2018年6月12日から6月13日にかけて、会計士協会、監査法人などに関する複数のニュースがリリースされています。
会計士協会が会費値上げを検討、元公認会計士による粉飾決算発見プログラム開発、監査法人が不適正意見や意見差控の理由を説明などの記事を幅広くご紹介します。
会計士協会の会費20%値上げを検討
- 会計士協会、20年に会費値上げ 40年ぶり 東芝問題などで費用増(日本経済新聞 2018年6月13日付)
会計士協会の会費はいくらかご存知ですか?監査法人など所属組織が会費を負担してくれていて、年会費がいくらか分からないという方もおられると思います。
現在の本部会費は月額で5千円(年額6万円)で、それ以外に地域会会費を支払っています(金額は所属地域会により異なります)。
今回、この本部会費について、会計士協会が40年ぶりに値上げしようとしているという記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
会計士の自主規制機関、日本公認会計士協会(関根愛子会長)は2020年にも会員の会計士などから徴収する会費を2割値上げする。
引用元:会計士協会、20年に会費値上げ 40年ぶり 東芝問題などで費用増(日本経済新聞 2018年6月13日付)
記事によると、値上げの理由は、東芝の不適切会計問題などの対応で人件費などの費用が増えて、協会の財政を圧迫していることが原因になっているそうです。
従来の年間6万円から7万2千円への会費の値上げは妥当なのでしょうか。現在、協会は会員に対して意見を募っているそうですが、どのような判断になるのでしょうか。
いずれにせよ、値上げで自己チェック機能が高まり、監査に対する社会的信用が高まるのであれば、値上げも必要経費として認められるのではないでしょうか。
伝説の会計士が粉飾決算発見ソフトを開発
- 粉飾決算をプログラムで見抜け!「伝説の会計士」の挑戦(現代ビジネス 2018年6月13日付)
今回、元あずさ監査法人の代表社員だった細野祐二氏が、粉飾決算発見ソフト“フロード・シューター”を開発したという記事が、現代ビジネスよりリリースされています。
今日まで細野氏が手掛けた企業分析は13年間に21社。日本航空や東芝の経営危機の分析を送り出し、そのレポートは報道をリードしてきた。「フロード・シューター」の実力はそんな細野氏の経験に裏打ちされているのである。
引用元:粉飾決算をプログラムで見抜け!「伝説の会計士」の挑戦(現代ビジネス 2018年6月13日付)
記事によると、今後改良を加えて完成すれば、EDINETからすべての上場企業の財務分析が、わずか20秒で完了するようになるそうです。また将来的には、AIによる分析で粉飾の動機を指摘するレポートの作成もできる日が来るそうです。
投資家にとっては、分かりやすいレポートが簡単に入手できるようになり利便性が向上しそうです。監査法人が“フロード・シューター”と分析力を競い合う、そんな時代が間もなくやってきます。
不適正や意見不表明なら、監査法人は株主に説明?
- 決算「不適正」株主に説明を 金融庁が監査法人に要請へ(日本経済新聞 2018年6月12日付)
東芝の不適切会計問題の余波は、監査法人に及ぶのでしょうか。
今回、監査法人が不適正意見を出したり意見不表明だった場合、その理由を株主らに説明するよう求める方針を金融庁が打ち出しているという記事が、日本経済新聞よりリリースされています。
金融庁は、監査法人が企業の決算書類に「お墨付き」を与えなかった場合、その理由を株主らに詳しく説明するよう求める方針だ。
引用元:決算「不適正」株主に説明を 金融庁が監査法人に要請へ(日本経済新聞 2018年6月12日付)
記事によると、東芝事件を契機に、「不適正」という意見だけでは投資家が投資判断をしづらいことを理由に、一定以外の場合は監査法人の守秘義務を解除し、監査法人が詳しい理由を説明できる仕組みを検討するそうです。
投資家から求められた場合、どこまで詳細を説明する必要があるのかなど、新たな課題が出てきます。会計士協会が構成員として参加している検討会で、果たしてどこまで身を削って監査の透明性を確保する仕組み作りが行われるのか、今後の動向が気になります。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)