまでに延べ10社以上の社外役員を経験しており、2026年2月現在での私が務めている社外役員の内訳は、上場会社3社、承認を受けて上場を控えている会社1社、上場準備中の会社が1社です。
リンクパートナーズ法律事務所
パートナー/公認会計士・弁護士
菅沼 匠
2002年に公認会計士試験2次試験に合格。監査法人トーマツのIPO支援部門から証券取引所の審査部に出向。その後、クックパッドの初期メンバーとしてマザーズ上場と東証1部変更の対応。クックパッドにて勤務している間に司法試験に合格し、スタートアップ支援を中心とする法律事務所を経て、現在の法律事務所を創業。
スタートアップ支援の経験から、上場を目指す会社からの社外役員の声掛けを受け、延べ15社の社外役員を経験。
手塚(公認会計士ナビ):菅沼さんとは私も10年以上の付き合いですが、IPO市場が厳しい時期でも、「菅沼さんが社外役員を務める企業がIPOしました」というニュースを何度か見かけていて、本当に素晴らしいなと感じています。その秘訣も後ほど伺いたいと思います。
では大杉さん、お願いします。
大杉(大杉公認会計士事務所):大杉泉です。私は2008年に商業高校を卒業して公認会計士試験に合格し、あずさ監査法人の横浜事務所に就職。そこで6年間を過ごした後、当時グロース市場に上場していた会社で、常勤監査役を3年務めました。
そこから十数年、ずっと監査役業務に携わっていて、現在は上場企業1社、上場準備中の会社4社の計5社の非常勤監査役を務めています。常勤監査役と非常勤監査役、双方の経験がありますので、その視点からお話しできればと思います。
手塚(公認会計士ナビ):大杉さんは、監査役向けのブログ「監査役ニュース」も運営されていたり、監査役専門の転職エージェントも行っておられますよね。
大杉(大杉公認会計士事務所):はい、今日は社外役員経験者という視点だけでなく、転職エージェントの観点からもお話しをできればと思っています。
大杉公認会計士事務所
所長/公認会計士
大杉 泉
2008年公認会計士試験合格。あずさ監査法人横浜事務所にて6年間勤務し、主に上場企業の会計監査業務に従事。その後、東証マザーズ上場会社にて常勤監査役を務め、上場ベンチャー企業のガバナンス体制構築や内部統制の整備、経営陣との実務的な議論に深く関与する。2017年以降は、Retty株式会社、株式会社インティメート・マージャー(いずれも後に東証グロース市場上場)をはじめ、複数のベンチャー企業において監査等委員・監査役を歴任。スタートアップから上場後まで、成長フェーズに応じた監査・ガバナンスの実務経験を豊富に有する。
現在は、監査役等支援を専門とする大杉公認会計士事務所を設立し、監査役等の実務支援や助言を行うほか、監査役等向けニュースブログ「監査役ニュース」を運営。あわせて、複数のベンチャー企業の社外監査役としても活動している。
日本公認会計士協会神奈川県会副会長、一般社団法人日本スタートアップ監査役等協会理事。
手塚(公認会計士ナビ):ありがとうございます。本題に入る前に、今回のテーマである「社外役員」について少し頭の中を整理しておきましょう。
こちらのスライド*をご参考ください。一口に「役員」と言っても、実は様々な掛け合わせがあります。役職、出身、関与頻度等を掛け合わせることで、複数パターンの役員の形態が存在することになります。
*以下、本記事に挿入されるスライドは会場にて投影されたもの(公認会計士ナビ作成)。

手塚(公認会計士ナビ):また、会社法が定める「社外役員」と、東京証券取引所が定める「独立役員」にも重要な違いがありますね。大杉さん、このあたりの整理についてはいかがでしょうか。
大杉(大杉公認会計士):そうですね。取締役や監査役、社外取締役、社外監査役の定義は、皆さんもご存知の通り会社法上にしっかりと規定されています。
