第7回:業務日報は作成している?【会計事務所が知っておきたい税理士賠償責任のポイント】

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東京共同会計事務所の窪澤と申します。
今回は、会計事務所が知っておきたい税理士賠償責任のポイントの第7回として、「業務日報」についてお話しさせていただきます。(※本記事記載の【業務日報】とは税理士法上作成義務が課されている【業務処理簿】を指すものではありません。)

これまでの記事はこちら →シリーズ:会計事務所が知っておきたい税理士賠償責任のポイント

著者

東京共同会計事務所
税理士/マネージャー
窪澤 朋子

上智大学外国語学部卒業
平成15年税理士登録。前職の鳥飼総合法律事務所で、14年にわたり、税務訴訟及び税賠訴訟の補佐人・不服申立の代理人を務める。主な担当事件に、ストック・オプション事件、ガーンジー島事件、グラクソ事件、外国籍孫事件等。
税賠案件では、税賠訴訟の他、税理士紛議調停・訴訟前の交渉等、多数の案件に関与。税賠保険事故調査書のレビュー経験あり。
著書に、「税理士の専門家責任とトラブル未然防止策」(清文社・分担執筆)等。

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業務日報の作成は必須?

弊職は、税賠が起きにくい会計事務所を目指すためのお手伝いをしておりますが、クライアントである会計事務所の職員に業務日報を作成しているかどうかについてお伺いすると、意外と否定的な答えが多く返ってきます。

「職位を問わず全職員の義務」という事務所がある一方、「職員がどんな業務をしているかは私が全部把握しているから、業務日報は特段必要ない」と自信たっぷりにおっしゃる所長さんもいらっしゃいます。
「本当は必須にしたいと思っているけれど、職員の負担が更に増えてしまって、働き方改革に逆行する・・・」などというぼやきも耳にします。
弊職の感覚では、「クライアントごとに掛かった時間についてはコスト管理との兼ね合いでタイムレポート等を管理しているものの、作業内容までは書かせていない」という事務所が多いように思います。あるいは、「必須にはなっているものの、記載内容については職員に任せているため、本来記載すべき内容が記載されていない場合がある」という事務所もいらっしゃいます。
普段から忙しい会計事務所の職員に業務日報を作成させることは、本当に必要なのでしょうか?
職員の管理や評価のため、又はボーナスの査定や昇給の参考等、業務日報の記載を必要とする目的は事務所によっても異なると思いますが、ここでは、税賠予防という観点から考えてみたいと思います。

クライアントの申告書作成の作業状況は?

税賠が発生する原因は様々ですが、クライアントとの間で、「言った」「言わない」がトラブルに発展するケースは、ままあります。クライアントとのやり取りがすべてメールなら、このような問題は発生しにくいのですが、資料を郵送したり、質問に対して電話で回答を行ったりする場合も多いのではないかと思います。

例えば、クライアントX社から資料を受領した後に、担当者Aさんが申告書作成の作業を開始し、今期除却した固定資産の有無とその一覧についてX社に質問をしたものの、その回答がなかなかもらえずに申告書が出来上がらない・・・。ありがちな風景ですが、このことが原因で提出した申告書の数字に誤りがあったことが数年後に判明し、これについてX社から損害賠償請求があったとします。

このように数年経ってから、AさんがX社に係る申告書作成の作業を開始した日付や、X社への質問を行った日付を確認できるでしょうか?X社への資料の依頼は、メールで行っていれば、当該メールが残っている限り、後からでも確認が可能ですが、もし電話で資料を依頼したとすると、何も資料が残っていない可能性もあります。そして、AさんはX社からの回答が得られず、申告書作成の作業を中断して待っていたはずなのに、X社からは、すぐに回答したはずだと言われてしまうこともあるかもしれません。

内部資料でも当時作成したものは証拠になり得る

Aさん側に帰責事由がないことを証明するためには、「担当者Aは何月何日にX社の申告書作成を開始し、何月何日にX社への質問を行ったが、何月何日まで回答をもらえなかった」という事実を明らかにする必要が出て来ると思われます。

「何月何日にX社に質問」については、送信したメールが残っていれば明確です。しかし、「何月何日にX社の申告書作成を開始」「何月何日まで回答をもらえなかった」ことについては、申告作業ファイルなどに細かく記録を残していない場合は、業務日報を残していなければ把握することが困難である可能性が高いものと思われます。

業務日報をきちんと残していれば、上記の内容はすぐに判明します。また、「何月何日まで回答をもらえなかった」という事実の記載があれば分かりやすいのですが、そのような記載がなくとも「回答があったこと」や「申告書作成の作業を再開したこと」であれば記載されているはずなので、そこから判断することが出来る可能性もあります。

また、業務日報のように、クライアントに送付していない内部資料であっても、当時継続して作成していたものであれば税賠の際には有効的に活用できます。逆に、トラブルになってから当時の業務日報をバックデートで作成することは、事務所の信用性が疑われることになりかねないので、そのような不適切な行為は絶対にやめましょう。

効率よく業務日報を作成するヒントは?

業務日報の必要性は何となくわかったけれども、職員が1日に行う業務は非常に幅広いので、その1つ1つをすべて業務日報へ記載することは到底できないと思われるかもしれません。それでは、効率の良い業務日報の作成の仕方を、次回考えてみたいと思います。

【今回のポイント】

  • 税賠予防の観点からは、業務日報の作成は必須
  • 業務日報記載の内容が、トラブルになったときに役立つケースがある

次回は、具体的な業務日報の作成方法についてお話ししていきたいと思います。

次回に続く

→第8回はこちら

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