2022年1月の会計士業界ニュースをお届けします。
「トーマツ不正会計検知システム稼働」「PwCがAI監査本格導入」「監査法人の社員登用制限が緩和」の3本です。
トーマツ不正会計検知システム稼働
2015年に「会計士業務がAIに代替される」と話題になってからはや7年。当時は公認会計士の将来を不安視する風潮もありましたが、現在では、会計業界においてもAIを積極的に活用する動きが進んでいます。
今回、監査法人トーマツの不正会計の兆候を検知するシステム導入に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
監査法人トーマツは2022年1月から、不正会計の兆候を検知するシステムを本格導入する。
引用元:トーマツ、不正会計の兆し検知 来月からシステム導入(日本経済新聞 2021年12月31日付)
記事では、過去の不適切会計のデータをAIが分析し、監査先の子会社や勘定科目単位で不正の兆候を効率的に把握することができると伝えられています。コロナウィルス感染拡大による業績悪化で企業の会計不正リスクが高まっており、効率的に監査の質を高めることが求められています。
現在は、数多くの取引の中から抽出されたサンプルに対してのみ監査手続を行っていましたが、AIによってすべての取引データの解析が可能となります。限られた監査資源の中でより効率的に、不適切会計を見逃さない監査が行えるようになるものと期待されます。
詳細は以下の記事をご参照ください。
PwCがAI監査本格導入
トーマツに続いて、PwCもAI本格稼働の話題です。上場企業の不適切会計が相次ぐ一方で、監査法人の会計士不足は深刻な状況です。監査の質を向上させるための手段として、AIの活用が進められています。
今回、PwCジャパンのAI監査本格導入に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
PwCジャパングループは会計監査に人工知能(AI)を本格導入する。2025年までに業務の最大4割を自動化する。
引用元:PwCジャパン、AIで監査4割自動化 不正発見しやすく(日本経済新聞 2022年1月4日付)
記事によると、対応可能な国内大手上場企業の監査先を対象に、情報システムを順次、連携していくと伝えられています。また、AIの活用は、PwCの監査業務の効率化だけでなく、監査先の経理担当者の業務も軽減できる見込みだということです。
監査のデジタル化が進み、アナログな監査には戻れないと感じている方も既におられると思います。会計士不足の解消に有効なツールとして、監査業界に浸透していくことになりそうです。
詳細は以下の記事をご参照ください。
監査法人の社員登用制限が緩和
現行制度では、監査法人の社員の配偶者が会社等の役員である場合、当該社員が直接関与しない場合でも、監査証明業務の提供が制限されています。
今回、業務制限緩和に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
金融庁は会計監査を担う監査法人に対する幹部登用の制限を緩和する。具体的には、監査法人の職員の配偶者が会計監査を担当する企業の役員を務めていても、その職員を監査法人の幹部に登用できる。
引用元:監査法人への制限緩和へ 企業役員配偶者も幹部に 有能人材、登用しやすく 金融庁(日本経済新聞 2022年1月7日付)
記事では、公認会計士法が改正されれば、配偶者が役員を務める企業の監査業務に直接携わらなければ、監査法人の社員に就任できるようになると伝えられています。また、金融庁幹部によると、今回の法改正は女性活躍のための入り口の整備と位置づけているということです。
なお、金融庁より2022年1月4日付けで、金融審議会公認会計士制度部会報告が公表されています。
報告書の「監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限」中で、近年の女性活躍の進展や、独立性確保と監査証明業務に関与する社員等の業務制限について詳述されています。
女性会計士のパートーナー登用の機会が増えることで、会計士業界を志す女性や若者が増えることになればという期待も込めて、法律の早期改正が待ち遠しいです。
詳細は以下の記事をご参照ください。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)