また、会社法では「常勤監査役を置かなければならない」という設置義務は書かれていますが、実は「常勤とは何か」という定義自体は法律には明確に書かれていなかったりします。
手塚(公認会計士ナビ):なるほど。一方で、東証が上場企業に求める「独立役員」はさらに定義が実質的ですよね。
菅沼(リンクパートナーズ):はい。東証が定める「独立役員」は、会社法上の「社外役員」よりもさらに要件が厳しく、一般株主と利益相反が生じる恐れのない実質的な独立性(取引関係や株主関係などの利害関係がないこと)が強く求められます。資本市場においてコーポレートガバナンスが重視される中、この独立役員の確保は上場企業にとって極めて重要な課題になっています。
特にIPO(新規上場)を目指す企業の場合、「上場審査において社外取締役に1名、公認会計士が必要」とされるケースが多く、利害関係のない公認会計士がこの「独立役員」の枠で参画することは、企業のガバナンス体制構築と上場達成において非常に大きなバリューを発揮します。


菅沼(リンクパートナーズ):本セッションで言うと、対象となるのは以下の3つの役員ですね。これらの法的な建付けを理解しておくことが、プロとして活躍するための第一歩です。

社外役員に必要とされる専門知識とは?
手塚(公認会計士ナビ):では最初の質問です。社外役員は、どのような知識を備えておくべきでしょうか。
大杉(大杉公認会計士事務所):関与する会社のステージによって異なりますが、例えばスタートアップの場合は、何でも聞かれるので、何でも答えられないといけません。つまり、会計・税務だけでなく、人事、労務、法律などもです。そういう意味では、CFOとして採用される方とあまり差はないと言えます。
あとは個別事情によって変わりますね。私の場合だと、現在、M&Aを積極的に行う会社の社外役員を務めていて、会社からは「当然知っているだろう」という前提で質問が飛んでくるんです。そのためM&Aの知識は継続的に仕入れるように気をつけています。
手塚(公認会計士ナビ):スタートアップならIPO関連の知識も必要になってきそうですね。
菅沼(リンクパートナーズ): そうですね。必須と言っていいでしょう。
会計士なら、証券会社や証券取引所の審査情報を仕入れておいてもいいかもしれません。最低でも本くらいは読んで、監査法人の方なら知っていそうな情報はちゃんと知っておかないと、社長にアドバイスできないし、管理部の方からも能力を疑われかねません。

手塚(公認会計士ナビ):私がキャリア相談を受けていると、よく「経験をファームで積むか、事業会社で積むか」という話題が持ち上がります。
M&Aを例に挙げれば、ファームで財務デューデリジェンスやバリュエーションなどの業務を通じて、複数のM&A案件に関与することができます。一方で、事業会社ではM&Aの数は少ないかもしれませんが、当事者として深く関与することができる、それぞれに良し悪しがあると思いますが、どうでしょうか。
大杉(大杉公認会計士事務所):当然ながら、どの分野においても知識も経験もあるに越したことはありません。ただ、すべてにめちゃくちゃ詳しい必要はないと考えています。役員というのはチーム戦なので、重要なのはチームの中で補完し合うこと。むしろ、何かしらの分野に尖っている方が大事ですね。
菅沼(リンクパートナーズ): もちろん事業会社の経験は役に立ちます。
私が初めて社外役員になったのは、クックパッドに勤務していたときでした。事業会社にいたことで、企業内における会計知識の使い方がわかり、その経験が先方の社長に響いたんです。
専門知識はもちろん大事なのですが、社長や会社に響くように知識を蓄えるというのも、意識しておくといいかもしれません。
手塚(公認会計士ナビ):事業会社の経験は役に立つとのことですが、教科書的には社外役員はガバナンスを効かせる存在とされていますよね。
現場のことを考えて意見を出すのか、それともあくまで専門家として意見を言うのか、どのように考えていますか?
