2020年12月の会計士業界ニュースをお届けします。
「KAM早期適用で財務リスク積極開示」「コロナ長期化で減損前倒し企業増加」「会計士協会会長がESG情報開示にコメント」の3本です。
KAM早期適用で財務リスク積極開示
2021年3月期からKAMが本格導入されます。コロナ禍で決算や監査も大変な状況ですが、KAMについては、積極的な早期適用が行われているようです。
今回、KAM早期適用の開示内容に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
2021年3月期の義務付けに先駆けて対応した企業は、財務リスクを積極的に公表した。
引用元:監査ポイント明記の義務化 財務リスク、開示機運に(日本経済新聞 2020年11月27日付)
記事では、綜合警備保障(ALSOK)、住友商事、AOKIホールディングスなどKAMの具体例が取り上げられています。また、日本公認会計士協会の調べによると、2020年3月期までにKAMを開示した48社のうち6割が、従来より踏み込んだ情報開示をしていると伝えられています。
本格適用でも利害関係者にとって有益な情報が、広く開示されることを期待したいと思います。ご興味のある方は以下をご参照ください。
コロナ長期化で減損前倒し企業増加
コロナ禍による業績悪化と長引く円高もあいまって、収益力が低下する企業が増えています。
今回、2020年4~9月期決算の減損損失に関する記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
上場企業が2020年4~9月期決算で計上した減損損失は7430億円と、上半期では長引く円高が重荷となった2012年4~9月期以来8年ぶりの高水準となった。
引用元:減損7430億円、8年ぶり規模 上場企業4~9月(日本経済新聞 2020年12月2日付)
記事によると、通常は減損は期末に処理されることが多いですが、新型コロナの感染長期化で前倒しで減損に踏み切る企業が多かったと伝えられています。航空関連の業種で減損計上するケースが多いほか、コロナを機にした構造改革に伴い減損を計上する動きも広がっているそうです。
今年は、日経平均が29年ぶりの高値を付けて話題となりましたが、減損損失を計上し、コロナ不況の中でも株価に見合う収益力を取り戻せるでしょうか。ご興味のある方は以下をご参照ください。
会計士協会会長がESG情報開示にコメント
ESGは、企業の評価指標として投資判断にも取り入れられるなど、情報開示の重要性が増しています。
今回、ESG情報開示について会計士協会の手塚会長へのインタビュー記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
会計専門家が基準づくりの団体設立に動くなど、ESG(環境・社会・企業統治)に関わる非財務情報の開示基準を世界で統合する動きが広がっている。ESG情報の開示のあり方はどう変わるのか。手塚正彦・日本公認会計士協会会長は取材に対して「(統合報告書など)企業の情報開示に対する公認会計士による保証の重要性が増す」と強調した。
引用元:会計士協会会長「ESG情報 会計士の『保証』重要」(日本経済新聞 2020年12月9日付)
記事によると、手塚会長は、会計士協会として意見を出す方向で検討しているところで、会計士が内容を確認して証明する「保証」を意識しており、人材育成の必要についてもコメントされています。
企業がステークホルダーに対して、必要な情報を質・量ともに十分に開示できるような体制作りが期待されます。ご興味のある方は以下をご参照ください。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)<