大杉(大杉公認会計士事務所):現場のことをわかっていないと、どうしても教科書に書いてあることをそのまま話すことになってしまいます。そうすると、どんなに良い話をしようと、相手に響かないんですよね。とはいえ、現場におもねるわけにもいきません。
例えば、「急ですが、今週、臨時株主総会を開催します。急ぎの内容なので、関係者には確認済みで、あとは大杉さんのサインが必要なだけです」と言われるとします。けれども、私は株主の代理としての立場なので、ちゃんと事前に連絡をいただいて検討する時間をいただく必要があります。
他にも「当社は会社のスピードが速いので、コーポレートもイケイケでいけるようにしてください」という希望を話される会社もありました。
気持ちはわかりますが、私は社外役員・公認会計士ですし、ダメなものはダメと言って、ブレーキをかける役割も担う必要があります。
手塚(公認会計士ナビ):なるほど。必要な知識という意味では、例えば会社法などの知識はどうでしょう?少なくとも会計士試験時代には勉強していると思うのですが。
大杉(大杉公認会計士事務所):もし社外役員に就任するなら、公認会計士であっても一度、勉強し直した方がいいですね。公認会計士の人と会社法の話をしていたら「そんな内容ありましたっけ?」なんて言われることも意外と珍しくありません。
菅沼(リンクパートナーズ):そうですね。専門家としての社外役員なので、社長や管理部長とちゃんと話ができることは当然です。それにもかかわらず、基本的なことが整理できていなかったり、言葉の使い方を間違えたりすると、それだけでもプロとして甘く見られてしまいます。留意した方が良いですね。

監査法人での経験は、社外役員としてどう役に立つのか?
手塚(公認会計士ナビ):大手監査法人のベテランのパートナーが引退して超大手企業の社外役員に就任するのと、若手が社外役員にチャレンジするのとでは、状況が異なるかと思います。監査法人での「監査経験」が社外役員の知見にどう活きるのか、おふたりの意見を教えてください。
菅沼(リンクパートナーズ):先ほどのセッションでグロービス・キャピタル・パートナーズの磯田さんが提示されていた「会計士とVCの考え方の差分」の四象限スライドが、まさにこの切り替えを分かりやすく示していると思います。
提供:グロービス・キャピタル・パートナーズ 磯田将太 氏
菅沼(リンクパートナーズ):会計士が行う通常の会計監査は、「過去 ✕ 事実」(左下)の象限にあります。一方で、ベンチャーキャピタルや成長を模索するスタートアップは、「未来 ✕ 仮説」(右上)の象限です。
プライム上場の老舗企業・大企業などであれば、大手監査法人の元パートナーのような「過去のファクト(監査)に精通したベテラン」が求められます。しかし、スタートアップやベンチャーが監査役に求めるものは、より未来志向な「右上側」の役割です。
会計監査の知識はベースの土台として極めて重要ですが、過去を検証する監査を長く経験したからといって、それが比例的にスタートアップの社外役員として活きるわけではない、マインドや視点を切り替える必要があるということは意識しておいた方がいいですね。
大杉(大杉公認会計士事務所):私もそう思います。会計士で社外役員として引っ張りだこになっている人は、活発に動けて未来思考が持てる「右上側」の人材が圧倒的に多いです。専門知識そのものよりも、その知識をどう使って社長の心に響くアドバイスができるか、という「使い方の習得」が大切です。
社外役員は「コスパが良い」のか、稼働と報酬の実態は?
手塚(公認会計士ナビ):仕事のボリュームや、稼働と報酬のバランスについても教えてください。
世間では、ネットの情報などから「社外役員はコスパが良さそうな仕事」に見える、時にそのような仕事として語られていることもあるようです。
確かに、教科書的には月1回の取締役会に出れば良いわけですが、決してそれだけではないと思います。実際はどうでしょうか?
大杉(大杉公認会計士事務所):先ほどの話ではないですが、社外役員をやっていると、急に臨時株主総会が開催されることになったりするわけです。そうすると、急に関係者からいろんな話を聞いたり、そのための日程を確保したりする必要が出てきます。そうなると、「月1回会議に出席するだけ」「月に1日程度しか稼働しない」というスタンスでは、リスクを絶対に見逃してしまいます。
私は、関与している会社(主にn-3期)とは、コーポレート部門と定期ミーティングを設けて、密にコミュニケーションを取るような工夫もしています。
また、リスクを教えてくれるのは、取締役だけではありません。社内外のいろんな方とコネクションを築いて、何かあったら連絡をもらえるようにしておくのも重要です。こういったことまでやっていると、稼働量は多くなりますが、リスクを早期に発見するために、情報を拾い集めておくのが社外役員としては重要だと思い、これくらい稼働しています。
手塚(公認会計士ナビ):社外役員にとっては、どこまで積極的に動けるのかも大事ですね。
では、役員報酬の金額はどうでしょうか?以前、私があるビジネス雑誌の特集で見た情報ですと、プライム上場の中でも規模の大きい企業ですと、超有名なグローバル企業ですと数千万円という人も一部おられたりしますが、平均的には1,000万円台の半ばから後半くらいの報酬の方が多いのかな?との印象を受けました。
若手~中堅の会計士の方々にとってより現実的な規模の上場企業やIPO準備企業ですと、どうでしょうか。
※編集部注※
以下、役員報酬の金額については会場限定公開、記事上では伏字とさせていただいております。
大杉(大杉公認会計士事務所):報酬の相場感については、私が転職エージェント業で取り扱っているリアルな数字をお話しすると、n-3期等の上場準備期の非常勤監査役は、「月額●●万〜●●万円」が相場です。ただ、私が転職エージェントとして取り扱う案件では、原則「月●●万円以上」に設定して交渉しています。一定の実績や専門性のある方は、安い金額だと受けてくださらないからです。
同じく上場準備期で、常勤監査役については、ひと昔前は「月額●●万円(年収●●●万円)」で募集する企業が多かったですが、現在の売り手市場ではその金額ではまったく決まりません。現在は「年収●●●万円」でも厳しく、最新の相場は「年収●●●万円台(月額●●万円前後)」まで上昇しています。
手塚(公認会計士ナビ):上場企業ではどうでしょう?
大杉(大杉公認会計士事務所):上場後の非常勤役員だと「月額●●万円」(年額●●●万円程度)から、会社によっては月額●●万円以上になります。同じく上場後の常勤監査役だと、年収●●●●万円前後が相場かなと思います。

手塚(公認会計士ナビ):企業の中には、こういった相場よりも安い報酬で社外役員を探されていることもありますよね。
大杉(大杉公認会計士):はい。報酬を極端に安く提示してくる案件には、それなりの「安くせざるを得ない、あるいは高いリスクが隠れている」事情があります。
社外役員を希望する方々の中にも、たまに相場よりも著しく安い金額で就任されている方もおられますが、ガバナンスに関わる重要なポジションですし、リスクも考え、エントリー時の報酬金額はしっかりと精査するほうが良いと思います。
手塚(公認会計士ナビ):ありがとうございます。「常勤」の定義についてはどうでしょうか?スタートアップが常勤監査役を募集する際に、週3日でOKというケースも見かけます。兼業はできるのかな?と気になっている人もいるかと思います。
大杉(大杉公認会計士):「常勤」監査役の稼働日数や兼業の可否についてですが、これは正直なところ、主幹事証券会社や監査法人によって指導のスタンスが大きく異なっている印象です。週5日フルコミットを当然として求める証券会社もあれば、週3日程度の出社で、あとはリモート勤務かつ連絡がつく体制であればOKという証券会社もお見かけします。
他業務との兼業については、業務フローや手続が完全に整理されていて説明可能であり、有事の際にすぐに駆けつけられる状態であれば、非常勤を1〜2社程度掛け持ちしていても許容されるケースが多いです。ただ、週1日以上の稼働をがっつり取られるような他の仕事を並行するのは、実務的にはかなり厳しいと感じます。
社外役員の「責任」の重さ、報酬とリスクは見合うのか?
菅沼(リンクパートナーズ):社外役員は、何も事故がなければ「コスパが良い」ように見えるかもしれません。でもその裏にある責任は非常に重いです。
私自身、過去に社外役員に就任していた会社の業績が大きく悪化したことがあります。規模もかなり大きな企業でした。そういった状況では、会社の行く末を悲観して辞めていく人も何人もいますし、「もし何かあったら自分の責任はどうなるのだろう、レピュテーションにも傷がつかないだろうか⋯」と不安を覚えたのも事実です。
しかし、そういった時こそ最後まで誠実に会社に寄り添い、やりきることが大切ですし、社外役員だからこそやりきらねばなりません。
手塚(公認会計士ナビ):そちらの会社は最終的にどうなられたのですか?
菅沼(リンクパートナーズ):最終的に民事再生となりました。会社としては残念な結果となりましたが、私も最後まで職務をまっとうしましたし、その過程で大きな不正等がでてくることもなく終えることができました。

手塚(公認会計士ナビ):リスクヘッジについてはどうでしょうか?保険など活用されていますでしょうか?
大杉(大杉公認会計士事務所):就任時に会社と「責任限定契約」を結びます。ただし、これは賠償上限が「報酬の2年分」などに限定されるだけで、善意・無重過失であることが前提です。また、会社が加入する「D&O保険(役員損害賠償責任保険)」もありますが、これも100%すべてをカバーできるわけではありません。
最終的には、万が一訴えられたとしても「自分は社外役員としてやるべきことを誠実にやった」と論理的に説明できるように、日頃から真摯に業務に励むことが最大のリスクヘッジになります。
菅沼(リンクパートナーズ):本当にその通りですね。そして、会社に危機が起きたとしても逃げずに誠実に対応した姿勢は、当時の管理部長や関係者がよく見てくれています。その管理部長が別の会社に転職した際に、「あの時しっかり対応してくれた菅沼さんに、また社外役員をお願いしたい」と、次の仕事の紹介に繋がることがよくあります。逃げずにやりきることが、実は次のキャリアを拓く信頼を生むのです。
倍率30倍!?社外役員になるための再現性ある方法とは?
手塚(公認会計士ナビ):社外役員に就任するためには、そもそも依頼を受けなければなりません。おふたりはこれまで、どのように役員の仕事を獲得してきたのでしょうか。
大杉(大杉公認会計士事務所):私自身の場合は、すべて知り合いからの紹介です。
私は監査役専門の転職エージェントもやっていますが、役員探しを依頼してくださる会社も、まずは自社のコネクションから探し、それで決まらなかった場合に声をかけてくれるという印象を持っています。
菅沼(リンクパートナーズ): 私もすべて人からの紹介ですね。最初は監査法人時代の同期から、次はCFOをしていた企業の管理部で一緒に働いていた方からの紹介でした。VC(ベンチャーキャピタル)からお声がけもあります。

手塚(公認会計士ナビ):「この人なら社外役員をやってくれるかも」と認知されていることが大事そうですね。基本は紹介ということですが、仕事を引き寄せるために、どのような人たちと繋がりを持っておくべきでしょうか?
菅沼(リンクパートナーズ):社外役員を探すという宿題は、大体「管理部長」が背負っています。ですから、管理部長や、将来管理部長になりそうな会計士仲間と日頃から繋がっておくのが一番の近道だと思います。
大杉(大杉公認会計士):私たちの転職エージェントに相談に来るのは、「VC(ベンチャーキャピタル)」や「PE(プライベート・エクエティ)ファンド」、そして「IPOコンサル」の方々が意外と多いです。この3つの業種の方々とコネクションを持っておくと、案件情報が入りやすくなるように思います。
そして一番大切なのは、周囲に「私は社外役員をやりたいです!」と明確に意思表示をしておくことです。ただ繋がっているだけでは、「あの人は今忙しいだろう」と思われて声がかかりません。やりたいという希望を言葉にして伝えておくことで、初めて声がかかるようになります。
手塚(公認会計士ナビ):なるほど。ちなみに、社外役員の競争倍率はどのくらいなのですか?
大杉(大杉公認会計士):非常勤の社外役員案件の場合、私のところでは平均倍率は「約20〜30倍」です。これは応募者全員ではなく、対象外の人を除いて、ある程度ふさわしい経験をお持ちの、かつスタートアップに向いてそうな方を厳選した上での数字ですので、非常に狭き門です。ちなみに常勤監査役の場合は「約6〜7倍」になります。
ただ、一度どこかで社外役員(特に監査役)を経験すると、2社目以降の獲得難易度は劇的に下がります。企業が募集を出す際、「監査役の経験者であること」を必須条件にしているケースが多いためです。まずは常勤などで実績を作り、そこから非常勤のキャリアを広げていくというのも非常に有効な戦略です。
手塚(公認会計士ナビ):社外役員になるのは狭き門ですね。
ちなみに、私が調べたところ、上場企業の社外役員(取締役・監査役)は日本全国に約9,000名以上おられるようです。また、日本公認会計士協会の公認会計士社外役員ネットワーク会員数には2025年12月時点で3,657人が登録しています。これには現役の社外役員の人だけでなく、社外役員になることを希望する会計士の方も含まれていますので、実際に社外役員をやっている人は2,000名くらいから多く見積もっても3,000名弱くらいでしょうか。一方で、BIG4監査法人のパートナーは現在、約1,800名です。
この数字だけ見ると、BIG4監査法人でパートナーを目指すよりも、社外役員を目指す方が、人によっては現実的かもしれません。社外役員は決して「一部の運の良い人だけが就く幻のポジション」ではなく、本日のおふたりからのお話しの通り、努力と実績、人脈形成によって十分に再現性を持って目指せるキャリアですし、キャリアの考え方も変わってくるかもしれません。
ところで、最後に、大杉さんから会場の皆さんにお伝えしたいことがあるそうで…。
大杉(大杉公認会計士事務所):ありがとうございます(笑)。『『はじめての J-SOX・内部監査・監査役等監査Q&A』という本を出版しました。「これさえやっておけば1年間無事に過ごせるはず」という内容を厳選しています。本日の内容にも合っていると思うので、関心のある方はぜひ手にとってみてください。
菅沼(リンクパートナーズ):実は、私も4月に本を出す予定です。IPOに強いメンバーと共同執筆した書籍『この1冊ですべてわかる IPOの基本』です。財務会計、法務、労務それぞれの専門家チームが、企業がクリアすべき課題やスケジュール感を網羅・整理し、図解入りでわかりやすく解説している入門書の決定版です。
手塚(公認会計士ナビ):社外役員になると本も出せそうですね(笑)
今日はいろんな観点から社外役員についてお話が聞けました。運ではなく、真面目に知識と経験と人脈を積み、建設的にキャリアを積めば、社外役員への道が開けると実感しています。このセッションをきっかけに、公認会計士出身の素晴らしい社外役員が増えると嬉しいです。
大杉さん、菅沼さん、本日はありがとうございました。

【参加受付中!】第18回 公認会計士ナビonLive!! 開催!
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「ここが変化の最前線」をテーマに、「会計士×関税コンサル」「独立会計士×税務」「独立会計士×AI活用」「会計コンサル×IT・DX支援」といった分野にフォーカスをして公認会計士の方々にお話を伺い、みなさんとの交流の機会をお届けする予定です。みなさまのご参加お待ちしております!
































